縄文GoGo旅編 第33話 7日目⑥
アオキ村。夕食の広場。続き。
シロクンヌ 「ヒのクンヌ・・・ヒのイエか・・・
サチ、ヒのイエとは、どんなイエなのだ?」
サチ 「私、ヒのイエの事はよく知らないの。
ミヤコにヒのイエのムロヤはあるんだけど、イエの人は居ないことが多いみたい。
中今に長けた、不思議なイエだって聞いてるけど・・・」
タカジョウ 「中今だと!?
中今を操るのか?」
ミツ 「中今?ナカイマって何?」
サチ 「私もよく分からないの。父さん、知ってる?」
シロクンヌ 「いや、初めて聞いた。
タカジョウは知っているのか?」
タカジョウ 「ああ、師匠から少しだけ教わった。
心の在り様で、人は不思議な力を発揮出来るそうだ。
こないだシロクンヌが、あっと言う間にハタレどもを叩きのめしただろう。
あれは一つの中今だと思う。」
カゼト 「シロクンヌは、ホントに何にも知らんのだな(笑)。
シロのイエは、ヒのイエと並んで、優れた中今のイエなんだぞ。
そういう血筋だ。
あと、タカのイエもそうだ。」
イワジイ 「シロクンヌの並外れた体力なんかも、中今とやらじゃろう。
とてもヒトとは思えんからのう。」
カゼト 「ヒトは誰もが中今の力を秘めている。
ただ、芽吹かせていない者が多い。
イエの者であれば、体の中に中今の血が濃く流れている。
サチにも、おれにもな。」
ミツ 「そうか!だからサチには不思議な力があるんだ!」
シロクンヌ 「ふむ、イナなんかは、おそるべき中今だ。
手に負えんからな。」
マサキ 「イナと言うのは?」
美人なのだが、とにかく強いんだ。
クンヌのおれに、平気で手を上げおる。」
ミツ 「目に、青アザを作ってたよね。」
マサキ 「シロクンヌがか?」
シロクンヌ 「そうだ。平気で殴って来る。熊より凶暴だ。
だがそのイナが、ハニサのムロヤで一緒に寝起きして、
ハニサとアマテルを護ってくれているから、おれも安心なんだが(笑)。」
カゼト 「シロのイエのクンヌを殴る女がいるのか(笑)。
中今については、おれも知っているのはそこまでだ。
ヲシテと同じで、中今も悪用されては大変だろう?
だから、イエの者でも無暗に口に出したりはしない。
深い所は、ミヤコでアマカミから直接聞いてくれ。」
シロクンヌ 「アマカミか・・・どんなお方なのか、お会いするのが楽しみだ。
テーチャの連れ合いは、ヒのクンヌの協力を求めてアサマに向かった訳だな。
黒い水の件を解決するために。」
テーチャ 「そう。ここでカゼトからヒのクンヌの居場所を聞いて旅立ったの。
それが十日前。
その後に台風が来たから、少し心配。
うちの人は旅慣れてるから大丈夫だろうけど、シナの木の川がどうなったのか・・・」
タカジョウ 「ふむ、多少は氾濫したかも知れんな。」
キサヒコ 「すまんが一つだけよいか?
その中今の力というのは、一人よりも二人、二人よりも三人と、
多く集まった方が強まるのではないのか?」
カゼト 「かも知れん。波動が合えばだが。」
テーチャ 「あたし、シロクンヌ達と一緒に行きたい!
いいでしょう?沼の所まで案内したいの。
もちろん、カワセミ村に寄ってからでいいわよ。」
シロクンヌ 「ああ良いが、山越えの道になるぞ?」
テーチャ 「そんなの平気よ。ここに来るのだって余裕だったんだから。
あたし、すぐに荷造りできるから、明日の出立で構わないわ。」
マサキ 「シロクンヌ、ヌナ川の舟隠し、以前一緒に造っただろう。
あそこにおれの舟が隠してある。
櫂(かい)も三本ある。
使ってくれていいぞ。」
シロクンヌ 「おお、助かる!
すべて山越えで行くよりも、三日は早まるな。」
イワジイ 「わしら全員、乗れるのかい?」
マサキ 「大丈夫だ。大男五人で海に漕ぎ出した事だってあるんだぞ。
ヌナ川を下り、海に出て西に向かえばヒスイ海岸だ。
舟はカワセミ村に預けておいてくれ。」
シロクンヌ 「おれの舟にも全員が乗れる。
イワジイもコシに行くだろう?」
イワジイ 「もちろんじゃ。黒い水とやらが気になってのう。
その水、ひょっとして燃えやせんか?」
テーチャ 「え?水だよ?
水が燃える訳ないでしょう?」
イワジイ 「以前、北の山師から聞いたんじゃが、大昔、コシよりももっと北じゃろうが、
燃える水が湧いたそうじゃ。
黒い水だと言うておった。
イエにはそういう言い伝えは無いかの?」
カゼト 「おれは知らんが、誰か知っているか?
・・・知らんようだな。
もし伝わっているとすれば、ハニのイエだろうが・・・
アサマには、ハニのイエの者もいるはずだ。
ヒのクンヌと磐座(いわくら)を組んでいると思う。」
マサキ 「磐座はイエの者が組んでいたのか!
あれはやっぱり、ヒトの仕業だったんだな。」
カゼト 「神が造った物と、ヒトに神が宿ってヒトの中今が造った物と、両方だと思う。」
マサキ 「シロクンヌも磐座を組んだりして来たのか?」
シロクンヌ 「いや、まったくしていない。
と言うか、おれは磐座とは神の仕業だとばかり思っていた。
どうもシロのイエは、少し特別なようだな。
他のイエとの付き合いはほとんど無くて、内輪でひたすら鍛錬をしておる。」
キサヒコ 「平時では目立たんが、世が乱れた時、前に出るイエか。」
タカジョウ 「ハタレの乱の時が、そうだったんだよな。
先代のシロクンヌが大活躍したそうだ。
磐座だが、師匠が言うには、山のテッペンに岩がポコンと載っていれば目立つだろう?
だが、目立たん物もかなりあるらしいぞ。
それでな、カゼトとマサキは東に向かう道中でウルシ村にも寄るだろう?」
マサキ 「もちろんだ。ハニサにも会ってみたいしな。」
カゼト 「ふむ。イナにも会ってみたい(笑)。」
タカジョウ 「村の入口に飛び石がある。
巨岩が具合よく川を横切って並んでいる。橋の代わりだ。
あの飛び石こそ、磐座ではないかとおれは思っていたんだ。
カゼト、おぬしの目にはどう映るか、思った事を村のカミに伝えてくれ。」
カゼト 「なるほど・・・光の子が産まれる村だ。
何かのいわれがあるのは間違いないはずだ。」
タカジョウ 「それから、さっきおれは御山と言ったが、
地元でそう呼ばれている山並みが、八ヶ岳だ。
ウルシ村から綺麗に見える。」
カゼト 「そうなのか!八ヶ岳の・・・
そこがもしかすると、約束の地なのかも知れん。
そこで光の子が・・・
是非、ハニサに会ってみたい。神々しいのだろうな・・・」
ミツ 「女神様だって言われてた。」
サチ 「父さん、お姉ちゃんが光ってたの・・・
あれは中今だと思うよ。」
シロクンヌ 「ハニサが中今・・・確かにそうだ。
ハニサこそ、並外れた中今の持ち主だ。
・・・ハニサはどうしているかな。」
長いこと、そう言われて来ました。
その言説に基づいてストーリー展開して行くつもりでしたが、言説が間違いであることが判明しました。
6千年前ではなく、もっと新しい地層だったようです。
よって、旅編の32話~35話を書き直すことにしました。
書き直しした物が、こちらになります。