縄文GoGo

5000年前の中部高地の物語

1話~30話

ムササビは骨しゃぶりで       第3話 初日③

広場。続き。 タマ 「コノカミ、鍋一つはここに置くよ。たしかシロクンヌとか言ったね。 男前だね。あたしはタマ。 前の村でもモテただろう。 遠慮せずに食べておくれよ。」 シロクンヌ 「実は腹ペコなんだ。しかしこの鍋の器、こんな器は見た事が無い! こ…

鹿肉は熟成で            第4話 初日④

広場。続き。 シロクンヌ 「美味かった!椀一杯で、この満足感か! ところで、大鍋(縄文土器)を見た時に、正直おれは度肝を抜かれたの だが・・・方々を旅して来たが、おれは今までに、こんなに見事な大 鍋を見たことが無い。 水煙渦巻紋深鉢 井戸尻考古館 …

グリッコの作り方 第5話 初日⑤

広場。続き。 シロクンヌ 「旨い!」 タマ 「旨いだろう。たくさんあるからね、遠慮はいらないよ。」 シロクンヌ 「この肉は、熟しだな。見事なこなれだ!それに、タレが最高だ!」 ハギ 「ムマヂカリが投げ槍でしとめた鹿だよ。 鹿笛の名人で、狩りの腕もい…

シロクンヌの土産 第6話 初日⑥

広場。続き。 シロクンヌ 「おいおいみんな、もう少し離れてくれ。袋から取り出せない。 ほら、まずこれがキッコ。グリッコの味付けや鍋料理にもいいぞ。」 ヤッホ 「キッコって何だ?」 シロクンヌ 「これは珍しいんだぞ。 南の島から舟で何日も掛けてたど…

大傑作水煙渦巻紋深鉢の作者 第7話 初日⑦

広場。続き。 クズハ 「コノカミ、私から、そうお願いしようと思っていたんですよ。 ハニサ、こっちに来なさい。」 顔を赤らめて、恥ずかしそうにハニサがクズハの横に立った。 みんなは思わぬ展開に、成り行きを見守っている。 まさか、あのハニサを?とい…

大ムロヤでなら薪が焚けます 第8話 初日⑧

夕食後の大ムロヤ(大型竪穴式建物)。 炉が二ヶ所あり、そこでは薪(まき)が焚けた。 使う薪は、クヌギが多かった。煙や煤(すす)が少ないからだ。 クヌギの樹は村に接してクヌギ林があり、そこでゆるやかな管理栽培がおこなわれていた。 クヌギは燃料にもなる…

ウルシ村の朝 第9話 2日目①

朝の広場。 季節は秋。高原の村の広場はまだ薄暗い。 しかし山々は赤く染まり、シロクンヌはそのあまりの美しさに、深く感動していた。 そこへ女が一人駆け寄ってきて、シロクンヌの前に立った。 ハニサ 「居たーー、おはよー!」 うれしそうだ。 シロクンヌ…

ウルシ村案内 第10話 2日目②

ハニサ 「これがどんぐり小屋。昨日、話題になってたでしょう。」 シロクンヌとハニサは、小屋に入った。 炉で薪が焚かれていて、周りに魚の串がたくさん刺してある。 シロクンヌ 「なるほど、奥が消し熾き(おき)の置き場になってるんだな。」 ハニサ 「そう…

ハニサのムロヤはヤシロ? 第11話 2日目③

森の入口。 ササヒコ 「あれだ。立派であろう?」 シロクンヌ 「うん。あの槙の木(コウヤマキ)なら申しぶんない。 木目が真っ直ぐ通ってる。 世田谷区西澄寺のコウヤマキ Tripadvisorより こっちに倒せばそのまま地に着きそうだし、 地に着けば、後はおれ一…

グリッコ100 第12話 2日目④

シロクンヌとハニサは並んで、夕食の広場に向かっている。 子供 「遅い遅い~!シロクンヌ、早く~!」 子供達に引っ張られ、シロクンヌは広場の真ん中に連れて行かれ、子供達に囲まれた。 ハニサ 「こうなると思ってた。あたし、炊事の手伝いしてくるね。」…

ムロヤの中は流木アート 第13話 2日目⑤

ハニサのムロヤ。 ハニサ 「やったー!二人っきりだ。ねえ、お祝いしていい?」 シロクンヌ 「いいが、どうやるんだ?」 ハニサ 「あたしがやるから、シロクンヌは、そこでくつろいでくれてていいよ。 (台に明り壺を置き、灯を入れた。) これは、こうやるん…

コタチ山 第14話 3日目①

村で二度目の朝・・・昨日と同じように、広場で寄り添って朝食をとる二人。 ハニサ 「このグリッコ、おいしい!」 シロクンヌ 「旨いな!キッコが入ってる。」 ハニサ 「シロクンヌが持ってきてくれた、あれ?」 シロクンヌ 「そうだ。」 ハニサ 「怒らない…

ヌリホツマの予言 第15話 3日目②

ウルシ林。 ヌリホツマ 「漆櫛のことは、ササヒコからも頼まれておる。次の村への土産じゃな。 さて問題はこのヤコウ貝というやつじゃが・・・ 確かにうまく出来れば美しかろうが。」 シロクンヌ 「七つあるから、三つを使ってお願いしたい。 残りは好きに使…

オオ豆くずし 第16話 3日目③

森の入口の作業場。 ハニサ 「居たー!シロクンヌが、居たーーー!」 ハニサが駆け寄って来る。 ハニサ 「お弁当、持って来たよ。 いっしょに食べよ!」 シロクンヌ 「おいおい、びっくりしたぞ。来るって言って無かっただろう?」 ハニサ 「来ちゃダメだっ…

縄文海進 第17話 3日目④

夕食の広場。 ササヒコ 「海が離れて行くと聞くが、本当なのか?」 シロクンヌ 「ああ、本当だ。場所によって違うようだが、 ここから真東に行ったあたりでは、離れが速いんだ。」 クズハ 「そこを訪れたことはあるの?」 シロクンヌ 「ある。 いくつかの村…

鬼界カルデラ 第18話 3日目⑤

ハニサのムロヤ。 ハニサ 「ねえ、シロクンヌのこと、いろいろ知りたいの。 聞いたら迷惑?」 シロクンヌ 「迷惑じゃないさ。 何から言えばいい?」 ハニサ 「じゃあ、まず、生まれたところ!」 シロクンヌ 「ヲウミと言って、大きな湖があるところだ。 トコ…

シロクンヌの出自 第19話 3日目⑥

ハニサのムロヤ。続き。 ハニサ 「だって、最近、聞き集めた話にしては、詳しすぎるし、生々しかったもの。 それにあたし、何となく思ってた。 シロクンヌは特別なイエの生まれなんだろうなって。 そうなんだしょう?」 シロクンヌ 「そうだ。 火の山の事を…

急流にのまれたタホ 第20話 4日目①

森の入口の作業場。 シロクンヌは黙々と石斧を振るっている。 板も何枚か取れ、脚も何本か出来ている。 そこへハニサが血相を変えて走って来た。 ハニサ 「シロクンヌー!大変なのー!」 シロクンヌ 「何があった?」 ハニサ 「ヤッホの子が、飛び石から落ち…

シロクンヌと女達 第21話 4日目②

河原。続き みんな、タホの名を呼んでいる。 シロクンヌはタホにまたがって、胸を押している。 相変わらず、全裸だ。 シロクンヌの服は、タホの体を包んでいる。 やがてタホが水を吐いて、意識を取り戻した。 今度こそ、全員が歓声を上げた。 ヤシム 「あり…

ハニサとシロクンヌ 第22話 4日目③

ハニサのムロヤ ハニサ 「アーンアンアンアン、アーンアンアンアン」 大泣きしている。 シロクンヌ 「・・・・・」 ハニサ 「アーンアンアンアン、シロクンヌのバカー、アンアンアン」 シロクンヌ 「ハニサ、もう泣くなよ。」 ハニサ 「アンアンアン」 シロ…

ハギ受難の予感 第23話 4日目④

夕食の広場。 子供達が走り回っている。 タホの顔も見える。 「目出たい、目出たい♪ 目出たい、目出たい♪」 クマジイとヤッホが、目出たい踊りを踊っている。 タマ 「鴨鍋があがったよー」 鍋を持ってやってきた。 ササヒコ 「タマ、そこに置いてくれ。みん…

雨のニオイと縄文農耕 第24話 4日目⑤

ハニサのムロヤ。 シロクンヌはムシロの上で、木を削っている。その背中に、ハニサが寄り添っている。 ハニサ 「あたし、シロクンヌの子が産めるんだね・・・」 シロクンヌ 「なんだ、あらためて。」 ハニサ 「あたし、幸せだ。 シロクンヌがいなくなっても…

雨の朝 イルカから灯油? 第25話 5日目①

朝のいろり屋。 タマ 「雨で肌寒いだろう?オオ豆くずしの出来立てだよ。」 ハニサ 「ありがとう。あつーい!ホックホク!あったまるね。」 シロクンヌ 「フーッ、フーッ、熱っ!美味いなー!出来立ては、格別に美味いんだな。」 ハニサ 「シロクンヌは、オ…

縄文ヒョウタン 作業小屋のハニサ 第26話 5日目②

作業小屋。 シロクンヌ 「本当だ。ハニサの言った通りだ。いろんなものが山積みになってるな。 ハニサはここで一人で居ることが多いのか?」 ハニサ 「そうだよ。あたし作業衣に着替えるね。 元々ここは男の人達の作業場だったの。弓矢を作ったり石斧を作っ…

エゴマと漆 どんぐり小屋のアコ 第27話 5日目③

どんぐり小屋。 アコ 「あ!シロクンヌ!」 シロクンヌ 「あ!すまん。邪魔してしまったか?」 アコ 「びっくりしただけだよ。邪魔とかじゃないよ。どうしたの?一人?」 シロクンヌ 「一人だ。」 アコ 「なにか用事だった?」 シロクンヌ 「そうではない。…

火おこしシロクンヌ流 第28話 5日目④

大屋根の下。 ヤッホ 「アニキ、待ってたぜ。さあ、ここに座ってくれよ。」 シロクンヌ 「ヤッホは鏃(やじり)作りか。お!意外に器用なんだな。」 子供達 「シロクンヌだー。お話聞かせてー。」 クズハ 「ちょうどよかった!シロクンヌ、服が編めたからちょ…

マツタケなんて食べ飽きた 第29話 5日目⑤

いろり屋。 ヤシム 「はい。熱いからヤケドしないでね。」 椀を渡した。 シロクンヌ 「ああ、いただきます。」 ヤシム 「私も横に座っていい?」 シロクンヌ 「いいが、くっつかないでくれよ。」 ヤシム 「わかってるわ。これくらいなら、いいでしょう? タ…

テイトンポ登場 第30話 5日目⑥

いろり屋。続き。 ハニサ 「居たーーー! シロクンヌ、あたし探したんだよ! 気付いたら、居ないんだもん! ホムラが鳴いてたけど、ムマヂカリが、帰ってきたんでしょう?」 シロクンヌ 「ハニサ!びしょ濡れじゃないか!」 ハニサ 「雨が降ってるからだよ。…