縄文GoGo

5000年前の中部高地の物語

歓迎の夜宴 第50話 8日目⑦

 

 

 

          アユ村の見晴らし広場。 

 
    シロクンヌを挟んで、ハニサとサチが座っている。
    夕焼けで空は真っ赤だ。湖面も赤く染まっている。
 
ハニサ  「きれい・・・」
サチ  「私、夢の中にいるみたい。」
 
    シロクンヌは二人の肩に手をまわした。
    そうやって、太陽が山裾に沈むまで、三人は夕日を眺めていた。
 
アシヒコ  「そろそろ歓迎の夜宴を始めようかいの。」
シロクン  「コノカミ、きれいだった!毎日こんなものを眺めているのか?」
アシヒコ  「なんの毎日であるもんか。雨の日も曇りの日もある。
       今日はきれいであろうとは思うてはおったが、ここまでとは思わなんだ。
       村の者も、皆、見惚れておった。
       おそらく、天の計らいじゃろうなあ(笑)。」
 
アシヒコ  「皆の者に紹介する。
       シロクンヌとハニサ、そしてサチじゃ。
       旅のお方が、あの厄介者どもを片付けてくださった。
       村の憂いは取り除かれた。
       これで子供達もどんぐり拾いができる。
       安心して裏手の温泉にも浸かれる。
       獲物の横取りもされんですむし、かどわかしももうないぞよ!
       見たであろう、先ほどの夕日を。
       三人は、天からの使いじゃ。
       我らが苦しみを救うために、天がつかわしたお方達じゃ。
       今から感謝を込めた歓迎の夜宴を催す。
       村の明日は明るい。
       皆の者。存分に楽しんでおくれ。」
 
    大歓声があがった。
 
    シロクンヌ、サチ、ハニサが並んで座っている。
    三人は大人気だ。
 
カタグラ  「ありがとうな。でもシロクンヌ、あんな奴らを倒すなんてどうやったんだ?」
シロクン  「まず気配を読む訓練だ。
        八方耳というのがあってな、頭のてっぺんに耳があると思い込んで・・・」
 
  「ハニサはきれいだな。シロクンヌの妹ってことはないよな?」
ハニサ  「違うよ。シロクンヌはあたしが愛する人だよ。」
少年  「サチ、おれとつきあってくれよ。」
サチ  「だめなの。私にはトツギの人がいるから。」
年増の女  「あたしゃ温泉で何度も覗かれてねえ、
       いつかどわかされるかとヒヤヒヤしてたんだよ。」
女の亭主  「おめえを覗いてたのは、猿だよ。おめえは心配いらねえよ。」
 
マグラ  「気配が読めたとして、その次は?」
シロクン  「抜きだ。抜きを身につけて素早く動く。
        それに、かわしを加える。右に行くと見せて・・・」
 
  「ハニサとサチはお揃いですごくかわいいね。姉妹なの?」
ハニサ  「姉妹じゃないけど、あたしは妹だと思ってるよ。」
少女  「お姉ちゃん、私もサチみたいな髪型にしたい。」
少女の姉  「サチだから似合うんだよ。でもあたしもやってみたいな・・・」
 
フクホ  「料理が出来たよー。みんな、取りに来ておくれー。」
ハニサ  「サチ、行こう。おなか減ったでしょう。」
サチ  「うん! ねえ、私、ハニサのことは何て呼べばいいの?」
ハニサ  「じゃあ・・・お姉ちゃんって呼んで。
      あたし、妹が欲しかったし。」
サチ  「うん。お姉ちゃん。私のお姉ちゃん。
     私にきれいなお姉ちゃんができた!」
 
カタグラ  「なるほどなあ。それで目くらましの様に動くんだな。」
       座り込んで、まだ話している。
マグラ  「でもそれだけでは・・・ 
      攻撃はどうするんだ?」
シロクン  「それは色々ある。
        気配を察知し、素早く動き、こちらが有利な位置についたら・・・」
 
厨房の女  「まあかわいい! お揃いで・・・
       何が食べたいの? 好きな物を取ってあげるよ」
ハニサ  「サチ、何がいい?」
サチ  「お魚! それと、あったかいお汁。
     あと・・・ グリッコ。」
厨房の女  「じゃあこのお盆を持ってね。載せてあげますからね。ハニサは?」
ハニサ  「鴨鍋! お昼に食べておいしかったもん。
      もう一回食べたい! サチにも分けてあげるね。」
 
シロクン  「そうじゃなくて、こういくんだよ。」 立ちあがっている。
カタグラ  「こうか?」 立ちあがっている。
マグラ  「こうじゃないか?」 立ちあがっている。
アシヒコ  「これこれ、二人とも。お客人がおなかを空かしておろうが。」
マグラ  「あ! つい熱が入ってしまった。わるかったなシロクンヌ。
      おれ達も取りに行こう。」
カタグラ  「栗実酒もあるぞ。今年は栗が豊作だったからな。」
シロクン  「あとでハニサに友蒸しを作ってもらって、みんなで食わないか?」
カタグラ  「ハニサの手料理か!
       白状すると、おれはハニサの美貌にいちころでな。
       うらやましいぞ、シロクンヌ(笑)。」
シロクン  「おれも幸せ者だと思ってるよ。」
カタグラ  「このやろう、言いおったな! ワッハッハッハッハ。」

 

 

 

 
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登場人物 シロクン 28歳 タビンド 特産物を遠方の村々に運ぶ シロのイエのクンヌ  ササヒコ 43歳 ウルシ村のリーダー  ムマヂカリ 26歳 ヒゲの大男   ヤッホ 22歳 ササヒコの息子   ハギ 24歳 ヤスが得意  タホ 4歳 ヤッホとヤシムの息子 ヤシムと暮らしている  タヂカリ 6歳 ムマヂカリとスサラの息子  クマジイ 63歳 長老だが・・・  テイトンポ 40歳 シロクンヌの師匠 その道の達人   クズハ 39歳 ハギとハニサの母親   タマ 35歳 料理長  アコ 20歳 男勝り テイトンポに弟子入り   ヤシム 24歳 タホの母親  ハニサ 17歳 土器作りの名人 シロクンヌの宿   スサラ 25歳 ムマヂカリの奥さん  ヌリホツマ 55歳 漆塗り名人 巫女  ホムラ 犬 ムマヂカリが可愛がっている

      

追加アシヒコ 56歳 アユ村のリーダー  マグラ 27歳 アユ村の若者  カタグラ 24歳 マグラの弟  フクホ 50歳 アシヒコの奥さん  サチ 12歳 孤児 シロクンヌの娘となる 

   

用語説明 ムロヤ=竪穴住居  大ムロヤ=大型竪穴建物  カミ=村のリーダー  コノカミ=この村のリーダー           グリッコ=どんぐりクッキー  黒切り=黒曜石  神坐=石棒(男性器を模した磨製石器)  塩渡り=海辺の村が作った塩を山の村に運ぶ塩街道があった。ウルシ村から東にシカ村→アマゴ村・・・七つ目がシオ村  御山=おやま。ウルシ村の広場から見える、高大な山々  コタチ山=御山連峰最高峰  トコヨクニ=日本  蚊遣りトンボ=虫除けオニヤンマ ここではオニヤンマの遺骸に竹ひごを刺し、竹ひごをヘアバンドで頭部に固定する  トツギ=一夫一婦の結婚