61話~90話
裏の温泉。星明りの中。 ソマユ 「もう明日、帰っちゃうんでしょう? 折角来たんだから、たっぷり温泉に浸からなきゃね。」 ハニサ 「気持ちいいね。サチも連れて来れば良かったかな。眠そうにしてたから・・・ 手火立てって、神坐のそばに立てるんだ。」 ソ…
見晴らし広場。 早朝の焚火のそば。 広場には、朝もやが立ち込めていた。 ハニサは、毛皮の貫頭衣を着て丸太椅子に腰かけ、大きく脚を開いている。 太ももは、腰下まで剥き出しだ。 股の間には作業台があり、その上に朴(ほお)の葉一枚を敷き、そこで器を作っ…
昼の見晴らし広場。 フクホ 「はい。シジミ鍋だよ。 ハニサが昨日、また食べたいって言っていたからねえ。」 ハニサ 「ありがとう。美味しそう。 あたし、シロクンヌにだまされるところだった。」 フクホ 「うん? どうかしたかい?」 ハニサ 「シジミって、…
帰り道。ハギの仕掛けがあった場所。 ハニサ 「あ! また魚が5匹入ってる。 湯も沸いてるし、兄さん今日ここに来たんだね。」 シロクンヌ 「ハギは気がつくよな。 トツギがうまく行くといいな。 サチ、ハニサの兄さんはハギって言って、 往きにもここで休憩…
曲げ木工房。 アコ 「ハニサは日焼けしたね。 何だかまた綺麗になったんじゃない?」 頭上でオニヤンマが揺れている。 ヤッホ 「日焼けしたハニサもいいよな。」 ハニサ 「何がいいのよ。」 テイトンポ 「サチ、これを掛けてみろ。 試作品だが、似合えばやる…
夕食の広場。続き。 タマ 「鹿肉やるよー! 例によって、ナマからだ。」 歓声が起きた。 ヤシム 「サチ、こっちにおいで。一緒に食べるよ。」 サチ 「はい!」 ヤッホ 「サチとハニサの毛皮の服、かっこいいけど、それどうしたんだ?」 サチ 「アユ村のカミ…
ハニサのムロヤ。 ハニサ 「疲れたでしょう? お湯が沸いたら、体を拭いてあげるね。」 シロクンヌ 「いやあ、なんだか久しぶりに帰って来たような気がする。」 ハニサ 「あたしも! ふつか空けただけなんだよね。」 シロクンヌ 「ここは落ち着くな。いいム…
朝の広場。 サチ 「おはよう!見て!」 ハニサ 「かわいい!どうしたの、その服?」 サチ 「昨日、ヤシムが作ってくれた。父さん、私、似合ってる?」 シロクンヌ 「ああ、すごく似合ってるぞ。 ヤシム、これ、昨日作ったのか?」 ヤシム 「そうだよ。見直し…
昼の広場。 ヤシム 「サチ、お帰り。手を洗っておいで。鹿肉があるよ。」 サチ 「ただいま。お腹すいた。 どこで手を洗うの?」 ヤシム 「教えてなかったね。大屋根の向こうから下に降りて。 湧き水があるから。 溜まってる水で洗っちゃだめだよ。それは飲み…
川向こうの森。続き。 アコ 「子供達は、無事だよ。全員、村にいる。」 シロクンヌ 「そうか! それなら良かった!」 アコ 「矢を取りに、村に戻ったら、スサラがいたんだ。 で、話を聞いてみたら、 ホムラがオオカミのフンを見つけたから、ホムラの先導で戻…
夕食の広場。 ハニサ 「臭い! シロクンヌ、なんでこんなに臭いの?」 ヤッホ 「ハニサ、アニキを責めるなよ。 アニキは、見事な演技でオオカミの腰を抜かしたんだぞ。」 ハギ 「あれは人間業ではなかったな。 多くの物を学んだよ。」 ムマヂカリ 「あんな関…
朝の広場 ヤッホ 「ハニサ、ちょっと臭うぞ。もっとあっちにいってくれ。」 ハニサ 「イーだ!」 ムマヂカリ 「シロクンヌ、体を休めろと、あれほど言っておいたのに、 祈りの丘の草を全部抜いたらしいな(笑)。」 シロクンヌ 「成り行きで、気合いが入ってし…
岩の温泉。 シロクンヌは、魚の串を鉢巻きに挿している。 以前、テイトンポがやったやり方だ。 シロクンヌ 「なるほど、岩だらけだ。これは岩の温泉と呼ぶしかないなあ(笑)。」 ハニサ 「ごめん。シロクンヌ、あたしまた寝てた。」 シロクンヌ 「いいさ。…
下の川の上流 シロクンヌ 「地図で見ると、川のこの辺りみたいだ。 焚き火の匂いがするから、もう近いな。」 ハニサ 「向こうから走って来るの、サチじゃない?」 シロクンヌ 「サチだ。なんとか間に合ったみたいだな。」 サチ 「お帰りなさい。お姉ちゃんが…
『古墳とは天皇や豪族の墓で、当時は大きな盛り土を墓にするのが流行していて、権力の象徴でもあった。そのため権力者達は、生前から多くの民衆を使役し、高圧的に重労働を強いていた。』 と、このように学校で習った人が多いのではないでしょうか? ところ…
夕食の広場。 ササヒコ 「みんな、聞いてくれ。 祭りは、いよいよあさってに迫った。 明日の夕食は、シカ村の方々とも、御一緒する。 そこからは、わし達も、お祭り気分になるだろう。 明日の夕刻までが、祭りの準備の仕上げだと思ってくれ。 今夜の酒は、禁…
作業小屋のそばの焚火。 ササヒコ 「どうしたもんだろうかな・・・」 シロクンヌ 「ハニサ、明り壺は、何個あったんだ?」 ハニサ 「100個。今から作っても、間に合わない。粘土も足りない。」 ヤシム 「ヤッホ、私たちはとりあえず、あそこを片付けよう…
朝の広場。祭りの前日。 ササヒコ 「紹介する。わしの下の下の弟の息子達だ。 オジヌが16歳。 カイヌが14歳。 シロクンヌ、今日一日、助手に使ってくれ。」 エミヌ 「叔父さーん。タマが、私も行っていいって。 シロクンヌ、お話しするの初めてよね。私…
飛び石のそばの川。 アコ 「あ! 先客がいた!」 シロクンヌ 「なんだ、アコも行水か?」 アコ 「汗かいたからね。入っていいかい?」 シロクンヌ 「ああ、気持ちいいぞ。 おれは粘土を掘ってきてな。 結構、難儀だったよ。」 アコ 「肩を揉んでやろうか?」…
曲げ木工房。 モリヒコ(男。シカ村のカミ) 「テイトンポー。テイトンポだろー。何をしておるのだー?」 テイトンポ 「おお! カミか。」 モリヒコ 「狼ではないぞ。」 テイトンポ 「相変わらず詰まらんシャレを言いおるな。」 モリヒコ 「ちっとも帰ってきや…
大ムロヤ。 モリヒコ 「サチと言うのか。眼木(めぎ)を外すと、こんなにかわいらしい娘なのか。 眼木を掛けると、妖しい炎の精霊だ。 ササヒコ。この眼木、どこで手に入る?」 ササヒコ 「下で見たであろう。テイトンポの工房で、作っておる。」 モリヒコ …
夕食の広場。 クマジイとヤッホが、目出たい踊りを踊っている。 シカ村の女達は、全員、眼木を掛けている。 ササヒコ 「みんな聞いてくれ。 シカ村から応援の衆が駆け付けてくれた。 夕食の後、明日の食事の下ごしらえを手伝ってくれる。 馴染みの顔も多いこ…
夕食の広場。続き。 シロクンヌ 「サチ、アユ村の働きかけで、周りの村が合同で、沈んだ村の祭りをしてくれる。 ただ、今のままでは、どんな祭りをすればいいのか、分からないらしい。 これは、おまえにとっても大事なことだ。 地元の村の祭りが、一番の供養…
夕食の広場。続き。 シロクンヌ 「ここでヌリホツマに聞いておきたい。 サチを見て、何か見えるか?」 ヌリホツマ 「見えはするぞよ。 サチは皆の者とは、違う。」 シロクンヌ 「不吉なものが、何か見えるか?」 ヌリホツマ 「不吉なもの? どういう意味じゃ…
夕食の広場。続き。 サチ 「父さんは、村はあっという間に沈んだと言いましたが、そこが少し違います。 最初の地震では沈まなかった。 でも小屋は崩れて、地面もドロドロになってしまいました。 アヤをはじめ、20人の女達は全員、泥で身動きが取れなくなっ…
いろり屋。女衆が下ごしらえの真っ只中だ。 タマ 「そんな話だったのかい。 しゃべった事もない女達を、身を挺して助けた男達じゃないか。 なんでそんな立派な男達に、殺し合いなんて濡れ衣をおっかぶらせたんだろうね?」 クズハ 「不思議よねえ。」 ヤシム…
ビク 獲った魚を入れるカゴ 作者筆(照)ヤス 刺突具は鹿の骨製。持ち手部分の滑り止めは桜の皮。縄文人のヤスは一本刺しだった(と思う)。 ダケカンバの樹皮の灯火 左側に火をつけて川面を照らす 河原の基地~飛び石の川。 ハニサ 「ここに脱いだ履物を並…
河原の基地 マグラ 「みんな戻ったのか?」 ハギ 「ヤッホ、エミヌ組がまだだな。」 カタグラ 「女神、ヤッホのビクってどれかな?」 ハニサ 「これ。この二つ。」 カタグラ 「ビクは全部で30で、今ヤッホが一個持ってるんだな。 って事は、ヤッホは3個。…
明り壺の祭り当日。朝の広場。 テイトンポ 「シロクンヌ、見てみろ!」 シロクンヌ 「ああ、テイトンポ、おはよう。お! オシャレしてるな(笑)。」 テイトンポ 「服もそうだが、これこれ。」 シロクンヌ 「草履か!」 ハニサ 「母さんが編んだんだね。」 テ…
祈りの丘。祭りの準備。 ムマヂカリ 「この囲い筒並べというのも、結構気を使うよな。 うっかり蹴倒したら割れてしまうかも知れんからな。 ・・・囲い筒の中の灯りは、ヌリホツマの漆ロウ。 明り壺にはエゴマ油。 両方とも、他の村では貴重品だぞ。 それを惜…