第206話 42日目⑪
入口の洞窟。
楽しかった夕食も終わり、焚き火の周りは、自然、酒宴の場となった。
酒を飲まない者達は、薬湯に入ったり、飛び越しで遊んだり、奥の洞窟に行ってみたり・・・
それぞれが、楽しんでいる。
ソマユ 「タガオ、注いであげるね。はい、どうぞ。」
タガオ 「おお、すまんな。」
ハニサ 「ソマユのお酌、なんだか板に付いてるね。毎日やってたんでしょう(笑)。」
ソマユ 「えー。やってないよ。これからは、毎日やってあげるね。」
マユ 「見せつけるわね。タガオが真っ赤になってるじゃない。」 笑いがおきた。
タカジョウ 「楽しそうだな。外の見回りをして来たが、特に異常はなかった。
念のために、要所要所に縄を張って、鳴子を付けて来たよ。」
カタグラ 「この上の風穴の周りにもやってきた。今夜は、もう外に出ん方がいいな。」
ササヒコ 「ご苦労さん。さ、二人も飲め。注いでやる。
タカジョウと酒を酌み交わすのも、久しぶりだ。」
アシヒコ 「あの入口の杭は、考えたもんじゃなあ。」
カタグラ 「そうだろう?ミツの発案なんだ。あれのお陰で、ナクモもおれも安心して眠れる。」
サラ 「先生、強い!」
ハギ 「ヌリホツマは、本当に飛び越しやるの初めてか?」
フクホ 「初めてでこれなら、相当強いわね。」
エミヌ 「えー、どうしよう・・・」
カザヤ 「エミヌ、頑張れ!」
ナクモ 「あったかいキノコ汁と冷たい山ブドウ汁、どっちがいい?
キノコ汁がいい人、手を挙げて。」
ヌリホツマ 「わしは両方もらいたいが、いいか?」
カザヤ 「おれも。」
エミヌ 「私も。」
ナクモ 「じゃあ、両方持って来るね。」
シロクンヌ 「あー、いい湯だった。」
サチ 「ポッカポカだね。」
ミツ 「うん。こないだのと違う薬湯だった。」
ササヒコ 「サチもミツも、大はしゃぎだったな。」
イナ 「きっとクンヌが、高い所からチョロチョロお湯を掛けてたのよ。」
シオラム 「衝立が、高くなったんだなあ。」
カタグラ 「ああ、ナクモに言われてな。高くした。」
マユ 「つまんなくなっちゃったわね・・・」
ハニサ 「なんのこと?」
シオラム 「ワハハ、ところでナジオ、おれはあさってシオ村に帰るが、おまえはどうする?」
ナジオ 「おれはスワの村々で、もう少し舟作りの手伝いをしなくちゃいけないんだ。」
シオラム 「えーと、何て言う名前だったかな・・・」
ソマユ 「テミユ?」
シオラム 「そうそう、テミユとはどうなっておるんだ?」
ナジオ 「ん?付き合ってるよ。」
シオラム 「兄貴、おれは帰るが、ナジオはこっちに置いておこうか?
こっちからシオ村への連絡係も要るだろう?」
シロクンヌ 「それがいいぞ。ナジオは長駆けが速いんだ。さっきは驚いたよ。」
ササヒコ 「そうなのか。ナジオはそれでいいか?」
ナジオ 「いいよ。今はあっちこっち行ってるけど、もう少し経ったらどこかに落ち着くよ。」
アシヒコ 「アユ村に住むのなら、歓迎するぞい。」
イナ 「あっちこっちに行ってる間、テミユはどうしてるの?」
ソマユ 「ずーっと一緒だよねー。」
ナジオ 「うん。舟作りの手伝いをしてもらってる。」
タカジョウ 「今日はどうしたんだ?」
ナジオ 「マグラの用事で向こうにいるけど、明日の朝マグラと二人で、こっちに向かう事になってる。
その後にテミユとおれは、ウルシ村に行こうかっていう話になってるんだ。」
シロクンヌ 「ウルシ村でシオラムを見送るんだな。
ソマユは、いつウルシ村に来るんだ?おれが迎えに行った方がいいだろう?」
ソマユ 「いいの?そうしてもらうと助かる。三日後以降ならいつでもいいよ。」
タカジョウ 「シロクンヌ、ミヤコへの出立の日取りは決まっているのか?」
ハニサ 「そうそれ。決めておいたら?」
シロクンヌ 「そうだな。おそらくだが、五日以内にヲウミからの3人が到着する。」
カタグラ 「女神の護りの3人か?」
アシヒコ 「女神の護りと言うのは?」
イナ 「ハタレが悪さをしに来たら、いち早く気付くように、
シロのイエの者がハグレに扮して、ウルシ村の周りの6ヶ所に住むの。
フジのシロの里からの3人は到着してるけど、ヲウミのシロの村からの3人がまだなのよ。」
アシヒコ 「なるほどの。手抜かりは無いんじゃな。
その3人が来れば、シロクンヌも安心して旅立てる訳じゃの。」
シロクンヌ 「そうだ。だからこうしておこうか。
四日後に、ソマユを迎えに行く。
ミヤコへの旅立ちは、六日後だ。」
タカジョウ 「六日後か。分かった。」
シロクンヌ 「サチとミツも、いいか?」
サチ 「はい!」
ミツ 「わー、なんかドキドキして来るね。」
ソマユ 「私は四日後ね。荷物の整理しとかなきゃ。」
イナ 「ねえ、クンヌ。ハニサのムロヤに、火棚を作ってよ。」
ササヒコ 「そうだ。あそこだけは、火棚が無かったな。」
シロクンヌ 「夜、腹が減った時に、火棚に下げておいた物を食うんだな。
イナのことだから、いろいろぶら下げそうだな(笑)。」
ササヒコ 「クルミの乾燥保管役にもなってくれ。」
ハニサ 「いいよ。シロクンヌ、大き目なのを作ってね。」
シロクンヌ 「分かった。乾燥保管役というのがあるのか。」
ハニサ 「そうだよ。母さんのムロヤは、トチの実の乾燥保管役。
火棚の上は、ザルに入ったトチの実でいっぱいだったよ。」
ナジオ 「そうだ、シロクンヌ、旅立つとき、アユ村から舟に乗ってよ。
出来栄えを見てほしいんだ。」
シロクンヌ 「じゃあ、舟で湖を渡るか。」
コヨウ 「あー寒かった。オジヌとお爺ちゃんと、洞窟探検に行って来た。」
イワジイ 「ここはぬくいのう。」
イナ 「キノコ汁があるわよ。」
オジヌ 「ありがとう。熱っ、あったまるね。」
タカジョウ 「コヨウ、六日後の出立と決まったぞ。アユ村から舟に乗る。」
コヨウ 「こっちにタカの里を作るんでしょう?また会えるよね?」
タカジョウ 「ああ、ミヤコがこっちになるんだし、こっちに里を作ろうと思っている。」
カタグラ 「ここにすればいいんだ。湧き水平にだって、小屋を建てれば何人も住めるぞ。」
シロクンヌ 「その気になれば、見晴らし岩の横にも小屋は建つぞ。見晴らし小屋だ(笑)。」
タカジョウ 「いいな。見晴らし小屋で、シップウと暮らそうかな(笑)。」
ハニサ 「でも子作りを迫られるんでしょう?女の人3人と暮らすんじゃない?」
イワジイ 「いいのう。わしも混ぜてくれ。」
コヨウ 「お爺ちゃん、全然枯れて無いじゃない!」
場が、笑いに包まれた。