縄文GoGo

5000年前の中部高地の物語

祭りが終わり・・・ 第104話 14日目⑰

 

 

          ハニサのムロヤ。

 
ハニサ  「カタグラの踊り、本当に面白かったね。」
シロクン  「大笑いしたな。なんであいつは、あんなに上手に尻が出せるんだろうな?」
ハニサ  「手を使ってないよね?」
シロクン  「使ってないと思うぞ。すました顔で踊ってて、いつの間にか尻が出てるだろう?」
ハニサ  「アハハハハ。」
シロクン  「普段は女神とか言ってるくせに、ハニサの目の前で尻出して転んでたじゃないか。」
ハニサ  「アーッハッハッハ。お腹痛い。」
シロクン  「フクホの目の前で尻出して、思いっきり尻を叩かれてただろう?
        いい音がしたよな。」
ハニサ  「イーヒッヒ、やめて。手形が付いてたの思い出した!」
 
 
          供宴の場。
 
マグラ  「海の魚なんて、滅多に食えないからな。これはなんていう魚なんだ?」
ナジオ  「エボダイだよ。」
ヤシム  「サチが育った北のミヤコも、海のそばなんでしょう?」
サチ  「そうだよ。坂を下りたら、すぐに船着き場なの。」
ナジオ  「大灯台があるんだろう? 6本柱の。」
カタグラ  「ダイトウダイってなんだ?」
サチ  「旗塔の役目をするの。塔の上で火を燃やして、夜の海から見えるようにするんだよ。」
ナクモ  「夜に海に出るの?」
ナジオ  「夜の漁はあるんだ。そのグリッコに入ってる桜エビも夜じゃないと網にかからない。」
サチ  「ミヤコでは、北の島から夜に到着する人もあるの。
     だから船着き場は、一晩中賑わっているみたい。」
 
 
          灯りの樹のそば。
 
クマジイ  「星明りで見ても、白く浮かんでおるのう。よい祭りじゃった。
       ババのロウも、ようあそこまでもったもんじゃ。」
ヌリホツマ  「ジジや、見直したぞよ。
        ササヒコが褒美を問うた時、てっきり酒をせがむじゃろうと思うておったが、
        サルスベリ用の足場を作れとゆうておったな。
        来年の祭りには、ハニサを肩車する者がおらんと。」
クマジイ  「ハニサとこれを組み上げた。楽しかったんじゃ。」
 
 
          ハギのムロヤ。
 
ハギ  「ヌリホツマが言っていたシカの腱(けん)を使った実験って何かな?」
サラ  「シカの腱は知ってる。カラカラに干した後に湯に浸けて、糸を採るんだよ。
     半回し(35cm)位の長さの糸が、たくさん採れるの。」
ハギ  「へーそうなのか。いつもは犬達に食わしてた。コロの大好物だよ。
     その糸で何かを縫うって事だよな?」
サラ  「そうなるよね。何を縫うんだろう? 分かったら教えてあげるね。」
ハギ  「細い縫い針だけど、まず、適当な大きさのシカの骨を、薄くするところから始めるんだ。
     研いで、なるべく薄くする。次に、小さな穴を開ける。
     そしてその周りを、細くなるまで研ぐ。
     今、やって見せるよ。・・・
     なあ、サラ・・・」
サラ  「なに?」
ハギ  「スッポン、ありがとうな。」 サラを抱き寄せた。
 
 
          大ムロヤ。
 
アシヒコ  「いい祭りに呼んでもろうた。灯りの樹を囲んでの太鼓踊りは、忘れられんじゃろうな。」
フクホ  「カタグラは、相変わらず尻出してたから、はたいてやったよ。」
アシヒコ  「あやつ4歳からあれをやっておるな。」
 
モリヒコ  「アヤの村の話と言い、今日の灯りの樹と言い、
       ササヒコ、今年は素晴らしい祭りじゃった。アコのタレも旨かった。」
 
マスヒコ  「アヤの村の矢じりをノムラ爺さんに見せたら驚くじゃろうな。
       畑の鳥除けの作り方も勉強させてもうろうた。
       スサラは幸せそうにしておった。サラも幸せになるじゃろう。
       よい日にトツギが行えたわい。」
 
シオラム  「ハニサの器にはタマゲタぞ。おまけに塩街道一の美人になっておって。
       それから眼木というのか、あんな物まで作っておる。
       ウルシ村は栄えたな。
       兄貴、眼木は、塩の礼に持って来いだぞ。」
 
ヤッホ  「こことアユ村の中間に見晴らし岩があるだろ?
      今度そこで、マグラ達と夜宴をやる事になったんだ。
      それを父さんにも話しておこうと思ってね・・・」
 
 
          祈りの丘。
 
アコ  「寝転ぶと気持ちいいよ。星がきれいだ。」
タカジョウ  「今日は驚きの連続だったな。」
アコ  「タカジョウは、イエの人だったね。お父さんに会えるといいね。」
タカジョウ  「イエか・・・なんだか昨日までが、嘘みたいだ。
        シロクンヌなどは、ヒリヒリするような場面を、何度も経験しているんだろうな。」
アコ  「あたし、ハタレっていうのには、会ったこと無い。
     ハニサは相当、衝撃を受けたんだね。」
タカジョウ  「おれの生まれた村も、4人が殺されて、3人が行方知れずになったらしい。
        怪我人は10人以上だと言うから、とんでもない連中だ。」
アコ  「何もしてないのに、一方的に襲われたの?」
タカジョウ  「そう聞いている。いきなりだったらしい。
        狙いはおれの母で、罪の無い、多くの村人が巻き込まれた形だな・・・
        母はそれを、ずっと気に病んでいた・・・
        アコ、おれは今まで、何をやっていたんだろうな。
        シロクンヌの言った通りだ。おれの血が、おれに語りかけてくるよ。」
 
       ━━━ 縄文GoGo 明り壺の祭り編 完。━━━
 
ここまでお付き合い頂きまして、有難うございました。なお沈んだ村のお祭りですが、湖上火祭りとなる予定です。
 
 
登場人物 シロクン 28歳 タビンド 特産物を遠方の村々に運ぶ シロのイエのクンヌ  ササヒコ 43歳 ウルシ村のリーダー  ムマヂカリ 26歳 ヒゲの大男   ヤッホ 22歳 ササヒコの息子   ハギ 24歳 ヤスが得意  タホ 4歳 ヤッホとヤシムの息子 ヤシムと暮らしている  タヂカリ 6歳 ムマヂカリとスサラの息子  クマジイ 63歳 長老だが・・・  テイトンポ 40歳 シロクンヌの師匠 その道の達人   クズハ 39歳 ハギとハニサの母親   タマ 35歳 料理長  アコ 20歳 男勝り テイトンポに弟子入り   ヤシム 24歳 タホの母親  ハニサ 17歳 土器作りの名人 シロクンヌの宿   スサラ 25歳 ムマヂカリの奥さん  ヌリホツマ 55歳 漆塗り名人 巫女  ホムラ 犬 ムマヂカリが可愛がっている

      

追加アシヒコ 56歳 アユ村のリーダー  マグラ 27歳 アユ村の若者  カタグラ 24歳 マグラの弟  フクホ 50歳 アシヒコの奥さん  マユ 25歳 アユ村の娘  ソマユ  19歳 マユの妹  サチ 12歳 孤児 シロクンヌの娘となる アヤクンヌ      エミヌ 18歳  オジヌ 16歳 エミヌの弟  カイヌ 14歳 オジヌの弟    モリヒコ シカ村のカミ  サラ 17歳 スサラの妹 ハギとトツギとなる ヌリホツマの弟子  ナクモ 18歳 エミヌの友人  シオラム 41歳 ササヒコのすぐ下の弟 塩作りの加勢のためシオ村で暮らす 5年に一度、里帰りする  ナジオ 20歳 シオラムの息子 シオ村生まれ  タカジョウ 23歳 ワシ使い  ホコラ 洞窟暮らし 哲人  シップ オオイヌワシ タカジョウが飼っている  

   

用語説明 ムロヤ=竪穴住居  大ムロヤ=大型竪穴建物  カミ=村のリーダー  コノカミ=この村のリーダー           グリッコ=どんぐりクッキー  黒切り=黒曜石  神坐=石棒(男性器を模した磨製石器)  塩渡り=海辺の村が作った塩を山の村に運ぶ塩街道があった。ウルシ村から東にシカ村→アマゴ村・・・七つ目がシオ村  御山=おやま。ウルシ村の広場から見える、高大な山々  コタチ山=御山連峰最高峰  トコヨクニ=日本  蚊遣りトンボ=虫除けオニヤンマ ここではオニヤンマの遺骸に竹ひごを刺し、竹ひごをヘアバンドで頭部に固定する  トツギ=一夫一婦の結婚  眼木=めぎ 眼鏡フレーム 曲げ木工房で作っている  クンヌ=イエの頭領  吊り寝=ハンモック  一本皿=長い丸太を半分に割いて作ったテーブル。一本の木から2本取れるが、一本皿と呼ばれている。