第195話 41日目②
大ムロヤ。
タカジョウ 「これがハニサが作った身代わり人形か。やはり、ひときわ、出来が違うな。
口から尻までの通し穴があるんだな?」
ハニサ 「そう。葦(あし)の茎に包んで人形を作ったの。
通し穴人形は、一層身代わりの力を発揮するって言うからね。
磨きもしっかり施したから、紋様に光沢があるでしょう?
器と違って、砂を混ぜてないから、粘土が堅光りするの。
砂が無い方が、割れやすいものね。」
タカジョウ 「こんなに出来の良い人形が割れるのは、もったいない気もするが、
割れてこそ、身代わりの役目を果たすのだからしょうがないなあ。
おれもひとつ、丹精込めて、アコの身代わり人形を作るとするか。
でもハニサの時は、割れ残りが出たんだってな?」
シロクンヌ 「そうなんだ。それも2体。ウルシ村では、割れ残りは初らしいぞ。」
ハニサ 「ヌリホツマは、吉祥だって言ってたよ。」
タカジョウ 「ハギがそう言って喜んでおった。
それから、ムマヂカリの所もオメデタなんだろう?
ハギも頑張ると言っていたし、アマテルには同年が多いだろうな。」
シロクンヌ 「ヤッホも頑張りぬいておるようだぞ(笑)。」
タカジョウ 「ハハハ、ヤシムはなんだか綺麗になったよな?」
ハニサ 「なった! 表情が生き生きしてるもん。ヤッホは朝寝坊する様になったよ。」
タカジョウ 「ワハハハ、分かりやすいな。」
シオラム 「お!お!お!おー!
やったなー!とうとうミツに勝ったな!」
サチ 「うん!初めて勝った。」
ミツ 「あー!負けたー!」
タガオ 「ほう!ミツを負かしたか!」
ササヒコ 「終盤は、あれよあれよと進んだから、
どっちがどうなのか、ワクワクしながら見ておったぞ。」
イナ 「サチは無防備に見えて、そのまま逃げ切っちゃったから凄いね。」
ミツ 「1個押さえたら逆転出来たはずだけど、押さえられなかった。」
シオラム 「今日のサチは、ドングリに勢いがあったな。」
イナ 「じゃあタガオ、四つん這いになって。肩甲骨を動かす練習をしよう。」
タガオ 「よし!それが済んだら、ムシロ絞りだな?
力がついてきているのが自分でも分かるから楽しいよ。」
サチ 「もう一回やろう!」
ミツ 「うん!今度は勝つよ。」
ササヒコ 「ところでシオラム、今回は収穫が多かったろう?」
シオラム 「ああ、来て良かったよ。
木曲げを教わっただろう。アケビのツルの湯剥きも教わった。
舟の作り方も新しい方法が加わった。
ボウボウももしかすると海の上でも役に立つかも知れん。
木の皮鍋は、浜で貝や磯の小魚でやると最高に旨いぞ。
ヒノキの皮剥ぎも見知ったし、サチの小屋造りだけでも大収穫だ。
シオ村は風が強いから、サチのやり方がいい。
そして、この遊びだ。
テイトンポやシロクンヌ、そしてイナにも出会えたしな。」
ササヒコ 「シロクンヌが来てから、まだひと月半ほどだが、村は様変わりした。
スワとの友好が築けたのもシロクンヌがきっかけだ。」
シオラム 「そして光の子だ。この村で、光の子が産まれるんだぞ。」
ササヒコ 「アマテルか・・・どんな子だろうな・・・
ここらもミヤコになるのだ。日に日に変わって行くだろう。
シオラム、これまで5年に一度の里帰りであったが、
これからは、シオ村とミヤコとの調整役として、頻繁に行き来してもらわねばならん。
ナジオと二人で、よろしく頼むぞ。」
シオラム 「そうだな。帰り掛けに、塩渡りの村々に、今後の事を相談をしながら帰るとするか。」
シロクンヌ 「丁度今、二人の話を小耳に挟んだが、アマカミには特産物などの献上がある。
おれはそれを、ミヤコ造りや塩の渡りで世話になった近隣の村々に、
公平に分配しようと思っている。
だからシオラム、その旨を塩渡りの村々に伝えて欲しいのだ。
その上で、シオラムの宿泊の便を図る様、依頼してもらえないか?」
シオラム 「なるほど、分かった。それが一番、どこからも不平や不満の出んやり方だろうな。
おれもこの先、遠慮無く道中の宿を請うことが出来る。」
シロクンヌ 「これからは、こことシオ村の連絡が、重要になるはずだ。
シオラムとナジオがその役を担ってくれたら、おれとしても大助かりなのだ。」
シオラム 「了解した。向こうに帰れば仲間もおるし、必要なら組を作ってやってもいいか・・・
洞窟の話をすれば、みんな絶対に行きたがるだろうしな(笑)。」
ハニサ 「明日は洞窟だねー!ソマユに会えるんだ。」