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5000年前の中部高地の物語

光の丘の散策 第98話 14日目⑪

 

 

 

          祈りの丘。

 
ハニサ  「二人で丘を散歩しよう!」
シロクン  「綺麗だなー! まずは灯りの樹の近くまで行こうか。」
 
マグラ  「タホって言うのか。可愛いじゃないか。おじちゃんが抱っこしてやるぞ。」
ヤシム  「すごく綺麗ね。灯りの中を歩くのって素敵。」
マグラ  「あの灯りの樹、今日作ったなんて、信じられないな。」
ヤシム  「もっと向こうに行ってみましょうよ。」
 
サラ  「綺麗だね。灯りの樹を近くで見てみようよ。」
ハギ  「でももう、周りに人がいっぱいいるな。」
サラ  「ねえ、ハギって、ハチミツは好き?」
ハギ  「結構好きだぞ。疲れが取れるだろう?
     子供の頃は目が無かったな。大好物だった。たまにしか、舐めれなかったけどな。」
 
アシヒコ  「女神の樹じゃ。神の棲みかじゃ。」
フクホ  「綺麗なお祭りだねえ。見晴らし広場から見る夕焼けは、自然が作った美しさ。
      これは、人が作った美しさ。どっちも綺麗だねえ。」
アシヒコ  「人ではのうて、女神じゃぞい。」
 
クズハ  「あなた、なんで脚立を持って行くんですか?」
テイトンポ  「サチ、おじちゃんがいいもの見せてやるからな。」
サチ  「いいものって、なに?」
テイトンポ  「人の頭越しなんて嫌だろう?
        高いところから見た方が綺麗だぞ。
        クズハもおれがかかえて登ってやるからな。」
 
クマジイ  「どうじゃ、なかなかのもんじゃろう?」
ヌリホツマ  「ぬしにしては、良い出来じゃ。ハニサの働きに助けられてもおるがの。」
クマジイ  「口の減らんおなごじゃのう。ほい、ぐいっといけい。」
ヌリホツマ  「ぬしにも進ぜよう。よう働いた褒美じゃ。ぐいっといかっしゃい。」
 
タカジョウ  「テイトンポと言うのは、シロクンヌの師匠なのか?」
アコ  「そう。あたしは、テイトンポに子を宿してくれるようにお願いしたの。」
タカジョウ  「そうか。しかし、幸せそうで安心した。
        実を言えば、アコの事が気に掛ってはいたんだ。
        あの時だって連れ出したかったんだが、アコには大事なタレがあるからな。」
アコ  「うん。あたしだって行きたかったけど、あたしは村を離れられない。
     母さんから受け継いだタレは、村から出したら死んじゃうもん。
     ほら、あそこに女の人と女の子を肩に載せたまま、
     後ろ向きに脚立を登ってる人がいるでしょう?あの人がテイトンポ。」
タカジョウ  「なるほど、すごい男だな・・・
        実はまた、旅に出ようかと思ってるんだ。」
アコ  「ねえ、今だけ膝に寄り添ってもいい?」
 
スワの村々のカミ達  「うわさよりも、素晴らしい祭りであるな。
            それに女神というのをこの目で見ることができた。」
           「女神は美しかったのう。
            ところでわし達は、どんな祭りにするかのう。」
           「あのサチという娘も、アヤの血筋だけあって、
            しっかりしておって、ん?
            眼木の男の肩に乗ってはしゃいでおるのは、サチじゃな。
            まだあどけない娘なんじゃな。」
           「矢切り立つ  スワの湖  妻籠めに  矢頭作る  その矢頭を・・・
            アシヒコから聞いたこの歌、
            ホコラが即興で詠んだらしいが、心にしみる良い歌だ。」
 
スサラ  「綺麗ね。」
ムマヂカリ  「ああ、綺麗だな。」
 
エミヌ  「綺麗ねー。ねえ、カタグラって何歳なの?」
カタグラ  「24だよ。」
エミヌ  「独り者なんでしょう? 好きな女の子、いるの?」
カタグラ  「独りだ。好きなのは・・・」
ヤッホ  「ハニサだろう?」
カタグラ  「馬鹿言うな。ハニサは女神だぞ。」
ヤッホ  「でもエミヌは色々聞いているけど、カラグラに気があるのか?」
エミヌ  「ナクモの代わりに聞いてあげてるの。カタグラ、私もナクモも18歳だからね。
      ナクモ、もっとしゃべりなよ。」
 
 
          供宴の場
 
タマ  「鍋三つは沸いたね。
     栗実酒の甕(かめ)はこれを使うから、減ったらこれに継ぎ足すんだよ。
     アコのタレは、これだけで全部だからね。無駄遣い禁止だよ。
     ごみ箱(円筒形の樹皮に底を貼った物)は各所に置いたと・・・準備はできたね?
     よし! 太鼓を打っておくれ。」
ホコラ  「タマ、一区切り付いたか? 散策に行くぞ。」
タマ  「待たせたね。汗を拭きに、一度戻るよ。一緒に来るかい?」
ホコラ  「そうするか。」
 
    太鼓の音が大きく響いた。
 
 
登場人物 シロクン 28歳 タビンド 特産物を遠方の村々に運ぶ シロのイエのクンヌ  ササヒコ 43歳 ウルシ村のリーダー  ムマヂカリ 26歳 ヒゲの大男   ヤッホ 22歳 ササヒコの息子   ハギ 24歳 ヤスが得意  タホ 4歳 ヤッホとヤシムの息子 ヤシムと暮らしている  タヂカリ 6歳 ムマヂカリとスサラの息子  クマジイ 63歳 長老だが・・・  テイトンポ 40歳 シロクンヌの師匠 その道の達人   クズハ 39歳 ハギとハニサの母親   タマ 35歳 料理長  アコ 20歳 男勝り テイトンポに弟子入り   ヤシム 24歳 タホの母親  ハニサ 17歳 土器作りの名人 シロクンヌの宿   スサラ 25歳 ムマヂカリの奥さん  ヌリホツマ 55歳 漆塗り名人 巫女  ホムラ 犬 ムマヂカリが可愛がっている

      

追加アシヒコ 56歳 アユ村のリーダー  マグラ 27歳 アユ村の若者  カタグラ 24歳 マグラの弟  フクホ 50歳 アシヒコの奥さん  マユ 25歳 アユ村の娘  ソマユ  19歳 マユの妹  サチ 12歳 孤児 シロクンヌの娘となる アヤクンヌ      エミヌ 18歳  オジヌ 16歳 エミヌの弟  カイヌ 14歳 オジヌの弟    モリヒコ シカ村のカミ  サラ 17歳 スサラの妹 ハギとトツギとなる ヌリホツマの弟子  ナクモ 18歳 エミヌの友人  シオラム 41歳 ササヒコのすぐ下の弟 塩作りの加勢のためシオ村で暮らす 5年に一度、里帰りする  ナジオ 20歳 シオラムの息子 シオ村生まれ  タカジョウ 23歳 ワシ使い  ホコラ 洞窟暮らし 哲人  シップ オオイヌワシ タカジョウが飼っている  

   

用語説明 ムロヤ=竪穴住居  大ムロヤ=大型竪穴建物  カミ=村のリーダー  コノカミ=この村のリーダー           グリッコ=どんぐりクッキー  黒切り=黒曜石  神坐=石棒(男性器を模した磨製石器)  塩渡り=海辺の村が作った塩を山の村に運ぶ塩街道があった。ウルシ村から東にシカ村→アマゴ村・・・七つ目がシオ村  御山=おやま。ウルシ村の広場から見える、高大な山々  コタチ山=御山連峰最高峰  トコヨクニ=日本  蚊遣りトンボ=虫除けオニヤンマ ここではオニヤンマの遺骸に竹ひごを刺し、竹ひごをヘアバンドで頭部に固定する  トツギ=一夫一婦の結婚  眼木=めぎ 眼鏡フレーム 曲げ木工房で作っている  クンヌ=イエの頭領  吊り寝=ハンモック  一本皿=長い丸太を半分に割いて作ったテーブル。一本の木から2本取れるが、一本皿と呼ばれている。