縄文GoGo

5000年前の中部高地の物語

31話~60話

魂堺の鹿 第31話 5日目⑦

大ムロヤ。歓迎の宴。 「目出たい目出たい♪目出たい目出たい♪」 クマジイとハギが目出たい踊りを踊っている。 ハニサ 「ねえテイトンポ、15歳のシロクンヌって、どんなだったの?」 テイトンポ 「泣きベソでな、泣くと必ず、ハナをたらしておったな。」 ハ…

山の裏側を見る男 第32話 5日目⑧

大ムロヤ。歓迎の宴。続き。 ヤシム 「ところでテイトンポ、来た時いきなり『子供は救ったのか?』って言ったでしょう? 子供ってウチのタホのことよね。あれはどういう事だったの?」 テイトンポ 「<見立て>を見たからだ。 <見立て>の大きさから、流された…

シロのイエのクンヌ 第33話 5日目⑨

ハニサのムロヤ。 シロクンヌはムシロにあぐらをかいて、髪飾りを削っている。 その背中に、ハニサが寄りかかっている。 ハニサ 「テイトンポの訓練って、厳しかったの?」 シロクンヌ 「厳しかったぞ。今、生きているのが不思議なくらいだ(笑)。 だけど不思…

蚊遣り葉の木? 第34話 6日目①

朝の広場。 ヤッホ 「アニキー、遅いよー、みんな待ってるんだ。」 シロクンヌ 「すまんすまん。寝坊した!」 ハギ 「ハニサ、なにやってんだよ!」 ハニサ 「ごめんなさい!寝坊しちゃった!」 ムマヂカリ 「ま、そうゆうことも、あるな。」 ニヤニヤしてい…

昆虫食はお好き? 第35話 6日目②

森の入口の作業場。続き。 テイトンポ 「ではアコよ、その樹の根元を、一心不乱に掘れるか? 出来るなら、やってみよ。道具は、使ってもよいぞ。」 アコは、鹿の角を使って、一心不乱に掘っている。 テイトンポ 「幼虫が出てきたな。そいつは取り分けろ。そ…

秘伝・ガッチン漁! 第36話 6日目③

森の入口の作業場。お昼前。 向こうの方から、ハニサとクズハが一緒にやって来る。 その後方に、アコやムマヂカリ、ササヒコ、みんなの顔が見える。 ハニサ 「シロクンヌー。来たよー。」 シロクンヌ 「ハニサ!」 ハニサは貫頭衣の作業衣のままだ。 手には…

秘技・らせん剥ぎ 第37話 6日目④

森の入口の作業場。昼食。 臼の材料である丸太を立て、切り口に焼き石をのせ、そこを焦がしてはコゲを削り取り、 また焦がしては・・・ そうやって窪ませて、臼を作る。 今はその途中なのだが、二つの丸太は適度に離れて置かれ、 窪みには焼き石がのせられ、…

ハニサが光った! 第38話 6日目⑤

森の入口の作業場。続き。 ハニサ 「あたし、焚火のこの辺の場所、使ってもいい?」 シロクンヌ 「いいよ。そこなら邪魔にもならないから。器やるのか?」 ハニサ 「そう。灰でまず乾かして、それからちょっと焼く。」 シロクンヌ 「出来上がりが楽しみだな…

木を曲げる? 第39話 6日目⑥

夕食後。大ムロヤ ササヒコ 「疲れているところを、集まってもらってすまない。 祭りが近付いた。 手の空いている時は、祈りの丘の草むしりをよろしく頼む。 今日、シロクンヌの作業場で、臼二つと杵四つができた。 臼は、どんぐり小屋と作業小屋に一つずつ…

温泉に行こう! 第40話 7日目①

早朝の広場。 シロクンヌとハニサは、並んで朝食をとっている。 シロクンヌ 「今日もいい天気だな。コタチ山が、ハッキリ見える。」 ハニサ 「今日はずっとシロクンヌと一緒にいられるね! なんだかうれしい! お弁当持って行こうね。」 シロクンヌ 「あれ作…

木曲げ工房用地選定 第41話 7日目②

川の飛び石のそば。 テイトンポ 「アコならどこに作業場を作る?」 アコ 「シロクンヌが言ってた4本の樹って、これと、これと、これと、これじゃないかな・・・」 テイトンポ 「おそらく、そんなところだろうな。」 アコ 「でもこの川は、結構な暴れ川なん…

湖に沈んだ村の言い伝え 第42話 7日目③

森の入口のシロクンヌの作業場。 シロクンヌ 「どうだ? 上手い具合に焼き上がったか?」 ハニサ 「見て。あたしと、シロクンヌだよ。」 神像筒型土器 長野県富士見町 藤内遺跡出土 井戸尻考古館 シロクンヌ 「うん、これ見てると、背中がむずむずしてくるな…

出発前夜 第43話 7日目④

ハニサのムロヤ ハニサ 「シロクンヌ、お湯が沸いた。 あたしたちの器で、初めて沸かしたお湯だよ。 体を拭いてあげるね。」 シロクンヌ 「なんだかいつもより、さっぱりする気がするぞ。 さっきアコは、チビ共に大人気だったな(笑)。」 (アコは頭上に蚊…

出発!スワの湖へ 第44話 8日目①

早朝の広場 ムマヂカリ 「干し肉だ。念のために持って行けよ。」 シロクンヌ 「すまんな。貰って行くよ。」 ササヒコ 「ヌリホツマからだ。革袋の中は漆櫛だ。五つある。 どこかの村で世話になったら、渡してくれ。 軽いし、荷物にもならんだろう?」 シロク…

中継地点・見晴らし岩 第45話 8日目②

下の川沿いの、荒れた道。道幅は一人分だ。 ハニサはシロクンヌにおぶわれている。 特製の革製おんぶ帯を使っているから、ハニサは疲れないし、二人とも両手が空いている。 シロクンヌの大きな背負い袋は、腹側に掛けてある。 シロクンヌ 「痛くはないか?」…

ハタレの襲撃 第46話 8日目③

スワに向かう道。少しだけ、拓(ひら)けてきた。 ハニサ 「少し、拓けてきたね。もう近いのかな? ここならあたし、歩けるよ。」 シロクンヌ 「そうだな、じゃあここからは歩くか。」 ハニサ 「遠くに、旗が見えるね。 あ! あの丘に、ムロヤが一つあるよ。」…

アユ村へ 第47話 8日目④

さっき見えていた旗が近付いて来た。 この丘の上に、村があるようだ。 ハニサ 「あそこ、村があるんでしょう? あたしね、他の村に行ったことが無いの。」 シロクンヌ 「行ってみたいのか?」 ハニサ 「そう思ってたんだけど、さっきみたいな人がいたら嫌だな…

少女・サチ 第48話 8日目⑤

アユ村の出口。続き。 アシヒコ 「その子は?」 マグラ(27歳・男) 「まったく気の毒な子だ。 父親は殺され、母親と二人でさらわれたそうだ。 何日もムロヤに閉じ込められて、慰(なぐさ)み者になった挙句に、 母親は、三日前に病で亡くなったと言っておる。」 …

シロクンヌの涙 第49話 8日目⑥

谷の温泉。続き。 シロクンヌ 「サチ、おれもおまえも裸だ。抱きしめるぞ。 (サチを抱え上げ抱きしめた。サチも抱きついた。) どうだ?おれのここを見てみろ。 あいつらのようにはなっていないだろう?」 サチ 「はい。父さん、温かかった。」 シロクンヌ 「…

歓迎の夜宴 第50話 8日目⑦

アユ村の見晴らし広場。 シロクンヌを挟んで、ハニサとサチが座っている。 夕焼けで空は真っ赤だ。湖面も赤く染まっている。 ハニサ 「きれい・・・」 サチ 「私、夢の中にいるみたい。」 シロクンヌは二人の肩に手をまわした。 そうやって、太陽が山裾に沈む…

夜宴は続く 第51話 8日目⑧

見晴らし広場。夜宴の続き。 アシヒコ 「ところでシロクンヌや、今後の予定は決まっておるのか?」 シロクンヌ 「子宝の湯とやらがあると聞いたのだが・・・」 アシヒコ 「ここからさほど遠くはないぞい。 人気の湯じゃから道もしっかりしておる。」 マユ(25歳…

沈んだ村、談義 第52話 8日目⑨

見晴らし広場。夜宴の続き。 カタグラ 「お!その話題が出たな。 その話を始めるのは、おれが友蒸しの用意を終えてからにしてくれよ(笑)。」 ハニサ 「何かあるの?」 ソマユ 「その話題は、みんな熱くなるのよ。」 ハニサ 「そうなんだ。じゃあ待ってるね。 あ…

不思議少女サチ 沈んだ村を語る 第53話 8日目⑩

見晴らし広場。夜宴の続き。 カタグラ 「ハニサの手料理か! いただきます! ハフ、ハフ、旨い!」 ソマユ 「美味しい! ハニサ、後で作り方を教えて!」 ハニサ 「簡単だから、一緒に作ってみる?」 マグラ 「こりゃあ旨いな! ハニサ、もっと作ってくれよ!…

アユ村の裏は温泉 第54話 8日目⑪

裏の温泉。 シロクンヌ達は、それぞれが手火をかざして来ていてた。 手火立てを地面に挿し、その手火立てに手火を挟ませて、かがり火にしていた。 はかなげではあったが、目が慣れてしまえば、 その三ヶ所の手火の明りと星明りだけで、周りの様子は分かるの…

子宝の湯 第55話 9日目①

アユ村の近く。下弦の月明かりの道。 シロクンヌ 「ハニサ、眠そうだが大丈夫か?」 ハニサ 「うん。」 シロクンヌ 「背負うからな。どうせまだ暗い。背中で寝ていていいぞ。」 ハニサ 「うん。」 シロクンヌ 「サチ、寒くはないか?」 サチ 「はい。」 シロ…

シロクンヌの狩り 第56話 9日目②

三人は歩いて湖に向かった。 途中、シロクンヌは道をそれ、山の斜面を駆け登った。 一度姿が見えなくなったが、すぐに戻って来た。 大きな肉芽をつけたムカゴの蔓(つる)が腰に巻かれ、 手には背丈ほどの長さの、細い枝が握られていた。 ムカゴ 歩きながら枝…

大発見! 第57話 9日目③

湖畔。続き。 ハニサ 「すごい!あそこって、あの色が変わってた所?子宝の湯から見た時に。」 シロクンヌ 「そうだ。湖底は、やはり砂利だった。」 ハニサ 「深いの?」 シロクンヌ 「これくらいだ。」 真っ直ぐに立ち、片手を真上に伸ばした。 ハニサ 「サ…

曽根論争 第58話 9日目④

アユ村。 マグラ 「また随分な大荷物だな。 シジミがそんなに獲れたのか!」 シロクンヌ 「向こうじゃ鍋にできなかった。 これだけは、向こうで砂抜きしたから、 この水草といっしょにハニサに食べさせてやりたいんだ。 あとはみんなで食べてくれ。」 マグラ…

これが矢じり? 第59話 9日目⑤

見晴らし広場。焚火のそば。 ハニサ 「シジミ、美味しかった。あの水草と合うんだね。」 シロクンヌ 「うまかったな。シジミは精が付くぞ。」 ハニサ 「そうなの?そしたらまたシロクンヌが・・・」 シロクンヌ 「おれが、何だ?」 ハニサ 「だって昨日、サ…

沈んだ村の人々 第60話 9日目⑥

見晴らし広場。焚火のそば。続き。 シロクンヌ 「おれの見立てでは、この村はあっという間に沈んだんだ。」 ハニサ 「そこがあたしには、分からないの。なんでそんなふうに思うの?」 シロクンヌ 「これだけの物が出たからだよ。どれも見事な出来栄えだろう…