縄文GoGo

5000年前の中部高地の物語

第193話 36日目③

 
 
 
          大ムロヤ。
 
ササヒコ  「何だシオラム、あれほど吹いておったくせに、こてんこてんではないか。」
アコ  「いいとこ無しだね。」
シオラム  「やっていて、心が折れた。
       アコ、そんな事言うならやってみろよ。」
アコ  「よし!」
 
オジヌ  「アコも大差負けか・・・」
テイトンポ  「なんと言うか、今までのおれ達は、幼稚だったな。」
ササヒコ  「奥が深い。」
サチ  「ミツは強いねえ。」
アコ  「序盤はイケルと思ったんだよ。」
シオラム  「そうだろう? おれも、アコの勝ちだと思った。」
イナ  「もたもたしてる様に見えたけど、あれも作戦なの?」
クマジイ  「先を読んでの、序盤じゃったのか?」
ミツ  「動かしていいのは前と横だから、後戻りできないでしょう。
     だから防御がきくギリギリのところに集めて様子を見る作戦でやってみたの。」
タガオ  「勝機を見出したら、一挙に行くやり方だな?」
ミツ  「次、父さんがやる?」
タガオ  「よし! どなたかお相手をしてもらえんかな。」
ササヒコ  「と言って、目が見えんのに、どうやるのだ?」
ミツ  「父さんが口で言ったドングリを、私が動かすの。」
ササヒコ  「何だかよく分からんが、やってみるか。」
 
タガオ  「3の6のドングリを、右、前、左、左。これで4連になっただろう?
      もう一度出来るな。
      5の6を前、右、前、左。」
ササヒコ  「アイタタター!」
タガオ  「4連だ。もう一度だな。
      さて、次は・・・」
クマジイ  「タガオも相当強いのう。」
オジヌ  「凄い! 粘土版が、頭に入ってるの?」
テイトンポ  「動いたドングリを、よく覚えていられるな。」
ミツ  「時々、間違える時があるよね?」
タガオ  「一度間違えたとなると、もう取り返しがつかんな。
      そこから先は滅茶苦茶だから、マイッタするしかない。
      では、6の6を・・・」
 
 
          ハニサのムロヤ。
 
ハニサ  「久しぶりに、二人っきりだね。」
シロクン  「そうだなー。ハニサもここに横になって、体をぐーんと伸ばしてみろ。
        気持ちがいいぞ。」
ハニサ  「うふふ。腕枕してほしい。ナクモはどうしていた?」
シロクン  「何だか洞窟暮らしが、板についていたぞ。
        カタグラもタカジョウも、楽しそうだったな。」
ハニサ  「ソマユには会った?」
シロクン  「足がほとんど治った様だな。
        イナに感謝しておった。ハニサにも会いたがっていた。
        おそらくあと一度、イナが施術すれば、完全に治るのではないかな。
        そうだ! ハニサ、旅立つ前に、もう一度洞窟に連れて行ってやろうか?」
ハニサ  「ほんと? 行きたい。その時、ソマユも呼ぶの?」
シロクン  「ああ。カザヤに言えば、連れて来るんじゃないか?
        エミヌも誘ってみるか。
        それから、イナはもちろんだが、コノカミも誘ってみよう。」
ハニサ  「あー楽しみ! 一泊するんでしょう?」
シロクンヌ  「そうだ。一泊して、二日連続で施術するのがいいと思う。」
ハニサ  「いつ頃行けそうなの?」
シロクン  「明日は作業小屋の裏手の整地をするだろう。
        そして増築が、あと4日ほどで完了するから・・・6日後でどうだ?」
ハニサ  「6日後かー! ねえ、大ムロヤにみんな集まってるんじゃない?
      行ってみようよ。いたら、今の話をしてみない?」
 
 
          大ムロヤ
 
イナ  「そうね。あたしも、出来ればあと一度、施術したかったの。
     6日後なら、時期的にもいいわね。
     一泊でしょう?コノカミも一緒に行きましょうよ。」
テイトンポ  「そうだ。コノカミは、あそこで一泊しておいた方がいいぞ。
        おれとアコは今回残るから、シオラムも行ったらどうだ?
        もうシオ村に戻るのだろう?」
シオラム  「そうだな。戻る前に、もう一度行っておくか。兄貴、洞窟で、酒を酌み交わすか。」
ササヒコ  「ハハハ、いいな。なるほど良い機会だ。泊まり心地を味わっておくか。
       サチも行くのだろう?ミツとタガオも行けばいい。
       シオラム、タガオを背負って行ってくれ。」
シオラム  「分かった。兄貴は背負うのは、まだ止めておいた方がいいぞ。」
タガオ  「おれも行っていいのか? すまんな。足場さえ良ければ、歩くからな。」
サチ  「私達も行けるって!」
ミツ  「うん!良かったね!」
ササヒコ  「アシヒコとフクホも、誘ってみるか。」
アコ  「テイトンポ、オジヌが行きたそうな顔をしてるよ。」
テイトンポ  「おおそうか。オジヌ、おまえも行って来い。ミツが疲れる前に、背負ってやれ。
        コヨウを誘えばいい。」
オジヌ  「やったー! ありがとう! 
      おれ、奥の洞窟を、少し探検してみたいんだ。」
クマジイ  「お宝が、眠っておるやも知れんぞい。」
 
 
登場人物 シロクン 28歳 タビンド 特産物を遠方の村々に運ぶ シロのイエのクンヌ  ササヒコ 43歳 ウルシ村のリーダー  ムマヂカリ 26歳 ヒゲの大男   ヤッホ 22歳 ササヒコの息子   ハギ 24歳 ヤスが得意  タホ 4歳 ヤッホとヤシムの息子 ヤシムと暮らしている  タヂカリ 6歳 ムマヂカリとスサラの息子  クマジイ 63歳 長老だが・・・  テイトンポ 40歳 シロクンヌの師匠 その道の達人   クズハ 39歳 ハギとハニサの母親   タマ 35歳 料理長  アコ 20歳 男勝り テイトンポに弟子入り   ヤシム 24歳 タホの母親  ハニサ 17歳 土器作りの名人 シロクンヌの宿   スサラ 25歳 ムマヂカリの奥さん  ヌリホツマ 55歳 漆塗り名人 巫女  ホムラ 犬 ムマヂカリが可愛がっている

      

追加アシヒコ 56歳 アユ村のリーダー  マグラ 27歳 アユ村の若者  カタグラ 24歳 マグラの弟  フクホ 50歳 アシヒコの奥さん  マユ 25歳 アユ村の娘  ソマユ  19歳 マユの妹  サチ 12歳 孤児 シロクンヌの娘となる アヤクンヌ      エミヌ 18歳  オジヌ 16歳 エミヌの弟  カイヌ 14歳 オジヌの弟    モリヒコ シカ村のカミ  サラ 17歳 スサラの妹 ハギとトツギとなる ヌリホツマの弟子  ナクモ 18歳 エミヌの友人  シオラム 41歳 ササヒコのすぐ下の弟 塩作りの加勢のためシオ村で暮らす 5年に一度、里帰りする  ナジオ 20歳 シオラムの息子 シオ村生まれ  タカジョウ 23歳 ワシ使い  ホコラ 洞窟暮らし 哲人  シップ オオイヌワシ タカジョウが飼っている  エニ 38歳 エミヌ姉弟の母   カヤ アマカミの使者  シラク 北のミヤコのシロのムロヤの責任者  マシベ フジのシロの里の者 ヲウミのシロの村との連絡係り  トモ フジのシロの里の者  イナ 30歳 シロクンヌの姉弟子 杖の達人  コヨウ 15歳 タカジョウの妹  ゴン 洞窟で飼われている仔犬  ミツ 11歳 アユ村の少女  カザヤ 24歳 アユ村の若者 カタグラの友人  テミユ 22歳 カザヤの妹  タガオ 32歳 ミツの父親 目がみえない

   

用語説明 ムロヤ=竪穴住居  大ムロヤ=大型竪穴建物  カミ=村のリーダー  コノカミ=この村のリーダー           グリッコ=どんぐりクッキー  黒切り=黒曜石  神坐=石棒(男性器を模した磨製石器)  塩渡り=海辺の村が作った塩を山の村に運ぶ塩街道があった。ウルシ村から東にシカ村→アマゴ村・・・七つ目がシオ村  御山=おやま。ウルシ村の広場から見える、高大な山々  コタチ山=御山連峰最高峰  トコヨクニ=日本  蚊遣りトンボ=虫除けオニヤンマ ここではオニヤンマの遺骸に竹ひごを刺し、竹ひごをヘアバンドで頭部に固定する  トツギ=一夫一婦の結婚  眼木=めぎ 眼鏡フレーム 曲げ木工房で作っている  クンヌ=イエの頭領  吊り寝=ハンモック  一本皿=長い丸太を半分に割いて作ったテーブル。一本の木から2本取れるが、一本皿と呼ばれている。  一回し=長さの単位 70㎝  半回し=35㎝ 縄文尺とも呼ばれる。  カラミツブテ・カブテ=狩りの道具。コブシ大の二つの石を紐でつなげた物。  ボウボウ=樹皮ラッパ 法螺貝よりも高い音が出る。