旅編第1話~旅編第10
三本の樹の近く。続き。 シロイブキ 「ふむ。おおむね、おれ達が相談して出した結論と同じだ。 コノカミは只者じゃないなあ。 まあそれで、イエの者の案内で、 おれはハグレの中に3人いた若い女を調べようと動いた。 その一人目だ。」 シロクンヌ 「見つか…
三本の樹の近く。 シロクンヌ 「村で何かあったのか?」 シロイブキ 「ではまずそっちから言うか。 ウルシ村もアユ村も、村人は無事だそうだ。怪我人も出ておらん。 ただ、建物には被害が出たようだ。 それからシロのイエの者も、全員無事だ。 ほっといて治…
早朝の下の温泉。 シロクンヌ 「お、先客がおるな。」 タカジョウ 「やっぱり湯煙もうもうで、雰囲気が出ておるぞ。」 タエ(43歳・女) 「こっちこっちー。」 トミ(40歳・女) 「シロクンヌー、一緒に入ろうよー。」 チヅ(36歳・女) 「タカジョー、こっ…
寝所のムロヤ。 シロクンヌ達4人と、セリがいる。 サチ 「父さん見て!」 眼木のフレームが緑色にキラキラ輝いている。 シロクンヌ 「お!綺麗だな!どうやったんだ?」 ミツ 「私もあるよ!」 タカジョウ 「分かったぞ。タマムシだろう? タマムシの翅(は…
下の温泉。 セリ(11歳・女) 「潜りっこしよう。一番長く潜っていた人が勝ちね。 いくよ。せーのっ!」 セリ、サチ、ミツの3人が、一斉に温泉に潜った。 タカジョウ 「ハハハ、絶対、サチが一番だぞ。」 シロクンヌ 「子供はすぐに仲良くなる(笑)。 それ…
リンドウ村の入口。 タカジョウ 「あそこには3人住んでいたらしいが、どうだった?」 シロクンヌ 「駄目だ。3人共殺されて、この先の濁流の川に流されたようだ。 酷い話だぞ。 昨日の夕方、6人であのムロヤの前を通りがかったらしい。 そしたらちょうどム…
翌朝。野営地。 タカジョウ 「渓流を見に行ったが、渓流どころか荒れ狂う濁流だ。」 シロクンヌ 「山の様子も、昨日とは全然違う。相当な台風だったな。 小屋が無事で良かったよ。 この3本の樹のお陰だ。 お神酒を捧げたいが、持ち合わせが無いからなあ。」…
夜中の避難小屋の中。続き。 シロクンヌ 「少し長い話になるぞ。 あれはおれがまだ20歳の時だ。 タビンドとしても、まだ駆け出しだな。 カワセミ村を訪れたのは、その時が二度目で、村の衆ともそこそこ打ち解けていた。 カワセミ村を最初に訪れた時に、ひ…
野営地。続き。 シロクンヌ 「きーのーみーたーまーにーもーうーしー・・・」 タカジョウ 「まだ雲は出ておらん星空だが、風が出て来たな。」 シロクンヌ 「なま温かい風だ。シップウの様子は?」 タカジョウ 「落ち着かん感じだ。間違いなく台風だと思うぞ…
スワの湖上。 シロクンヌ 「スイスイ進むなぁ。」 ナジオ 「大人5人で漕ぐよりも速いよ。 シロクンヌは分かるが、タカジョウがこんなに巧く漕ぐとはな!」 サチ 「私、こんなに速い舟に乗ったの、初めて。」 ミツ 「私も! サチ、私達、漕がない方が速いん…