第180話 33日目③
続き。
ソマユ 「ほんとだ! アコが言った通り。
今日やってもらったら、昨日よりも良くなってる!
ほとんど治ったみたい! ありがとう!」
テイトンポ 「姿勢も良くなったから、悪化することは無いぞ。」
ハニサ 「イナって凄いんだね。」
イナ 「ハニサのお産にも立ち会うわよ。」
ハニサ 「えー! そっちも出来るの?」
イナ 「そうよ。もう、何人も取り上げてるんだから。」
アコ 「あたしの時もお願い!」
ソマユ 「私の時も! まだ先だけど。」
イナ 「いいわよ。でもソマユは良かったわよ。
股関節を剥がしたら、骨盤の矯正になったから。
あのままだったら、お産の時に産道が開かずに、大変な事になっていたかも知れない。」
ソマユ 「そうなの? あー良かった! 本当にありがとう!」
ミツ 「按摩って、覚えると、イナみたいな事が出来る様になるの?」
テイトンポ 「これは按摩と言うより、骨接ぎだな。
イナがやった事は、目が見えんでも出来る。
ただ、それが出来る様になるまでには、2~3年はかかるぞ。」
イナ 「サチのお友達ね。骨接ぎに興味があるの?」
エミヌ 「私ね、大体、満月に月のものが来るの。だから、そのちょっと前がいい。」
カラグラ 「エミヌは、はっきりしておるな(笑)。」
カザヤ 「ハハハ。では、十日月(とおかづき)の出る日ではどうだ?」
エミヌ 「いいよ。九日月(ここのかづき)の次の日ね。間違えない様にしなくちゃ。
ここで2泊出来るでしょう?」
カザヤ 「多分な。でも冬は無理出来ないぞ。雪が降ってたら、来ちゃだめだ。
その辺の判断は、ハギにお願いした方がいいな。」
ハギ 「分かった。そっちとウルシ村では、天気が違うからな。冬は特に。」
エミヌ 「私も分かった。ハギに毎回連れて来てもらうんだから、ハギに従うようにする。」
カザヤ 「昼はここの仕事を手伝うから、何か仕事を作っておいてくれよ。」
カタグラ 「おお、出来るだけそうする。」
カザヤ 「それとは別に、たまに顔を出すからな。」
テミユ 「ナジオって、今いくつ?」
ナジオ 「20歳。」
テミユ 「私の2個下かー。」
ナジオ 「おれが今、海の話をしただろう。今度は黒切りの里の話を聞かせてよ。」
テミユ 「いいわよ。ウルシ村はシオ村に塩作りの加勢に行っていて、
ナジオはそっちで生まれたんだよね?
アユ村は、黒切りの里に行って、お世話をするの。
二日か三日の距離だから、シオ村に比べれば近いでしょう?
だから私、兄さんと一緒に、もう何度も行ってるのよ。」
ナジオ 「黒切りを掘る人達の村なんだろう?」
テミユ 「そうよ。でも、村の様に、はっきりとはしてないの。
掘る場所によって、点々としているの。
掘る場所が、何ヶ所もあるのよ。
そこそこ離れているの。」
ナジオ 「へー。その辺は、シオ村に似てるなあ。」
テミユ 「この靴では歩けない所も多いのよ。」
ナジオ 「どうして?」
テミユ 「刺さるの。黒切りの破片が。
だから木の靴底をニカワ付けした靴に履き替えるの。」
サチ 「ねえ父さん、もしミツのお父さんがウルシ村に来たいと言ったら、どうすればいいの?」
シロクンヌ 「そんなのは簡単だ。父さんが迎えに行く。
ミツの父さんを背負子に乗せて、ミツは抱っこ帯で連れてくるだけだ。
朝ウルシ村を出れば、夕方には戻って来られるよ。
荷物があるなら、誰かがここまで持ってくれば、ここからはハギが持ってくるさ。」
イナ 「クンヌ、ミツと、お父さんを、2~3年ウルシ村に置く事って出来るの?」
シロクンヌ 「2~3年か。
それはおれには分からんが、イナが狩りに加わるから、食い物は問題無いよな。
問題は寝起きする場所だろうが・・・
コノカミに相談してみたらどうだ?」
イナ 「お父さん本人がどう言うか、まだ分からないけどね。」
ハニサ 「シロクンヌとサチが旅立った後なら、あたしのムロヤに来てもらっていいよ。」
イナ 「ほんと? そうすればあたしが、毎晩手ほどき出来るわね。
ミツ、帰ったらお父さんに、ウルシ村に行く様に言うのよ。」
ミツ 「うん。みんな、ありがとう。父さん、きっと行くと思う。
アヤの村の役に立てるんだもの。
父さん、マグラからアヤの村の話を聞いて、泣いてたの。」
エミヌ 「シロクンヌ、あれやってよ。駆け登り。昨日やらなかったでしょう。」
シロクンヌ 「よし! じゃあ、やるか。背負子を取って来る。」
イナ 「あたし、降りる時にやって。」
シロクンヌ 「イナもか。いいぞ。他にもやって欲しい者がいたらやってやるぞ。」
サチ 「ミツ、やってもらおうか?」