縄文GoGo

5000年前の中部高地の物語

縄文海進 第17話 3日目④

 
 

          夕食の広場。

 
ササヒコ  「海が離れて行くと聞くが、本当なのか?」
シロクン  「ああ、本当だ。場所によって違うようだが、
        ここから真東に行ったあたりでは、離れが速いんだ。」
クズハ  「そこを訪れたことはあるの?」
シロクン  「ある。 いくつかの村が、打ち捨てられていたよ。」
ハニサ  「なんで、村が捨てられるの?」
シロクン  「海まで出にくくなったからだろうな。
        海だった場所は、ぬかるんでいるし、池になってる所も多い。
        なによりいやな臭いがする。
        それに塩が残っていて草木の育ちも悪い。
        海の底だったのだから、陸になったところで、すぐには使い物にならないんだ。
        海に出るのにそこを通るのはかなわんのだろう。
        それで、どこかに引っ越したんだろうと思う。」
子供  「見る見る遠ざかって行くの?」
シロクン  「いや、見ている限りではわからない。 
        それで、何人かに話を聞いたんだ。
        1年であの旗塔くらいと言う者もいれば、
        その半分くらいと言うやつもいる。
        そして、もっと向こうだと言う者もいた。 
        だからおれは言ってやった。
        次の大潮に、海から10歩のところに杭を打てと。
        一番引いた時と、一番満ちた時に。」
ハニサ  「そっか!目印にするんだね。 でもなんでそんなことになってるの?」
シロクン  「それがわからんから、連中は気味悪がっているな。」
子供  「海が寄せてきて、沈んだ村の話は聞いたよ。」
クマジイ  「昔話では、沈んだ村の話ばかりじゃな。」
ヤッホ  「父さん、シオ村は大丈夫なのかい?」
ササヒコ  「それだ。今年の祭りには、弟もシオ村から五年ぶりに帰って来るはずだ。
       詳しく様子を聞かねばならんな。」
シロクン  「ところがそんな中でも頼もしい奴等は居て、
        その遠浅の海で貝の繁殖を試しているんだ。」
ハニサ  「貝の繁殖って?」
シロクン  「牡蠣(かき)という貝がいるんだが、海の中に杭を打ったりして、
        牡蠣が卵を産み付けやすい様に工夫している。
        竿を立てたり、海床を作ったり、いろいろ試しているんだよ。」
 
 
          ━━━ 幕間 ━━━
 

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http://blog.livedoor.jp/beckykusamakura/archives/53636849.html


今から9000年前から海面が上昇し,6500年前がピークで今よりも5m海面が高かった。

これを、縄文海進と言う。と、この様に歴史解説書には書かれています。
 
縄文時代を扱った歴史解説書は、この縄文海進の発生原因について、
「最終氷期以降、地球は急速に温暖化していった。
縄文時代初期から温暖化はさらに進み、ピーク時には現在よりも気温が2~3℃高くなった。
その結果、北極と南極の氷が溶け、氷河も溶けて、海に流れ込んだ為に海面が上昇した。」
と、この様に解説したものをよく見かけました。
最近発行された歴史本でも同様でしたので、あきれます。
歴史解説者は、自然科学のいろはをお持ちではないのか?
 
① 北極の氷は海上に浮かんでいるので、溶けたとしても海面は上昇しない。
② 南極大陸の氷が溶ければ海面は上昇するが、非常に寒いため、それくらいでは溶けない。
 
そもそも、縄文海進は、日本で確認された現象であり、
同様の現象が、イギリスや北アメリカの海岸で起こっていた訳ではありません。
もちろん地球規模の現象ですが、上昇の仕方については地域差がありました。
その発生メカニズムに関しては、現在、解明が進んでいるようですが、一部を要約します。
 
約19000年前、ヨーロッパ大陸北部、北アメリカ大陸北部、グリーンランドの氷床はピークに達し、
厚さは数千メートル、南極大陸の氷床に匹敵するものであったようです。
それが、それから急激に溶け始めるのですが、当然、海面は上昇します。
日本列島の誕生ですね。
 
それに伴って、氷が溶けて軽くなったので、そこの地面は上昇(隆起)したようなのです。
そういう背景を持ちながら、地球上の日本の位置で起きた現象が、縄文海進そして海退です。
氷床から離れた場所で起きる現象のようです。
氷床から遠く離れた所では、100m以上の上昇があったと言われています。
 
すると今度は逆に海が重くなったので、海底は押されます。
その結果、海底部のマントルがゆっくりと陸地側に移動して、海底が下がります。
これが、海退ですね。
海退の要因は海底の沈下であって、新たな氷河の形成ではないようです。
その進行は完了したわけではなく、一部では現在も進行中とのことです。
スカンジナビア半島ハドソン湾周辺では、現在も土地の隆起が続いているようです。
ですからこのまま温暖化が進むと、いずれ縄文海進の様になると言う人がいますが、それは全くのデタラメです。
 
ただ6000年前辺りの日本が今よりも温暖であったのは間違いなく、
シロワニ(熱帯海域に住む鮫)の歯の出土、その他、多くの証拠があるようです。
ん?海水温が高かったのなら、スーパー台風が吹き荒れたのでは?
実際そうであった可能性が非常に高いと、作者は思っています。
 
 
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登場人物 シロクン 28歳 タビンド 特産物を遠方の村々に運ぶ   ササヒコ 43歳 ウルシ村のリーダー  ムマヂカリ 26歳 ヒゲの大男  ヤッホ 22歳 ササヒコの息子  ハギ 24歳 ヤスが得意  クマジイ 63歳 長老だが・・・  クズハ 39歳 ハギとハニサの母親  タマ 35歳 料理長  アコ 20歳 男勝り  ハニサ 17歳 土器作りの名人 シロクンヌの宿  ヌリホツマ 55歳 漆塗り名人 巫女  ホムラ 犬 ムマヂカリが可愛がっている

            

用語説明 ムロヤ=竪穴住居  大ムロヤ=大型竪穴建物  カミ=村のリーダー  コノカミ=この村のリーダー           グリッコ=どんぐりクッキー  黒切り=黒曜石  神坐=石棒(男性器を模した磨製石器)                 塩渡り=海辺の村が作った塩を、山の村に運ぶ塩街道があった。ウルシ村から東にシカ村→アマゴ村・・・七つ目がシオ村  トコヨクニ=日本