役者が出そろう 第93話 14日目⑥
サルスベリの樹。続き。
ヤシム 「アコ。ハニサが可哀そうじゃない。
ちゃんと説明してあげなよ。
シロクンヌはそんな男じゃないはずだよ。」
アコ 「そうか、ハニサ、ごめんよ。
ハニサ。シロクンヌとあたしは、今は男同士の付き合いなんだよ。
二人ともテイトンポの弟子だろう?
あたしは他の男と、裸で川に入ったりしないし、シロクンヌだって一緒だと思うよ。
だからあたしの裸を見たって、まったく反応してないんだから。」
ハニサ 「そうなの?」
今、どの程度になっているのか、気にはなる。
テイトンポがアコを手放しで褒めていたしな。
かといって、ちょっと裸を見せてみろ、とは言えんだろう。
自然な流れで、一緒に汗を流そう、そうなっただけだ。
その時に、身のこなしを見て、いろんなことが分かった。
だからさっき、アコが勝つと言ったんだよ。」
ハニサ 「分かった。そういう事だったのね。」
アコ 「ハニサはもっとシロクンヌを信頼してやれよ。」
ハニサ 「うん。本当にそうだね。
ごめんなさい。シロクンヌ。」
シロクンヌ 「そんなのはいいんだ。」
カタグラ 「アコ、おぬしよく光ってる女神に説教できるな。
やっぱり、ただ者ではないな。」
ナジオ 「ヤッホ、何がどうなっているのか、詳しく説明してくれ。」
スサラ 「サラー、父さん達が来たよー。ハギと一緒に下りておいでー。」
広場。
ササヒコ 「そうでしたか。これでわしも、ほっとした。
活発な娘さんで、はっきり物を言う。
ハギの連れ合いとして理想的だ。
我が村も賑やかになるし、なにしろ、あの偏屈な所のあるヌリホツマが、
ひどく娘さんを気に入っておりましてな。
後継者にすると言って、はばからん。
ヌリホツマの業(わざ)の担い手になってくれれば、村も安泰です。
おお、ウワサをすれば・・・
そのヌリホツマが、サラと一緒にやって来ましたぞ。
サラ、それから、ハギ、見てみろこの栗実酒のヒョウタンを。
アマゴ村の皆さんが、遠路はるばる、持って来て下さったんだぞ。
半分は、祭りの御祝儀だとおっしゃった。
残りの半分は、おまえ達二人の、トツギへの祝い酒だ。
サラ、何か勘違いがあったんだな?」
サラの母 「黙って居なくなったら心配するでしょう。」
サラの父 「方々を探したんだぞ。
ハエタベルが見当たらなかったから、
小池に行って、いくら掬(すく)ってもユビチギルが掛からん。
これはハギの所へ行ったなとなったんだ。」
サラの母 「あなたカメとスッポンだけ持って、着替えは置いて行ったでしょう。
持って来ましたよ。」
ハギ 「話が違うじゃないか。サラが何かを勘違いしたんだな?」
サラ 「だって、今年はだめだ、来年にしろ、って言ったから。」
サラの母 「そんなことは、言ってませんよ。」
サラの父 「あれじゃないか? 子供の服とおもちゃ。
おまえがトツギに持って行くと言ったから、おれはトツギはだめだと言った。
そのあと、今年はだめだとも言った。早くて来年だ。生まれてからにしろ。
そんな意味のことを言った覚えはある。
ああ! サラには言うなとも言った! サラに言うと気に病むからと。
早く子を産めというようなことは言うなと、その意味だったんだが。」
サラ 「そうだったの? 私てっきり・・・」
ヌリホツマ 「わしの言った通りじゃったろう。」
サラ 「うん! 先生すごい!」
クズハ 「大ムロヤに用意ができました。
ハニサを呼びに行かせますから、しばらく寛(くつろ)いでいてください。」
いろり屋
タマ 「おや、タカジョウ、今年も来たね。
また一段と、男っぷりを上げたね。
いくつになったね?」
また一段と、男っぷりを上げたね。
いくつになったね?」
タカジョウ 「23だ。去年とさして変わらんだろう。
ほいこれ、カモのサクラ燻(いぶ)しだ。
こっちは一年分のキツネの毛皮。夏毛も冬毛も混ざってる。」
タマ 「いつも悪いねえ。
タマ 「いつも悪いねえ。
タカジョウのサクラ燻しは大評判だから。
あれまあ、今年はこんなにたくさんいいのかい。
毛皮もこんなにたくさん。
いつも村の女達で、奪い合いになるんだよ。ありがとうね!
シップウは元気かい?」
タカジョウ 「ああ。今だって、呼べばすぐに、腕に乗るぞ。
相変わらず、キツネの肉が大好物でな(笑)。
キツネばかりを狩りたがる。
おれはキツネ肉はすかんのだが。
ところで小耳に挟んだのだが、地震で明り壺がやられたって?」
相変わらず、キツネの肉が大好物でな(笑)。
キツネばかりを狩りたがる。
おれはキツネ肉はすかんのだが。
ところで小耳に挟んだのだが、地震で明り壺がやられたって?」
タマ 「そうなんだよ。囲い筒は、助かったけどね。」
タカジョウ 「祭りはどうなるんだ?」
タマ 「丘の上に行ってみたら分かるよ。
あたしも早く見てみたくてねえ。」
あたしも早く見てみたくてねえ。」
タカジョウ 「何かあるのだな? あとで行ってみるか。
タマ、向こうから来るの、ホコラじゃないか? 洞窟暮らしの。
いい仲なんだろう?」
タマ、向こうから来るの、ホコラじゃないか? 洞窟暮らしの。
いい仲なんだろう?」
タマ 「ホコラだよ!
ホコラ! 遅かったじゃないか。
来ないかと思って心配になってたよ。」
ホコラ! 遅かったじゃないか。
来ないかと思って心配になってたよ。」
ホコラ(?歳・男) 「大ムロヤで、沈んだ村の話を聞いておった。
ほい、ハチミツと洞窟キノコだ。
タカジョウ、元気そうだな。それはサクラ燻しか。旨そうだ
タマ、少し痩せたな。今夜は空いておるだろうな。
半年分のものを、おまえにぶつけるぞ。」
ほい、ハチミツと洞窟キノコだ。
タカジョウ、元気そうだな。それはサクラ燻しか。旨そうだ
タマ、少し痩せたな。今夜は空いておるだろうな。
半年分のものを、おまえにぶつけるぞ。」
タマ 「言い寄られてるけどね、ホコラのために空けてあるよ。
あとで、スッポンの活き血を飲みな。」
あとで、スッポンの活き血を飲みな。」