106話 15日目②
朝の広場。続き。
シロクンヌ 「テイトンポ、出発するのか?」
テイトンポ 「ああ、シカ村の衆はもう一泊するようだが、アコと二人で出立する。」
ハニサ 「母さんは?」
アコ 「まだ、死んだように眠ってた。」
ハニサ 「・・・・・」
シオラム 「テイトンポ、戻ってきたら、おれに木曲げを教えてくれ。
シオ村で、やってみたい。」
テイトンポ 「教えるのは構わんが、おれは、帰ってきたらスッポンで手一杯かもしれん。
アコがおるが、アコにはスッポン池を掘らせようと思っておるし・・・」
シオラム 「分かった。それならおれが、そのスッポン池とやらを掘っておけばいいか?」
テイトンポ 「そうしてくれれば助かる。
戻り次第、アコには曲げ木をやらせるよ。
ハギ、サラを呼んできてくれ。
池のことは、サラが詳しいんだ。」
祈りの丘。
シロクンヌ 「もう片付けるんだなー。」
ナジオ 「もったいないよな。」
ハニサ 「一夜限りのお祭りだもの。しょうがないよ。」
クマジイ 「しかし、ようこんなものを一日でこしらえたもんじゃ。
勢いというのは、あるんじゃな。」
ハニサ 「ほんとだね。
あたし、あんなに高い所で作業してたなんて、今見てびっくりだよ。」
ヤッホ 「ハニサ、割れてもいいんだろう?」
ハニサ 「いいよ。どうせ粉々にするんだから。」
シロクンヌ 「水を加えて搗いて粘土に戻すなら、その時また手伝ってやるぞ。」
ナジオ 「シロクンヌは、優しいんだな。」
マグラ 「女神を護る、勇者だからな(笑)。」
供宴の場。早めの夕食。
居残り組がかなりいて、いまだ祭りの余韻覚めやらぬ、と言ったところだ。
翌日の早朝に出立する者が多いので、早めに宴を切り上げられるように、夕食の開始が早い。
料理は、祭り用の食材の残りだ。
クズハ 「こんなに沢山のグリッコ、全部あの人の分なの?」
クマジイ 「そうじゃ。」
ヤッホ 「出発を一日遅らせれば、腹一杯食えたのにな。」
シロクンヌ 「スッポンの事で、頭が一杯なんだよ。」
タカジョウ 「どうしたんだ?カタグラ。しょげ返ってるが。」
クマジイ 「カタグラ、しっかりせんかい!
気付けじゃ! ぐいっといけい!」
カタグラ 「すまん! おれのせいで。」 ぐいっといった。
ナクモ 「どうしたの?カタグラ、泣いてるの?」
子供達 「あー! お尻の兄ちゃんだ!」
「お尻の兄ちゃんが泣いてるー。」
「お尻の兄ちゃん、どうしたのー?」
「お尻の兄ちゃん、お尻出してー。」
カタグラ 「うるさい! あっちに行けい!」立ち上がって、叫んだ。
ナクモ 「カタグラ、お尻が出てるよ。」
場が、爆笑に包まれた。
その勢いをかって、その後しばらく、
カタグラは子供たちと尻出しオニゴッコをすることになる。
そして、フクホの陰に隠れた子供を捕まえようとして、
フクホから尻をハタかれ、つんのめって転び、そこでも大爆笑を巻き起こした。
ムマヂカリ 「カタグラの尻芸は、名人の域に達しておるな(笑)。
尻だけ出して、玉がこぼれ出んところが見事だ。
ところで、基地はどんな塩梅(あんばい)なんだ?」
ハギ 「色々調べたんだが、大雨で川が増水したとしても、二段までだと思うんだ。
昨日言ってた平らな場所は三段目だから問題ない。
湧き水もあるし、基地や休憩所にはもってこいの場所だ。」
シロクンヌ 「あの水は旨いんだ。」
ハニサ 「あの水、凄く冷たいよね!」
ハギ 「あの水は、真夏でも冷たいんだぞ。」
カタグラ 「そこより上となると、子供や年寄りは、登るに難儀する。タイラな所も狭い。
休憩所には、向かんな。
だからやはり、湧き水の場所に小屋を作ることにした。」
ナジオ 「そこは、どれ位の広さなんだ?」
タカジョウ 「広さで言えば、おそらくこの村の広場くらいだ。
広場を長細くした感じだな。」
エミヌ 「夜宴の時って、どこで寝るの?」
タカジョウ 「一つは吊り寝だ。
そこはミズナラのちょっとした林になっている。
吊り寝には格好の場所なんだ。
もう一つは、小屋だが、竪穴を掘ると水が湧くだろうから、
ムロヤではなく、掘っ立て小屋にしようと思っている。」