第111話~第120話
いろり屋。 クマジイ 「ハニサの器じゃ。村の宝じゃ。割るでないぞ。」 オジヌ 「丁寧に扱ってるよ。 こんなに洗い物があるんだぞ。クマジイも手伝ってくれよ。」 クマジイ 「わしは手が震えるじゃろ。 落とらかして割ってしもうたら取り返しがつかんじゃろ…
アケビの谷。 サチ 「父さん、凄いね!」 エミヌ 「アハハハハ! シロクンヌ、丸まるとしちゃって、面白いよ。 歩けるの?」 シロクンヌ 「歩けるさ。手首から先が出ているから、カブテだって使えるぞ。 しかしたくさん採ったものだな。 枯らすような採り方…
夕食の広場。 ハニサ 「サチは、最初から、熊の足が狙いだったの?」 サチ 「そう。崖と樹と樹の根っこが見えたから、ふと思い付いたの。 エサもあったから。」 ヤッホ 「おれ達は落とし穴と言えば、 獲物の体全部を落とさなきゃいけないと思い込んでいたか…
ハニサのムロヤ ハニサ 「あたし、ふわふわしてる。」 シロクンヌ 「どうした? 気分が悪いのか?」 ハニサ 「逆だよ。なんだか幸せ。だからふわふわしてるの。」 シロクンヌ 「粘土搗き、本当にしなくていいのか? おれが一人でやって来ようか?」 ハニサ …
朝のいろり屋。外は激しい雨だ。 シロクンヌ 「オジヌ、ちょっと来てみろ。」 オジヌ 「おはよう。どうしたの?」 シロクンヌ 「ほら、これをやるよ。三つある。」 オジヌ 「これは・・・歯? こないだのサメの歯に似てるけど、こっちのはギザギザがあるね。…
大ムロヤ。祝宴のゆうげ。 ササヒコ 「今日、ハニサがシロクンヌの子を宿したことが分かった。 みんなも見たであろう。 その子は、光の子だ。 芽吹いたばかりの命が、あふれんほどの光を放ち、渦を作って見せたのだ。 しかもその子は、父親であるシロクンヌ…
大ムロヤ。魂写し(たまうつし)の儀。 ハニサは神域に床を延べている。 線の手前には、シロクンヌ、サチ、ハギ、サラ、ヤッホ、ムマヂカリ、エミヌ、 そして大ムロヤで寝泊まりしているシオラムとナジオの姿があった。 当時において、出産は女性にとって、命…
大ムロヤ。魂写しの儀。続き。 シロクンヌ 「怖い思いをしたのは、いつ頃の話なんだ?」 ハニサ 「あたしが12歳の時。」 シロクンヌ 「5年前だな。それが原因でオジヌと口をきかなくなったのかな?」 サチ 「その頃のオジヌは、ハニサは護ってあげなくち…
大ムロヤ。魂写しの儀。続き。 ヤッホ 「それで叔父さん、祭りの時には何があったの?」 シオラム 「どうしたもんかな・・・ おれが言ってしまっていいのだろうか? ハニサは嫌だったというよりも、怖かったのだよな?」 ハニサ 「そう。怖かったの。 何があ…
大ムロヤ。魂写しの儀。続き。 ハニサ 「あ!ここでは嘘を言っちゃいけないんだった!」 ヤッホ 「どうした? 思い出したのか?」 ハニサ 「うん! 思い出したよ。 全部思い出した! オジヌがあたしを抱いて旗塔からムロヤまで運んでくれたの。 そしてムロヤ…