縄文GoGo

5000年前の中部高地の物語

61話~90話

アユ村の夜はふけて 第61話 9日目⑦

裏の温泉。星明りの中。 ソマユ 「もう明日、帰っちゃうんでしょう? 折角来たんだから、たっぷり温泉に浸からなきゃね。」 ハニサ 「気持ちいいね。サチも連れて来れば良かったかな。眠そうにしてたから・・・ 手火立てって、神坐のそばに立てるんだ。」 ソ…

一柱の神 第62話 10日目①

見晴らし広場。 早朝の焚火のそば。 広場には、朝もやが立ち込めていた。 ハニサは、毛皮の貫頭衣を着て丸太椅子に腰かけ、大きく脚を開いている。 太ももは、腰下まで剥き出しだ。 股の間には作業台があり、その上に朴(ほお)の葉一枚を敷き、そこで器を作っ…

さよならアユ村 第63話 10日目②

昼の見晴らし広場。 フクホ 「はい。シジミ鍋だよ。 ハニサが昨日、また食べたいって言っていたからねえ。」 ハニサ 「ありがとう。美味しそう。 あたし、シロクンヌにだまされるところだった。」 フクホ 「うん? どうかしたかい?」 ハニサ 「シジミって、…

帰り道 第64話 10日目③

帰り道。ハギの仕掛けがあった場所。 ハニサ 「あ! また魚が5匹入ってる。 湯も沸いてるし、兄さん今日ここに来たんだね。」 シロクンヌ 「ハギは気がつくよな。 トツギがうまく行くといいな。 サチ、ハニサの兄さんはハギって言って、 往きにもここで休憩…

オニヤンマ 姿を消す 第65話 10日目④

曲げ木工房。 アコ 「ハニサは日焼けしたね。 何だかまた綺麗になったんじゃない?」 頭上でオニヤンマが揺れている。 ヤッホ 「日焼けしたハニサもいいよな。」 ハニサ 「何がいいのよ。」 テイトンポ 「サチ、これを掛けてみろ。 試作品だが、似合えばやる…

葉っぱを付ける 第66話 10日目⑤

夕食の広場。続き。 タマ 「鹿肉やるよー! 例によって、ナマからだ。」 歓声が起きた。 ヤシム 「サチ、こっちにおいで。一緒に食べるよ。」 サチ 「はい!」 ヤッホ 「サチとハニサの毛皮の服、かっこいいけど、それどうしたんだ?」 サチ 「アユ村のカミ…

三日ぶりのムロヤ 第67話 10日目⑥

ハニサのムロヤ。 ハニサ 「疲れたでしょう? お湯が沸いたら、体を拭いてあげるね。」 シロクンヌ 「いやあ、なんだか久しぶりに帰って来たような気がする。」 ハニサ 「あたしも! ふつか空けただけなんだよね。」 シロクンヌ 「ここは落ち着くな。いいム…

祈りの丘で 第68話 11日目①

朝の広場。 サチ 「おはよう!見て!」 ハニサ 「かわいい!どうしたの、その服?」 サチ 「昨日、ヤシムが作ってくれた。父さん、私、似合ってる?」 シロクンヌ 「ああ、すごく似合ってるぞ。 ヤシム、これ、昨日作ったのか?」 ヤシム 「そうだよ。見直し…

オオカミの群れが 第69話 11日目②

昼の広場。 ヤシム 「サチ、お帰り。手を洗っておいで。鹿肉があるよ。」 サチ 「ただいま。お腹すいた。 どこで手を洗うの?」 ヤシム 「教えてなかったね。大屋根の向こうから下に降りて。 湧き水があるから。 溜まってる水で洗っちゃだめだよ。それは飲み…

死んだふり 第70話 11日目③

川向こうの森。続き。 アコ 「子供達は、無事だよ。全員、村にいる。」 シロクンヌ 「そうか! それなら良かった!」 アコ 「矢を取りに、村に戻ったら、スサラがいたんだ。 で、話を聞いてみたら、 ホムラがオオカミのフンを見つけたから、ホムラの先導で戻…

松ぼっくり あげるよ 第71話 11日目④

夕食の広場。 ハニサ 「臭い! シロクンヌ、なんでこんなに臭いの?」 ヤッホ 「ハニサ、アニキを責めるなよ。 アニキは、見事な演技でオオカミの腰を抜かしたんだぞ。」 ハギ 「あれは人間業ではなかったな。 多くの物を学んだよ。」 ムマヂカリ 「あんな関…

ハニサが臭う? 第72話 12日目① 

朝の広場 ヤッホ 「ハニサ、ちょっと臭うぞ。もっとあっちにいってくれ。」 ハニサ 「イーだ!」 ムマヂカリ 「シロクンヌ、体を休めろと、あれほど言っておいたのに、 祈りの丘の草を全部抜いたらしいな(笑)。」 シロクンヌ 「成り行きで、気合いが入ってし…

岩の温泉 第73話 12日目②

岩の温泉。 シロクンヌは、魚の串を鉢巻きに挿している。 以前、テイトンポがやったやり方だ。 シロクンヌ 「なるほど、岩だらけだ。これは岩の温泉と呼ぶしかないなあ(笑)。」 ハニサ 「ごめん。シロクンヌ、あたしまた寝てた。」 シロクンヌ 「いいさ。…

カワウソ漁 第74話 12日目③

下の川の上流 シロクンヌ 「地図で見ると、川のこの辺りみたいだ。 焚き火の匂いがするから、もう近いな。」 ハニサ 「向こうから走って来るの、サチじゃない?」 シロクンヌ 「サチだ。なんとか間に合ったみたいだな。」 サチ 「お帰りなさい。お姉ちゃんが…

番外 古墳の法則

『古墳とは天皇や豪族の墓で、当時は大きな盛り土を墓にするのが流行していて、権力の象徴でもあった。そのため権力者達は、生前から多くの民衆を使役し、高圧的に重労働を強いていた。』 と、このように学校で習った人が多いのではないでしょうか? ところ…

縄文ランプ 第75話 12日目④

夕食の広場。 ササヒコ 「みんな、聞いてくれ。 祭りは、いよいよあさってに迫った。 明日の夕食は、シカ村の方々とも、御一緒する。 そこからは、わし達も、お祭り気分になるだろう。 明日の夕刻までが、祭りの準備の仕上げだと思ってくれ。 今夜の酒は、禁…

ハニサ、一喝 第76話 12日目⑤

作業小屋のそばの焚火。 ササヒコ 「どうしたもんだろうかな・・・」 シロクンヌ 「ハニサ、明り壺は、何個あったんだ?」 ハニサ 「100個。今から作っても、間に合わない。粘土も足りない。」 ヤシム 「ヤッホ、私たちはとりあえず、あそこを片付けよう…

お祭り前日 第77話 13日目①

朝の広場。祭りの前日。 ササヒコ 「紹介する。わしの下の下の弟の息子達だ。 オジヌが16歳。 カイヌが14歳。 シロクンヌ、今日一日、助手に使ってくれ。」 エミヌ 「叔父さーん。タマが、私も行っていいって。 シロクンヌ、お話しするの初めてよね。私…

サルスベリの移植 78話 13日目②

飛び石のそばの川。 アコ 「あ! 先客がいた!」 シロクンヌ 「なんだ、アコも行水か?」 アコ 「汗かいたからね。入っていいかい?」 シロクンヌ 「ああ、気持ちいいぞ。 おれは粘土を掘ってきてな。 結構、難儀だったよ。」 アコ 「肩を揉んでやろうか?」…

次々と来客が 第79話 13日目③

曲げ木工房。 モリヒコ(男。シカ村のカミ) 「テイトンポー。テイトンポだろー。何をしておるのだー?」 テイトンポ 「おお! カミか。」 モリヒコ 「狼ではないぞ。」 テイトンポ 「相変わらず詰まらんシャレを言いおるな。」 モリヒコ 「ちっとも帰ってきや…

さあ、みんなで、スッポ抜き! 第80話 13日目④

大ムロヤ。 モリヒコ 「サチと言うのか。眼木(めぎ)を外すと、こんなにかわいらしい娘なのか。 眼木を掛けると、妖しい炎の精霊だ。 ササヒコ。この眼木、どこで手に入る?」 ササヒコ 「下で見たであろう。テイトンポの工房で、作っておる。」 モリヒコ …

にぎやかな夕食 第81話 13日目⑤

夕食の広場。 クマジイとヤッホが、目出たい踊りを踊っている。 シカ村の女達は、全員、眼木を掛けている。 ササヒコ 「みんな聞いてくれ。 シカ村から応援の衆が駆け付けてくれた。 夕食の後、明日の食事の下ごしらえを手伝ってくれる。 馴染みの顔も多いこ…

沈んだ村談義、再び 第82話 13日目⑥

夕食の広場。続き。 シロクンヌ 「サチ、アユ村の働きかけで、周りの村が合同で、沈んだ村の祭りをしてくれる。 ただ、今のままでは、どんな祭りをすればいいのか、分からないらしい。 これは、おまえにとっても大事なことだ。 地元の村の祭りが、一番の供養…

サチ、家伝を語る① 第83話 13日目⑦

夕食の広場。続き。 シロクンヌ 「ここでヌリホツマに聞いておきたい。 サチを見て、何か見えるか?」 ヌリホツマ 「見えはするぞよ。 サチは皆の者とは、違う。」 シロクンヌ 「不吉なものが、何か見えるか?」 ヌリホツマ 「不吉なもの? どういう意味じゃ…

サチ、家伝を語る② 第84話 13日目⑧

夕食の広場。続き。 サチ 「父さんは、村はあっという間に沈んだと言いましたが、そこが少し違います。 最初の地震では沈まなかった。 でも小屋は崩れて、地面もドロドロになってしまいました。 アヤをはじめ、20人の女達は全員、泥で身動きが取れなくなっ…

イワナの夜突き① 第85話 13日目⑨

いろり屋。女衆が下ごしらえの真っ只中だ。 タマ 「そんな話だったのかい。 しゃべった事もない女達を、身を挺して助けた男達じゃないか。 なんでそんな立派な男達に、殺し合いなんて濡れ衣をおっかぶらせたんだろうね?」 クズハ 「不思議よねえ。」 ヤシム…

イワナの夜突き② 第86話 13日目⑩

ビク 獲った魚を入れるカゴ 作者筆(照)ヤス 刺突具は鹿の骨製。持ち手部分の滑り止めは桜の皮。縄文人のヤスは一本刺しだった(と思う)。 ダケカンバの樹皮の灯火 左側に火をつけて川面を照らす 河原の基地~飛び石の川。 ハニサ 「ここに脱いだ履物を並…

イワナの夜突き③~それぞれの夜 第87話 13日目⑪

河原の基地 マグラ 「みんな戻ったのか?」 ハギ 「ヤッホ、エミヌ組がまだだな。」 カタグラ 「女神、ヤッホのビクってどれかな?」 ハニサ 「これ。この二つ。」 カタグラ 「ビクは全部で30で、今ヤッホが一個持ってるんだな。 って事は、ヤッホは3個。…

祭りの朝 第88話 14日目①

明り壺の祭り当日。朝の広場。 テイトンポ 「シロクンヌ、見てみろ!」 シロクンヌ 「ああ、テイトンポ、おはよう。お! オシャレしてるな(笑)。」 テイトンポ 「服もそうだが、これこれ。」 シロクンヌ 「草履か!」 ハニサ 「母さんが編んだんだね。」 テ…

サラ持参の生物 第89話 14日目②

祈りの丘。祭りの準備。 ムマヂカリ 「この囲い筒並べというのも、結構気を使うよな。 うっかり蹴倒したら割れてしまうかも知れんからな。 ・・・囲い筒の中の灯りは、ヌリホツマの漆ロウ。 明り壺にはエゴマ油。 両方とも、他の村では貴重品だぞ。 それを惜…