縄文GoGo

5000年前の中部高地の物語

第159話 30日目③

 

 

 

          夕食の広場。

 
テイトンポ  「オジヌ、でかしたぞ!
        あれだけたくさんもらって来るとは大した男だ。
        シロクンヌなどは、わずかしかもらって来なかったからな。」
オジヌ  「アユ村の人達が、気を利かせてたくさん作っておいてくれたんだ。」
イナ  「これ美味しいわね! シジミグリッコっていうの?
     なんでヲウミの村では作らなかったのかしら。」
テイトンポ  「親のカタキの様にして、シジミを採りまくっていたくせにな(笑)。」
イナ  「中のシジミが軟らかいでしょう、作り方に何かコツが有りそうね。」
テイトンポ  「アコ、汁のおかわりはいいのか? 取ってやるぞ。」
アコ  「汁はもういいよ。大豆くずしを食べるから。」
ハニサ  「夕陽は見た?」
オジヌ  「見たよ、コヨウと二人で。
      湖が真っ赤で、空も真っ赤で、びっくりするくらいに綺麗だった。」
エミヌ  「温泉には行ったの?」
オジヌ  「行ったよ。」
エミヌ  「あんた、行く途中から、神坐になってたでしょう?」
オジヌ  「いいだろう、そんな事。姉ちゃんはうるさいな。」
ハニサ  「あさって、また会えるね。」
オジヌ  「うん。翌朝天気が良ければ、暗い内に二人で見晴らし岩に登って、
      そこで日の出を見ようかって話してた。
      ねえシロクンヌ、また岩滑り、やる?」
シロクン  「ああいいぞ。誰が一番飛ぶかな?」
ムマヂカリ  「イナも飛びそうだな。」
ヤッホ  「うん、美人だしな。」
ヤシム  「美人と飛距離は関係無いでしょ。」
イナ  「岩滑りって、どんな事やるの?」
ヤッホ  「奥の洞窟でやるんだ。一度高い所まで上って・・・」
 
オジヌ  「それで、前回はサチが一番でおれが二番だったんだ。
      おれ、今度はサチに勝ちたいんだよ。イナは自信ある?」
イナ  「あるわよ。アコが滑れないのが残念ね。」
サラ  「あ! そうそう、先生が行きたいんだって。
     見晴らし岩のそばには薬草がいっぱい生えているから、私に教えたいって。
     背負子になるんだけど、大丈夫でしょう?」
シロクン  「背負子は今6個有る。担ぎ手は・・・
        ここから洞窟まで徹しで担ぐ自信のある者は、手を挙げてくれ。」
ムマヂカリ  「おれ、シロクンヌ、テイトンポ、シオラム、イナもか! さすがだな。5人だ。」
シロクンヌ  「それならまったく問題無いな。残りの1個は交代で担げばいい。」
オジヌ  「背負子はおれが明日1個作るし、おれ、半分以上、担ぐ自信あるよ。」
シロクン  「では7個だな。
        おれの背負子に乗った者が、タホを抱っこしてくれればいい。
        タヂカリは全部歩けそうか?」
ムマヂカリ  「全部となると、少し遅れそうだな。」
テイトンポ  「おれが抱えてやるから心配するな。」
シロクン  「向こうに着いた時に、疲れ切っていては話にならんからな。
        ハニサとアコはもちろんだが、
        女衆は早め早めに背負子の上で休憩しながら行った方がいいだろうな。」
ハギ  「食材はたっぷり岩室に入ってる。栗実酒はカタグラが何度も運び入れてくれた。
     アユ村では栗が大豊作で、栗実酒は例年の倍、仕込むんだそうだ。
     それから、タマのはからいで、山ブドウの女酒もヒョウタン三つ運んである。
     あと運び込むのは各々の寝具だな。
     明日、おれとナジオとヤッホが洞窟に行くから、運べる物は運ぼうと思ってる。」
ヤッホ  「ウルシ村からの参加者を確認しておくよ。
      アニキ、ハニサ、イナ。テイトンポ、アコ。ムマヂカリ、スサラ、タヂカリ。
      エニ、エミヌ、オジヌ、カイヌ。ハギ、サラ。ヤシム、サチ、タホ。シオラム、ナジオ。
      ナクモ、クマジイ、ヌリホツマ、そしておれだ。」
ハニサ  「母さんは行かないの?」
テイトンポ  「行きたがっておるのだが、スッポンの世話があってな。」
シロクン  「餌やりと、お湯やりだろう? 誰かに頼めんのか?」
ヤッホ  「父さんに聞いて来るよ。」
 
ササヒコ  「テイトンポ、水臭いではないか。
       そんな事くらい、わしがやってやるよ。
       難しいのか?」
テイトンポ  「いや難しくはないんだ。
        ただ工房は休みだから、そのためだけに火を熾すからな。
        石が温まるまでの時間を取らせてしまうんだ。」
ササヒコ  「それならわしは、矢を作りながら火の番をする。
       道具は借りてもいいだろう?
       明日、工房に行くから、やり方を教えてくれ。」
テイトンポ  「すまんな。ではお願いする。クズハも参加だ。」
ヤッホ  「じゃあ全部で、24人だな。」
イナ  「ねえ、コノカミの奥さんって、誰?」
ササヒコ  「わしは6年前に、女房を病で亡くしておってな、以来一人者だぞ。
       いい相手が居るなら、紹介してくれんか(笑)。」
イナ  「ふーん、そうなんだね。考えとく。」
 
 
 
登場人物 シロクン 28歳 タビンド 特産物を遠方の村々に運ぶ シロのイエのクンヌ  ササヒコ 43歳 ウルシ村のリーダー  ムマヂカリ 26歳 ヒゲの大男   ヤッホ 22歳 ササヒコの息子   ハギ 24歳 ヤスが得意  タホ 4歳 ヤッホとヤシムの息子 ヤシムと暮らしている  タヂカリ 6歳 ムマヂカリとスサラの息子  クマジイ 63歳 長老だが・・・  テイトンポ 40歳 シロクンヌの師匠 その道の達人   クズハ 39歳 ハギとハニサの母親   タマ 35歳 料理長  アコ 20歳 男勝り テイトンポに弟子入り   ヤシム 24歳 タホの母親  ハニサ 17歳 土器作りの名人 シロクンヌの宿   スサラ 25歳 ムマヂカリの奥さん  ヌリホツマ 55歳 漆塗り名人 巫女  ホムラ 犬 ムマヂカリが可愛がっている

      

追加アシヒコ 56歳 アユ村のリーダー  マグラ 27歳 アユ村の若者  カタグラ 24歳 マグラの弟  フクホ 50歳 アシヒコの奥さん  マユ 25歳 アユ村の娘  ソマユ  19歳 マユの妹  サチ 12歳 孤児 シロクンヌの娘となる アヤクンヌ      エミヌ 18歳  オジヌ 16歳 エミヌの弟  カイヌ 14歳 オジヌの弟    モリヒコ シカ村のカミ  サラ 17歳 スサラの妹 ハギとトツギとなる ヌリホツマの弟子  ナクモ 18歳 エミヌの友人  シオラム 41歳 ササヒコのすぐ下の弟 塩作りの加勢のためシオ村で暮らす 5年に一度、里帰りする  ナジオ 20歳 シオラムの息子 シオ村生まれ  タカジョウ 23歳 ワシ使い  ホコラ 洞窟暮らし 哲人  シップ オオイヌワシ タカジョウが飼っている  エニ 38歳 エミヌ姉弟の母   カヤ アマカミの使者  シラク 北のミヤコのシロのムロヤの責任者  マシベ フジのシロの里の者 ヲウミのシロの村との連絡係り  トモ フジのシロの里の者  イナ 30歳 シロクンヌの姉弟子 杖の達人

   

用語説明 ムロヤ=竪穴住居  大ムロヤ=大型竪穴建物  カミ=村のリーダー  コノカミ=この村のリーダー           グリッコ=どんぐりクッキー  黒切り=黒曜石  神坐=石棒(男性器を模した磨製石器)  塩渡り=海辺の村が作った塩を山の村に運ぶ塩街道があった。ウルシ村から東にシカ村→アマゴ村・・・七つ目がシオ村  御山=おやま。ウルシ村の広場から見える、高大な山々  コタチ山=御山連峰最高峰  トコヨクニ=日本  蚊遣りトンボ=虫除けオニヤンマ ここではオニヤンマの遺骸に竹ひごを刺し、竹ひごをヘアバンドで頭部に固定する  トツギ=一夫一婦の結婚  眼木=めぎ 眼鏡フレーム 曲げ木工房で作っている  クンヌ=イエの頭領  吊り寝=ハンモック  一本皿=長い丸太を半分に割いて作ったテーブル。一本の木から2本取れるが、一本皿と呼ばれている。  一回し=長さの単位 70㎝  半回し=35㎝ 縄文尺とも呼ばれる。  カラミツブテ・カブテ=狩りの道具。コブシ大の二つの石を紐でつなげた物。