縄文GoGo

5000年前の中部高地の物語

第225話 48日目③

 
 
 
          河原での饗宴。
 
ソマユ  「もう光らないね。やっぱりあの時だけなのかな・・・」
シロクン  「そうだな・・・」
イナ  「光るって聞いてたけど、もうビックリ!
     あんなに光るなんて。
     やっぱりハニサはヒト神ね。」
ヤッホ  「今までで一番光ったよな。でもあんなに光って、ハニサは疲れてないのか?」
ハニサ  「・・・え?疲れてはいないよ。」
ヤシム  「最後はお腹に光の渦巻きが見えたから、アマテルも光ってたんだね。」
ササヒコ  「それにしても、さっきのハニサの美しさと言ったら・・・
       まさしくヒト神だ。なあシロクンヌ。」
シロクン  「うむ。たじろぐほどに、美しかった。」
サチ  「お姉ちゃんは、やっぱり女神様だ。」
ミツ  「女神様のお陰で、少しだけど父さんの目が良くなった。」
タガオ  「おお。信じられん事だ。ぼんやりとだが、見えるようになった。」
ソマユ  「ハニサ、ありがとう!ハニサのお陰よ。」
イナ  「良かったわね。もしかすると、これから少しずつ見える様になるのかも知れないわね。」
タガオ  「そうなら良いが、でもこのままでも昨日までとは全然違う。
      明るい暗いは分かるし、男か女かの区別も、なんとなく付くからな。」
テイトンポ  「両目共なのか?」
タガオ  「そうなんだ。同程度の見え方だな。
      しかしこうして見ると、イナは本当に細いんだなあ(笑)。」
ソマユ  「とてもあんなに力があるなんて見えないでしょう?」
シロクン  「鍋が煮えたぞ。ハニサ、取ってやるよ。極上のムジナ汁だ。」
ハニサ  「え?・・・あ、ああ、ありがとう。」
クマジイ  「ぼうっとしておるのう。
       まあ、あれだけ光ったんじゃから無理もなかろう。
       ほいじゃがハニサはつわりは無いんじゃな。アコは急につわりが来た様じゃが・・・」
ヤッホ  「動物くさい食い物が駄目だってさ。向こうで一人、トチ団子を食べてるよ。
      だけど意外だな。ハニサの方がつわりでやられそうに見えるけど・・・」
ハギ  「どうしたハニサ?口数が少ないけど、やっぱり淋しいのか?」
ハニサ  「そりゃあ淋しいけど・・・
      今、粘土の事を考えていたの。」
シロクン  「粘土?器作りの粘土か?」
ハニサ  「そう。さっきあたし、光ったでしょう?
      あの時にあたし、器の事がいろいろ閃いたの。
      もっともっと良い器を作りたいの。
      まず粘土を変えるのよ・・・
      それだけじゃなくて、大事なのは、砂。
      もっと細かい砂・・・
      焼き上がりの地肌がスベスベになるような・・・
      そうすれば、もっと細かい紋様が刻み込める・・・」
ミツ  「女神様の器!それで炊いた物を食べたら、父さんの目もきっと良くなるよ。」
ソマユ  「そうね。あたしもそんな気がする。」
ハニサ  「ねえイナ。イナはこの周りで狩りをするんでしょう?
      あたしも連れて行って。
      あたしは粘土を探すの。砂も探す。」
イナ  「えー!危ないわよ。山の中を歩き回るんだから。転んだら大変よ。」
ハギ  「そうだぞ。無茶は駄目だぞ。」
イナ  「あたしが狩りをしながら探してあげるわよ。
     良さそうな粘土や砂を見つけたら、持ち帰って見せてあげるから、
     それをハニサが気に入れば、たくさん採って来ればいいじゃない。」
ムマヂカリ  「その方がいい。おれも気に掛けて探してみるよ。」
ハギ  「うん。おれも川沿いで探してやる。川沿いは粘土が多いから。」
サラ  「私も薬草採りの合間に探すよ。」
ハニサ  「みんな、ありがとう。
      それならあとは・・・
      丸・・・まん丸。
      同じ厚みで・・・」
シロクン  「ハニサ・・・」
クマジイ  「器の事で、頭がいっぱいの様じゃな。」
ヌリホツマ  「以前、ゆうたじゃろう。いずれハニサには神が降りると。
        ハニサの器は、神力を強めるじゃろうな。」
シロクン  「そうだな。しばらくそっとしておこう。
        アコは大丈夫か?つわりで苦しそうだが。」
テイトンポ  「うむ、そうは言っても、少しは食べた方が良いんだろう?」
ヌリホツマ  「わしが明日、ぷるんぷるんを作って進ぜよう。
        おめでた続きじゃったから、こんな事もあろうかと、用意はしてある。
        サラ、手伝っておくれよ。」
テイトンポ  「ぷるんぷるん?一体、何の事だ?」
ヌリホツマ  「プルンプルンした物じゃよ。イノシシやシカの骨や腱を細かく砕いて作る。
        じゃからそれ自体にも滋養はあるが、薬草や好みの果実などを混ぜれば、
        のど越しの良い食べ物となる。
        キッコを加えても良かろうな。」
テイトンポ  「そうなのか。是非頼む。力仕事ならおれも手伝うぞ。」
ヌリホツマ  「そうじゃのう・・・では、すりつぶしを頼もうか。」
 
 
登場人物 シロクン 28歳 タビンド 特産物を遠方の村々に運ぶ シロのイエのクンヌ  ササヒコ 43歳 ウルシ村のリーダー  ムマヂカリ 26歳 ヒゲの大男   ヤッホ 22歳 ササヒコの息子   ハギ 24歳 ヤスが得意  タホ 4歳 ヤッホとヤシムの息子 ヤシムと暮らしている  タヂカリ 6歳 ムマヂカリとスサラの息子  クマジイ 63歳 長老だが・・・  テイトンポ 40歳 シロクンヌの師匠 その道の達人   クズハ 39歳 ハギとハニサの母親   タマ 35歳 料理長  アコ 20歳 男勝り テイトンポに弟子入り   ヤシム 24歳 タホの母親  ハニサ 17歳 土器作りの名人 シロクンヌの宿   スサラ 25歳 ムマヂカリの奥さん  ヌリホツマ 55歳 漆塗り名人 巫女 本名はスス  ホムラ 犬 ムマヂカリが可愛がっている

      

追加アシヒコ 56歳 アユ村のリーダー  マグラ 27歳 アユ村の若者  カタグラ 24歳 マグラの弟  フクホ 50歳 アシヒコの奥さん  マユ 25歳 アユ村の娘  ソマユ  19歳 マユの妹  サチ 12歳 孤児 シロクンヌの娘となる アヤクンヌ      エミヌ 18歳  オジヌ 16歳 エミヌの弟  カイヌ 14歳 オジヌの弟    モリヒコ シカ村のカミ  サラ 17歳 スサラの妹 ハギとトツギとなる ヌリホツマの弟子  ナクモ 18歳 エミヌの友人  シオラム 41歳 ササヒコのすぐ下の弟 塩作りの加勢のためシオ村で暮らす 5年に一度、里帰りする  ナジオ 20歳 シオラムの息子 シオ村生まれ  タカジョウ 23歳 ワシ使い  ホコラ 洞窟暮らし 哲人  シップ オオイヌワシ タカジョウが飼っている  エニ 38歳 エミヌ姉弟の母   カヤ アマカミの使者  シラク 北のミヤコのシロのムロヤの責任者  マシベ フジのシロの里の者 ヲウミのシロの村との連絡係り  トモ フジのシロの里の者  イナ 30歳 シロクンヌの姉弟子 杖の達人  コヨウ 15歳 タカジョウの妹  ゴン 洞窟で飼われている仔犬  ミツ 11歳 アユ村の少女  カザヤ 24歳 アユ村の若者 カタグラの友人  テミユ 22歳 カザヤの妹  タガオ 32歳 ミツの父親 目がみえない  ゾキ 14歳 オロチの姉 シップウの攻撃で背中に傷を負う オロチ 12歳 ゾキの弟 シップウの攻撃で顔に傷を負う  イワジイ 60歳 黒切りの里の山師 ヌリホツマの兄  シロイブキ 28歳 シロクンヌの兄弟

   

用語説明 ムロヤ=竪穴住居  大ムロヤ=大型竪穴建物  カミ=村のリーダー  コノカミ=この村のリーダー           グリッコ=どんぐりクッキー  黒切り=黒曜石  神坐=石棒(男性器を模した磨製石器)  塩渡り=海辺の村が作った塩を山の村に運ぶ塩街道があった。ウルシ村から東にシカ村→アマゴ村・・・七つ目がシオ村  御山=おやま。ウルシ村の広場から見える、高大な山々  コタチ山=御山連峰最高峰  トコヨクニ=日本  蚊遣りトンボ=虫除けオニヤンマ ここではオニヤンマの遺骸に竹ひごを刺し、竹ひごをヘアバンドで頭部に固定する  トツギ=一夫一婦の結婚  眼木=めぎ 眼鏡フレーム 曲げ木工房で作っている  クンヌ=イエの頭領  吊り寝=ハンモック  一本皿=長い丸太を半分に割いて作ったテーブル。一本の木から2本取れるが、一本皿と呼ばれている。  一回し=長さの単位 70㎝  半回し=35㎝ 縄文尺とも呼ばれる。  カラミツブテ・カブテ=狩りの道具。コブシ大の二つの石を紐でつなげた物。  ボウボウ=樹皮ラッパ 法螺貝よりも高い音が出る。  薙ぎ倒しの牙・薙ぎ倒しイノシシの牙=ナウマン象の象牙  バンドリ=背負子などを背負った時に、肩と背中を保護する当て物。衣服の上からバンドリを装着し、それから背負子を着ける。