第186話 34日目②
━━━ 幕間 ━━━
土偶について。
現在までに、2万点ほどの土偶が発掘されています。
そしてそのほとんどが、故意に壊されて、その後に埋められた様なのです。
それも一ヶ所ではなく、離れた場所に、バラバラに埋められていたりします。
非常に手が込んでいるものから、簡単なものまで様々ですが、
女性、それも妊婦を象(かたど)ったものが多いと言われています。
2万点という数ですが、約1万年の間の話ですから、多いとは言えません。
土器に比べれば、はるかに少ない。
しかし作者は、焼土製品なら、発掘された数の100倍は存在していたと考えていますから、
それで言えば、200万点が製作された事になります。
平均すれば、全国で年間200点。それでも少ないですよね。
どれもデフォルメされていて、写実性には乏しいのですが、中には非常に精工なものもあります。
作りなれた人しか作れない、そんなものも多いのです。
見るからに、子供の粘土遊び、そんなものもあります。
そして土偶の謎としてよく取り上げられるのは・・・
*何のために作ったのか?
*どうして壊したのか?
この2点が、よく語られる様に思います。いずれも色々な説があり、真相は謎のままです。
作者は、これ以外にも不思議に思う事があります。
*精工な土偶の製作者は、どこで(なにで)腕を磨いたのか?
*たとえば『縄文の女神』の製作者は、他には土偶を作らなかったのか?
さて、土偶とは、いったい何だったのでしょうか?
飛び石。身代わり人形の奉納。
ヌリホツマ 「飛び石の上に、人形を5体ずつ置け。
残りは、焚火の前に敷き詰めた、松の小枝の上に並べよ。
寝かしてよいぞ。
その上に、干し草を掛けよ。
よろしい。」
ササヒコ 「準備は整ったな。では、身代わり人形の奉納を行う。」
ヌリホツマ 「ハーニーサーにーやーどーりーしーあーらーたーなーるー・・・・・」
ササヒコ 「では、ハニサからだ。タイマツに火を移し、干し草の上に置け。」
ハニサがタイマツを置くと、干し草が燃え出した。
ササヒコ 「次は、シロクンヌ。」
シロクンヌも火のついたタイマツを、干し草の上に置いた。
こうして主だった者10名ほどが、タイマツを置いた。
やがて、松の小枝が燃え始め、急激に熱せられた身代わり人形は、
パンパンと乾いた音を立て割れていった。
ヌリホツマ 「ふーりーかーかーらーんーとーすーるーわーざーわーいーをーそーのー・・・」
ササヒコ 「ハニサ、飛び石の人形を1体、川に落とせ。
次は、シロクンヌだ。・・・・・」
夕食の広場。
ヤシム 「珍しく、割れ残りが二つも出たね。しかも一つは、タホが作った人形。」
ハニサ 「もう一つは、イナが作ってくれたものでしょう?
一番、乾いて無かったんだよ。真っ先に割れると思っていたのに、不思議だよ。
二つとも綺麗に焼き上がっていたから、びっくりした。」
イナ 「この村では、割れ残りって、どういう捉え方なの?」
ヌリホツマ 「この村では、初めてじゃ。じゃから、吉祥という事でよい。
割って、タホのはハニサのムロヤを囲む様に、
イナのは村のあちこちに埋めるのじゃ。
そうすれば、さらに強い身代わりとなる。」
シロクンヌ 「旅をしていると、割れ残りの話をたまに聞くが、吉兆と見る所が多いな。」
ヤッホ 「じゃあ、二体も出たんだから、ハニサ、良かったじゃないか。」
ハニサ 「そうだね。良かった。タホとイナに、お礼、言わなくちゃ。」
シロクンヌ 「やはり、ハニサは護られているのだな。」