縄文GoGo

5000年前の中部高地の物語

第140話 21日目③

 

 

 

          夕食の広場。続き。

 
ナジオ  「湧き水平(わきみずだいら)で新発見!
      帰り際だったのだが、何を見つけたと思う?」
シロクン  「見晴らし岩の下の湧き水の場所だな?
        湧き水平って名付けた訳だな。」
ヤッホ  「確か、ミズナラの林だと言っていただろう? リスの巣か?」
ハギ  「リスの巣も有るには有るが、答えはそれじゃない。」
カタグラ  「でも、ある意味、いい線を突いておるな。」
ヤシム  「ミズナラなら、キノコ樹じゃない?
      マイタケなんかがわんさか生える樹。」
ハギ  「キノコ樹なら見つけてあるんだ。それも2本。
     大きなマイタケやヒラタケもびっしりと生えてる。
     だけどキノコは鮮度が命だからな。
     タマから指示が出たら、採って来ることになってるんだ。」
オジヌ  「おれは、最初に聞いた時、温泉だと思った。」
カタグラ  「おお! それもいい線だな。」
エミヌ  「カタグラ、いい加減! リスの巣と温泉じゃあ、全然違うじゃない。」
ナジオ  「いい加減でも無いぞ。」
サチ  「じゃあ、洞窟?」
ナジオ  「大正解!」
ハニサ  「サチ、凄いね! よく分かったね!」
エミヌ  「リスの巣って、形が似てるって事?」
カタグラ  「そうだ。」
テイトンポ  「大きいのか?」
ハギ  「帰り際だったんで、ほとんど調査できていない。
     でも大きいと言っていいと思うよ。」
ナジオ  「おれ達三人で、樹を伐って運んでいたんだ。
      そこでおれが躓(つまづ)いて、丸太が崖の斜面にぶつかった。
      その時ちょっとした崖崩れみたいになったんだが、その場では気付かなかった。
      帰り際にそこを通ったら、崖に隙間が出来ていたんだ。」
ハギ  「試しに隙間の所を掘ってみたら、さくさく掘れて、
     人一人が、屈(かが)んで通れるくらいまでは、すぐに掘れた。
     半回し(35センチ)くらいの土の厚みがあって、その向こうは真っ暗で何も見えない。
     入ってみたら、中は広い洞窟になってた。」
ハニサ  「兄さん、奥はどれくらいまであるの?」
ハギ  「それはまだ分からない。
     まだ中で火を焚いていないから、高さも広さも分かってない。」
テイトンポ  「洞窟の地面は、平なのか?」
ハギ  「入口付近は平だ。
     おそらく奥も平だと思うが、何かあると怖いから、あまり奥までは行かなかった。」
テイトンポ  「おう、それでいい。地面に亀裂が有ったりしたら大変だ。」
シロクン  「今の見立てでは、どうなんだ?
        それは自然の物なのか、人が作ったものなのか?」
カタグラ  「それを話しながら帰って来たんだが、
       おそらく、自然の物に、人の手が加えられているな。
       地面が平なのは、だれかがそれをしたのだと思うぞ。」
サラ  「生き物は何かいた? 例えばコウモリとか。」
ハギ  「何も確認できていない。たぶん、コウモリはいないんじゃないかな。」
サチ  「変な臭いはしなかった?」
ハギ  「臭いは気にならなかった。ただ、中は寒かった。」
ナジオ  「あと、水の音がしただろう? したたり落ちる音だ。」
カタグラ  「そうだった! あれは湧き水の方角だったから、何か関係があるのだろうな。」
ハギ  「要するに、もしこの洞窟がこっちの希望に沿う物なら、
     天然の大ムロヤを手に入れたかも知れないって事なんだ。」
テイトンポ  「なるほど、話は分かった。その可能性は高いだろうな。
        小屋はもう、建て始めておるのか?」
ハギ  「いや実は、場所の選定で意見が分かれていて、まだ着工はしていない。
     材料は、もうかなり集まったよな?」
カタグラ  「おう。だからその材料で、予定通り小屋を作るべきか、
       それとも洞窟内の造作に使うべきかの判断をしてもらいたいのだ。
       タカジョウが居れば、おれ達だけで決めたのだが、今居ないからな。」
ヤッホ  「分かった。そういう事ならまかせてくれ。
      まずは洞窟探検からだな。
      アニキ、明日探検に行こうぜ。」
アコ  「何でヤッホが請け負うのよ。」
ヤッホ  「ここはおれが、一肌脱ぐ場面だろう?」
シロクン  「ハハハ、ヤッホからの達っての頼みとあればしょうがない。
        テイトンポ、工房の増築は明後日からでもいいか?」
テイトンポ  「ああ良いぞ。明日はお祓いをして、マムシ酒で清めておく。
        オジヌ、おまえも行って来い。」
オジヌ  「やったー! おれ、行きたかったんだ!」
エミヌ  「私も行く! いいでしょう?」
サラ  「私も行きたい! 先生に聞いて来る!」
エミヌ  「ナクモも行こうよ。」
ナクモ  「うん、そこからスワが見えるんでしょう? カタグラの村も見えるんだよね?」
カタグラ  「ああ、見えるぞ。」泣きそうになっている。
シロクン  「ハニサはどうするんだ?」
ハニサ  「あたしは工房で器を作ってるよ。アマテルに何かあるといけないから。」
サラ  「先生が、行っていいって。ロウソクもくれるって。」
ムマヂカリ  「長い縄はあっちにあるのか?」
ハギ  「長いのは無い。どうせ要る物だから、明日持って行くか。」
シロクン  「よし! 明日は早めの出発とするか。
        念のために、背負子を二つ持って行こう。」
 
 
 
登場人物 シロクン 28歳 タビンド 特産物を遠方の村々に運ぶ シロのイエのクンヌ  ササヒコ 43歳 ウルシ村のリーダー  ムマヂカリ 26歳 ヒゲの大男   ヤッホ 22歳 ササヒコの息子   ハギ 24歳 ヤスが得意  タホ 4歳 ヤッホとヤシムの息子 ヤシムと暮らしている  タヂカリ 6歳 ムマヂカリとスサラの息子  クマジイ 63歳 長老だが・・・  テイトンポ 40歳 シロクンヌの師匠 その道の達人   クズハ 39歳 ハギとハニサの母親   タマ 35歳 料理長  アコ 20歳 男勝り テイトンポに弟子入り   ヤシム 24歳 タホの母親  ハニサ 17歳 土器作りの名人 シロクンヌの宿   スサラ 25歳 ムマヂカリの奥さん  ヌリホツマ 55歳 漆塗り名人 巫女  ホムラ 犬 ムマヂカリが可愛がっている

      

追加アシヒコ 56歳 アユ村のリーダー  マグラ 27歳 アユ村の若者  カタグラ 24歳 マグラの弟  フクホ 50歳 アシヒコの奥さん  マユ 25歳 アユ村の娘  ソマユ  19歳 マユの妹  サチ 12歳 孤児 シロクンヌの娘となる アヤクンヌ      エミヌ 18歳  オジヌ 16歳 エミヌの弟  カイヌ 14歳 オジヌの弟    モリヒコ シカ村のカミ  サラ 17歳 スサラの妹 ハギとトツギとなる ヌリホツマの弟子  ナクモ 18歳 エミヌの友人  シオラム 41歳 ササヒコのすぐ下の弟 塩作りの加勢のためシオ村で暮らす 5年に一度、里帰りする  ナジオ 20歳 シオラムの息子 シオ村生まれ  タカジョウ 23歳 ワシ使い  ホコラ 洞窟暮らし 哲人  シップ オオイヌワシ タカジョウが飼っている  エニ 38歳 エミヌ姉弟の母   カヤ アマカミの使者  シラク 北のミヤコのシロのムロヤの責任者  マシベ フジのシロの里の者 ヲウミのシロの村との連絡係り  トモ フジのシロの里の者 

   

用語説明 ムロヤ=竪穴住居  大ムロヤ=大型竪穴建物  カミ=村のリーダー  コノカミ=この村のリーダー           グリッコ=どんぐりクッキー  黒切り=黒曜石  神坐=石棒(男性器を模した磨製石器)  塩渡り=海辺の村が作った塩を山の村に運ぶ塩街道があった。ウルシ村から東にシカ村→アマゴ村・・・七つ目がシオ村  御山=おやま。ウルシ村の広場から見える、高大な山々  コタチ山=御山連峰最高峰  トコヨクニ=日本  蚊遣りトンボ=虫除けオニヤンマ ここではオニヤンマの遺骸に竹ひごを刺し、竹ひごをヘアバンドで頭部に固定する  トツギ=一夫一婦の結婚  眼木=めぎ 眼鏡フレーム 曲げ木工房で作っている  クンヌ=イエの頭領  吊り寝=ハンモック  一本皿=長い丸太を半分に割いて作ったテーブル。一本の木から2本取れるが、一本皿と呼ばれている。  一回し=長さの単位 70㎝  半回し=35㎝ 縄文尺とも呼ばれる。  カラミツブテ・カブテ=狩りの道具。コブシ大の二つの石を紐でつなげた物。

 

 

第139話 21日目②

 

 

 

          夕食の広場。

 
ヤシム  「タホの作った身代わり人形、傑作だったでしょう?」
ムマヂカリ  「あれは腹を抱えて笑ったぞ。」
ヤッホ  「首が横にずれて付いてたな。」
シロクン  「それで何かをたくらんでいる顔してるだろう?
        どうやったらあんなに上手にたくらみ顔が作れるんだ?」
ハニサ  「アハハハ。確かにたくらんでるね。
      顔の下はお腹とお尻だけだったね。」
エミヌ  「お尻の真ん中に割れ目があったよ。」
シロクン  「アハハハ、なんでタホはそんな事を知ってるんだ?
        ハニサが見せただろう?」
ハニサ  「やめて! お腹痛い。そこだけ細かく手が込んでたもん。」
ヤッホ  「ヤシムが見せてるのか?」
ヤシム  「する訳無いでしょう! エミヌじゃないの?」
エミヌ  「タホがもう少し大きくなったら、見せてあげようかな。」
ヤシム  「やめてよ、食い入るように見るに決まってるから。」
エミヌ  「アハハ、親子だもんね。」
ムマヂカリ  「あれ? これ、グリッコじゃないな。」
エミヌ  「美味しいでしょ?」
ヤッホ  「ほんとだ。クリだな。」
エミヌ  「クリコって言うの。ミヤコの味よ。」
シロクン  「サチが言ってたやつだな?」
ナクモ  「サチに教えてもらったやり方で作ってみたの。」
ハニサ  「美味しい! 搗栗(かちぐり)で作るの?」
エミヌ  「そう。搗栗にいろいろ混ぜるんだって。今日のはヤマイモ。」
ハニサ  「だけど、それだけじゃあ、この味にならないよね?」
エミヌ  「ならないね。さて、何が加えてあるでしょうか?
      私の発案で加えてみたんだよ。」
ムマヂカリ  「何だろうな・・・」
サラ  「あ! ハギが帰って来た。ハギー、お帰りー。」
 
    ハギ、ナジオ、カタグラが帰って来た。
    カタグラは、カモを3羽持っている。
 
カタグラ  「ひゃー、遅くなった。カモはどこに吊る?」
ハギ  「サラ、ただいま。取りあえず、どんぐり小屋に吊って来るよ。
     それからメシを取りに行こう。」
ナクモ  「お帰り。遅かったね。何かあった?」
カタグラ  「あったがその前にシロクンヌだ。
       本当にここは留守にできん村だな。
       一日空けたらもうこれだ。
       シロクンヌ。アマカミになるんだってな! おめでとう!
       しかし今回のは心底驚いたぞ。
       しかも次のアマカミはアマテルだそうだな。
       そしてこの近辺がミヤコになると言うではないか。」
シロクン  「そうだ。人も増えるだろうから、新しく村も作らねばならん。
        アマテルがアマカミになる頃には、この辺りも随分と様変わりしておるかも知れんな。
        それから、こないだのハタレ三人組、もしまたあんなのが出たら、
        おれかテイトンポかにすぐに知らせてくれ。」
カタグラ  「おう! 女神を護るんだな?
       それについては、スワの各村は、全面協力するぞ。
       具体的にすべき事があるなら、何でも言ってくれ。
       5年前のハタレも、もし今の様にこことスワが連結しておれば、
       たやすく狩り出せたはずだからな。」
シロクン  「そうだな。
        今作っている基地な、それなんかも、もっと大々的な物にするかも知れん。
        地理上、あそこは重要な拠点だ。」
ナジオ  「お! 話がそこに来たな。」
ハギ  「お待たせ! いろり屋に食い物を取りに行こうぜ。
     シロクンヌ、カタグラは弓の名人だったよ。
     あのカモ、一羽は、飛んでるのを射たんだぜ。
     それから基地の件で、ちょっとした話があるんだ。
     テイトンポとアコに言って、ここに来てもらえないかな。ああ、あとオジヌもだ。」
 
シロクン  「サチ、父さんの膝に来い。腹一杯、食べたか?」
サチ  「食べたよ。おお豆くずし、美味しかった。クリコも美味しかった。」
テイトンポ  「クリコは美味いな。ミヤコの食い物なんだってな。」
シロクン  「テイトンポは、クリコの隠し味に使ってある物が分かるか?」
テイトンポ  「そんなの簡単だ。クマだ。昨日の熊汁で練ってある。」
ムマヂカリ  「そうか!」
エミヌ  「へー、意外! テイトンポって味が分かるんだ。」
テイトンポ  「意外とは何だ。おれは、味にはうるさい方だぞ。」
エミヌ  「ねえ、今度私に、マムシ酒飲ませてよ。」
テイトンポ  「エミヌはその、なんだ・・・相手はおるのか?」
エミヌ  「今はいないの。」
テイトンポ  「だったら止めておけ。」
エミヌ  「じゃあ、相手が出来たらね。約束だよ。」
テイトンポ  「まあ、考えておく・・・」
アコ  「テイトンポも、エミヌにはタジタジだね。」
シロクン  「ハハハ。ところでオジヌは、スワに行った事はあるのか?」
オジヌ  「見晴らし岩の先までしか行った事が無いよ。」
シロクン  「テイトンポ、相談なんだが、オジヌをスワに遊びに行かせる訳にはいかんかな?
        五日後くらいに一泊か二泊かで。」
テイトンポ  「ああ、いいぞ。ちょうど歩行訓練の時期だしな。
        オジヌ、カニ足とスリ足でアユ村まで行って来い。やり方は今度教える。
        シジミグリッコをお土産でもらって来いよ。」
シロクン  「カタグラその時だが・・・」
カタグラ  「分かった! その時は任せてくれ。」
シロクン  「すまんな。」
オジヌ  「え? おれ、スワに行っていいの?」
エミヌ  「良かったね! でも、やり過ぎるんじゃないよ! 検査するからね!」
オジヌ  「おれ達はそんなんじゃないよ!
      大体、検査って何だよ。みんなが本気にするだろう!」
ハギ  「ハハハ、まったくエミヌは相変わらずだな。ではそろそろ本題に入るぞ。」
 
 
 
登場人物 シロクン 28歳 タビンド 特産物を遠方の村々に運ぶ シロのイエのクンヌ  ササヒコ 43歳 ウルシ村のリーダー  ムマヂカリ 26歳 ヒゲの大男   ヤッホ 22歳 ササヒコの息子   ハギ 24歳 ヤスが得意  タホ 4歳 ヤッホとヤシムの息子 ヤシムと暮らしている  タヂカリ 6歳 ムマヂカリとスサラの息子  クマジイ 63歳 長老だが・・・  テイトンポ 40歳 シロクンヌの師匠 その道の達人   クズハ 39歳 ハギとハニサの母親   タマ 35歳 料理長  アコ 20歳 男勝り テイトンポに弟子入り   ヤシム 24歳 タホの母親  ハニサ 17歳 土器作りの名人 シロクンヌの宿   スサラ 25歳 ムマヂカリの奥さん  ヌリホツマ 55歳 漆塗り名人 巫女  ホムラ 犬 ムマヂカリが可愛がっている

      

追加アシヒコ 56歳 アユ村のリーダー  マグラ 27歳 アユ村の若者  カタグラ 24歳 マグラの弟  フクホ 50歳 アシヒコの奥さん  マユ 25歳 アユ村の娘  ソマユ  19歳 マユの妹  サチ 12歳 孤児 シロクンヌの娘となる アヤクンヌ      エミヌ 18歳  オジヌ 16歳 エミヌの弟  カイヌ 14歳 オジヌの弟    モリヒコ シカ村のカミ  サラ 17歳 スサラの妹 ハギとトツギとなる ヌリホツマの弟子  ナクモ 18歳 エミヌの友人  シオラム 41歳 ササヒコのすぐ下の弟 塩作りの加勢のためシオ村で暮らす 5年に一度、里帰りする  ナジオ 20歳 シオラムの息子 シオ村生まれ  タカジョウ 23歳 ワシ使い  ホコラ 洞窟暮らし 哲人  シップ オオイヌワシ タカジョウが飼っている  エニ 38歳 エミヌ姉弟の母   カヤ アマカミの使者  シラク 北のミヤコのシロのムロヤの責任者  マシベ フジのシロの里の者 ヲウミのシロの村との連絡係り  トモ フジのシロの里の者 

   

用語説明 ムロヤ=竪穴住居  大ムロヤ=大型竪穴建物  カミ=村のリーダー  コノカミ=この村のリーダー           グリッコ=どんぐりクッキー  黒切り=黒曜石  神坐=石棒(男性器を模した磨製石器)  塩渡り=海辺の村が作った塩を山の村に運ぶ塩街道があった。ウルシ村から東にシカ村→アマゴ村・・・七つ目がシオ村  御山=おやま。ウルシ村の広場から見える、高大な山々  コタチ山=御山連峰最高峰  トコヨクニ=日本  蚊遣りトンボ=虫除けオニヤンマ ここではオニヤンマの遺骸に竹ひごを刺し、竹ひごをヘアバンドで頭部に固定する  トツギ=一夫一婦の結婚  眼木=めぎ 眼鏡フレーム 曲げ木工房で作っている  クンヌ=イエの頭領  吊り寝=ハンモック  一本皿=長い丸太を半分に割いて作ったテーブル。一本の木から2本取れるが、一本皿と呼ばれている。  一回し=長さの単位 70㎝  半回し=35㎝ 縄文尺とも呼ばれる。  カラミツブテ・カブテ=狩りの道具。コブシ大の二つの石を紐でつなげた物。

 

 

第138話 21日目①

 

 

 

          曲げ木工房。

 
テイトンポ  「丁度増築を考えておった。
        スッポンが軌道に乗ったらと思っておったが、
        この際、踏ん切りをつけてやってしまうか。」
シロクン  「増築すれば、ハニサは冬もここで器作りが出来そうか?」
テイトンポ  「そういう増築をすればいい。ハニサはどうだ?」
ハニサ  「うん。火があるから、いつでも焼けるし、ここがいい。
      増築して壁ができれば、冬も暖かいよね。」
シロクン  「では増築は、おれとサチでやるよ。
        テイトンポが構想を練ってくれ。」
テイトンポ  「サラ、聞こえていただろう?
        ヌリホツマに地の祓(はら)いを頼みたい。」
サラ  「早い方がいいんでしょう? 先生に聞いて来るね。」
テイトンポ  「頼む。
        サラはおれのスッポンの先生だ。
        おれは必ずスッポングリッコを世に出してみせる。」
シロクン  「ワハハ、夢があっていいな!
        で、こいつらはいつ食うんだ?」
テイトンポ  「馬鹿者! 浅慮(せんりょ)な奴め! 
        こいつらを食ってどうする。
        食うのは、こいつらの子や孫からだ。繁殖させて、増やして食うんだろうが。」
 
    事実この先、テイトンポ、サラ、アコのチームは、
    人類で初めてスッポンの養殖に成功する事になる。
 
シロクン  「お、トモとマシベだ。
        テイトンポ、打ち合わせを頼む。」
テイトンポ  「そうだな。飛び石まで下りるか。」
 
 
シオラム  「この木曲げも、やりだすと面白いもんだな。
       しかしアコは大したもんだ。うちのナジオと同年だろう?
       あいつはフラフラしておって、歯がゆい時もあるが、
       アコ、爪に垢はたまっておらんか?」
アコ  「アハハ、煎じて飲ますの? ナジオは今日はどこに行ったの?」
シオラム  「ハギと出かけた。基地作りが面白いらしい。
       向こうにおる時は、アコの話をよくしておったんだぞ。」
アコ  「5年前は、よく一緒に遊んだからね。」
シオラム  「オジヌ、おまえ変な歩き方をしておるが、それにも意味があるのか?」
オジヌ  「今日はヒザを曲げてなきゃいけない日なんだ。」
シオラム  「アコもあれをやったのか?」
アコ  「やったよ。最初、あたしは半日で音(ね)を上げたけど、オジヌはもっと行けそうだね。」
オジヌ  「おれは夕方まで頑張る。
      アコより強くなりたいんだ。
      あれ? 母さんとクズハが来るよ。」
 
クズハ  「シオラム、慣れた手付きになったわね。うちの人は?」
シオラム  「アコ先生の教えのたまものだ。
       テイトンポなら飛び石に行ったぞ。
       ハニサの護りの打ち合わせだろう。
       じきに戻って来るよ。」
エニ  「オジヌ、あなたギックリ腰やったね?」
シオラム  「ワハハハハ、そう見えるよな?」
オジヌ  「違うよ、訓練なんだ。母さんこそ何しに来たの?」
エニ  「アケビの蔓(つる)の湯剥きよ。シロクンヌから聞いたやり方。」
シオラム  「湯剥きすると、どうなるんだ?」
エニ  「白蔓って言って、それでカゴを編むとするでしょう?
     すると軽いし、スベスベしてるから引っ掛かりにくいそうよ。」
クズハ  「それに虫やカビも付きにくいって言っていたわよ。
      濡れてもすぐに乾くって。
      水場で使うには良いそうよ。
      シオ村にも無いんじゃない?」
シオラム  「無いだろうな。そんな話は初耳だから。
       海で使えるかも知れん。そっちも学んで行くか。
       ほら、戻って来たぞ。」
 
ハニサ  「やっぱりイエの人達の別れって、あっさりしてるんだね。
      ちょっとそこまで出かけて来るぞって感じだった。」
シロクン  「旅慣れた連中だからな。
        ん? クズハとエニがいるという事は・・・
        蔓の湯剥きか。
        テイトンポは大忙しだな。」
 
サラ  「先生がね、場所が決まってるのなら、明日の朝一番でいいって。」
テイトンポ  「よし、場所は夕方までに決める。朝一でやってもらおう。」
オジヌ  「あれ? 今度はクマジイとカイヌが来た。」
 
クマジイ  「これを丸められんかい?」
テイトンポ  「薄い板だなあ。枌板(へぎいた)か?」
クマジイ  「ほうじゃ。ネズコの木で、わしがへいだんじゃよ。
       まん丸の筒が出来んかと思うてな。
       いろいろ試してみたいんじゃがな。」
テイトンポ  「ああいいぞ。アコとシオラムと相談しながらやってくれ。」
クマジイ  「すまんのう。カイヌ、板をぎょうさんへぐぞ。」
シロクン  「テイトンポは人気者だな(笑)。
        サチ、河原で石斧の石を作るぞ。
        サチは小屋作りの知識はあるのか?」
サチ  「ミヤコの整備に必要な知識は一通り学んだの。
     ここなら掘っ立て小屋でしょう?
     掘っ立て小屋作りには3回参加したことがあるよ。」
ハニサ  「えー! サチってそんな事までできるの?
      12歳の時のあたしと大違い!」
サチ  「この村の建物って、材木の交点はフジ蔓なんかで結わえてあるだけでしょう?
     【渡りアゴ】を使えば、もっと頑丈になるよ。グラグラしないの。」
シロクン  「何だその渡りアゴとは? サチは出来るのか?」
サチ  「2本が交差するでしょう? その交点を削り合うの。
     噛み合わせがピッタリだと、もうそれだけでグラ付かない。
     木を1本地面に寝かして、その上に1本交差させると、上のは地面から離れるでしょう?
     お互いの交点を削って窪ませれば、上の木も、ピッタリ地面に付くよね?
     そこまで深いアゴにしなくてもいいから、噛み合わせ良く削るのが大事なの。
     私も出来るけど、力が無いから時間がかかるよ。
     父さんがやれば、あっと言う間に出来ちゃうと思う。」
シロクン  「驚いたな。小屋作りが楽しみになってきた。サチから色々学べそうだ。」
ハニサ  「ミヤコって進んでるんだ。そんなやり方、この辺では聞かないもの。
      それにしても、サチってやっぱりアヤクンヌなんだねえ。」
 
 
          ━━━ 幕間 ━━━
 
渡りアゴや貫穴(ぬきあな)が施された材木は、4千年前の遺跡(富山県、桜町遺跡)から出ています。
これは、材木が出土した非常に珍しい事例です。材木は、残りにくい。
それからすると、それよりもずっと前から、渡りアゴや貫穴はあったのかも知れません。
弥生時代発祥と思われていた高床式建物が、縄文中期には間違いなく存在していました。
金属工具の無い時代に、縄文人は見事に木材加工を行っていたのです。
 
 
 
登場人物 シロクン 28歳 タビンド 特産物を遠方の村々に運ぶ シロのイエのクンヌ  ササヒコ 43歳 ウルシ村のリーダー  ムマヂカリ 26歳 ヒゲの大男   ヤッホ 22歳 ササヒコの息子   ハギ 24歳 ヤスが得意  タホ 4歳 ヤッホとヤシムの息子 ヤシムと暮らしている  タヂカリ 6歳 ムマヂカリとスサラの息子  クマジイ 63歳 長老だが・・・  テイトンポ 40歳 シロクンヌの師匠 その道の達人   クズハ 39歳 ハギとハニサの母親   タマ 35歳 料理長  アコ 20歳 男勝り テイトンポに弟子入り   ヤシム 24歳 タホの母親  ハニサ 17歳 土器作りの名人 シロクンヌの宿   スサラ 25歳 ムマヂカリの奥さん  ヌリホツマ 55歳 漆塗り名人 巫女  ホムラ 犬 ムマヂカリが可愛がっている

      

追加アシヒコ 56歳 アユ村のリーダー  マグラ 27歳 アユ村の若者  カタグラ 24歳 マグラの弟  フクホ 50歳 アシヒコの奥さん  マユ 25歳 アユ村の娘  ソマユ  19歳 マユの妹  サチ 12歳 孤児 シロクンヌの娘となる アヤクンヌ      エミヌ 18歳  オジヌ 16歳 エミヌの弟  カイヌ 14歳 オジヌの弟    モリヒコ シカ村のカミ  サラ 17歳 スサラの妹 ハギとトツギとなる ヌリホツマの弟子  ナクモ 18歳 エミヌの友人  シオラム 41歳 ササヒコのすぐ下の弟 塩作りの加勢のためシオ村で暮らす 5年に一度、里帰りする  ナジオ 20歳 シオラムの息子 シオ村生まれ  タカジョウ 23歳 ワシ使い  ホコラ 洞窟暮らし 哲人  シップ オオイヌワシ タカジョウが飼っている  エニ 38歳 エミヌ姉弟の母   カヤ アマカミの使者  シラク 北のミヤコのシロのムロヤの責任者  マシベ フジのシロの里の者 ヲウミのシロの村との連絡係り  トモ フジのシロの里の者 

   

用語説明 ムロヤ=竪穴住居  大ムロヤ=大型竪穴建物  カミ=村のリーダー  コノカミ=この村のリーダー           グリッコ=どんぐりクッキー  黒切り=黒曜石  神坐=石棒(男性器を模した磨製石器)  塩渡り=海辺の村が作った塩を山の村に運ぶ塩街道があった。ウルシ村から東にシカ村→アマゴ村・・・七つ目がシオ村  御山=おやま。ウルシ村の広場から見える、高大な山々  コタチ山=御山連峰最高峰  トコヨクニ=日本  蚊遣りトンボ=虫除けオニヤンマ ここではオニヤンマの遺骸に竹ひごを刺し、竹ひごをヘアバンドで頭部に固定する  トツギ=一夫一婦の結婚  眼木=めぎ 眼鏡フレーム 曲げ木工房で作っている  クンヌ=イエの頭領  吊り寝=ハンモック  一本皿=長い丸太を半分に割いて作ったテーブル。一本の木から2本取れるが、一本皿と呼ばれている。  一回し=長さの単位 70㎝  半回し=35㎝ 縄文尺とも呼ばれる。  カラミツブテ・カブテ=狩りの道具。コブシ大の二つの石を紐でつなげた物。

 

 

第137話 20日目⑤

 

 

 

          ハニサのムロヤ。

 
ハニサ  「早かったね。ちょうど湯があるから、体を拭いてあげるね。」
シロクン  「サチは?」
ハニサ  「体を拭いてたら眠そうだったから、すぐに送って行ったよ。
      サチね、右の手のひら、小っちゃい手なのに、タコになってるの。
      カブテの練習でなったんだね。」
シロクン  「サチは根を詰めてやるからな。」
ハニサ  「でもサチって不思議なの。
      夜が怖くないって言ってた。
      体を拭いてあげながら、熊を獲った日の夜の話をしたの。
      村の出口でサチから声を掛けられたでしょう?」
シロクン  「カブテの石が割れたから、河原で代わりを探して来たと言っていたな。」
ハニサ  「あたし、今でも夜の河原なんて、怖くて行けないよ。
      だから、怖くなかった?って聞いたら、どうして?って言うの。
      それって変でしょう?」
シロクン  「確かに妙だな。
        寝ぼけていた訳ではないのか?」
ハニサ  「私もそう思って、聞き直したの。
      夜は暗くて怖いでしょう?って。
      そしたら不思議そうにあたしを見て、怖くないよって言ったの。」
シロクンヌ  「いや今思うと、確かにそういうフシはある。
        放っておいたら、夜でも森で練習しそうな勢いなんだ。
        あの時だって、全然怖がってなんかいなかっただろう?」
ハニサ  「あの時、真っ暗だったんだよ。
      暗闇の中で、サチの声だけ聞こえたでしょう?」
シロクン  「明り壺は持っていなかったな。
        持っていたかも知れんが、灯ってはいなかった。」
ハニサ  「サチはついこないだまで、ひどい目に遭ってたんだよ。
      人一倍、夜を怖がったっていいはずなのに。」
シロクン  「テイトンポは、夜目が利くって言っていたが・・・
        そう言えば、河原でも石はすぐ見つかったと言っていたな・・・
        そうだ! 夜突きの時もおれは驚いたんだ。
        イワナの夜突き大会があっただろう。
        最初の2個のビクをハニサの所におれが持って行った時、
        おれはダケカンバのタイマツも持っていたんだ。
        サチは川の中に、ヤスだけ持たせて待たせていた。
        ところがサチの所に戻ってみると、おれの留守中に、
        サチはイワナを4匹も突いていたんだ。」
ハニサ  「それって、暗闇で魚を突いたってこと?」
シロクン  「恐らくな・・・自分の服のスソをまくり上げて、そこに魚を入れて待っていた。
        今思い出してみると、そこには4匹以上、魚は入らなかったと思う。
        もしもカラのビクを持たせていたならば、もっと突いていたのかも知れん。」
ハニサ  「サチって不思議な子だよね・・・
      でもね、サチの手を見た時、
      この子、将来、アマテルの力になってくれるんだって思ったよ。」
シロクン  「うん。サチがいれば、アヤのイエも勢いづくだろうな。」
ハニサ  「ねえシロクンヌ、あたしやっぱりどうしても気になるの。
      無残な目に遭った妊婦って、どんなことされたの?
      あたし、事実を知っておきたいの。
      だから教えて。」
シロクン  「ハタレが全部そうだとは言わんが、奴等は人を喰う。」
ハニサ  「え?」
シロクン  「腹が減って、止むに止まれず食うのではなく、嬉々として喰う。
        異性の性器が多いがな。」
ハニサ  「知らなかった・・・」
シロクン  「妊婦が襲われた場合、胎児は喰われている事が多い。」
ハニサ  「美人が光の子を宿した、奴等にはそれで十分だ・・・
      マシベだったかが、そう言ってたでしょう? そういう意味だったのね。
      わー! あたし、捕まらないようにしよう!」
シロクン  「そうだ。備えていれば、捕まる事は無いさ。
        そこで明日からだが、ハニサは器作りをするんだろう?」
ハニサ  「うん。そのつもりだった。」
シロクン  「作業小屋は後ろがウルシ林だし人目に立たないから心配なんだ。
        鍛えられたオジヌとイナが一緒ならいいのだが。」
ハニサ  「そうだね。ウルシ林も人が居たり居なかったりだから・・・
      どうすればいい?」
シロクン  「曲げ木工房で器作りはできないか?
        騒がしいかも知れんが。」
ハニサ  「机があればできるよ。
      あそこなら、火も灰も水もあるから、結構便利かも知れない。
      音や声は、気にならないから平気だよ。
      冬は寒そうだけど、ここ一、二ヶ月の事でしょう?」
シロクン  「それなら明日、テイトンポに話して、粘土や机を運び込むか。
        あそこは今、賑わっているだろうな。」
ハニサ  「あそこからならトモとマシベが出発するのが分かるよね。
      あたし、やっぱりきちんと見送りたい。
      だって護ってもらうんだもん。」 
 
 
 
登場人物 シロクン 28歳 タビンド 特産物を遠方の村々に運ぶ シロのイエのクンヌ  ササヒコ 43歳 ウルシ村のリーダー  ムマヂカリ 26歳 ヒゲの大男   ヤッホ 22歳 ササヒコの息子   ハギ 24歳 ヤスが得意  タホ 4歳 ヤッホとヤシムの息子 ヤシムと暮らしている  タヂカリ 6歳 ムマヂカリとスサラの息子  クマジイ 63歳 長老だが・・・  テイトンポ 40歳 シロクンヌの師匠 その道の達人   クズハ 39歳 ハギとハニサの母親   タマ 35歳 料理長  アコ 20歳 男勝り テイトンポに弟子入り   ヤシム 24歳 タホの母親  ハニサ 17歳 土器作りの名人 シロクンヌの宿   スサラ 25歳 ムマヂカリの奥さん  ヌリホツマ 55歳 漆塗り名人 巫女  ホムラ 犬 ムマヂカリが可愛がっている

      

追加アシヒコ 56歳 アユ村のリーダー  マグラ 27歳 アユ村の若者  カタグラ 24歳 マグラの弟  フクホ 50歳 アシヒコの奥さん  マユ 25歳 アユ村の娘  ソマユ  19歳 マユの妹  サチ 12歳 孤児 シロクンヌの娘となる アヤクンヌ      エミヌ 18歳  オジヌ 16歳 エミヌの弟  カイヌ 14歳 オジヌの弟    モリヒコ シカ村のカミ  サラ 17歳 スサラの妹 ハギとトツギとなる ヌリホツマの弟子  ナクモ 18歳 エミヌの友人  シオラム 41歳 ササヒコのすぐ下の弟 塩作りの加勢のためシオ村で暮らす 5年に一度、里帰りする  ナジオ 20歳 シオラムの息子 シオ村生まれ  タカジョウ 23歳 ワシ使い  ホコラ 洞窟暮らし 哲人  シップ オオイヌワシ タカジョウが飼っている  エニ 38歳 エミヌ姉弟の母   カヤ アマカミの使者  シラク 北のミヤコのシロのムロヤの責任者  マシベ フジのシロの里の者 ヲウミのシロの村との連絡係り  トモ フジのシロの里の者 

   

用語説明 ムロヤ=竪穴住居  大ムロヤ=大型竪穴建物  カミ=村のリーダー  コノカミ=この村のリーダー           グリッコ=どんぐりクッキー  黒切り=黒曜石  神坐=石棒(男性器を模した磨製石器)  塩渡り=海辺の村が作った塩を山の村に運ぶ塩街道があった。ウルシ村から東にシカ村→アマゴ村・・・七つ目がシオ村  御山=おやま。ウルシ村の広場から見える、高大な山々  コタチ山=御山連峰最高峰  トコヨクニ=日本  蚊遣りトンボ=虫除けオニヤンマ ここではオニヤンマの遺骸に竹ひごを刺し、竹ひごをヘアバンドで頭部に固定する  トツギ=一夫一婦の結婚  眼木=めぎ 眼鏡フレーム 曲げ木工房で作っている  クンヌ=イエの頭領  吊り寝=ハンモック  一本皿=長い丸太を半分に割いて作ったテーブル。一本の木から2本取れるが、一本皿と呼ばれている。  一回し=長さの単位 70㎝  半回し=35㎝ 縄文尺とも呼ばれる。  カラミツブテ・カブテ=狩りの道具。コブシ大の二つの石を紐でつなげた物。

 

 

第136話 20日目④

 

 

 

          夜の広場。

 
    焚火のそばには、シロクンヌ、ハニサ、トモ、マシベが御座に座っている。
    近くでサチがカブテの練習をしているが、他にひと気は無い。
 
トモ  「まずはクンヌ、おめでとうございます。」
マシベ  「シロのイエからアマカミが出るのは、ヲウミのミヤコ以来ですな。」
シロクン  「おれの次のアマカミは、ハニサに宿るアマテルだ。
        ハニサもアマテルもイエには入らんが、
        二人を護るのはシロのイエの最優先の仕事だ。
        いいな?」
トモ  「承知しました。」
マシベ  「異存はありません。」
シロクン  「おれは一月後にサチとタカジョウと共に、ミヤコに向かう。
        この一ヶ月の間にハニサの護りを整えねばならん。
        今、ハタレに大きな動きはあるのか?」
トモ  「ありません。ただ数は相当おりますな。
     吸引力を持った統領が出ると、かなりうるさい事になりそうです。」
マシベ  「散らばりで見ますと、やはりここより西が多いようです。」
シロクン  「イエの者から6人を選んで、この村から半日の場所に、一人ずつ住まわせてくれ。
        ハグレを装ってな。期間は一年としようか。
        村の周りで変な動きがあれば、すぐにテイトンポに知らせるんだ。」
マシベ  「その者達が、村人から怪しまれはしませんか?」
シロクン  「何か印象に残る物・・・
        そうだ、ウルシ村の旗、赤・黒・赤の。
        その旗に似た物を身に付けさせればどうだ?
        見た者は、おそらくテイトンポに報告するだろう。
        そこでテイトンポがこんな風体ではなかったか?と聞くんだ。」
マシベ  「なるほど、そこで、村の旗みたいな何かを身に付けてなかったか?と聞くのですね。
      身に付けていた、と答えたら、そいつは実は仲間なんだと打ち明けると。」
トモ  「いい作戦ですな。それで行きましょう。」
ハニサ  「なんか凄い話になってるけど、あたしってやっぱりそんなに危ないの?」
トモ  「護っていなければ、間違いなく襲われるでしょうな。」
マシベ  「アマカミの件は抜きにしたとしても、
      美人が光の子を宿した、それだけで奴等には十分です。
      無残な目にあった妊婦は何人もおりますよ。」
ハニサ  「無残な目ってどんな事されるの?」
シロクン  「夢に出るぞ。聞かん方がいい。
        人ならできん事をする連中だからな。」
ハニサ  「なんとなく、想像がつくけど・・・」
シロクン  「あと、ハニサのムロヤに住まわすイナだが、どんな女なのだ?」
トモ  「綺麗な女ですよ。
     30よりもっと下に見えます。
     明るい性格で人気者です。
     一年前にヲウミから移って来たものですから、それ以前の事は我々もよく知らんのです。
     ただその時、ミウミウのお墨付きだったのです。」
シロクン  「ミウミウというのは、テイトンポの後についたおれの師匠だ。
        12歳の息子を男ムロヤに入れて、一人でこっちに来るのだな?」
トモ  「おそらくそうなるでしょう。
     今まで男ムロヤが手狭だったのですが、ハグレ役でこっちに来る者で空きがでますから。
     息子が色気づいて手を焼いていると、こぼしておるようですから(笑)。
     イナはそういう開けっ広げな性格ですから、ハニサともすぐに打ち解けると思いますよ。」
ハニサ  「なんかいい人そうだね! 会うのが楽しみになって来た。」
シロクン  「イナについては、心配無さそうだな。
        あとはヲウミのおれの息子達だが、特に何も変わりは無いか?」
マシベ  「この春に会って来ました。
      みな聡明ですぞ。
      クンヌに会うのを楽しみにしておりました。
      母親達もみな元気で、ヲウミについては、何の心配もいらん様に見受けました。」
シロクン  「来年会いに行ってみようと思っている。
        できればサチとタカジョウを連れてな。
        ヲウミへの使者は誰になる?」
マシベ  「私です。
      フジには戻らず、ここから真っ直ぐ行こうかと思っております。」
シロクン  「父にタカジョウの件を伝えてくれ。
        それからシロの村は、あまりにヒワの湖に近すぎる。
        アヤの村を教訓として、引っ越しも視野に入れた話し合いが必要だ。
        来年おれが戻ったら、その話もするつもりだ。
        そう伝えてくれ。」
マシベ  「分りました。」
シロクン  「二人共、明日出立だな?
        出立前に、テイトンポと細かい打ち合わせをしていってくれ。」
トモ  「分りました。いやあこれで、ヲウミもフジも沸き立ちますぞ。」
シロクン  「そうだな。サチ、話は終わった。こっちに来い。」
ハニサ  「汗びっしょりだよ。左手で練習してたの?」
サチ  「うん。左手は難しいね。」
シロクン  「ハニサ、ムロヤで体を拭いてやってくれ。
        おれは大ムロヤを覗いてくるよ。」
 
 
 
登場人物 シロクン 28歳 タビンド 特産物を遠方の村々に運ぶ シロのイエのクンヌ  ササヒコ 43歳 ウルシ村のリーダー  ムマヂカリ 26歳 ヒゲの大男   ヤッホ 22歳 ササヒコの息子   ハギ 24歳 ヤスが得意  タホ 4歳 ヤッホとヤシムの息子 ヤシムと暮らしている  タヂカリ 6歳 ムマヂカリとスサラの息子  クマジイ 63歳 長老だが・・・  テイトンポ 40歳 シロクンヌの師匠 その道の達人   クズハ 39歳 ハギとハニサの母親   タマ 35歳 料理長  アコ 20歳 男勝り テイトンポに弟子入り   ヤシム 24歳 タホの母親  ハニサ 17歳 土器作りの名人 シロクンヌの宿   スサラ 25歳 ムマヂカリの奥さん  ヌリホツマ 55歳 漆塗り名人 巫女  ホムラ 犬 ムマヂカリが可愛がっている

      

追加アシヒコ 56歳 アユ村のリーダー  マグラ 27歳 アユ村の若者  カタグラ 24歳 マグラの弟  フクホ 50歳 アシヒコの奥さん  マユ 25歳 アユ村の娘  ソマユ  19歳 マユの妹  サチ 12歳 孤児 シロクンヌの娘となる アヤクンヌ      エミヌ 18歳  オジヌ 16歳 エミヌの弟  カイヌ 14歳 オジヌの弟    モリヒコ シカ村のカミ  サラ 17歳 スサラの妹 ハギとトツギとなる ヌリホツマの弟子  ナクモ 18歳 エミヌの友人  シオラム 41歳 ササヒコのすぐ下の弟 塩作りの加勢のためシオ村で暮らす 5年に一度、里帰りする  ナジオ 20歳 シオラムの息子 シオ村生まれ  タカジョウ 23歳 ワシ使い  ホコラ 洞窟暮らし 哲人  シップ オオイヌワシ タカジョウが飼っている  エニ 38歳 エミヌ姉弟の母   カヤ アマカミの使者  シラク 北のミヤコのシロのムロヤの責任者  マシベ フジのシロの里の者 ヲウミのシロの村との連絡係り  トモ フジのシロの里の者 

   

用語説明 ムロヤ=竪穴住居  大ムロヤ=大型竪穴建物  カミ=村のリーダー  コノカミ=この村のリーダー           グリッコ=どんぐりクッキー  黒切り=黒曜石  神坐=石棒(男性器を模した磨製石器)  塩渡り=海辺の村が作った塩を山の村に運ぶ塩街道があった。ウルシ村から東にシカ村→アマゴ村・・・七つ目がシオ村  御山=おやま。ウルシ村の広場から見える、高大な山々  コタチ山=御山連峰最高峰  トコヨクニ=日本  蚊遣りトンボ=虫除けオニヤンマ ここではオニヤンマの遺骸に竹ひごを刺し、竹ひごをヘアバンドで頭部に固定する  トツギ=一夫一婦の結婚  眼木=めぎ 眼鏡フレーム 曲げ木工房で作っている  クンヌ=イエの頭領  吊り寝=ハンモック  一本皿=長い丸太を半分に割いて作ったテーブル。一本の木から2本取れるが、一本皿と呼ばれている。  一回し=長さの単位 70㎝  半回し=35㎝ 縄文尺とも呼ばれる。  カラミツブテ・カブテ=狩りの道具。コブシ大の二つの石を紐でつなげた物。

 

 

第135話 20日目③

 

 

 

          夕食の広場。

 
ササヒコ  「みんな聞いてくれ。重大な話だ。
       ミヤコから来たシロクンヌの客人カヤは、アマカミの遣いであった。
       アマカミの御意志をシロクンヌに伝達しに来たのだ。
       アマカミの御意志で、次のアマカミは、シロクンヌと決まった。
       静かにしてくれ。
       そしてシロクンヌの意志で、その次のアマカミは、
       ハニサに宿る光の子、アマテルとなりそうだ。静かにしてくれ。
       我がウルシ村でアマカミが誕生するのだ。
       静かにしてくれ。
       目出度い踊りは話の後だ。
       静かにしてくれ。
       えーい、では先に一度踊るか! 目出度い目出度い♪ 目出度い目出度い♪」
 
 
オジヌ  「おれが、ハニサを護るの?」
テイトンポ  「もちろんおまえ一人ではないが、おまえの役割は重要だ。
        ただし、おまえにその役目ができるかは、一ヶ月後に判断する。
        今のままでは、話にならん。
        一ヶ月、おれが鍛えてやる。
        不服があるか?」
オジヌ  「無い! おれ、強くなれるんだね!」
テイトンポ  「まず、股関節を、剥(は)がす。
        脚を広げろ。
        アコ、押してやれ。」
オジヌ  「いてててて。」
テイトンポ  「そのままだ。その姿勢のまま、めしを食え。
        そうやって、これから一個一個、間接を剥がしていくからな。」
クズハ  「痛そうね。でもあなた、オジヌが強くなれば、とっても頼もしいわよ。
      5年前にも、ハニサを護ってくれたんだもの。
      それからサチだけど、あれからシロクンヌと森に行って、
      今日もカラミツブテでキジバトを獲ったそうよ。」
 
ヤッホ  「やっぱアニキはすげーな! アマカミにまでなっちまうんだから。」
ヤシム  「すると何? シロクンヌもサチも、近くに住むって事でしょう?」
シロクン  「そうだな。この辺りも少し様子が変わると思うぞ。」
ムマヂカリ  「おれ達、ミヤコの住人になるのだな。
        いくつくらい、新しい村ができるんだ?」
シロクン  「まだ分からんが、最終的には10くらいは増えるかも知れん。」
クマジイ  「村の場所が決まれば、すぐに栗の木を植えるんじゃぞ。」
ハギ  「飛び石の川の上流に、いくつか良い丘があるよ。ここくらいの村ができそうな。」
シロクン  「うん、そういう情報はどんどん欲しいな。」
テイトンポ  「おいシロクンヌ、サチにはいつ、カブテを教えたんだ?」
シロクン  「確か、四日ほど前じゃなかったかな?
        テイトンポとアコが旅立った次の日だよ。」
テイトンポ  「サチ、食事中に悪いが、おじちゃんにカブテの技を見せてくれんか。
        広い場所に行くぞ。」
サチ  「はい!」
ヤッホ  「おれも見に行ってみよう。サチ、今日は何羽獲ったんだ?」
サチ  「2羽。でも、逃げられた方が多いよ。」
エミヌ  「アマカミって響きが素敵よね。
      ハニサはアマカミしてもらってる?」
ハニサ  「え?え?」
エミヌ  「してもらいなよ。シロクンヌ、してあげてないの?」
シロクン  「エミヌは最近、されておらんだろう?」
エミヌ  「うん。自分でも届かない。舌なら届くんだよ。見てみる?」
シロクン  「ハハハ。エミヌのお得意だな?」
ハニサ  「ねえねえ、何の話?」
ナジオ  「それ、こないだ聞けば良かったなあ、魂写しの儀で。」
エミヌ  「好きですか?って? 絶対好きって答えてたよね。」
タホ  「チュンチュンチュン!」
ヤシム  「タホ、何もってるの?」
タホ  「すずめー。」
ヤシム  「わー、そっくりね! どうしたの、これ。」
タホ  「おねーちゃんが折ってくれたー。」
ヤシム  「こまかく折ってあるわねえ。サチは指先が器用なのね。」
ムマヂカリ  「そうだ、シロクンヌ、ハニサの護りだが、おれも力になるぞ。」
シロクン  「それを頼もうと思っていたところだ。是非頼む!」
ムマジカリ  「まずはハニサのムロヤの前に、ホムラの犬小屋を作る。
        雨に濡れんようにな。
        夜はホムラはそこに居させる。」
クマジイ 「それはムマヂカリじゃのうて、ホムラが力になるように思うがのう。」
ムマヂカリ  「だから、まずは、と言っておるだろう。」
ヤシム  「でもハタレが大勢で襲ってきたらどうするの?」
シロクン  「人数にもよるが、あまりにも多いとどうしようもなかろうな。
        いきなりそれは無いと思うが。」
ヤシム  「だからそういう時のために、秘密の隠れ場所や、秘密の逃げ道を作っておかなきゃ。
      それはね、それを作った人とハニサ以外は、誰にも知られちゃいけないの。」
シロクン  「確かにそれは必要だな・・・
        こうしよう。秘密の隠れ場所や逃げ道で、いい考えを思い付いたら、
        誰にも言わずに、おれに知らせてほしい。」
ハニサ  「あれ? テイトンポがウサギを持って帰ってきた。」
シロクン  「どうしたんだ? そのウサギ。」
テイトンポ  「サチに狩らせた。サチはものになるぞ!」
ヤッホ  「テイトンポが藪をつついたらそいつが飛び出したんだ。
      月明りの中で見てたら、そいつはどうやら、樹の向こうの藪に逃げ込んだ。
      テイトンポはサチに、そこを動かずに今のウサギを狩ってみろって言ったんだ。
      だけど間に樹があるだろう? おれは無理だと思ったんだよ。  
      藪のどの辺にいるのかも判らないし、なにしろ暗くてさ。
      そしたらサチが、カブテをグルグルやって放り投げたんだ。
      カブテは樹の上を飛び越えて、藪に落ちた。
      そこまではおれにも見えたが、サチはその時ハッキリと、掛かったって言ったんだ。
      見に行くと実際に掛かってたから、おれはぶったまげたんだ。」
テイトンポ  「シロクンヌ、左手で投げる訓練もさせた方がいいぞ。」
シロクン  「そうか! そうだな。両方やるのが、大事かも知れん。」
テイトンポ  「サチは判断力もあるし、勘が鋭い。そして何より良いのは、夜目が利く事だ。
        一月後、おまえとタカジョウと旅に出るだろう?
        サチは、足手まとい所か、その時には、おまえら二人の力になるはずだ。
        そしてアヤのイエは、この先おまえやアマテルの大きな支えになる。
        シロクンヌ、サチはそういうつもりで、今毎日を過ごしているんだぞ。」
 
 
 
登場人物 シロクン 28歳 タビンド 特産物を遠方の村々に運ぶ シロのイエのクンヌ  ササヒコ 43歳 ウルシ村のリーダー  ムマヂカリ 26歳 ヒゲの大男   ヤッホ 22歳 ササヒコの息子   ハギ 24歳 ヤスが得意  タホ 4歳 ヤッホとヤシムの息子 ヤシムと暮らしている  タヂカリ 6歳 ムマヂカリとスサラの息子  クマジイ 63歳 長老だが・・・  テイトンポ 40歳 シロクンヌの師匠 その道の達人   クズハ 39歳 ハギとハニサの母親   タマ 35歳 料理長  アコ 20歳 男勝り テイトンポに弟子入り   ヤシム 24歳 タホの母親  ハニサ 17歳 土器作りの名人 シロクンヌの宿   スサラ 25歳 ムマヂカリの奥さん  ヌリホツマ 55歳 漆塗り名人 巫女  ホムラ 犬 ムマヂカリが可愛がっている

      

追加アシヒコ 56歳 アユ村のリーダー  マグラ 27歳 アユ村の若者  カタグラ 24歳 マグラの弟  フクホ 50歳 アシヒコの奥さん  マユ 25歳 アユ村の娘  ソマユ  19歳 マユの妹  サチ 12歳 孤児 シロクンヌの娘となる アヤクンヌ      エミヌ 18歳  オジヌ 16歳 エミヌの弟  カイヌ 14歳 オジヌの弟    モリヒコ シカ村のカミ  サラ 17歳 スサラの妹 ハギとトツギとなる ヌリホツマの弟子  ナクモ 18歳 エミヌの友人  シオラム 41歳 ササヒコのすぐ下の弟 塩作りの加勢のためシオ村で暮らす 5年に一度、里帰りする  ナジオ 20歳 シオラムの息子 シオ村生まれ  タカジョウ 23歳 ワシ使い  ホコラ 洞窟暮らし 哲人  シップ オオイヌワシ タカジョウが飼っている  エニ 38歳 エミヌ姉弟の母   カヤ アマカミの使者  シラク 北のミヤコのシロのムロヤの責任者  マシベ フジのシロの里の者 ヲウミのシロの村との連絡係り  トモ フジのシロの里の者 

   

用語説明 ムロヤ=竪穴住居  大ムロヤ=大型竪穴建物  カミ=村のリーダー  コノカミ=この村のリーダー           グリッコ=どんぐりクッキー  黒切り=黒曜石  神坐=石棒(男性器を模した磨製石器)  塩渡り=海辺の村が作った塩を山の村に運ぶ塩街道があった。ウルシ村から東にシカ村→アマゴ村・・・七つ目がシオ村  御山=おやま。ウルシ村の広場から見える、高大な山々  コタチ山=御山連峰最高峰  トコヨクニ=日本  蚊遣りトンボ=虫除けオニヤンマ ここではオニヤンマの遺骸に竹ひごを刺し、竹ひごをヘアバンドで頭部に固定する  トツギ=一夫一婦の結婚  眼木=めぎ 眼鏡フレーム 曲げ木工房で作っている  クンヌ=イエの頭領  吊り寝=ハンモック  一本皿=長い丸太を半分に割いて作ったテーブル。一本の木から2本取れるが、一本皿と呼ばれている。  一回し=長さの単位 70㎝  半回し=35㎝ 縄文尺とも呼ばれる。  カラミツブテ・カブテ=狩りの道具。コブシ大の二つの石を紐でつなげた物。

 

 

第134話 20日目②

 

 

 

          祈りの丘。サルスベリの樹の近く。続き。

 
ササヒコ  「なるほど! そういう事か。
       一ヶ所に固まって何百人も住めるようにするのは無理でも、小さな丘ならたくさんある。
       ここから半日くらいの距離で、村が作れそうな丘はいくつかあるな。
       雨の後に穴を掘って、水が湧く場所ではムロヤはできん。
       しかし湧き水か、川が近くになければ不自由だ。
       それらの条件を満たしそうな場所はいくつかある。
       その気になって探せば、かなりあるはずだ。」
シロクン  「狩り場はどうだ?」
ササヒコ  「川魚は問題無かろうな。鳥も問題ない。
       シカ、イノシシは、狩り過ぎると根絶やしになるが・・・」
ヌリホツマ  「畑を作ればよかろう、オオ豆などの。」
クズハ  「そうよ。オオ豆、ソバ、ヒエ、ウリ・・・
      特にオオ豆なんて、いっぱい作っちゃえばいいのよ。
      日持ちするんだから。」
シロクン  「サチ、ミヤコに畑はあるのか?」
サチ  「あるけど、少し離れてる。
     ヒョウタンとゴボウ、それからアズキはいっぱい作ってる。」
ササヒコ  「やはり、ここらの物とは違うのだな。
       とにかく、丘の上に村、その下に畑を作れば、食うには困らんか。」
ヌリホツマ  「つまりは、ミヤコと言うよりも、ミヤコ圏とでも言ったものじゃな。
        サチが言うように、何百人もが一ヶ所に住もうと思えば永い年月が必要じゃろうが、
        50人の村であれば数年でできる。」
テイトンポ  「しかし誰かがその丘を開拓せねばならんが、それはどうする?」
サチ  「おじちゃん、それはアヤのイエの者がやるよ。
     ハニのイエと協力しながら。
     アヤのイエはそういうイエなの。
     ミヤコの整備が役目の一つだから。」
テイトンポ  「そうなのか! よくできたもんだなあ。」
シロクン  「ハニのイエと言うのもあるのか?」
サチ  「イエは他に、ウツホのイエ、ヒのイエ、ミズのイエがあるの。
     カヤはウツホのイエの人で、アマカミの補佐をするのが役目なの。」
ハニサ  「アマカミとカヤは、別のイエなんだ。
      ハニのイエはどんなイエ?」
サチ  「土木とか樹とかに詳しいの。
     海の向こうから、竹を取って来たのもハニのイエの人達。
     ミズのイエの人が、舟を出したの。」
テイトンポ  「竹を取って来たとは?」
サチ  「竹林ってミヤコには無いから、私、こっちで初めて見たんだけど、
     竹はもともと、トコヨクニには生えてなかったの。」
ヌリホツマ  「本当か!」
シロクン  「驚いたな・・・西に行けば、竹林だらけだぞ。」
サチ  「竹だけじゃないよ。
     エゴマや麻だって、ハニのイエの人が海の向こうに取りに行ったんだよ。」
ハニサ  「えー! もともと生えていたんじゃないんだ。」
ササヒコ  「そうだったのか!」
シロクン  「驚きの連続だな・・・
        ミヤコの話に戻すと、あとは塩か。塩の渡りをどうするか?だな。」
ササヒコ  「ふむ・・・シオラムに聞いてみるか。」
シロクン  「サチ、シオラムを呼んで来てくれ。
        今までの事を説明しながらな。」
サチ  「はい。」走って行った。
テイトンポ  「ではミヤコの件は少し置くとして、もう一つの問題はハニサの護りだ。
        シロクンヌはどう考えている?」
ハニサ  「あたし、危ないの?」
シロクン  「光の子をアマカミにしたくない奴等はいる。ハタレだ。
        それに光の子を宿しているのが美人だとなれば、ハニサを連れ去って、
        寄ってたかって犯そうと考えるだろうな。」
ハニサ  「えー! 嫌だ!」
シロクン  「だから、そうさせん様に備えておく。
        おれがいる時はいいが、旅立った後、どうするかだな。
        さっきトモとマシベに尋ねたら、シロの里にイナという女がおるそうだ。
        歳は30でなかなかの使い手らしいから、ハニサのムロヤに住まわせようと思う。」
ササヒコ  「子はおらんのか?」
シロクン  「12歳の息子と二人住まいらしいが、ちょうど男ムロヤの話が出ておるそうだ。」
ササヒコ  「そのイナが来たとして、それだけでは足りんだろう?」
テイトンポ  「昼間はオジヌが適任かも知れん。
        アコから聞いたが、以前、マツタケ山でハニサを護ったそうだな?」
シロクン  「オジヌに会ったのか?」
テイトンポ  「昨日、アコと背中合わせをやらせてみた。
        何度もアコに子供扱いされて泣いておったが、あれは物になるぞ。」
ハニサ  「アコってそんなに強いの?」
テイトンポ  「それを訓練した者と、しておらん者との違いだ。
        オジヌが訓練すれば、すぐにアコに勝つ。
        ハニサは昼は作業小屋だろう? オジヌもそこで木工をする。」
ハニサ  「うん。オジヌなら安心。」
シロクン  「ハニサ、おれはミヤコへの出立を早めようと思っている。
        その分、早く戻って来られるからな。いいだろう?」
ハニサ  「その方がいいよ。サチやタカジョウの事もあるし。」
ササヒコ  「いつ出立の腹積もりだ?」
シロクン  「そうだな・・・
        ハニサの護りの準備もあるし・・・
        一月後だな。」
テイトンポ  「なら一月の間、オジヌに特別に訓練を施してやるか。」
シロクン  「頼む。」
ヌリホツマ  「一月後なら、頼まれておった物も、どうにかこうにか間に合いそうじゃ。」
シロクン  「試作の櫛は見事だったな。」
ササヒコ  「あれはカヤが驚いておったぞ。
       ミヤコにも無いそうだ。
       おかげで、アマカミへいい献上品になった。」
クズハ  「それは、なんのお話?」
シロクン  「前に話していた髪飾りだよ。ハニサへの贈り物。
        その漆掛けを、ヌリホツマに頼んであるのさ。」
ヌリホツマ  「ただのウルシ掛けではないぞ。ヤコウ貝という・・・
        ま、見てのお楽しみじゃな。」
ハニサ  「あれね! どんなになるか楽しみ!
      あ! サチが帰って来た。」
 
シオラム  「凄い事になったな!」
ササヒコ  「そうなんだ。この辺り一帯、人が増えると思うが、
       塩をどうするかということになってな。」
シオラム  「それは心配いらんぞ。ミヤコへの塩だろう?
       アマカミが口にする塩なら作りたい・・・そう言う者が湧いて出るはずだ。
       そいつらの食い扶持分くらいは、ミヤコの村々で余剰が出るだろう?
       あとは塩渡りの道筋をつけるだけだ。」
 
 
登場人物 シロクン 28歳 タビンド 特産物を遠方の村々に運ぶ シロのイエのクンヌ  ササヒコ 43歳 ウルシ村のリーダー  ムマヂカリ 26歳 ヒゲの大男   ヤッホ 22歳 ササヒコの息子   ハギ 24歳 ヤスが得意  タホ 4歳 ヤッホとヤシムの息子 ヤシムと暮らしている  タヂカリ 6歳 ムマヂカリとスサラの息子  クマジイ 63歳 長老だが・・・  テイトンポ 40歳 シロクンヌの師匠 その道の達人   クズハ 39歳 ハギとハニサの母親   タマ 35歳 料理長  アコ 20歳 男勝り テイトンポに弟子入り   ヤシム 24歳 タホの母親  ハニサ 17歳 土器作りの名人 シロクンヌの宿   スサラ 25歳 ムマヂカリの奥さん  ヌリホツマ 55歳 漆塗り名人 巫女  ホムラ 犬 ムマヂカリが可愛がっている

      

追加アシヒコ 56歳 アユ村のリーダー  マグラ 27歳 アユ村の若者  カタグラ 24歳 マグラの弟  フクホ 50歳 アシヒコの奥さん  マユ 25歳 アユ村の娘  ソマユ  19歳 マユの妹  サチ 12歳 孤児 シロクンヌの娘となる アヤクンヌ      エミヌ 18歳  オジヌ 16歳 エミヌの弟  カイヌ 14歳 オジヌの弟    モリヒコ シカ村のカミ  サラ 17歳 スサラの妹 ハギとトツギとなる ヌリホツマの弟子  ナクモ 18歳 エミヌの友人  シオラム 41歳 ササヒコのすぐ下の弟 塩作りの加勢のためシオ村で暮らす 5年に一度、里帰りする  ナジオ 20歳 シオラムの息子 シオ村生まれ  タカジョウ 23歳 ワシ使い  ホコラ 洞窟暮らし 哲人  シップ オオイヌワシ タカジョウが飼っている  エニ 38歳 エミヌ姉弟の母   カヤ アマカミの使者  シラク 北のミヤコのシロのムロヤの責任者  マシベ フジのシロの里の者 ヲウミのシロの村との連絡係り  トモ フジのシロの里の者 

   

用語説明 ムロヤ=竪穴住居  大ムロヤ=大型竪穴建物  カミ=村のリーダー  コノカミ=この村のリーダー           グリッコ=どんぐりクッキー  黒切り=黒曜石  神坐=石棒(男性器を模した磨製石器)  塩渡り=海辺の村が作った塩を山の村に運ぶ塩街道があった。ウルシ村から東にシカ村→アマゴ村・・・七つ目がシオ村  御山=おやま。ウルシ村の広場から見える、高大な山々  コタチ山=御山連峰最高峰  トコヨクニ=日本  蚊遣りトンボ=虫除けオニヤンマ ここではオニヤンマの遺骸に竹ひごを刺し、竹ひごをヘアバンドで頭部に固定する  トツギ=一夫一婦の結婚  眼木=めぎ 眼鏡フレーム 曲げ木工房で作っている  クンヌ=イエの頭領  吊り寝=ハンモック  一本皿=長い丸太を半分に割いて作ったテーブル。一本の木から2本取れるが、一本皿と呼ばれている。  一回し=長さの単位 70㎝  半回し=35㎝ 縄文尺とも呼ばれる。  カラミツブテ・カブテ=狩りの道具。コブシ大の二つの石を紐でつなげた物。