縄文GoGo

5000年前の中部高地の物語

縄文GoGo旅編 第32話 7日目⑤

 

 

          アオキ村。夕食の広場。続き。

 
タカジョウ  「なるほど、聞けば聞くほど狂暴な奴等だ。」
シロクン  「まだ徒党を組んではおらんようだが、この先は分からんな。」
マサキ  「とにかく、地元の衆は恐れ切っておるらしい。」
イワジイ  「オロチに劣らぬ凶暴な兄弟と言う事か・・・」
テーチャ  「怖いねー。指を、骨ごと噛み砕いて食べるなんて・・・」
カゼト  「それでその兄弟だが、南の島のどのあたりが棲みかなんだ?」
マサキ  「いや、おそらくだが、今はもう南の島にはおらんぞ。
      セトの海のどこかの島だと思う。」
カゼト  「シロクンヌはセトの海に詳しかったな。
      どんな所なんだ?」
シロクン  「海は穏やかだ。島の数は多い。
        海に流れがあって、流れる方向が日に何度か変わる。」
キサヒコ  「ほう、面白い海だな。」
カゼト  「人が住む島は多いのか?」
シロクン  「住み付いているかで言えば少ないな。
        大きな島があって、そこには住んでいる。
        小島がすごく多いんだが、そこには住んでいない。
        水に難儀する島が多い。」
タカジョウ  「カゼトはそのハタレの話を聞いて、どうしようと言うのだ?」
カゼト  「近くまで行って、調べてみるつもりでいる。
      おれに何とか出来る相手であれば成敗するが、
      話を聞いた感じでは、まあ無理だろうな。」
テーチャ  「旅に出るの?」
カゼト  「ああ。それから、ハッキリ場所は分からんのだが、セトの海を臨むどこかで、
      昔、イネという草を育てておったらしいのだ。」
シロクン  「イネなら聞いた事があるぞ。
        コメと言う実が生るんだろう?小さい実らしいな。」
カゼト  「うん。海の向こうの南の方では盛んに作っておるようだ。
      ただ寒さに弱くて、トコヨクニのイネは全滅した。
      そのイネについても、調べておきたいんだ。
      そういう風に、いろいろ調べて回るのが、カゼのイエの仕事だからな。」
イワジイ  「ほう。調べた事を、アマカミに報告するんじゃな?」
カゼト  「そうだよ。シロクンヌ、ミヤコでアマカミに会うだろう。
      きっと、驚く事をいろいろ聞かされると思うぞ(笑)。」
シロクン  「そうか。楽しみだ。
        サチから聞かされた事でも、相当驚いたからな(笑)。」
イワジイ  「どんな事じゃ?」
シロクン  「今ちょうど海の向こうの話が出たが、竹は海の向こうに取りに行ったそうだぞ。」
ミツ  「どういう事?」
サチ  「笹竹はあったんだけど、竹は、もともとトコヨクニには生えてなかったの。」
イワジイ  「なんじゃと!」
マサキ  「だけど西に行けば、竹林だらけだぞ?」
シロクンヌ  「な?驚いたろう。おれもそう言ったんだよ(笑)。」
タカジョウ  「おれの生まれた村のすぐ横は、広い竹林だったぞ。」
カゼト  「竹とかエゴマ、麻は、トコヨクニには無かった。
      ハニのイエの者が、海の向こうに取りに行ったんだ。」
ミツ  「ひゃー、びっくり!」
テーチャ  「あたしもそれ聞いた時は驚いたわ。
       今度はイネを取りに行くの?」
カゼト  「そのつもりなのだろうが・・・
      どうも、今、海の向こうがキナ臭い事になっておるようなのだ。」
イワジイ  「キナ臭いとは?」
カゼト  「おれも詳しくは知らんが・・・
      イネの里の衆が、北から攻め立てられて、皆殺しになったと言うんだな。」
ミツ  「ヒト同士が殺し合いするの?」
カゼト  「どうもそうらしいんだ・・・
      信じられん話だが・・・
      二手に分かれて、大勢が殺し合うらしい。
      多くの人死にが出て、それが千や2千ではきかんと言うんだ。」
タカジョウ  「そんなにか!」
イワジイ  「そんな事を仕出かしたら、怨霊が湧こうが。」
キサヒコ  「そうだ。怨霊であふれるぞ。」
カゼト  「そうだよな・・・」
サチ  「海を渡ったミズのイエの人が、全然帰って来ていないの。」
シロクン  「トコヨクニから出て、海の向こうに渡ったのか?」
サチ  「そう。行ったきりになってる。
     それが3回続いてるの。」
ミツ  「なんか怖いね。怨霊って、怖いんでしょう?」
イワジイ  「ほうじゃ。
       流行り病を起こしたり、地割れを起こしたり、瘴気を吐き出したりしよるな。
       人を、憑り殺しもしよる。」
キサヒコ  「憑りつかれると、四つ足でしか歩けんようになると聞いたぞ。」
イワジイ  「海の向こうの連中は、怨霊が恐ろしゅうないんじゃろうか?」
シロクン  「まあこっちにも、怨霊を恐れん連中がいるがな。」
テーチャ  「その人達、舟に乗って、こっちに来たりしない?」
カゼト  「どうだろうな・・・
      とにかく、ハッキリした事はおれも知らんのだ。
      シロクンヌ、アマカミなら詳しく知っていると思うぞ。」
シロクン  「そうか・・・これは浮かれてばかりではおれんな。
        ハタレの兄弟の話もあるし。」
カゼト  「そうだ!シロクンヌ、船乗りになった兄弟がいると言ってなかったか?
      シロのイエは、武のイエだ。その兄弟も強いのか?」
シロクンヌ  「ああ、強いぞ。腕っぷしは、おれより強いだろうな。」
カゼト  「会ってみたい。今どこにいるのか分かるか?」
シロクン  「東の海だ。黒切りが採れる島があって、その辺りだと思う。」
マサキ  「シロミズキならおれも知っている。
      カゼト、もし行くなら、付き合ってやろうか?
      おれもそっちに行くつもりだったから。」
カゼト  「そうか、是非頼む!」
マサキ  「シロミズキがいれば心強い。3人でハタレの兄弟を探してみるか。」
カゼト  「シロミズキは一緒に行ってくれそうか?」
シロクン  「そりゃあ行くさ。ハタレの話を聞いて、動かんはずがない。
        おれだってミヤコの件が無ければ行っている。
        ついでに、海の向こうの様子も調べてもらえると有難いが・・・」
マサキ  「もちろんそのつもりだよ。3人で渡ってみてもいい。」
カゼト  「そうだな。シロクンヌはミヤコに行った後、どうするんだ?」
シロクン  「ウルシ村に戻るさ。ハニサが待ってるからな。
        ハニサはどうしてるかなあ。」
タカジョウ  「お、今度はハッキリ言いおったな(笑)。サチ?」
サチ  「15回目。」
 
 
          ━━━ 幕間 ━━━
 
以前は「世界四大文明」ということが盛んに言われていました。
しかし最近では「四大文明」なんて言ってるのは日本人だけだ、世界最古の文明は、縄文文明だ!などと言われたりもしています。
私自身は縄文文明では無く、縄文文化が正しい言い方だと思っていますが、それはともかく、黄河文明よりもずっと古い文化が、揚子江下流域で発展していたことが分かっています。
 
名付けて河姆渡文化。かぼとぶんかと読みます。
長江文明という言い方をしたりもしますが、その言い方はどうかと思いますので、ここでは河姆渡文化と言っておきます。
高床式住居に住み、水耕稲作を行っていました。
土器も何種類か出土していて、その中には縄文の付いた土器もあります。
河姆渡遺跡そのものは、8千年前~6千年前くらいのものであろうとされています。
そしてその近辺にはいくつも遺跡が存在し、それらをひっくるめて河姆渡文化とここでは呼んでいます。
 
この地域のイネが日本に伝わったことが、イネのDNA鑑定から分かっています。
それは朝鮮半島経由ではなく、おそらく舟で海を渡り、直接伝わったとされています。
現在、稲作の歴史は、朝鮮半島よりも日本の方が古いのは、確定的となっています。
日本から朝鮮半島に伝わったのだろう、とも言われています。
では、日本ではいつ稲作が始まったのか?
これについては毎年のように新発見が出ていて、どんどんさかのぼっていく状況です。
ポイントとなるのが、プラントオパール
イネの葉に含まれる植物珪酸体です。
イネ科植物の葉でシュッと擦ると、手の皮膚が切れたりするでしょう?
あれがそうです。
ガラス質の物質で、土中でも1万年以上残り、その形によって植物の種類を同定するのに役立ちます。
 
岡山県の2ヶ所の遺跡の6千年前の土壌から、イネのプラントオパールが大量に出ているのですが、それが稲作によるものかどうかとなると、意見が分かれています。
藁の状態で持ち込まれても、葉が付いていればプラントオパールは残りますから。
でももしかすると、短期的な陸稲栽培があったのかもしれませんね。
しかし、伝承は途絶えたと考えるべきでしょう。
では、伝承が続いたのはいつからか?
 
同じ岡山県では、3千5百年前の土器の土からイネのプラントオパールが見つかっています。
これは土器を作る土に、イネの葉が紛れ込んでいたことを意味します。
岡山県の3千年前の土器からも見つかっています。
でもこういうのって、これからどんどん発見されて行くと思いませんか?
それを考慮に入れると、この頃は伝承があったのかも知れませんね。
稲を作り続けていたかも知れない。
現在、日本での稲作開始は、5千年くらい前ではなかろうか、と言われていたりもしますね。
陸稲から始まり、試行錯誤があり、段々と水稲耕作に変わって行ったのではないかと私は思っています。
弥生人が稲作を伝えた、なんて嘘っぱちです。
 
ちなみに、7千3百年前の鬼界カルデラの大噴火。
それによって九州縄文人が舟で避難した。
行き先は、沖縄であり、朝鮮半島であり、そして河姆渡だった。
だから、河姆渡文化を文化たらしめたのは、縄文人である・・・
そう主張する人もいますね。
真偽のほどは分かりませんが、河姆渡人も縄文人モンゴロイドです。
対して、後に黄河文明を築いた人達はコーカソイドだと言われています。
そして大陸において、コーカソイドが南下してモンゴロイドを侵略した・・・
そのように言う人も、多くいますね。
 
・・・と、このような形で投稿したのですが、その後、新事実が判明いたしました。
岡山県の2ヶ所の遺跡の6千年前の土壌から、イネのプラントオパールが大量に出ている』と書きましたが、これがどうやら間違いだったようです。
6千年前ではなく、もっと新しい土壌だったと言う事です。
 
【現在の考古学会では、『岡山県の2ヶ所の遺跡の6千年前の土壌から、イネのプラントオパールが大量に出ている』と考えている人はほとんどいませんよ。】
・・・ウラ話、ネバネバ編に登場する中山誠二先生から、先日電話でそう教えて頂きました。
 
ガ~ン!
もう少し早く知っていれば・・・
この先、ストーリー展開を変更しようかどうか、今迷っています。
 
 
登場人物 シロクン 28歳 タビンド 特産物を遠方の村々に運ぶ シロのイエのクンヌ  ササヒコ 43歳 ウルシ村のリーダー  ムマヂカリ 26歳 ヒゲの大男   ヤッホ 22歳 ササヒコの息子   ハギ 24歳 ヤスが得意  タホ 4歳 ヤッホとヤシムの息子 ヤシムと暮らしている  タヂカリ 6歳 ムマヂカリとスサラの息子  クマジイ 63歳 長老だが・・・  テイトンポ 40歳 シロクンヌの師匠 その道の達人   クズハ 39歳 ハギとハニサの母親   タマ 35歳 料理長  アコ 20歳 男勝り テイトンポに弟子入り   ヤシム 24歳 タホの母親  ハニサ 17歳 土器作りの名人 シロクンヌの宿   スサラ 25歳 ムマヂカリの奥さん  ヌリホツマ 55歳 漆塗り名人 巫女 本名はスス  ホムラ 犬 ムマヂカリが可愛がっている      
追加アシヒコ 56歳 アユ村のリーダー  マグラ 27歳 アユ村の若者  カタグラ 24歳 マグラの弟  フクホ 50歳 アシヒコの奥さん  マユ 25歳 アユ村の娘  ソマユ  19歳 マユの妹  サチ 12歳 孤児 シロクンヌの娘となる アヤクンヌ      エミヌ 18歳  オジヌ 16歳 エミヌの弟  カイヌ 14歳 オジヌの弟    モリヒコ シカ村のカミ  サラ 17歳 スサラの妹 ハギとトツギとなる ヌリホツマの弟子  ナクモ 18歳 エミヌの友人  シオラム 41歳 ササヒコのすぐ下の弟 塩作りの加勢のためシオ村で暮らす 5年に一度、里帰りする  ナジオ 20歳 シオラムの息子 シオ村生まれ  タカジョウ 23歳 ワシ使い  ホコラ 洞窟暮らし 哲人  シップ オオイヌワシ タカジョウが飼っている  エニ 38歳 エミヌ姉弟の母   カヤ アマカミの使者  シラク 北のミヤコのシロのムロヤの責任者  マシベ フジのシロの里の者 ヲウミのシロの村との連絡係り  トモ フジのシロの里の者  イナ 30歳 シロクンヌの姉弟子 杖の達人  コヨウ 15歳 タカジョウの妹  ゴン 洞窟で飼われている仔犬  ミツ 11歳 アユ村の少女  カザヤ 24歳 アユ村の若者 カタグラの友人  テミユ 22歳 カザヤの妹  タガオ 32歳 ミツの父親 目がみえない  ゾキ 14歳 オロチの姉 シップウの攻撃で背中に傷を負う オロチ 12歳 ゾキの弟 シップウの攻撃で顔に傷を負う  イワジイ 60歳 黒切りの里の山師 ヌリホツマの兄  シロイブキ 28歳 シロクンヌの兄弟
追加(旅編)スズヒコ 65歳 リンドウ村のリーダー  タジロ 21歳 リンドウ村の若者  セリ 11歳 リンドウ村の娘  レンザ 14歳 道中で出会った少年。足の骨が折れていた。  レン レンザが飼っているオオカミ  シシヒコ 35歳 シシガミ村のカミ  サタキ 25歳 シシガミ村の青年  ミワ 33歳 シシヒコの奥さん。  シュリ 21歳 シシガミ村の娘。レンザの宿。  ユリサ 22歳 シシガミ村の娘。一日だけのタカジョウの宿。  セジ 20歳 シシガミ村の青年。ゾキのシモベ。  マサキ 28歳 シロクンヌのタビンド仲間。  テーチャ 23歳 アオキ村で暮らす女。  カゼト 28歳  アオキ村で暮らすカゼのイエの者  キサヒコ 33歳 アオキ村のカミ。

   

用語説明 ムロヤ=竪穴住居  大ムロヤ=大型竪穴建物  カミ=村のリーダー  コノカミ=この村のリーダー           グリッコ=どんぐりクッキー  黒切り=黒曜石  神坐=石棒(男性器を模した磨製石器)  塩渡り=海辺の村が作った塩を山の村に運ぶ塩街道があった。ウルシ村から東にシカ村→アマゴ村・・・七つ目がシオ村  御山=おやま。ウルシ村の広場から見える、高大な山々  コタチ山=御山連峰最高峰  トコヨクニ=日本  蚊遣りトンボ=虫除けオニヤンマ ここではオニヤンマの遺骸に竹ひごを刺し、竹ひごをヘアバンドで頭部に固定する  トツギ=一夫一婦の結婚  眼木=めぎ 眼鏡フレーム 曲げ木工房で作っている  クンヌ=イエの頭領  吊り寝=ハンモック  一本皿=長い丸太を半分に割いて作ったテーブル。一本の木から2本取れるが、一本皿と呼ばれている。  一回し=長さの単位 70㎝  半回し=35㎝ 縄文尺とも呼ばれる。  カラミツブテ・カブテ=狩りの道具。コブシ大の二つの石を紐でつなげた物。  ボウボウ=樹皮ラッパ 法螺貝よりも高い音が出る。  薙ぎ倒しの牙・薙ぎ倒しイノシシの牙=ナウマン象の象牙  バンドリ=背負子などを背負った時に、肩と背中を保護する当て物。衣服の上からバンドリを装着し、それから背負子を着ける。  黒石糊アスファルト