縄文GoGo

5000年前の中部高地の物語

エゴマと漆 どんぐり小屋のアコ   第27話 5日目③

 

 

          どんぐり小屋。

アコ  「あ!シロクンヌ!」
シロクン  「あ!すまん。邪魔してしまったか?」
アコ  「びっくりしただけだよ。邪魔とかじゃないよ。どうしたの?一人?」
シロクン  「一人だ。」
アコ  「なにか用事だった?」
シロクン  「そうではない。ぶらぶらしていて、ふっと足が向いただけだ。」
アコ  「本当はあたしに会いに来たんだろう?」 ニヤニヤしている。
シロクン  「アコ、よくわかったな!・・・と言ったら、どうする?」 ニヤニヤしている。
アコ  「アッハハハ・・・そんなはず、ねーよな!ササ茶、淹れたんだよ、飲んでくかい?」
シロクン  「せっかくだ、よばれて行こうか。」
アコ  「ハニサはどうしてるの?」
シロクン  「作業小屋で器作りしてる。今まで一緒だったんだ。
        タレの様子を見に来たのか?」
アコ  「うん。今度の祭りでは、大勢に振舞わなきゃいけないからね。」
シロクン  「アコは普段、何をしているんだ?」
アコ  「いろり屋以外って意味なら、ウルシ林と畑の世話だね。
     早い話、草むしりや漆掻き。」
シロクン  「畑では、何を作っているんだ?」
アコ  「色々作ってるよ。
     オオ豆だろう。ヒエだろう。エゴマもたくさん作ってる。
     種から油を搾(しぼ)るからね。」
シロクン  「灯油(ともしびあぶら)に使うのか?」
アコ  「そうだよ。明り壺のお祭りで、大量に使うからね。
     食用にもするし、あと、漆に混ぜるんだよ。」
シロクン  「へー、漆にか?」
アコ  「そう。ツヤが出るんだ。ヌリホツマしか配合は知らないんだけど。
     あとソバも作ってるし、ヒョウタンも作ってる。」
シロクン  「結構作ってるんだな。
        だけどエゴマ油は貴重品だぞ。
        明り壺(ランプ)には最適だ。どの村でも欲しがってるな。」
アコ  「そう聞くね。
     でもエゴマは育てるのが楽なんだよ。
     毎年間違いなく育つし、油はムロヤ一軒につきヒョウタン四つの配給だね。
     最後はお祭りで使い切って、お祭りが終わったら収穫して、新しい油を搾るんだよ。」
シロクン  「エゴマ油だけでそんなにか!
        他にロウソクもあるし、やっぱりここは充実した村なんだな。
        ところで、アコはひとり者なのか?」
アコ  「お、核心に来たね。
     あたしを口説くかい?すぐに落ちるよ(笑)。
     あたしはね、娘を死なせちゃったんだよ。
     生きていれば、2歳だね。
     病でね、ヌリホツマやみんなが祈ってくれたんだけど・・・」
シロクン  「そうだったか・・・悪いことを聞いたな。」
アコ  「いいさ。」
シロクン  「畑だが、けものに荒らされたりはしないのか?」
アコ  「エゴマで囲ってその内側にソバやオオ豆を作ってるんだけど、時々やられるよ。」
シロクン  「獣はエゴマが苦手って事か?」
アコ  「うん。エゴマは食べないね。においが嫌いなんじゃない?
     見張り小屋もあるんだけど、毎晩ヒトがいる訳じゃないからね。
     逢い引きには持って来いなんだよ(笑)。」
シロクン  「さてはアコも何度か使ったな?(笑)。」
アコ  「あたしとしけ込みたくなったら、いつでも言って来なよ(笑)。
     獣よりかはね、鳥の方が荒らして行くんだよ。
     オオ豆なんか特にやられる。」
シロクン  「らせん皮を使ってもだめか?」
アコ  「らせん皮?何それ、聞いた事無いよ。」
シロクン  「木の皮で鳥除けを作るんだ。
        知らないなら、今度おれが作ってやるよ。
        作業場の近くに桜の若樹があるから。
        ところで、あそこに草がいっぱい積んであるだろう。何に使うんだ?」
アコ  「陰干ししてるんだ。
     あれでムロヤを燻(いぶ)すんだよ。虫除けだな。」
シロクン  「ここではあれで燻すのか。」
アコ  「あれはまだ使えないよ。もっと萎(しお)れさせてから、杵(きね)で搗(つ)いて、
     あ!そう言えば、臼が割れたんだった!」
シロクン  「臼が無きゃあ困るだろう。
        搗栗(かちぐり)やドングリも搗くんだろう?
        焼き臼でいいなら、おれが作ってやろうか?」
アコ  「ほんと?助かるよ!」
シロクン  「今度、森の作業場でニカワ作りに火を焚くんだ。
        その時についでに作ってやるよ。」
アコ  「ありがとう!」
シロクン  「いいさ。
        さっきの続きだが、搗いてからどうするんだ?
        こういう事って村によって違うから、興味がわくんだよ。」
アコ  「杵で搗いて、嵩(かさ)を減らすんだ。
     あそこの山積みでは、一回分に、まだ足りない。」
シロクン  「そんなに使うのか!」
アコ  「そうだよ。でも、ひとかかえ位の大きさになるんだよ。
     それを縛って、ムロヤの炉で燻すの。
     一日中、煙が出てるみたいだよ。」
シロクン  「住人はどうするんだ?」
アコ  「五日間、仮屋に住むんだ。
     ハニサの宿は、その仮屋だったんだよ。」
シロクン  「そうなのか!」
アコ  「そうやって順番にムロヤを燻していくんだ。
     仮屋ももちろん燻すんだよ。
     だから、虫はいないだろ?」
シロクン  「確かに、快適だ。」
アコ  「シロクンヌ、ハニサはどうだい?」
シロクン  「どうと言うと?」
アコ  「宿になってから、見るたびに、綺麗になっていってる気がして・・・
     シロクンヌはハニサのことが、好きなのかい?」
シロクン  「ああ。好きだな。惚れたんだと思うぞ。」
アコ  「また、はっきり言うね!
     でもだったら、タビンドをやめて、ずっとここにいればいいのに。」
シロクン  「おれもできればそうしたいところなんだが、そうもいかんのだよ。」
アコ  「ハニサみたいな女、他にはいないと思うぞ。」
シロクン  「今までもいなかったし、この先も出会わんだろうな。」
アコ  「まあ、シロクンヌにはシロクンヌの事情があるんだろうな。
     あたしはいろり屋に戻るよ。
     話ができて楽しかった。
     口説きたくなったら、すぐに来るんだぞ(笑)。またね。」
 
 
       ━━━ 幕間 ━━━
 
さて、漆塗りについてですが、発祥地はどこなのか?という事については、意見が割れている様です。
 
ウルシの原産地は中国なのだから、漆塗りも中国発に決まっている。
ウルシの樹は、漆塗りをするために、ヒトが中国から持ち込んだのだ。
そこで、漆塗りの技法も伝わった。・・・という中国起源説
この中国起源説が優勢の様に見受けますが、しかし、ウルシ日本自生説を唱える学者さんもいます。
 
12600年前は今よりも寒冷だったから、日本にウルシが自生していても不思議は無いという意見です。
その方は当然、漆塗り発祥の地は、日本だと主張しています。
 
ここまでの状況証拠を踏まえ、ここで作者の考えを申し述べますと・・・
 
① ウルシの樹は中国原産で、日本の地には、人為的に運ばれた。
② それは樹液を接着剤として、活用する目的であった。
③ その後、日本の地で縄文人が、樹液を塗膜として活用する漆塗りの技法を考案した。
④ その後、その技法が、日本から中国に伝わった。
 
この様に考えたら、一番スッキリするのではないでしょうか?
 
②の接着剤ですが、例えば石のヤジリを矢柄に固定するのに使ったりします。
非常に実用範囲は広く、装飾とは無関係ですが、生活必需品だったのかも知れません。
 
ちなみに、漆器(しっき)は英語で japan と言うのは有名ですよね。(jは小文字です。)
japan は、少なくとも9000年前には始まっていました。
そしてその後も、日本人の精神性と深く関わって来ました。
皆さんだって、味噌汁は、漆器(風)のお椀で食したいと思っているでしょう?
 

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縄文GoGoでは絵を描いてくれる方を募集しています。詳しくは『縄文GoGoの開始にあたって』で。

 

登場人物 シロクン 28歳 タビンド 特産物を遠方の村々に運ぶ   ササヒコ 43歳 ウルシ村のリーダー  ムマヂカリ 26歳 ヒゲの大男   ヤッホ 22歳 ササヒコの息子   ハギ 24歳 ヤスが得意  タホ 4歳 ヤッホとヤシムの息子 ヤシムと暮らしている  クマジイ 63歳 長老だが・・・   クズハ 39歳 ハギとハニサの母親   タマ 35歳 料理長  アコ 20歳 男勝り   ヤシム 24歳 タホの母親  ハニサ 17歳 土器作りの名人 シロクンヌの宿   ヌリホツマ 55歳 漆塗り名人 巫女  ホムラ 犬 ムマヂカリが可愛がっている

      

用語説明 ムロヤ=竪穴住居  大ムロヤ=大型竪穴建物  カミ=村のリーダー  コノカミ=この村のリーダー           グリッコ=どんぐりクッキー  黒切り=黒曜石  神坐=石棒(男性器を模した磨製石器)                 塩渡り=海辺の村が作った塩を山の村に運ぶ塩街道があった。ウルシ村から東にシカ村→アマゴ村・・・七つ目がシオ村  トコヨクニ=日本