第199話 42日目④
湧き水平。昼食。
マユ 「そんな事があったのね。遅かったから心配していたの。ミツ、大丈夫だった?」
ミツ 「うん、怖かったけど、イワジイが来てくれて、シップウも来てくれたから。」
カタグラ 「オロチとか言う奴、末恐ろしいガキだな。」
フクホ 「怪我をしているなら、どこかの村に立ち寄るかも知れないね。」
オジヌ 「顔に怪我をしたのなら、見たらすぐに分かるね。」
アシヒコ 「近隣の村にはすぐに伝わるじゃろうから、遠からず捕縛出来るかも知れんのう。」
コヨウ 「ところで、お爺ちゃん、石ツラ道に入ったっきり、全然出て来ないね。
お腹減ってないのかな?」
オジヌ 「コヨウ、後で奥の洞窟を探検してみようよ。サチとミツと四人で。」
コヨウ 「うん、お爺ちゃんも誘っていい?」
オジヌ 「いいよ。でも、滑り止めの靴底は四人分しか無いんだ。」
コヨウ 「お爺ちゃん、きっと何かそういうの持ってるよ。」
タカジョウ 「エミヌ、後で燻しをやってみるか?」
エミヌ 「うん!教えて!カザヤも一緒にやるでしょう?」
カザヤ 「いいな。ソマユもやるだろう?燻し用のシジミを持って来てるから。」
イナ 「ソマユはシジミの燻しが出来るの?あれ、難しいのよ。」
ソマユ 「シジミの身の水抜きが難しいわね。失敗すると臭くなるし。」
イナ 「じゃあ食べ終わったら、薬湯で施術するわ。その後であたしも燻しを見てみたい。」
ソマユ 「ハニサも一緒にやるでしょう?その後で、栗の友蒸し作ってよ。」
ハニサ 「いいよ。そっか、ここ、ナマ栗がいっぱい保存してあるんだ。」
タカジョウ 「カタグラ、タガオと竹スノコを組むのをやってくれんか?
タガオは寝転ぶと気持ちのいいスノコを組むのが上手いんだ。
タガオもいいだろう?」
タガオ 「ああいいぞ。カタグラ、一緒にやるか。竹はあるのか?」
カタグラ 「いいのがある。そうか、タガオは筏組みが上手かったからな。」
奥の洞窟。
オジヌ 「よし、タイマツに火をつけるよ。」
コヨウ 「お爺ちゃん、居ないね・・・お爺ちゃーん!」
オジヌ 「返事が無いな・・・どこかに滑って落ちてなきゃいいけど・・・」
サチ 「探してみようよ。ミツは私に付いて来てね。オジヌ、私、右の奥に行ってみる。」
オジヌ 「そっちは危ないんだろう?気をつけて、無茶しちゃ駄目だよ。」
サチ 「うん。松明はミツが持って。私は見えるから。」
ミツ 「見えるって?」
サチ 「私、みんなが暗いと思っている所でも、物が見えるの。生まれつきなんだよ。」
ミツ 「へー、凄いねー!」
サチ 「ここから先は、急な下り坂になってるね。どうしようかな・・・」
ミツ 「イワジイー。聞こえるー?」
イワジイ 「おーい。聞こえるぞー。」
サチ 「居た!」
ミツ 「居たね!イワジイー、大丈夫ー?」
イワジイ 「おーい。今戻るぞー。」
サチ 「良かった!無事みたいだね。この縄を岩に結び付けて下に垂らそうか。」
ミツ 「え?結べる岩ってある?」
サチ 「あそこにいいのがあるよ。」
ミツ 「えー!あんなに高いところまで、どうやって行くの?危ないよ。」
サチ 「行かないよ。ここからカブテを投げて、あそこに通すんだよ。縄を付けてね。」
ミツ 「ああそうか!サチなら出来るね。でもそうなると、縄が足りなくない?」
サチ 「うん。オジヌのも要るね。オジヌはたくさん持って来てたから。
オジヌー、来てー。
途中に危ない裂け目があるから、私、迎えに行って来る。ミツはここを動かないでね。」
イワジイ 「ふう、助かった。すまんかったな。」
コヨウ 「お爺ちゃん、怪我しなかった?」
イワジイ 「怪我はしておらん。ここまで来たら、滑り落ちてしもうたんじゃ。
這い上がろうにも滑って上手くいかんから、先に進んでみたんじゃよ。」
コヨウ 「お爺ちゃん、滑り止めの靴底とか持ってないの?」
イワジイ 「面目ない。持っておらんのじゃ。
そうじゃった、コヨウ、お宝の隠し場所がわかったぞ。」
オジヌ 「えー!お宝があったの?」
コヨウ 「見てみたい!」
イワジイ 「いやいや、場所が分かっただけじゃ。お宝は見ておらん。
有るか無いかもわからん。」
オジヌ 「どういう事なの?」
イワジイ 「言い伝えではの、お宝は洞窟に沈めた、となっておるんじゃ。」
コヨウ 「沈めた?洞窟に沈めるって変じゃない?」
イワジイ 「そうじゃろう?じゃが在ったんじゃよ、この先に。泉がの。」
オジヌ 「水溜まりが在るの?」
イワジイ 「そうじゃ。そんなに広くは無いがの。だが深そうじゃ。
そしての、水が恐ろしく、冷たいんじゃ。」
オジヌ 「サチなら、底が見えるんじゃない?」
サチ 「うん。見えるかも知れない。行ってみる?」
オジヌ 「行こうか!帰りはこの縄で、一人ずつ登って来ればいいよ。」