縄文GoGo

5000年前の中部高地の物語

第177話 32日目⑭

 
 
 
          それぞれの夜。
 
スサラ  「今日は楽しかったわ。あなたがずっと一緒にいてくれたもの。」
ムマヂカリ  「おれも楽しかったよ。タヂカリも楽しんでいたな。
        薬湯、どうだった?」
スサラ  「もう! すぐそばに人がいたのに、あなた、仕掛けてくるんだもの。
      声を押さえるのに、必死だったわよ。」
ムマヂカリ  「声は出ていたぞ。シオラムあたりには、聞かれているな。」
スサラ  「えー! どうしよう、恥ずかしい・・・」
ムマヂカリ  「森の中では、ヤッホやヤシムにも聞かれたぞ。」
スサラ  「あれはいいのよ。向こうの声の方が大きかったでしょう?」
ムマヂカリ  「ヤッホの声も大きかったな。ヤシムはそんなにいいのかな。」
スサラ  「いいのかも知れないわよ。ヤッホ、早かったでしょう?
      ヤシムは偉いわね。全然ヤッホを責めないんだもの。」
ムマヂカリ  「しかし回復も早かったぞ。計3回だぞ。あれだけの時間に。」
スサラ  「そうよね。お祭りの時のあなたみたい。終りの方のヤシムの張り上げは凄かったわね。」
ムマヂカリ  「声を抑えるのを忘れてしまっていたな。結果、ヤッホはいい仕事をしたんだな。」
 
サチ  「カサカサ。」
ミツ  「さ、さ、サクサク。」
サチ  「く、くでしょう。クルクル。」
ミツ  「る!るかー!るは難しいよ。そうだ、ルンルン。」
サチ  「あー!んが付いたー。キャハハ、ミツの負け。」
 
    日本語にオノマトペが多いのは、縄文人が多用したからだとも言われている・・・
 
カイヌ  「クマジイ、まだ飲んでるの?」
クマジイ  「カイヌか。外におったのか? 火のそばは、あったかじゃろう。」
カイヌ  「うん。アユ村の子と遊んでた。ぼく、ここで寝てもいい?」
クマジイ  「明け方は火が小さくなるからの。しっかり羽織るんじゃぞ。」
シオラム  「さて、おれ達もお開きにするか。それにしても、イナが酒に強いのには驚いた。
       一番、飲んだんじゃないか?」
イナ  「だって美味しかったもの。燻しって、お酒に合うわよね。
     楽しかったわ。クンヌはどこかしら? お休みなさい。」
シオラム  「お休み。また飲もうな。」
クマジイ  「またの。イナがおると、場が明るくなるようじゃ。」
 
エニ  「ヤッホとヤシム、森から帰って来た時、もうベッタリだったわよ。」
クズハ  「サチがハニサの所で寝起きするみたいよ。」
アコ  「ヤッホがヤシムのムロヤに入るのかな。三人で暮らすのって、初めてだよ。」
エニ  「そうよね。タホが産まれてから、初めてよね。
     ねえクズハ、このまま私、テイトンポにくっ付いて寝たいの。いいでしょう?」
クズハ  「いいわよ。もっと抱きついちゃえば?」
エニ  「そうするわ。素敵ねー。胸板が分厚くて。」
 
ソマユ  「それならタカジョウは、一度ミヤコに行って、それからタカの村に行くんだね。
      そこで、タカクンヌになるかも知れないんでしょう?
      こっちには、もう来ないの?」
タカジョウ  「おれは来たいんだ。
        イエの事はまだよく分からんが、こっちにタカの里を作りたい。」
マユ  「ここなんかいいんじゃない? シップウも伸び伸びできるでしょう?」
タカジョウ  「実はおれも、そう思っているんだ。カタグラ達とも、そう話してる。」
 
サラ  「寝てる人も多いから、静かに入らないとね。」
ハギ  「気持ちいいなあ。サラ、隣に来いよ。」
サラ  「うん。先生の秘薬って、男よりも女に効果が出るんだって。
     私も欲しいなと思ったんだけど、村で使うと問題があるみたい。
     人里離れた所で使うなら、くれるって。」
ハギ  「凄い薬みたいだな。どうなるんだろう?
     こんどカタグラに聞いてみなきゃな。」
 
エミヌ  「ねえ*********てほしい!」
カザヤ  「*********が******ぞ。」
エミヌ  「******!*******!」
 
イナ  「いた。もう、また二人でくっ付いてる。あたしここで寝るからね!」
シロクン  「狭いなあ。もう少し離れてくれよ。」
イナ  「お乳飲みなさいっ!」
シロクン  「やめろ。出すな。早く乳をしまえ。」
イナ  「早く飲みなさいっ!」
シロクン  「イナ、やめろ! もう母乳など出んだろう!」
ハニサ  「アハハ。ほんとにオッパイ出してる。」
イナ  「オチチって呼びなさいっ!」
シロクン  「こうやって、無理やり飲まされていたんだっ!」
 
ナクモ  「今日からずっとここなんだね。」
カタグラ  「ああ、タカジョウがいる内に、やっておきたい事も多い。しばらく忙しいぞ。」
ナクモ  「明日起きたら、パヤパヤにエサをあげなきゃ。」
カタグラ  「パヤパヤ?」
ナクモ  「カラスだよ。クロは当たり前過ぎるから、パヤパヤに変えた方がいいって、
      サチとミツが来てそう言ったの。」
カタグラ  「パヤパヤか・・・いい名前だな。」
 
 
 
登場人物 シロクン 28歳 タビンド 特産物を遠方の村々に運ぶ シロのイエのクンヌ  ササヒコ 43歳 ウルシ村のリーダー  ムマヂカリ 26歳 ヒゲの大男   ヤッホ 22歳 ササヒコの息子   ハギ 24歳 ヤスが得意  タホ 4歳 ヤッホとヤシムの息子 ヤシムと暮らしている  タヂカリ 6歳 ムマヂカリとスサラの息子  クマジイ 63歳 長老だが・・・  テイトンポ 40歳 シロクンヌの師匠 その道の達人   クズハ 39歳 ハギとハニサの母親   タマ 35歳 料理長  アコ 20歳 男勝り テイトンポに弟子入り   ヤシム 24歳 タホの母親  ハニサ 17歳 土器作りの名人 シロクンヌの宿   スサラ 25歳 ムマヂカリの奥さん  ヌリホツマ 55歳 漆塗り名人 巫女  ホムラ 犬 ムマヂカリが可愛がっている

      

追加アシヒコ 56歳 アユ村のリーダー  マグラ 27歳 アユ村の若者  カタグラ 24歳 マグラの弟  フクホ 50歳 アシヒコの奥さん  マユ 25歳 アユ村の娘  ソマユ  19歳 マユの妹  サチ 12歳 孤児 シロクンヌの娘となる アヤクンヌ      エミヌ 18歳  オジヌ 16歳 エミヌの弟  カイヌ 14歳 オジヌの弟    モリヒコ シカ村のカミ  サラ 17歳 スサラの妹 ハギとトツギとなる ヌリホツマの弟子  ナクモ 18歳 エミヌの友人  シオラム 41歳 ササヒコのすぐ下の弟 塩作りの加勢のためシオ村で暮らす 5年に一度、里帰りする  ナジオ 20歳 シオラムの息子 シオ村生まれ  タカジョウ 23歳 ワシ使い  ホコラ 洞窟暮らし 哲人  シップ オオイヌワシ タカジョウが飼っている  エニ 38歳 エミヌ姉弟の母   カヤ アマカミの使者  シラク 北のミヤコのシロのムロヤの責任者  マシベ フジのシロの里の者 ヲウミのシロの村との連絡係り  トモ フジのシロの里の者  イナ 30歳 シロクンヌの姉弟子 杖の達人  コヨウ 15歳 タカジョウの妹  ゴン 洞窟で飼われている仔犬  ミツ 11歳 アユ村の少女  カザヤ 24歳 アユ村の若者 カタグラの友人  テミユ 22歳 カザヤの妹  タガオ 32歳 ミツの父親 目がみえない

   

用語説明 ムロヤ=竪穴住居  大ムロヤ=大型竪穴建物  カミ=村のリーダー  コノカミ=この村のリーダー           グリッコ=どんぐりクッキー  黒切り=黒曜石  神坐=石棒(男性器を模した磨製石器)  塩渡り=海辺の村が作った塩を山の村に運ぶ塩街道があった。ウルシ村から東にシカ村→アマゴ村・・・七つ目がシオ村  御山=おやま。ウルシ村の広場から見える、高大な山々  コタチ山=御山連峰最高峰  トコヨクニ=日本  蚊遣りトンボ=虫除けオニヤンマ ここではオニヤンマの遺骸に竹ひごを刺し、竹ひごをヘアバンドで頭部に固定する  トツギ=一夫一婦の結婚  眼木=めぎ 眼鏡フレーム 曲げ木工房で作っている  クンヌ=イエの頭領  吊り寝=ハンモック  一本皿=長い丸太を半分に割いて作ったテーブル。一本の木から2本取れるが、一本皿と呼ばれている。  一回し=長さの単位 70㎝  半回し=35㎝ 縄文尺とも呼ばれる。  カラミツブテ・カブテ=狩りの道具。コブシ大の二つの石を紐でつなげた物。  ボウボウ=樹皮ラッパ 法螺貝よりも高い音が出る。