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5000年前の中部高地の物語

テイトンポ登場 第30話 5日目⑥

          

 

 

          いろり屋。続き。

 

ハニサ  「居たーーー! シロクンヌ、あたし探したんだよ!
      気付いたら、居ないんだもん!
      ホムラが鳴いてたけど、ムマヂカリが、帰ってきたんでしょう?」
シロクン  「ハニサ!びしょ濡れじゃないか!」
ハニサ  「雨が降ってるからだよ。」
シロクン  「寒くはないのか?風邪をひくぞ。」
タマ  「ハニサ、こっちにおいで!ここで火に当たりな!」
ハニサ  「だって、シロクンヌが何も言わずに、どっかに行っちゃったから、あたし・・・」
ヤシム  「シロクンヌ!一言、声かけてあげなよ!」
タマ  「ほんとだよ!見損なったねえ!」
シロクン  「待ってくれ!おれは・・・」
ササヒコ  「ホムラの鳴き声が聞こえたから駆けつけてみたが、
       あやつ、大きな獲物を連れて来よったな。」
アコ  「タレの出番が来たか。」
クズハ  「お連れがいるみたいだねえ。」
スサラ  「お帰り。二人とも、湯浴びして、着替えて。
      お腹、減ってるんでしょ?」
ムマヂカリ  「コノカミ、すまん、遅くなった。」
ササヒコ  「なにを言うか。無事でなにより。
       しかし、おぬしら二人で、よくこんなものを運んで来られたな!」
  「シロサッチ!やはりシロサッチであったな!
    おまえ、子供は救ったのであろうな?」
シロクン  「・・・
        テイトンポか?
        そこにいるのは、テイトンポなのか!」
テイトンポ(40歳・男)  「忘れておらんかったな、シロサッチ! 
             よく生きておった!
             クンヌになりおったのか!」
シロクン  「全部、テイトンポのお陰だ!
        まさかこんな所で会えるとは!」
テイトンポ  「おまえ、まだ答えてはおらんぞ。
        子供はどうなったのだ?」
シロクン  「なんとか、救えた。
        ほら、大屋根の下で走り回ってる。」
テイトンポ  「よくやった!」
 
    テイトンポはシロクンヌにガッシと抱きつき、振り回すように揺さぶった。
    ムマヂカリの帰還だと感じ、村中の者たちが集まって来ていた。
 
テイトンポ  「シロサッチ、いやシロクンヌ!姿勢を正せい!『最少歩数で行きつく先で』」
シロクン  「『最大効率はかるべし!』」
ササヒコ  「エヘン、エーー」
ムマヂカリ  「おいおいテイトンポ、こちらがカミのササヒコだ。」
テイトンポ  「これはコノカミ、ご無礼をいたした。
        私はテイトンポと申し、半年前よりシカ村にて住まわせてもらいおる者。
        こたびムマヂカリの話を聞き、もしや旧知の者がこの村におるやも知れぬと思い、
        同行を願い、こうして訪れました。
        しばらくの逗留をお許しいただきたい。」
ササヒコ  「シロクンヌ、このお方とはどういう・・・?」
シロクン  「おれの師匠だ。
        おれが12の時から4年間、おれを鍛え上げてくれた人だよ。
        だから・・・・・13年ぶりの、再会になるわけだな。」
ササヒコ  「なるほど、そういうことなら大歓迎だ。
       積もる話もおありでしょう。
       いつまででもいてくださって構わんですよ。
       みんな、今夜は大ムロヤで歓迎の宴を張る。
       連日の宴となるが、目出たい宴は、何日続こうがいいはずだ。
       大急ぎで準備をしてくれ!」
 
    方々で、歓声があがった。
 
テイトンポ  「コノカミ、御親切、痛み入る。」
タマ  「もうすぐ湯浴びの湯が沸くからね。それまでこっちで火に当たっていなよ。」
ムマヂカリ  「スサラ、着替えを持ってきてくれ。テイトンポの分もな。」
シロクン  「テイトンポ、紹介しておくよ。
        ハニサだ。
        ハニサのムロヤがおれの宿だ。」
テイトンポ  「ムマヂカリに聞いたぞ。アツアツなんだろう?美しい子ではないか。」
シロクン  「テイトンポは一人者なのか?」
テイトンポ  「ああそうだ、身軽だぞ(笑)。」
シロクン  「じゃあもう一人紹介しておく。
        クズハだ。
        このハニサと、あそこにいるハギの母親だ。
        クズハも、身軽なはずだ。」
ハニサ  「シロクンヌ、でも、会っていきなりじゃあ・・・」
シロクン  「おれは紹介しただけだよ。後の事は知らん。
        だがハニサ、おれとハニサだって、会っていきなりだったんじゃなかったか?」
ハニサ  「そっか!それもそうだね!
      母さん、テイトンポを泊めてあげなよ。」
クズハ  「これ、ハニサ!そんなこと言ったらテイトンポに失礼だよ。」 赤くなっている。
シロクン  「テイトンポ、クズハのそばに行ってみたらいい。いい匂いがするから。」
テイトンポ  「・・・・・」 赤くなってモジモジしている。
タマ  「湯浴びの準備ができたよ。
     二人とも、あっちで浴びてきな。
     スサラとクズハは手伝っておあげ。」
 
    クズハは真っ赤な顔をして、スサラから着替えを受け取った。
 
 
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登場人物 シロクン 28歳 タビンド 特産物を遠方の村々に運ぶ   ササヒコ 43歳 ウルシ村のリーダー  ムマヂカリ 26歳 ヒゲの大男   ヤッホ 22歳 ササヒコの息子   ハギ 24歳 ヤスが得意  タホ 4歳 ヤッホとヤシムの息子 ヤシムと暮らしている  タヂカリ 6歳 ムマヂカリとスサラの息子  クマジイ 63歳 長老だが・・・   クズハ 39歳 ハギとハニサの母親   タマ 35歳 料理長  アコ 20歳 男勝り   ヤシム 24歳 タホの母親  ハニサ 17歳 土器作りの名人 シロクンヌの宿   スサラ 25歳 ムマヂカリの奥さん  ヌリホツマ 55歳 漆塗り名人 巫女  ホムラ 犬 ムマヂカリが可愛がっている

      

用語説明 ムロヤ=竪穴住居  大ムロヤ=大型竪穴建物  カミ=村のリーダー  コノカミ=この村のリーダー           グリッコ=どんぐりクッキー  黒切り=黒曜石  神坐=石棒(男性器を模した磨製石器)                 塩渡り=海辺の村が作った塩を山の村に運ぶ塩街道があった。ウルシ村から東にシカ村→アマゴ村・・・七つ目がシオ村  トコヨクニ=日本