第128話 19日目②
岩の温泉。
シロクンヌ 「サチ、奥はヤケドするくらい熱いぞ。気をつけろ。
ハニサ、頭から掛けるぞ。」
ハニサ 「温かくて気持ちいい!」
サチ 「父さん、ここ、とっても深いよ。潜っていい?」
シロクンヌ 「ああ、いいぞ。トガッタ岩があるかも知れんから注意しろ。」
ハニサ 「サチは大喜びね。」
シロクンヌ 「ハニサ、ここに座ってみろ。
あの岩の上から、湯を掛けてやる。」
ハニサ 「あんなに高い所から?
待ってね、ここ?」
シロクンヌ 「行くぞ、頭のテッペンを狙うからな。」
ハニサ 「ウワーーーー!重いーーーー!
バチバチ来るよ。
ねえ、今度、肩にやってみて。
サチもこっちにおいで。
バチバチして面白いよ。」
サチ 「深かったー。スワの湖で潜った時の倍くらいだった。」
真っ赤っかだな。熱かったんだろう?」
サチ 「うん。楽しそう。ここ?」
シロクンヌ 「いいか? 行くぞ!」
サチ 「アー、アー、アー、キャハハハハ!
父さん、最後に細いので、チョロチョロチョロってやったでしょう。
あれ、くすぐったい。」
ハニサ 「え? そんな技があるの?」
シロクンヌ 「ハニサにも、やってやろうか?」
ハニサ 「やってみて。」
シロクンヌ 「待ってろ。チョロで行くのなら、熱い湯を汲むか。」
サチ 「あー、お腹減ったー! いただきます!」
ハニサ 「美味しい! パリパリしてる。母さんが言ってたのこれね。」
シロクンヌ 「あの時は確か、ノビルの秋芽を挟んだんだ。」
だからあたし、バチバチやチョロチョロをやってもらった事、自慢しよう。」
サチ 「バッシャンも凄かったよ。」
ハニサ 「あれはびっくりしたね! いきなりだったから。」
サチ 「それも、あっつい湯でやられた。」
ハニサ 「そう言えばサチ、何か拾ってきてなかった? 潜った時に。」
サチ 「忘れてた。あっちに置いたんだ。
あ!」
ハニサ 「どうしたの?」
サチ 「ヒスイ・・・」
シロクンヌ 「どうした?」
サチ 「ヒスイの大玉。深い所に潜った時、底から拾ってきてここに置いておいたの。
今見てみたら、穴あきヒスイの大玉だった!」
ハニサ 「真っ赤だよ。熱かったんでしょう? 何度も潜るからだよ。」
シロクンヌ 「他にはこれといって落ちてなかった。」
サチ 「これだけ、誰かがここで、落としちゃったんだ・・・
父さん、これ、どうしよう?」
シロクンヌ 「落とし主が分かれば、返せば済むことだが・・・
大事にしておったのだろうに。
とりあえず、サチが持っていろ。
これが底で拾った別の石だ。
ヌルヌルしているだろう?
ヒスイはヌルヌルしていなかったから、最近、落としたのかも知れん。」
ハニサ 「綺麗な緑色だから、価値が高いんでしょう?」
シロクンヌ 「ああ、かなりの上物だ。
加工の技術も最上格だ。
まあそれは当たり前で、いい原石は、腕のいい職人が加工するからな。
さあ、火の片付けをして、イオウを採って帰るか。
帰りはのんびり行こう。
サチ、またカブテでいろいろ狙ってみろ。」
ハニサ 「さっきは惜しかったから、今度は獲れるんじゃない?
それから今度ね、みんなでハチの子を獲りに行こうって言ってたよ。」
シロクンヌ 「ハニサはハチの子獲りって、やったことあるのか?」
ハニサ 「ないの。ハチの子グリッコは大好物だけど(笑)。」
帰り道
ハニサ 「背負子に乗ってると見晴らしがいいから、全然眠くならないよ。」
シロクンヌ 「ヤシムもこれなら大丈夫だな。」
ハニサ 「アハハ。そうだね。」
サチ 「父さーん、待っててー。」
ハニサ 「またキジバトを獲ったのかな?」
サチ 「ヤシムにお土産。綺麗でしょう?」
ハニサ 「綺麗! ユリ? 今の時期に珍しいね。
夏のユリとはちょっと違うのか。」
サチ 「髪飾りを編んで、ヤシムにあげる。」
ハニサ 「ヤシムは喜ぶよー! サチは気が付くいい子だね。」