旅編第11話~第20話
翌早朝。シシガミ村の近く。 ユリサ(22歳・女) 「あ!急降下した!キツネを見つけたのかな?」 タカジョウ 「きっとそうだ。キツネを見つけるのは早いからな(笑)。」 ユリサ 「あそこ、見に行ってみよう!」 ユリサ 「シップウが、キツネを押さえ込んでる…
シシガミ村の近くの洗濯場。 シロクンヌとタカジョウの二人だけだ。 タカジョウは着替えていて、レンの傷を押さえた服を洗っている。 シロクンヌ 「どうだ?血は落ちそうか?」 タカジョウ 「染みにはなるだろうな。 まあ、レンの血だから、気にならんからい…
シシガミ村の見張り小屋。 シシガミ村は、高く積まれたシシ垣の上に築かれていた。 村全体が、石垣で囲まれていたのだ。 見張り小屋はその石垣の外にあり、村から少し離れた場所に、 やはり高く積まれたシシ垣に囲まれて建てられていた。 例えて言うなら、離…
渓流沿い。続き。 レンザ 「レン!しっかりしろ!」 サチ 「レン!死なないで!」 シシヒコ 「レン!死ぬな! 誰か、レンを助けてくれ!」 タカジョウ 「背中の傷は?」 レンザ 「開いてる。くっそう!血が止まらん。」 タカジョウが服を脱いだ。 タカジョウ…
渓流沿い。続き。 シシヒコ 「その子らを早く避難させてくれ!」 サタキ 「おれ達が盾になる。」 二人は盾を持ち、槍を構えた。 タカジョウ 「サチ、先に登れ。上からミツを引き上げてくれ。」 サチ 「大きい!イナが射たイノシシの倍以上ある! ミツ、こっ…
渓流沿い 続き。 シシヒコ 「おれもサタキと同じで、シシガミ村の生まれではないんだ。 10年前に通り掛かってな。 その時、子種が欲しいと宿を請われた。 で、その女に惚れてしまってな(笑)。」 タカジョウ 「どこかで聞いた話だな(笑)。」 シシヒコ 「だ…
山越え。続き。 シロクンヌ 「シシガミ村?何かいわれのある村なのか?」 レンザ 「姉ちゃんから聞いたんだ。姉ちゃんも誰かから聞いたんだと思う。 シシガミ村の近くでは、イノシシ狩りはするなって。」 タカジョウ 「その村が、この近くにあるのか?」 レ…
翌朝の野営地。 タカジョウ 「確かこの樹だったよな?そうだ、ここに爪痕がある。」 サチ 「レンは、あの枝まで跳んでいたよ。 あの枝の近くで、飛んでるムササビを捕ったんだもん。」 ミツ 「走って来て、幹のここに爪を立てて、あそこまで跳んだんだ。 こ…
野営地。続き。 シロクンヌ 「用心するとしても、今から吊り寝(ハンモック)に切り替えるのもアレだな。 サチとミツはここでゆっくり寝かせてやりたい。」 タカジョウ 「せっかく作った寝床だからな。 おれとシロクンヌで、交代で寝ずの番だ。 どうせいぶしを…
道中の尾根。夕刻前。 眼下にブナの森が広がっている。 シロクンヌ 「水の匂いがする。この下は、沢だな。」 タカジョウ 「あの空に、薄っすらと半月が見える。」 サチ 「今夜は八日月。上弦の月でしょう。」 タカジョウ 「そうだ。陽が沈めば、あの月が南の…