縄文GoGo旅編 第35話 8日目②
シオユ村。見張り小屋。
ユリサ 「クマザサに花が咲くと不吉だって聞いていたけど、地ネズミが湧くんだね。」
シシヒコ 「おれが子供の頃、おれが育った村での話だ。
ある日、着の身着のままの人達が何人か来て、何日か村で一緒に過ごした。
話を聞くと、その人達の村が地ネズミに襲われたらしい。」
シュリ 「地ネズミから逃げて来た人達だったの?」
レンザ 「踏みつけてやっつけてもダメなのか?」
シシヒコ 「村が地ネズミで埋め尽くされたらしいぞ。
ムロヤから何から。
何もかも喰われたと言っておった。ヒトまでな。」
シュリ 「怖い!」
シシヒコ 「あー、また夢に出るかも知れんなー。
子供だったし、おれは彼らから話を聞いて、毎晩うなされたんだ。」
ホコラ 「うまい!口の中でとろけおる。二年物か?」
シシヒコ 「ホコラ!のん気にシシ腿など食いおってからに。」
レンザ 「ハハハ、でも良かったよな。
今回のは、猿の働きで救われたんだろう。
そうだ、ホコラなら、もしかすると何とか出来るかもしれない。」
シュリ 「何の事?」
レンザ 「姉ちゃんとこっちに向かってる途中に、大騒ぎしてる連中がいたんだ。
行ってみると、黒い水が、
あれ?
ユリサがあわてて出て行ったけど、どうしたんだ?」
シュリ 「もしかして・・・
シュリ 「もしかして・・・
ちょっと見て来るね。」
シシヒコ 「なあホコラ、数日、逗留してもらえるだろう?
哲人の子種を分けてくれ。」
ホコラ 「残念だが、そうも言っておれん。
先を急いでおってな。
先を急いでおってな。
シシ腿をご馳走になったら出て行くよ。
そうだ、子猿は置いて行くが、構わんか?」
レンザ 「いいのか?こっちから頼もうと思ってた。
レンザ 「いいのか?こっちから頼もうと思ってた。
これでレンにも友達が出来た。
レン!良かったな!
子猿に名前を付けなきゃな。まだ名前は無いんだろう?」
ホコラ 「ああ、まだ付けておらんよ。」
シシヒコ 「レンは、気持ち良さげに毛づくろいされておるな(笑)。
あれで傷の治りも早まるのではないか?
シシヒコ 「レンは、気持ち良さげに毛づくろいされておるな(笑)。
あれで傷の治りも早まるのではないか?
ホコラ、今度ゆっくり遊びに来てくれよ。」
ホコラ 「ああ、レンザの子でも見に来るか。
この炙り山イモ、こうやって串に刺してシシ腿と一緒に口に放り込むと最高だぞ。
お、二人が戻って来たな。」
レンザ 「どうした?ユリサが泣いてるみたいだけど。」
シュリ 「うん・・・」
ホコラ 「ああ、ご馳走になった。旨かった。
シュリ 「うん・・・」
ホコラ 「ああ、ご馳走になった。旨かった。
お礼に猿酒を置いて行く。
ヒョウタン三つあるから、村のみんなでやってくれ。
ユリサ、月のものが来たとて泣かんでいい。
タカジョウはここに戻って来る。
そなたを迎えにな。
タカジョウはここに戻って来る。
そなたを迎えにな。
一年、待っておれ。
コノカミ、」
シシヒコ 「分かっている。もともとユリサに宿を取らす気はないよ。
良かったな、ユリサ。」
シシヒコ 「分かっている。もともとユリサに宿を取らす気はないよ。
良かったな、ユリサ。」
さて、ここからはまた、シロクンヌ達の動向を追うこととなります。
北の湖のほとり。見守り杉。
キサヒコ 「・・・びーのーぶーじーをーみーまーもーらーれーん-こーとーをー。
よろしい。みんなこうべを上げてくれ。
見守り杉も、喜んでくれた。」
テーチャ 「あたし、北の湖って初めて見る。
南の湖とは、全然雰囲気が違うんだね。
何あれ!
サチ、ミツ、あそこの水辺を覗いてごらんよ。」
サチ 「うわー!小石だと思ったら、全部ニナ(巻貝)だ!」
ミツ 「重なりあってる!」
タカジョウ 「こっちも凄いぞ。どこまで続いておるんだ?」
カゼト 「この辺りの湖水は、冷たくないんだ。
ここらは真冬でも凍らんのだぞ。」
マサキ 「不思議な湖だよな。」
イワジイ 「ここからスワの湖、そこからさらに御山とフジの西を通って海に出る、
そんな地の溝の存在が昔から山師の間では伝わっておっての、
そんな地の溝の存在が昔から山師の間では伝わっておっての、
それは地すべりの溝とも呼ばれておるんじゃ。」
テーチャ 「溝って事は、地面が掘れているの?」
イワジイ 「そうではのうて、パッと見は何も違うとりはせん。
同じように樹が生えておる。
溝と言うよりも、ズレとでも思うてもらった方がよいかも知れん。
地の下の様子が、溝の西と東とでは違うんじゃよ。
何と言うか・・・地の顔つきが違うておるんじゃ。
地の成り立ちが違うんじゃとわしは思うておる。」
テーチャ 「へー、不思議な話だねー。」
キサヒコ 「ミツ、スワの湖には神が住むと言い伝えがあるだろう?」
ミツ 「うん。凍った湖を、神が渡るって言うよ。」
カゼト 「この湖もそうだ。
凍りはせんが、みづ神の住みかだと言われている。」
キサヒコ 「ふむ。ほら、あそこらに見えるのは、全部桜だ。
春にはにぎやかに咲き誇る。
よその村では、栗の花が咲く頃に、盛大に神坐祭りをするのだろう?
ここでは、神坐祭りは無いんだ。
その代わり、夜桜祭りをやる。
湖の神に感謝を捧げる、春の祭りだ。
この辺りでかがり火を焚いて、夜、執り行われる祭りだよ。」
タカジョウ 「夜桜か・・・それも風流であろうな。」
キサヒコ 「春の訪れを寿(ことほ)ぐ祭りだ。
その時な、ここらの水底が光るんだぞ。」
タカジョウ 「ミナゾコがヒカル?」
テーチャ 「どういう事?」
ミツ 「わかった!蛍の幼虫が光るんだね?」
サチ 「え?蛍の幼虫って、ザザ虫の仲間でしょう?光るの?」
テーチャ 「蛍って、幼虫まで光ったりするの?」
ミツ 「そう。光るから、蛍の幼虫だ、って分かったんだもん。」
サチ 「知らなかった!父さん、知ってた?」
シロクンヌ 「いや、おれも初めて聞いたよ。」
キサヒコ 「向こうの方までおぼろに光が広がっていて、不思議な光景なんだぞ。
あと夏にはな、これは滅多に拝めんのだが・・・
わしも三度しか見ておらんが・・・
その見守り杉に、蛍が集まる夜があるんだ。」
タカジョウ 「ん?樹に蛍が止まるのか?」
カゼト 「おれは、一度だけ見たが、呆けの様に見惚れてしまったぞ。
いや、あまりの出来事に、腰を抜かしかけたと言ってもいい。
蛍が見守り杉の幹に集まって来て、段々上に登って行くんだ。
どんどん集まって来るんだぞ。
ひっきりなしに、集まって来る。」
マサキ 「蛍は、高い所は飛ばんだろう?」
カゼト 「普段はな。だがその時は違った。
あの一番下の枝が光で埋め尽くされて、その光が上の枝も埋めて行く。
どんどん上に広がって行くんだ。
周りの蛍は集まり続けている。
それだけじゃないんだ。なあ?」
キサヒコ 「ああ、そこからが不思議なんだ。
見ている間に、かたまりごとに、明滅が合わさって行く。
そのうちに、隣の集団とも合って行く。
そうやって、しまいには見守り杉を覆ったおびただしい蛍の集団が、
全部おんなじ調子で点滅するんだ。
まるで見守り杉が、光の鼓動を打っているようにも見える。」
テーチャ 「わー!」
カゼト 「このまま巨人となって歩き出すんじゃないかと思ったぞ。」
マサキ 「信じられん・・・神の仕業か?おれも見てみたい。」
イワジイ 「ふむ・・・」
サチ 「やっぱりこの湖、生きてるんだよ。そんな気がするもん。」
シロクンヌ 「そうだな。神そのものかも知れん。
・・・さあ、筏で渡らせてもらおう。」
キサヒコ 「ここでお別れだ。旅の無事を祈っておるぞ。」
タカジョウ 「世話になったな。蛍の季節に、また来るよ。」
マサキ 「コロの準備が出来た。みんな、また会おうな。」
カゼト 「荷物の整理をして、おれとマサキはふつか後の出立だ。」
シロクンヌ 「いずれまた会おう!
コノカミ、世話になった。
サチ、ミツ、筏を押すぞ!」
長いこと、そう言われて来ました。
その言説に基づいてストーリー展開して行くつもりでしたが、言説が間違いであることが判明しました。
6千年前ではなく、もっと新しい地層だったようです。
よって、旅編の32話~35話を書き直すことにしました。
書き直しした物が、こちらになります。