縄文GoGo

5000年前の中部高地の物語

縄文GoGo旅編 第30話 7日目③

 

 

 

          アオキ村の入口。

 
 湧き水のメシ食い場から森を抜けると、アオキ村が見えた。
 アオキ村は小高い丘の上にあり、丘の西側に川が流れている。
 北の湖から流れ出し、南の湖に注ぐ川だ。
 この川が、南の湖の水源であった。
 川の水は澄んでいて、そのまま飲むことが出来た。
 
 その川沿いに道があり、村への入口となるのだ。
 道の途中が崖のようになっているのだが、そこにイワジイの姿があった。
 
タカジョウ  「ジイ、どうした?汗びっしょりで。」
イワジイ  「おお!来たか!
       丁度完成したところじゃ。
       コノカミに頼まれての、蒸し室(ムシムロ)を掘ったんじゃよ。」
シロクン  「ほう!本格的な蒸し室はこうやるのか。
        入口は小さいんだな。中はそこそこ広いぞ。
        四人くらい、いけそうだ。」
サチ  「大人でも背が立つんだね。一人で掘ったの?」
イワジイ  「ほうじゃよ。三日で掘ったのう。
       出た土で室の前を地ならしして、ここが焚き場じゃ。
       ミツ、どうじゃった?旅には慣れたかの?」
ミツ  「うん!でもいろんな事があったよ。」
シロクン  「話す事が山ほどあるぞ(笑)。」
イワジイ  「ほうか。おいおい聞くとしようかの。
       ここからの旅は、わしも同行させておくれ。
       そうじゃシロクンヌ、川原石を運ぶのを手伝うてくれんかのう。」
シロクン  「焼き石にするんだな?いいぞ。
        石はイワジイが選んでくれ。」
タカジョウ  「おれも手伝うぞ。」
マサキ  「一度村に落ち着こう。荷物を置いてそれからだ。
      おれも手伝うよ。
      焼いて、水を掛ければ、石は割れやすい。
      沢山運んでおこう。」
  「シロクンヌー!待ってたよー!」
 
 乳飲み子をおぶった女が一人、こっちに走って来る。
 
  「シロクンヌ、会いたかったよ!
    見て!シロクンヌの子だよ!」
シロクン  「何い!
        ま、待て・・・
        だ、誰であったかな・・・」
  「え?」
シロクン  「お、おれはおぬしを知らんが・・・」
女  「えーーー!!!」
イワジイ  「シロクンヌや、それは無かろう!
       テーチャはシロクンヌはまだかと、何度もここに見に来ておったのだぞ。」
テーチャ(女・23歳)  「・・・・・」
マサキ  「テーチャはシロクンヌの事を良く知っておったぞ。」
シロクン  「そ、そうなのか?」
マサキ  「ああ、間違いない。
      テーチャの子が、シロクンヌとの間に出来た子だというのは、おれも今初めて聞いたが。」
 
 サチとミツが心配そうにシロクンヌを見ている。
 タカジョウは一人、ニヤニヤしている。シロクンヌの窮地が楽しいのかも知れない。
 
シロクン  「待ってくれ・・・
        間違いない。おれはおぬしを知らん。
        ・・・・・
        ははあ、分かったぞ!
        カゼト!どこに隠れておる!」
 
 すると、アハハハハと籠ったような笑い声が聞こえて来た。
 
イワジイ  「ん?どこじゃ?」
タカジョウ  「蒸し室からだ。いつの間に?」
 
 蒸し室の中から、一人の男が現れた。
 
カゼト(男・28歳)  「シロクンヌ、久しぶりだな。」
シロクン  「ああ久しぶりだ。相変わらず、手の込んだたぶらかしをやっておるな。」
イワジイ  「何じゃ?どういう事じゃ?」
マサキ  「あ!ひょっとして・・・
      テーチャ?」
テーチャ  「アハハ、ごめんなさい。カゼトから頼まれたの。」
タカジョウ  「なんだなんだ?」
シロクン  「カゼトはこういうのが好きなんだよ。
        旅人をダマしては楽しんでおる。悪い男だ(笑)。」
タカジョウ  「と言う事は?」
テーチャ  「ごめんなさい。この子は別の人との子。
       あたしもシロクンヌと会うのは初めてよ。」
マサキ  「しまった、おれも完全にダマされた(笑)。」
イワジイ  「なんとも、仕込みの込んだマネをしよるのう(笑)。」
サチ  「あー、良かった!」
ミツ  「心配したよねえ。」
カゼト  「すまんな。アマカミになってしまっては、仕掛けられんだろう?
      今の内にやっておかねばと思ってなあ。」
マサキ  「それにしても、いつの間に蒸し室に入ったのだ?
      おれ達がさっき見た時には、カゼトの姿はなかったが。」
カゼト  「ああ、みんながテーチャの演技に気を取られている隙にな。
      それまでは、あそこに太い樹があるだろう。あの陰に隠れていた。」
タカジョウ  「けっこう遠いぞ。よく気付かれずに来られたな。」
シロクン  「カゼトはそういうのが得意なんだ。
        音も無くに近づいて来て、いきなりワッ!ってやりおる。」
ミツ  「アハハ、なんかアブナイ人だね。」
サチ  「カゼト・・・カゼ・・・もしかして?」
カゼト  「そうだよ。おれの生まれは北のミヤコ。
      カゼのイエの流れをくむ者だ。」
シロクン  「そうなのか!知らなかった!
        おれはてっきり、この村の生まれだと思っていたよ。
        カゼのイエと言えば、たしか今のアマカミがカゼのイエの御出身だと・・・」
カゼト  「うん。アマカミは、かつてはカゼクンヌと名乗っておられた。
      おれは当然、シロクンヌがシロのイエのクンヌだと分かっていたさ。
      でもシロクンヌが何も言わんから、おれもそこには触れずにおいた。」
シロクン  「そうだったんだな。
        そうだ、カゼト、紹介しておくよ。」
カゼト  「もう分かってる。この子がミツ。
      この子がサチ。アヤクンヌだ。
      おれがミヤコを出た時には、まだ3歳だったはずだから、お互い、初対面だ。
      そしてタカジョウ。たぶん、タカクンヌだ。
      それからあの枝にいるのがシップウ。
      おぬしらが飯食い場で鍋談義をしているのを、おれは樹の上で見ていたんだぞ(笑)。
      マサキ、その時、気になる事を言っていたな。
      南の島のハタレの兄弟だ。
      後で、もっと詳しく教えてくれ。」
 
 
登場人物 シロクン 28歳 タビンド 特産物を遠方の村々に運ぶ シロのイエのクンヌ  ササヒコ 43歳 ウルシ村のリーダー  ムマヂカリ 26歳 ヒゲの大男   ヤッホ 22歳 ササヒコの息子   ハギ 24歳 ヤスが得意  タホ 4歳 ヤッホとヤシムの息子 ヤシムと暮らしている  タヂカリ 6歳 ムマヂカリとスサラの息子  クマジイ 63歳 長老だが・・・  テイトンポ 40歳 シロクンヌの師匠 その道の達人   クズハ 39歳 ハギとハニサの母親   タマ 35歳 料理長  アコ 20歳 男勝り テイトンポに弟子入り   ヤシム 24歳 タホの母親  ハニサ 17歳 土器作りの名人 シロクンヌの宿   スサラ 25歳 ムマヂカリの奥さん  ヌリホツマ 55歳 漆塗り名人 巫女 本名はスス  ホムラ 犬 ムマヂカリが可愛がっている      
追加アシヒコ 56歳 アユ村のリーダー  マグラ 27歳 アユ村の若者  カタグラ 24歳 マグラの弟  フクホ 50歳 アシヒコの奥さん  マユ 25歳 アユ村の娘  ソマユ  19歳 マユの妹  サチ 12歳 孤児 シロクンヌの娘となる アヤクンヌ      エミヌ 18歳  オジヌ 16歳 エミヌの弟  カイヌ 14歳 オジヌの弟    モリヒコ シカ村のカミ  サラ 17歳 スサラの妹 ハギとトツギとなる ヌリホツマの弟子  ナクモ 18歳 エミヌの友人  シオラム 41歳 ササヒコのすぐ下の弟 塩作りの加勢のためシオ村で暮らす 5年に一度、里帰りする  ナジオ 20歳 シオラムの息子 シオ村生まれ  タカジョウ 23歳 ワシ使い  ホコラ 洞窟暮らし 哲人  シップ オオイヌワシ タカジョウが飼っている  エニ 38歳 エミヌ姉弟の母   カヤ アマカミの使者  シラク 北のミヤコのシロのムロヤの責任者  マシベ フジのシロの里の者 ヲウミのシロの村との連絡係り  トモ フジのシロの里の者  イナ 30歳 シロクンヌの姉弟子 杖の達人  コヨウ 15歳 タカジョウの妹  ゴン 洞窟で飼われている仔犬  ミツ 11歳 アユ村の少女  カザヤ 24歳 アユ村の若者 カタグラの友人  テミユ 22歳 カザヤの妹  タガオ 32歳 ミツの父親 目がみえない  ゾキ 14歳 オロチの姉 シップウの攻撃で背中に傷を負う オロチ 12歳 ゾキの弟 シップウの攻撃で顔に傷を負う  イワジイ 60歳 黒切りの里の山師 ヌリホツマの兄  シロイブキ 28歳 シロクンヌの兄弟
追加(旅編)スズヒコ 65歳 リンドウ村のリーダー  タジロ 21歳 リンドウ村の若者  セリ 11歳 リンドウ村の娘  レンザ 14歳 道中で出会った少年。足の骨が折れていた。  レン レンザが飼っているオオカミ  シシヒコ 35歳 シシガミ村のカミ  サタキ 25歳 シシガミ村の青年  ミワ 33歳 シシヒコの奥さん。  シュリ 21歳 シシガミ村の娘。レンザの宿。  ユリサ 22歳 シシガミ村の娘。一日だけのタカジョウの宿。  セジ 20歳 シシガミ村の青年。ゾキのシモベ。  マサキ 28歳 シロクンヌのタビンド仲間。

   

用語説明 ムロヤ=竪穴住居  大ムロヤ=大型竪穴建物  カミ=村のリーダー  コノカミ=この村のリーダー           グリッコ=どんぐりクッキー  黒切り=黒曜石  神坐=石棒(男性器を模した磨製石器)  塩渡り=海辺の村が作った塩を山の村に運ぶ塩街道があった。ウルシ村から東にシカ村→アマゴ村・・・七つ目がシオ村  御山=おやま。ウルシ村の広場から見える、高大な山々  コタチ山=御山連峰最高峰  トコヨクニ=日本  蚊遣りトンボ=虫除けオニヤンマ ここではオニヤンマの遺骸に竹ひごを刺し、竹ひごをヘアバンドで頭部に固定する  トツギ=一夫一婦の結婚  眼木=めぎ 眼鏡フレーム 曲げ木工房で作っている  クンヌ=イエの頭領  吊り寝=ハンモック  一本皿=長い丸太を半分に割いて作ったテーブル。一本の木から2本取れるが、一本皿と呼ばれている。  一回し=長さの単位 70㎝  半回し=35㎝ 縄文尺とも呼ばれる。  カラミツブテ・カブテ=狩りの道具。コブシ大の二つの石を紐でつなげた物。  ボウボウ=樹皮ラッパ 法螺貝よりも高い音が出る。  薙ぎ倒しの牙・薙ぎ倒しイノシシの牙=ナウマン象の象牙  バンドリ=背負子などを背負った時に、肩と背中を保護する当て物。衣服の上からバンドリを装着し、それから背負子を着ける。  黒石糊アスファルト

 

 

縄文人、もし戦わば。

 

 

 

現代日本人のDNAを調べた結果、本土日本人には30%ほど縄文人の遺伝子が含まれていることが分かっています。

これが沖縄やアイヌの人達となると、もっと比率が上がります。
これは、北海道から沖縄まで縄文人は暮らしていて、絶滅は無かったことをあらわしています。
ただ考古学者の中には、北の文化、中の文化、南の文化と文化の差異を執拗に強調し、まるで異人種が住んでいたかのように錯覚させ、どっかの国の日本分断化計画のプロパガンダのお先棒を担いでいるんじゃないの?と言いたくなる人達がいますから要注意です。
それはともかくDNAから分かるのは、「弥生人縄文人を駆逐したから、日本人は弥生人の子孫だ。」「日本人の起源は、弥生時代にある。」と言う説は、大ウソだったと言う事です。
 
そもそも「弥生人渡来」という言葉が馬鹿馬鹿しい。
弥生人」と言う人種ないしは民族が、大陸のどこかにいたのですか?
渡来したのは、大陸人でしょう?
その人達が縄文人と交わって生まれたのが弥生人です。
つまり弥生人誕生の地は、日本です。
 
日本人の祖先は弥生人で、その弥生人朝鮮半島から渡来したんだよ、と言いたいのでしょうね。
でもDNAを見る限り、日本人は東アジアのどの民族とも大きく違っています。
あと、『縄文GoGo第25話』の幕間にも書きましたが、「稲作伝来」と言う言葉にも私は疑問を持っています。
 
とにかく、言葉の選択が不適切な歴史学者が多過ぎます。
例えば、「縄文時代は男女平等だったか?」を論じようとしたりします。
男女平等だったはずが無いでしょう。
男と女の間には、明確な役割分担があったに決まっています。
同じ事を同じ様にする、など有り得ない。
論じるとするならば、「男女対等であったか?」です。
私は縄文時代は男女対等であったと思っています。
そしてそれは当時において、世界中で縄文人だけがそうだったかも知れないと思っています。
大陸では、男は女を隷従させていたでしょう。
 
あきれるのは、「琉球王国は中国に朝貢していた。」などと平気で(もしかして確信犯的に)言ったりすることです。
だってそうでしょう?
琉球王国の時代に、「中国」という言葉も、国も、概念も存在していませんよ。
「中華」という言葉はありましたが、「中国」という言葉が生まれたのは100年ほど前です。
中華民国が中国ですから。
これは、「日本」「日ノ本」に対抗して考え出された言葉だと言われています。
日が昇る国に対抗して、世界の中心の国という気概のあらわれですね。
ちなみに日本神話の「芦原の中つ国」の中つ国とは上中下の中の国という意味です。
横の広がりの中の、中心の意味ではありません。
上は高天原。下は黄泉の国。つまり人が暮らす、この世をさしています。
そして現在、中国と言えば、中華人民共和国ですね。
琉球王国」が朝貢していたのは、「明」であり「清」です。
明と清と中華人民共和国は、地理的に重なる場所があるというだけで、それぞれ全く別の国です。
 
この様に考古学者や歴史学者の中には、中国や朝鮮半島に日本の起源がある事にしたい人達が大勢いて、児童書などで工作活動(?)をしていたりしますから、厄介な話です。
 
 
 
さてこの辺で「弥生人縄文人を駆逐」できたか、その可能性を考えてみたいと思います。
ここで言う弥生人とは、私が否定した、従来認識型の弥生族とします。
渡来した弥生族が、先住民としての縄文人と対立したという仮定です。
弥生族がその気になれば、縄文人を駆逐できたかどうかの考察です。
 
弥生族は金属の武器を持っていますし、馬に乗ることも出来ます。
大陸の進んだ文化を身に付けていますから、弥生族、つまり弥生人の圧勝だとされて来た訳ですね。
 
でも私の考えは全く違います。
戦闘を行えば、縄文人の圧勝です。
だって弥生族って農耕民なんでしょう?
農耕民が、戦闘で狩猟民に勝てる訳がない。
縄文男子は、子供の頃から弓矢の腕を磨いています。
その矢に、もしかすると、トリカブトの毒を塗っていたかもしれません。
おそらく木登りだって得意だったでしょうね。採集民でもありますから。
樹の上で待ち伏せして、共同で獲物を追い詰め、狩る。
それが縄文人の日常です。
獣に負けずに山や森を駆け回るのが縄文男子なのです。
山や森に潜む縄文人を、山駆けに慣れていない弥生族が、どうやったら駆逐出来るのでしょうか?
 
また、縄文時代には、牛も馬もいません。
使役できる家畜がいなかったのです。
よって、全ての労働は人間が行いました。どんなに重い荷も、ヒトが運んだのです。
そういう身のこなしを、一人一人の縄文男子が身に付けていたはずです。
体格がどうであれ、戦闘で大事なのは身のこなしです。
徒手で取っ組み合いになったとしても、縄文男子は強かったでしょうね。
 
それに何と言っても重要なのがケハイの問題です。
気配を消せるか?気配を感じ取れるか?の問題ですね。
気配を消して、獣に近づき、狩る。それが縄文人の日常です。
これは音を立てずに歩くという意味ではなく、周りの音に溶け込む音しか立てないという意味です。
これには相当な訓練が必要です。
気付いた時には、真後ろに縄文人が立っている・・・これは弥生人にとって、相当な恐怖ですよ。
そして、獣が立てるわずかな気配を察知しようと訓練して来たのが縄文男子なのです。
 
馬に乗って戦えば、弥生族が有利だろう?と言う人がいるかも知れません。
確かに平原での戦闘なら、そうかも知れませんね。
ところが、北海道は別ですが(北海道に弥生時代はありません)、当時の日本に平地など存在していなかったと思いますよ。
平地は、古墳時代以降に人間が造ったのだと思います。牛馬は利用したでしょうが。
当時はほとんどが山で、低地は湿地か荒れ地。馬に乗って駆け回る場所など無かったでしょうね。
山と言っても、大半が手付かずの原生林です。
その後、焼き畑などで様相が変わったのでしょうが。
 

 https://twitter.com/boppo2011/status/541049002246938624

左は古地図です。おそらく奈良時代以前に描かれたものだと思われます。
1500年ほど前に、濃尾平野がそっくり海だったなんて驚きですよね?
でも実際、この地には海にまつわる地名が多いのです。
島が付く地名だけでも、飛島村津島市西枇杷島町、長島町、中島郡・・・
その場所に、そういう名前の島が描かれている古地図もあります。
私は学校で、木曽三川によって濃尾平野が造られたと教わったのですが、どうやらそれは間違いですね。
大半は人間が埋め立てたのだと思います。
でも考えてみればそうですよ。河口の位置が常に変わっていましたから。
2万年前は、130mも海面が低かった。河口は遥か海の底です。
縄文海進では、5mほど現在よりも高い。約6000年前の話です。
その後海退が起きて、それが落ち着くのが3500年ほど前でしょうか。
たぶん千年や二千年程度では、木曽三川をもってしても、広大な平野は造れないのでしょうね。
ちなみに関東平野を造ったのは、徳川家康です。
 
 
弥生族が縄文人に勝利するとすれば、それはダマシ討ち以外になかったと思いますよ。
友好を装って近づき、寝込みを襲う、みたいな。
しかしそんな手口も、すぐに広まってしまうでしょうね。
弥生人縄文人を駆逐したと言っていた歴史学者は、この辺のところをどう説明するのでしょうか?
 
 
では縄文女子の戦闘力はどうでしょう?
例えば平安時代の農民女子と、5000年前の縄文女子を比べたとしたら。
私は、平安農民女子の圧勝だと思っています。
 
だって労働時間が違い過ぎます。
平安農民女子は、日が出ている間中、野良仕事をしていました。
じゃないと納税できません。
だからそれだけ体が鍛えられています。
縄文女子は、大した力仕事はしていなかったかも知れません。
力仕事は、男の役目だったでしょう。
納税の義務もありませんから、自分達が食べる分だけを狩猟、採集、栽培すればいいんです。
労働時間は一日3時間程度だった、と言う人もいますね。
 
私は、縄文女子は縄文男子から大切に扱われていたと思っています。
女性の墓に副葬されていた装飾品からそう思うのです。
貝輪程度なら女でも作れるでしょうが、石の加工はおそらく男がしていると思います。
女性へのプレゼントですね。
女性には身を飾っていて欲しかったのだと思います。
そして女性に喜んで欲しかったのでしょう。
対して男の墓からは、装飾品ってそれほど出ていないようです。
力の要る加工品をプレゼントするということは、重労働も肩代わりするということでしょう?
縄文時代、男から見れば、女性は命懸けで出産してくれていました。
では男の役目は何かと言えば、そういう女性を命懸けで護ることだったと思います。
そういう意味で男女対等だったのだと、私は思っています。
 

縄文GoGo旅編 第29話 7日目②

 

 

          南の湖の湖上。

 
 シロクンヌ一行とマサキが筏(いかだ)に乗って移動中だ。
 シップウは筏の上で大きな鯉を食べている。
 マサキが仕掛けておいた筌(うけ)に入っていたのだ。
 
シロクン  「それでイワジイはアオキ村でおれ達を待っているんだな?」
マサキ  「そうなんだ。おれはイワジイとこの先で出会ってな。
      一心不乱に地面を掘っている爺さんがいたから、何をしておるのか声を掛けた。
      するとおれに手伝えと言う。
      変わった形の石が埋まっておるから一緒に探せと。」
サチ  「こんな形の石?」

マサキ  「おお、そうだそうだ。」
ミツ  「あそこにいっぱい掘った跡があったけど、マサキとイワジイがやったんだ。」
サチ  「やっぱり、これの他にもいくつか埋まってたんだね?」
マサキ  「イワジイは三つ持っておるよ。
      それで話をしておるうちにシロクンヌの知り合いだと分かってな。
      もうすぐここに来るはずだと言うではないか。
      それで予定を変更して、おれもアオキ村に留まっておったのだ。」
タカジョウ  「イワジイは元気なのか?」
マサキ  「ああ元気だよ。足腰のしっかりした爺さんだな。」
シロクン  「マサキはどこに向かうつもりだったのだ?」
マサキ  「それがたまたまだが、スワを抜けて東の海まで行ってみようと思っていた。
      シロクンヌと別れて後にだな、おれは舟で南の島に渡った。
      それからまたカワセミ村に戻って、そこから北を目指してみるかと思ったのだが、
      ヌナ川まで来て気が変わってな、川を遡ったんだよ。
      ところで驚いたぞ。アマカミになるんだって?
      しかもスワの向こうがミヤコになると言うではないか。
      イエの者だと言う事も、おれには一言も言ってなかっただろう(笑)。
      シロミズキも何も言わんし。」
シロクン  「ははは、すまんすまん。イエの件は、あまり人には話しておらんのだ。」
ミツ  「シロミズキって?」
シロクン  「おれのもう一人の兄弟だよ。同い年の。母親は違うが。
        船乗りになっていて、マサキと三人で南の島に行ったりもしたんだ。
        ミズキはその南の島から何日も掛けて行く、もっと南の島まで行っているんだ。
        ほら、リンドウ村で綺麗な貝殻をやっただろう?
        セリが喜んでおったよな。
        あれはミズキからもらったんだぞ。
        ハニサの髪飾りに使ったヤコウ貝もな。
        トコヨクニの一番南の島の海で獲れる貝だ。」
タカジョウ  「その一番南の島だが、おれは不思議に思っていたんだ。
        周りが全部海で、陸など見えぬ所を漕ぎ進むと聞いたぞ。
        どこに向かえばいいのか分かるのか?
        見えぬ島に、どうやってたどり着く?」
マサキ  「雲の無い、晴れた日であれば分かるんだ。
      遠くに雲があれば、その下には島がある。」
タカジョウ  「そうなのか?不思議な話だな。」
マサキ  「あとは海鳥が帰る先にも陸地があるぞ。
      シップウが空高く舞い上がれば、陸地を見つけるだろうな。」
タカジョウ  「なるほどなあ。船旅というのも楽しそうだな。」
ミツ  「海ってどんなのだろう?早く見てみたいー。」
マサキ  「ミツ、海の食い物は旨いんだぞ。
      きっとシロクンヌが潜って貝を獲ってくれるぞ。
      浜で焼いて食うと、最高だ。」
ミツ  「ホント?サチも潜って、貝を獲ったり出来る?」
サチ  「出来るよ。父さん、競争しようか?」
シロクン  「よし、やるか!
        ん~、だが岩場に棲む巻貝ならともかく、砂底に棲む二枚貝となると、
        見つけるのが難儀だから、サチに負けそうだ(笑)。」
タカジョウ  「砂に潜っておるのか?」
サチ  「そう。潜っててね、小っちゃい眼だけがぴょこんと出てるの。砂から。
     それを見つけて掘るんだよ。」
ミツ  「面白そう!私もやってみる!」
マサキ  「ハハハ。クラゲには気をつけろよ。」
シロクンヌ  「もう着くな。棹(さお)に替えるか。
        そうだ、魚を獲って行こう。
        あそこの葦の辺りに寄せてくれ。大物がバシャバシャやっておる。
        矢で射て獲る。」
マサキ  「筏を置いて少し行けば湧き水がある。そこでメシにしよう。
      熾火があって器もいくつか置いてあるから。」
 
 
 
          湧き水の近く。
 
サチ  「湖に雪の山が映って綺麗だー。」
ミツ  「ここって面白い。樹の枝に屋根が渡してあって雨に濡れないんだ。
     灰も沢山あって、灰焼きもできるね。いつも熾火がくすぶってるの?」
マサキ  「便利だろう?ここはメシ食い場だ。
      通りがかった者が誰でも使っていい。景色もいいし。
      近くにキノコ樹もあって、ここで自分たちが食べる分だけを採って食う。
      そこに柴が積んであるが、使ったら同量を鍋が沸く間に集めて積んでおくんだ。」
シロクン  「ここからカワセミ村までの山越えの道中にも、
        こういうみんなで使うネグラなんかが所々にあるんだぞ。
        村は無い。
        だが水場のそばに、岩陰を利用して屋根が張られていたりするんだ。」
タカジョウ  「塩の道だという話だが、人の行き来は多いのか?」
マサキ  「いや、そこまで多くはないと思う。たまに人とすれ違う程度だ。
      ただしっかりした道になってはおらんから、離れた所ですれ違っておるかも知れんな。」
シロクン  「鍋が沸いた。魚も焼けたし食うとしよう。」
サチ  「これ、土の器でしょう。
     私、不思議に思ってたけど、木の皮鍋の方が速く沸くよね?」
タカジョウ  「確かにそうだ。木の皮鍋に慣れると、土の器はまどろっこしい気がする。」
シロクン  「ヒョウタンを鍋にしても速く沸くぞ。」
マサキ  「だが味は、土の鍋が一番だよな?
      火の通りが柔らかいせいじゃないか?」
ミツ  「土の鍋は、土に水が染み込むでしょう?だからじゃない?
     厚みの違いもあるかも知れないけど。土の方が厚いから。」
シロクン  「水が染み込むからか・・・そうかも知れんな。」
マサキ  「ああそうだ、話は変わるがシロクンヌ、南の島で悪い噂を耳にしたぞ。」
シロクンヌ  「悪い噂?」
マサキ  「ああ、ハタレだ。どうも腕の立つハタレの兄弟がいるそうだ。
      それが、まだ十代の少年らしい。
      とんでもなく強いそうだぞ。」
 
 
           ━━━━━━ 幕間 ━━━━━━
 
縄文人の宗教観を考察するにあたり、まず彼らが死者をどのように見ていたかを考えてみたいと思います。
 
彼らは死者を土葬していました。
その埋葬場所ですが、集落の中が多いのです。
それも集落の中央。
墓地を囲むようにして、竪穴住居跡が見つかったりしています。
ウルシ村の場合は、中央に広場があり墓地は村の縁にありますが、そういう例は実際は少ないようです。
この事を見ても、彼らは死者を恐れてはいなかったと思います。
むしろ死者と親しんでいたかもしれない。
それで「縄文GoGo」では、墓場は子供の遊び場だとなっています。
 
 
あと、埋葬時の姿において、屈葬と伸展葬に分かれます。
伸展葬とは体を伸ばして、おそらく上を向かせて埋葬しています。
問題は、屈葬です。
屈葬は、死者が蘇って動き出すと恐ろしいから、手足を縛って埋めたのだとする説があります。
でももしその観念があったのなら、集落の中央を墓地にはしなかったはずです。
 
弥生以降、屈葬の意味は変わったかも知れませんが、ここでは縄文人について考えています。
私は、縄文時代の屈葬は、むしろ蘇りを願ったのではないかと思っています。
つまり屈葬とは、母の胎内の、胎児の様子の再現です。
胎児の姿勢にして、また産まれて来て下さいと願ったのかも知れません。
 
これは別の機会に詳しく触れますが、弥生時代と言うのは、西日本一帯で怨霊が大発生した時代だと、私は思っています。
おそらく怨霊鎮魂に明け暮れたことでしょう。
その頃の方が、縄文時代よりも遥かに呪術的だったのではないでしょうか?
弥生以降、死者とはタタリをなす恐ろしい存在となりました。
弥生時代の墓地は、居住区から離れた所に作られる例が多いのです。
 
では、その怨霊信仰の根っ子はどこにあったのか?
私は、縄文人であったのだろうと思っています。
 
 
登場人物 シロクン 28歳 タビンド 特産物を遠方の村々に運ぶ シロのイエのクンヌ  ササヒコ 43歳 ウルシ村のリーダー  ムマヂカリ 26歳 ヒゲの大男   ヤッホ 22歳 ササヒコの息子   ハギ 24歳 ヤスが得意  タホ 4歳 ヤッホとヤシムの息子 ヤシムと暮らしている  タヂカリ 6歳 ムマヂカリとスサラの息子  クマジイ 63歳 長老だが・・・  テイトンポ 40歳 シロクンヌの師匠 その道の達人   クズハ 39歳 ハギとハニサの母親   タマ 35歳 料理長  アコ 20歳 男勝り テイトンポに弟子入り   ヤシム 24歳 タホの母親  ハニサ 17歳 土器作りの名人 シロクンヌの宿   スサラ 25歳 ムマヂカリの奥さん  ヌリホツマ 55歳 漆塗り名人 巫女 本名はスス  ホムラ 犬 ムマヂカリが可愛がっている      
追加アシヒコ 56歳 アユ村のリーダー  マグラ 27歳 アユ村の若者  カタグラ 24歳 マグラの弟  フクホ 50歳 アシヒコの奥さん  マユ 25歳 アユ村の娘  ソマユ  19歳 マユの妹  サチ 12歳 孤児 シロクンヌの娘となる アヤクンヌ      エミヌ 18歳  オジヌ 16歳 エミヌの弟  カイヌ 14歳 オジヌの弟    モリヒコ シカ村のカミ  サラ 17歳 スサラの妹 ハギとトツギとなる ヌリホツマの弟子  ナクモ 18歳 エミヌの友人  シオラム 41歳 ササヒコのすぐ下の弟 塩作りの加勢のためシオ村で暮らす 5年に一度、里帰りする  ナジオ 20歳 シオラムの息子 シオ村生まれ  タカジョウ 23歳 ワシ使い  ホコラ 洞窟暮らし 哲人  シップ オオイヌワシ タカジョウが飼っている  エニ 38歳 エミヌ姉弟の母   カヤ アマカミの使者  シラク 北のミヤコのシロのムロヤの責任者  マシベ フジのシロの里の者 ヲウミのシロの村との連絡係り  トモ フジのシロの里の者  イナ 30歳 シロクンヌの姉弟子 杖の達人  コヨウ 15歳 タカジョウの妹  ゴン 洞窟で飼われている仔犬  ミツ 11歳 アユ村の少女  カザヤ 24歳 アユ村の若者 カタグラの友人  テミユ 22歳 カザヤの妹  タガオ 32歳 ミツの父親 目がみえない  ゾキ 14歳 オロチの姉 シップウの攻撃で背中に傷を負う オロチ 12歳 ゾキの弟 シップウの攻撃で顔に傷を負う  イワジイ 60歳 黒切りの里の山師 ヌリホツマの兄  シロイブキ 28歳 シロクンヌの兄弟
追加(旅編)スズヒコ 65歳 リンドウ村のリーダー  タジロ 21歳 リンドウ村の若者  セリ 11歳 リンドウ村の娘  レンザ 14歳 道中で出会った少年。足の骨が折れていた。  レン レンザが飼っているオオカミ  シシヒコ 35歳 シシガミ村のカミ  サタキ 25歳 シシガミ村の青年  ミワ 33歳 シシヒコの奥さん。  シュリ 21歳 シシガミ村の娘。レンザの宿。  ユリサ 22歳 シシガミ村の娘。一日だけのタカジョウの宿。  セジ 20歳 シシガミ村の青年。ゾキのシモベ。  マサキ 28歳 シロクンヌのタビンド仲間。

   

用語説明 ムロヤ=竪穴住居  大ムロヤ=大型竪穴建物  カミ=村のリーダー  コノカミ=この村のリーダー           グリッコ=どんぐりクッキー  黒切り=黒曜石  神坐=石棒(男性器を模した磨製石器)  塩渡り=海辺の村が作った塩を山の村に運ぶ塩街道があった。ウルシ村から東にシカ村→アマゴ村・・・七つ目がシオ村  御山=おやま。ウルシ村の広場から見える、高大な山々  コタチ山=御山連峰最高峰  トコヨクニ=日本  蚊遣りトンボ=虫除けオニヤンマ ここではオニヤンマの遺骸に竹ひごを刺し、竹ひごをヘアバンドで頭部に固定する  トツギ=一夫一婦の結婚  眼木=めぎ 眼鏡フレーム 曲げ木工房で作っている  クンヌ=イエの頭領  吊り寝=ハンモック  一本皿=長い丸太を半分に割いて作ったテーブル。一本の木から2本取れるが、一本皿と呼ばれている。  一回し=長さの単位 70㎝  半回し=35㎝ 縄文尺とも呼ばれる。  カラミツブテ・カブテ=狩りの道具。コブシ大の二つの石を紐でつなげた物。  ボウボウ=樹皮ラッパ 法螺貝よりも高い音が出る。  薙ぎ倒しの牙・薙ぎ倒しイノシシの牙=ナウマン象の象牙  バンドリ=背負子などを背負った時に、肩と背中を保護する当て物。衣服の上からバンドリを装着し、それから背負子を着ける。  黒石糊アスファルト

 

 

縄文GoGo旅編 第28話 7日目①

 

 

 

          早朝のアヅミ野。

 
    野営所では火が焚かれ、木の皮鍋が掛けられている。
    辺りは、まだ薄暗い。
 
タカジョウ  「昨夜から冷え込んでいるが、やっぱり山は雪をかぶっておるな。」
サチ  「綺麗!この辺りはまだ日が差してないのに、山だけが朝日を浴びて真っ赤だ!」
ミツ  「寒いね。あの山々と御山って、どっちが高いんだろう?」
シロクン  「どうだろうな・・・同じ位のような気もするが・・・
        おそらく御山にも雪が降ったのだろうな。
        雪の御山も、ウルシ村から見てみたかったが。
        サチとミツ、そら、クルミだ。
        ここまで来れば、もう湖も近い。
        筏(いかだ)で渡って、昼には向こう側にいる予定だ。」
サチ  「今夜は二つの湖の間にある村に泊まるの?」
シロクン  「そうだ。アオキ村で厄介になる。筏の礼もせねばならんからな。
        夕飯に、シオユ村でもらったシシ腿の塩漬けを振舞おうと思うがいいかな?」
タカジョウ  「ああそれがいい。大きい村なのか?」
シロクンヌ  「いや、村人の数はそれほどでもない。子供も入れて20人位だ。
        だが、ムロヤは多いぞ。旅人用だな。
        おそらくイワジイも、何日か前に泊ったはずだ。」
タカジョウ  「そのイワジイだが、台風をどこでやり過ごしたのかが少し心配でな。」
シロクン  「ふむ・・・
        シオユ村でもホコラからも、イワジイの話は出なかったからな。」
タカジョウ  「まあジイの事だから、岩陰でも見つけてそこに避難しただろうが・・・
        鍋が煮えた。カジカ汁だ。キノコもたっぷり入ってる。あったまるぞ。」
サチ  「美味しい。私、カジカの夜突きって、昨日初めてやった。」
ミツ  「昨日の夜は寒かったのに、サチは平気で川に入るんだから、さすがだよ。」
タカジョウ  「それもそうだが、夜見るカジカは岩と区別がつかんから見つけにくいのだが、
        サチはあっさり見つけるんだよな。」
シロクン  「夜はサチの眼が頼りだ(笑)。
        食べ終わったら、昨日のヤマドリとムササビ、
        それからこのカジカの魂送りをして出発だ。
        サチとミツで、骨を埋める穴を掘ってくれな。」
タカジョウ  「おれはシップウの世話をして来るよ。
        水鳥を怖がらせてもいかんから、今日は腕に乗せて移動だ。」
 
 
 
          南の湖の手前。
 
 
    シップウはタカジョウの腕に乗っている。
 
サチ  「ねえ父さん、これって何だろう?」

シロクン  「何かの道具だろうが・・・深く埋まっていたのか?」
タカジョウ  「骨を埋める穴から出て来たのか?」
ミツ  「そう。木の棒で掘ってたら、半回し(35cm)くらいの所に埋まってた。」
サチ  「そう言えば、穴の近くに、あちこちで掘った跡があったよね?」
ミツ  「うん。誰かが最近、掘ったのかも知れない。」
タカジョウ  「ああ、少し離れた所に焚き火の跡があったから、
        狩りの合間に煮炊きした者でもいたんだろう。」
シロクン  「だがサチが掘った場所は、堀り跡ではないんだろう?」
サチ  「そう。だからずっと前から埋まってたんだと思う。」
シロクン  「昔の人の道具で、木のニギリと組み合わせて使っていたとしても、
        木は腐って土に還っているだろうし・・・」
タカジョウ  「思い付くのは、革なめしの道具くらいか・・・
        すぐそばが川だったろう。
        何かの作業場があったのかも知れん。」
シロクン  「お、ほら、森を抜ける。湖が見えて来たぞ。」
ミツ  「ホントだ。水鳥がいっぱいいる。
     あそこだけ葦が生えて無いんだ。船着き場になってるんだね?」
サチ  「丸木舟も筏も陸揚げされてて、屋根の下に入ってる。
     でも誰もいないね。ミツ、見に行こう!」
ミツ  「うん!」
シロクン  「ははは、走って行った。」
タカジョウ  「水鳥の数から見ても、ここは魚が多そうだな。
        葦の水間でバシャバシャと音がするが、あれは魚だろう?
        鯉か何かだな。
        筌(うけ)を仕掛けておけば、半日でそこそこ獲れそうだ。」
シロクンヌ  「あそこに竿が立っているが、多分、あれは筌を仕掛けた目印だぞ。」
タカジョウ  「そうかも知れん(笑)。
        なるほどなあ。綺麗に整備された船着き場だ。
        アオキ村の衆が、手を掛けているのか?」
シロクン  「それもあるし、塩渡りの渡し人やタビンドも、しきたりは心得ている。
        舟が長持ちするように大事に扱うし、乗って来た舟の置き場も決まっているんだ。」
サチ  「父さん、どの舟に乗るの?」
シロクン  「その筏に乗って行くか。
        あそこに丸太が積んであるだろう。
        あれを並べて、水場までのコロの道を作るぞ。」
ミツ  「水場まで石敷きの道が出来てる。
     コロが転がりやすいようにしてあるんだね。
     サチ、一緒に丸太を運ぼう!」
サチ  「うん。棹(さお)や櫂(かい)もいっぱい置いてあるよ。」
シロクン  「この辺りが丁度半分くらいだろうな、カワセミ村までの道のりの。
        これは南の湖で、明日は北の湖を渡る。」
タカジョウ  「そこから先が、何度も山越えが続くのだな?」
シロクン  「ああそうだ。
        その山越えだがな、なかなか面白い物を目に出来るぞ。」
タカジョウ  「面白い物?
        今度はタヌキが酒を造っておるのか?」
シロクンヌ  「ははは。そうではないが、まあ、行ってみてのお楽しみだ。」
タカジョウ  「ん?向こうから舟で一人、こっちに来るが・・・」
シロクン  「漕ぎ慣れたようすだ。村の者だろう。」
タカジョウ  「筌の仕掛け主かも知れんぞ(笑)。」
 
    その時、湖から「おーい、シロクンヌー」と声がした。
 
シロクン  「誰だ?」
タカジョウ  「知り合いか?」
シロクン  「あれは・・・マサキだ。タビンド仲間のマサキ(男・28歳)だ。
        おれはマサキの舟で、カワセミ村を出たんだよ。」
サチ  「アケビ村に寄る前の話?」
シロクン  「そうだ。マサキと二人、カワセミ村から舟で出て、西に向かった。
        おれだけが途中で降りて、アケビ村に寄って、そこでホコラに出会ったんだ。
        その時はホコラではなく、ミノリと名乗っていたが。
        そこで明り壺の祭りの話を聞き、ウルシ村に行ったんだよ。
        おーい、マサキーー!」
 
 
          ━━━━━━ 幕間 ━━━━━━
 
縄文人の宗教観について。
 
サチが掘り出した石器は「トロトロ石器」と呼ばれ、異形局部磨製石器とも呼ばれます。
シロクンヌの頃よりも3000年昔の、今から8000年前頃に作られたと思われます。
出土地は、東北南部から九州におよびます。
何のために作られたのかは分かっていません。
儀礼用、祭祀用とする見解が有力なのですが、使途不明品は何でもかんでも祭祀用とみなすのが考古学アルアルですので、私としましてはその立ち位置には立ちたくはなく、実用的な何かであったと思いたいところですが、では何なのだ?と言われますと見当がつきません。
ではなぜその立ち位置を好まないかと言えば、縄文人は、言われるほどには呪術的ではなかったのではないかと考えるからです。
 
これから何回かに渡り、縄文人の宗教観について考察してみたいと思っています。
もちろんそれは私自身の独断であり、世間の認識とは隔たりがあったりするでしょう。
ただ「縄文GoGo」の物語は、その私の独断の考察に基づいて描かれている訳ですし、このあたりで一度、作者が思う縄文人の宗教観を開示しておいた方がいいと考えました。
 
そこで早速、一部を述べてみたいと思います。
まずアイヌの宗教観をそのまま縄文人に当てはめる人達がいますが、私はその考え方には反対です。
理由は簡単、縄文時代アイヌは日本に居なかったからです。
アイヌの起こりは、平安末期から鎌倉時代に掛けてだと考えます。
その頃寒冷化が生じ、オホーツク人が南下し北海道に渡来して、縄文人の流れを汲む擦文文化人と交わったのがアイヌ文化の始まりだと考えます。
他に北海道渡来の理由としては、モンゴル帝国に攻められたからだとする説もあります。
とにかく渡来時点で、彼らは独自の文化、宗教、言語を持ち合わせていたはずです。
 
厳然たる事実として、アイヌ以前に北海道には先住民がいました。
縄文以前の旧石器時代からヒトが住んでいたのだから当然ですよね。
ちなみに、北海道最古の遺跡は3万年前のものだとされています。
アイヌが先住民だというのは、ナンセンス極まりないですね。
アイヌ文化と縄文文化には共通点もあるでしょうが、異なる文化であると私は思っています。
ですからアイヌ語を基に縄文語を推測するやり方にも、発音、文法共に、大いなる疑問を持っています。
 
それから東北のマタギに関しても、宗教観という意味では縄文人とは違いがあると思います。
まず第一に、マタギの家には仏壇があるでしょう?
お葬式は仏式の人が多いと思います。
天台宗真言宗日光権現などの仏教の影響を受けていますから、命を頂く、命に感謝する、と言う観念が強い。
ですから獲物を丁重に扱いますし、射殺した後のしきたりを重んじます。
忌み事も多く、禁忌を破る事は絶対にしません。
どちらかと言えば、狩猟行為は日常ではなく非日常、祭事に近い位置づけではないかと思われます。
 
これに対し縄文人の狩りは、日常の一部だったような気がするのです。
だって彼らは、完全なる狩猟民と思われる旧石器人の末裔ですから。
獲物の弔いや送りの行為はあったと思いますが、仏教思想はありません。
宗教上のタブーの数は、縄文人の方が少なかったと思っています。
 
このように、私としましてはアイヌマタギの思想や文化を、そのまま縄文人に当てはめる事はしたくありません。
彼らには、彼ら特有の宗教観があったはずです。
そして、実は縄文人の宗教観が、現代日本人に大変な影響を及ぼしていると私は考えているのですが、その辺のところを追々述べていこうかと思っている次第です。

 

 
登場人物 シロクン 28歳 タビンド 特産物を遠方の村々に運ぶ シロのイエのクンヌ  ササヒコ 43歳 ウルシ村のリーダー  ムマヂカリ 26歳 ヒゲの大男   ヤッホ 22歳 ササヒコの息子   ハギ 24歳 ヤスが得意  タホ 4歳 ヤッホとヤシムの息子 ヤシムと暮らしている  タヂカリ 6歳 ムマヂカリとスサラの息子  クマジイ 63歳 長老だが・・・  テイトンポ 40歳 シロクンヌの師匠 その道の達人   クズハ 39歳 ハギとハニサの母親   タマ 35歳 料理長  アコ 20歳 男勝り テイトンポに弟子入り   ヤシム 24歳 タホの母親  ハニサ 17歳 土器作りの名人 シロクンヌの宿   スサラ 25歳 ムマヂカリの奥さん  ヌリホツマ 55歳 漆塗り名人 巫女 本名はスス  ホムラ 犬 ムマヂカリが可愛がっている      
追加アシヒコ 56歳 アユ村のリーダー  マグラ 27歳 アユ村の若者  カタグラ 24歳 マグラの弟  フクホ 50歳 アシヒコの奥さん  マユ 25歳 アユ村の娘  ソマユ  19歳 マユの妹  サチ 12歳 孤児 シロクンヌの娘となる アヤクンヌ      エミヌ 18歳  オジヌ 16歳 エミヌの弟  カイヌ 14歳 オジヌの弟    モリヒコ シカ村のカミ  サラ 17歳 スサラの妹 ハギとトツギとなる ヌリホツマの弟子  ナクモ 18歳 エミヌの友人  シオラム 41歳 ササヒコのすぐ下の弟 塩作りの加勢のためシオ村で暮らす 5年に一度、里帰りする  ナジオ 20歳 シオラムの息子 シオ村生まれ  タカジョウ 23歳 ワシ使い  ホコラ 洞窟暮らし 哲人  シップ オオイヌワシ タカジョウが飼っている  エニ 38歳 エミヌ姉弟の母   カヤ アマカミの使者  シラク 北のミヤコのシロのムロヤの責任者  マシベ フジのシロの里の者 ヲウミのシロの村との連絡係り  トモ フジのシロの里の者  イナ 30歳 シロクンヌの姉弟子 杖の達人  コヨウ 15歳 タカジョウの妹  ゴン 洞窟で飼われている仔犬  ミツ 11歳 アユ村の少女  カザヤ 24歳 アユ村の若者 カタグラの友人  テミユ 22歳 カザヤの妹  タガオ 32歳 ミツの父親 目がみえない  ゾキ 14歳 オロチの姉 シップウの攻撃で背中に傷を負う オロチ 12歳 ゾキの弟 シップウの攻撃で顔に傷を負う  イワジイ 60歳 黒切りの里の山師 ヌリホツマの兄  シロイブキ 28歳 シロクンヌの兄弟
追加(旅編)スズヒコ 65歳 リンドウ村のリーダー  タジロ 21歳 リンドウ村の若者  セリ 11歳 リンドウ村の娘  レンザ 14歳 道中で出会った少年。足の骨が折れていた。  レン レンザが飼っているオオカミ  シシヒコ 35歳 シシガミ村のカミ  サタキ 25歳 シシガミ村の青年  ミワ 33歳 シシヒコの奥さん。  シュリ 21歳 シシガミ村の娘。レンザの宿。  ユリサ 22歳 シシガミ村の娘。一日だけのタカジョウの宿。  セジ 20歳 シシガミ村の青年。ゾキのシモベ。

   

用語説明 ムロヤ=竪穴住居  大ムロヤ=大型竪穴建物  カミ=村のリーダー  コノカミ=この村のリーダー           グリッコ=どんぐりクッキー  黒切り=黒曜石  神坐=石棒(男性器を模した磨製石器)  塩渡り=海辺の村が作った塩を山の村に運ぶ塩街道があった。ウルシ村から東にシカ村→アマゴ村・・・七つ目がシオ村  御山=おやま。ウルシ村の広場から見える、高大な山々  コタチ山=御山連峰最高峰  トコヨクニ=日本  蚊遣りトンボ=虫除けオニヤンマ ここではオニヤンマの遺骸に竹ひごを刺し、竹ひごをヘアバンドで頭部に固定する  トツギ=一夫一婦の結婚  眼木=めぎ 眼鏡フレーム 曲げ木工房で作っている  クンヌ=イエの頭領  吊り寝=ハンモック  一本皿=長い丸太を半分に割いて作ったテーブル。一本の木から2本取れるが、一本皿と呼ばれている。  一回し=長さの単位 70㎝  半回し=35㎝ 縄文尺とも呼ばれる。  カラミツブテ・カブテ=狩りの道具。コブシ大の二つの石を紐でつなげた物。  ボウボウ=樹皮ラッパ 法螺貝よりも高い音が出る。  薙ぎ倒しの牙・薙ぎ倒しイノシシの牙=ナウマン象の象牙  バンドリ=背負子などを背負った時に、肩と背中を保護する当て物。衣服の上からバンドリを装着し、それから背負子を着ける。  黒石糊アスファルト

 

 

縄文GoGo旅編 第27話 6日目③

 

 

 

          ウルシ村。広場。

 
  旗塔の立ち上げを無事に終え、まだ陽は高いが、祝いとねぎらいの宴が始まった。
  広場中央の焚き火の周りでは、様々な肉が焼かれている。
  イノシシの熾火焼き、鴨の丸焼き、ムササビの姿焼き・・・
  などなど、焼き上がった物から各自が自由にむしり取って食すのだ。
 
ヤッホ  「そらハニサ、鴨肉をむしってやったぞ。いい感じに焼けてるだろう。
      アニキ達、もう海に着いた頃か?」
ハニサ  「ありがとう。まだだと思うよ。たぶん、二つの湖の辺りじゃないかな。」
ヤシム  「ヤッホ、姿焼き、半分コしよう。あそこの、焼けてるでしょう。
      あ~あ、でもサチが心配。無茶してなければいいけど・・・」
ヌリホツマ  「なに心配いらん。祖先の矢じりがサチを護っておる。」
ヤッホ  「そうだよ。それにアニキが一緒なんだぜ。春には元気に戻ってくるさ。
      熱っちー!姿焼きの半裂きって難しいな。」
オジヌ  「それにサチだって強いよ。
      何てったって、あの薙ぎ倒しの牙を潜って取って来たんだから。
      このイノシシ、パリッパリだ。」
コヨウ  「あれにはお爺ちゃん(イワジイ)も驚いてたよね。
      ホントだね!パリパリしてて美味しい!」
ササヒコ  「おお、コヨウ、ここにおったか。探しておったんだ。
       みんな、大いに食べて飲んでくれよ!
       カタグラが栗実酒をたっぷり差し入れしてくれおった。
       とにかく今日は目出度い。
       旗塔も無事に立ち上がったし、とうとう我が村で温泉が見つかったからな。       
       それでコヨウ、明日からだが、温泉掘りの指図を頼んでよいか。
       テイトンポが掘り頭だ。オジヌとヤッホ、手を貸してやれ。」
イナ  「あたしも手伝うのよ。」
テイトンポ  「温泉の事はおれもよく知らん。何か用意する物とかあるのか?」
コヨウ  「兄さんからカスミ網は教わったでしょう?」
ヤシム  「あれ、カスミ網って言うんだ。鳥がつかんで離さない網でしょう?
      畠の横に立てて、時々使ってるやつね。」
コヨウ  「そう。その網で、鳥を生け捕りにしておくの。」
ヌリホツマ  「瘴気(しょうき)じゃな?」
サラ  「そう言えば、瘴気が出る温泉があるって聞いたことがある。
     瘴気に中る(あたる)と、倒れるって聞いたよ。」
ハニサ  「ショウキって何?」
コヨウ  「地が吐き出す、悪い息。
      それを吸い込むと、倒れてそのまま死んじゃうの。」
ハギ  「岩の温泉って、硫黄(いおう)のニオイが凄いだろう。
     ああいう風に、温泉場では、地がいろんな息を吐くんだよ。」
ハニサ  「そうか。粘土掘りの時にもニオイはするもん。
      地はいろんな息を出すんだね。」
コヨウ  「だから掘る時は、風上に立つの。
      そして周りには、鳥かごに生きた鳥を入れて置いておく。」
ササヒコ  「瘴気が出れば、鳥が倒れるのだな。」
コヨウ  「そう。鳥の様子がおかしくなったら、すぐに息を止めて逃げるの。
      とにかく息を止めて、出来るだけ離れるのが大事。」
ヤシム  「なんだか怖いね。ヤッホ、逃げる時に転ばないでよ。」
ハギ  「ヤッホなら転ぶだろうな。」
サラ  「転びそう。」
ハニサ  「大抵の時、ヤッホは転んでるもん。」
ヌリホツマ  「転びよるじゃろうな。」
ヤッホ  「なんだよヌリホツマまで!予言めいて聞こえるじゃないか!」
イナ  「アハハ、転んだって息を吸わなきゃいいのよ。
     あたしが助けに行ってあげるから、息を止めて待ってなさいよ。」
テイトンポ  「ヤッホが転ぶのはしょうがない。転んでもあわてんことだ。」
オジヌ  「おれ、ヤッホが転んだのを見て、噴き出しちゃわないかって心配してる。」
コヨウ  「絶対笑っちゃダメだよ。息が続かなくなっちゃうから。」
ヤッホ  「なんだよみんなして!おれは転ばないよ!」
 
 
カタグラ  「そら、マユ、注いでやる。栗実酒はたっぷりあるからな。」
マユ  「ありがとう。ソマユもこっちの暮らしに慣れたみたいね。」
ソマユ  「うん。毎日楽しいよ。
      でも湖が見えないのが、ちょっと寂しいかな。
      だけどその代わりに、御山が綺麗だからね。朝なんて凄く綺麗!」
シロイブキ  「しかし豪勢な宴だなあ。こんなのは、10年振りだ。」
ムマヂカリ  「ここに熊肉が加わっておればなあ。
        そうだ、クマ狩りだが、いつ頃の予定だ?
        おれも参加させてくれ。
        シロクンヌが放った熊刺しという技をおれは見ておらんのだ。
        シロイブキ、見せてくれよ。」
シロイブキ  「おおいいぞ。おれもムマヂカリの投げ槍が見てみたい。
        では四日後でどうだ?
        夜は満月だ。ムササビ狩りをするぞ。」
カタグラ  「おおいいな。その後、洞窟で宴だ。
       ムマジカリは泊って行け。
       そうだ、タヂカリも連れて来たらいい。」
タヂカリ  「父さん、ぼくも行きたい!」
タガオ  「タヂカリは6歳か?この先が楽しみだな。」
 
 
クマジイ  「アコや、つわりは良うなったか?」
アコ  「前ほどじゃないけどね、まだ肉はチョット・・・」
タマ  「キノコ汁だって美味しいからさ、トチ団子だって特製さね。」
マシベ  「確かにこのトチ団子は味が良いな。」
クズハ  「エミヌが何かを混ぜてたのよ。あれ、何かしら?」
スサラ  「エミヌは今、醤(ひしお)作りに必死なのよ。
     なにか新しい味の物を見つけたのかも知れないわね。」
ナジオ  「あ!クマジイがいた。なんでこんなに離れた所にいるの?」
クマジイ  「そりゃあ、アコとスサラが肉の焼ける煙が苦手じゃからじゃ。」
ナジオ  「ああ、そうだったね。テミユが森小屋のことを聞きたいってさ。」
テミユ  「樹の上に小屋を建てるんでしょう?はかどってるの?」
クマジイ  「上と言うても、てっぺんではないぞ。
       床は張り上がっておるが、ちょうど樹の中ほどの位置じゃな。
       樹の枝を利用して小屋を作るんじゃよ。」
クズハ  「その床の高さってどれくらいなの?」
マシベ  「送り杉のてっぺんと同じくらいではないかな。」
テミユ  「じゃあ樹の高さは、送り杉の倍ってことね。」
ナジオ  「大きいな。何の樹?」
クマジイ  「ケヤキじゃ。森で一番の巨木じゃよ。」
カイヌ  「ぼく、さっき送り杉に登ったでしょう。
      そこから見えたよ。遠くに一本だけ大きな樹があるの。」
マシベ  「枝から枝にハシゴを渡して登るのだが、段数で言えば床まで50段位だ。」
アコ  「すごいな。今度見に行こう。登ってもいいの?」
テミユ  「私も登ってみたい!でも下から見られちゃう?」
マシベ  「登ってくれていいぞ。
      女衆が登る時には、男着に着替えてもらうことにしたのだ。
      見られるってのもあるが、そもそも女着では危ないのでな。」
クマジイ  「小屋よりも上にの、今、見晴らし台を作っておるところじゃ。
       40段上じゃぞ。
       出来上がりを見れば、シロクンヌとて驚くじゃろうな。
       どうせなら、シロクンヌを魂消させるものを造らにゃあ。」
スサラ  「わー、下を見たら怖そうね。」
タマ  「あたしゃ高い所は苦手さね。」
アコ  「あたしは絶対登る!」
テミユ  「私も!ナジオ、一緒に登ろう!」
ナジオ  「お、おれはどっちかと言うと、タマ寄りなんだよな・・・
      下が海ならいいんだけど・・・」
 
 
エニ  「そうだったの。エミヌ、あなたいい人見つけたじゃない。」
エミヌ  「えへへ。」
カザヤ  「それで、おれはアユ村を離れられないから、エミヌにアユ村に来てもらいたいんだ。」
エニ  「近いし、いいじゃない。私も遊びに行っていいかしら?」
カザヤ  「もちろん大歓迎だ。ナジオが造った舟で、湖の向こう岸に渡ってもいいよ。」
エニ  「素敵ねー!あなた達、早く一緒になっちゃいなさいよ。
     冬に湖が凍ったりするんでしょう?氷の上を歩けるのかしら。
     見晴らし広場から見る夕陽って綺麗だって言うわね。
     早く一緒になりなさいよ。私、アユ村に行ってみたかったのよ。
     あ!裏の温泉に、いたずら好きの神坐がお祀りしてあるそうね!
     わざとお供えしなかったらどうなるんだろう。試した人っている?
     テイトンポとクズハも誘ってみようかしら。
     テイトンポは絶対に行くって言うわね。
     シジミグリッコを食べたいはずだから。
     えっと、まずはエミヌの荷物をまとめて、オジヌに運ばせればいいわね・・・」
 

 

 
登場人物 シロクン 28歳 タビンド 特産物を遠方の村々に運ぶ シロのイエのクンヌ  ササヒコ 43歳 ウルシ村のリーダー  ムマヂカリ 26歳 ヒゲの大男   ヤッホ 22歳 ササヒコの息子   ハギ 24歳 ヤスが得意  タホ 4歳 ヤッホとヤシムの息子 ヤシムと暮らしている  タヂカリ 6歳 ムマヂカリとスサラの息子  クマジイ 63歳 長老だが・・・  テイトンポ 40歳 シロクンヌの師匠 その道の達人   クズハ 39歳 ハギとハニサの母親   タマ 35歳 料理長  アコ 20歳 男勝り テイトンポに弟子入り   ヤシム 24歳 タホの母親  ハニサ 17歳 土器作りの名人 シロクンヌの宿   スサラ 25歳 ムマヂカリの奥さん  ヌリホツマ 55歳 漆塗り名人 巫女 本名はスス  ホムラ 犬 ムマヂカリが可愛がっている      
追加アシヒコ 56歳 アユ村のリーダー  マグラ 27歳 アユ村の若者  カタグラ 24歳 マグラの弟  フクホ 50歳 アシヒコの奥さん  マユ 25歳 アユ村の娘  ソマユ  19歳 マユの妹  サチ 12歳 孤児 シロクンヌの娘となる アヤクンヌ      エミヌ 18歳  オジヌ 16歳 エミヌの弟  カイヌ 14歳 オジヌの弟    モリヒコ シカ村のカミ  サラ 17歳 スサラの妹 ハギとトツギとなる ヌリホツマの弟子  ナクモ 18歳 エミヌの友人  シオラム 41歳 ササヒコのすぐ下の弟 塩作りの加勢のためシオ村で暮らす 5年に一度、里帰りする  ナジオ 20歳 シオラムの息子 シオ村生まれ  タカジョウ 23歳 ワシ使い  ホコラ 洞窟暮らし 哲人  シップ オオイヌワシ タカジョウが飼っている  エニ 38歳 エミヌ姉弟の母   カヤ アマカミの使者  シラク 北のミヤコのシロのムロヤの責任者  マシベ フジのシロの里の者 ヲウミのシロの村との連絡係り  トモ フジのシロの里の者  イナ 30歳 シロクンヌの姉弟子 杖の達人  コヨウ 15歳 タカジョウの妹  ゴン 洞窟で飼われている仔犬  ミツ 11歳 アユ村の少女  カザヤ 24歳 アユ村の若者 カタグラの友人  テミユ 22歳 カザヤの妹  タガオ 32歳 ミツの父親 目がみえない  ゾキ 14歳 オロチの姉 シップウの攻撃で背中に傷を負う オロチ 12歳 ゾキの弟 シップウの攻撃で顔に傷を負う  イワジイ 60歳 黒切りの里の山師 ヌリホツマの兄  シロイブキ 28歳 シロクンヌの兄弟
追加(旅編)スズヒコ 65歳 リンドウ村のリーダー  タジロ 21歳 リンドウ村の若者  セリ 11歳 リンドウ村の娘  レンザ 14歳 道中で出会った少年。足の骨が折れていた。  レン レンザが飼っているオオカミ  シシヒコ 35歳 シシガミ村のカミ  サタキ 25歳 シシガミ村の青年  ミワ 33歳 シシヒコの奥さん。  シュリ 21歳 シシガミ村の娘。レンザの宿。  ユリサ 22歳 シシガミ村の娘。一日だけのタカジョウの宿。  セジ 20歳 シシガミ村の青年。ゾキのシモベ。

   

用語説明 ムロヤ=竪穴住居  大ムロヤ=大型竪穴建物  カミ=村のリーダー  コノカミ=この村のリーダー           グリッコ=どんぐりクッキー  黒切り=黒曜石  神坐=石棒(男性器を模した磨製石器)  塩渡り=海辺の村が作った塩を山の村に運ぶ塩街道があった。ウルシ村から東にシカ村→アマゴ村・・・七つ目がシオ村  御山=おやま。ウルシ村の広場から見える、高大な山々  コタチ山=御山連峰最高峰  トコヨクニ=日本  蚊遣りトンボ=虫除けオニヤンマ ここではオニヤンマの遺骸に竹ひごを刺し、竹ひごをヘアバンドで頭部に固定する  トツギ=一夫一婦の結婚  眼木=めぎ 眼鏡フレーム 曲げ木工房で作っている  クンヌ=イエの頭領  吊り寝=ハンモック  一本皿=長い丸太を半分に割いて作ったテーブル。一本の木から2本取れるが、一本皿と呼ばれている。  一回し=長さの単位 70㎝  半回し=35㎝ 縄文尺とも呼ばれる。  カラミツブテ・カブテ=狩りの道具。コブシ大の二つの石を紐でつなげた物。  ボウボウ=樹皮ラッパ 法螺貝よりも高い音が出る。  薙ぎ倒しの牙・薙ぎ倒しイノシシの牙=ナウマン象の象牙  バンドリ=背負子などを背負った時に、肩と背中を保護する当て物。衣服の上からバンドリを装着し、それから背負子を着ける。  黒石糊アスファルト

 

 

縄文GoGo旅編 第26話 6日目②

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 台風で折れる前の旗塔。その他カテゴリーの『ウルシ村  絵コンテ』参照
 
旗塔の建て方は、地面に横倒しで組んだ物を、手前の『送り杉』を利用して立ち上げる。
横倒しの旗塔上部に縄を何本も結び、そのいくつかを送り杉の上部の枝に掛ける。
枝を経由した縄は、地面にまで延ばす。
地面に立ち縄を引けば、旗塔の頭が持ち上がる仕組みになっている。
支点となる送り杉の枝には、枝の保護と滑りやすくする目的で、割いた竹が巻き付けられていた。
 
 
          ウルシ村。旗塔の立ち上げ。
 
ササヒコ  「では、組分けをする。
       まずクマジイ、音頭取りだ。『送り杉』に登って出来るだけ高い場所から頼む。」
クマジイ  「おいさ、マシベ、手伝うてくれ。」
マシベ  「承知した。早速登ろうか。」
ササヒコ  「オジヌとカイヌ、送り杉に登って滑り竹にイノシシの脂を塗ってくれ。」
オジヌ  「分かったよ。カイヌ、命綱を忘れるなよ。」
ササヒコ  「テイトンポは引き上げ縄組の頭(かしら)を頼む。
       クマジイの指示に従って、組の衆に指示してくれ。
       女衆もここに入ってくれ。」
テイトンポ  「引き上げ縄は6本だ。
        まず女衆が適当に6本に分散してみてくれ。その間に男衆が入る。
        引く時は上を見るのではなく、自分の足元を見るのだぞ。
        転ばぬようにな。」
ササヒコ  「それから、東の縄頭がハギ。西の縄頭がイナ。
       これは立ち上げの最中に旗塔が左右に傾かんように、調整縄を引く役目だ。
       クマジイやマシベの指示に従ってくれ。
       縄は、東西共に3本ずつあるから、息を合わせてやってくれ。」
ハギ  「カタグラとナジオ、手伝ってくれ。」
イナ  「それならこっちは女でいこうかしら。」
エミヌ  「私やってみたい。ナクモも一緒にやろうよ。」
イナ  「それなら、エミヌ、ナクモ、マユ、コヨウでいくわ。」
ササヒコ  「さて、引き上げ縄で旗塔の頭がある程度持ち上がった後だが、
       仕上げは立ち上げ縄を引いて立ち上げる。
       立ち上げ縄頭はムマヂカリだ。
       ムマヂカリはそれまで、わし達と根本番だ。」
ムマヂカリ  「おお、いい役目だ。」
テイトンポ  「立ち上げ縄に移る時、引き上げ縄は、杉の根元に結び付ければよいのだな?」
ササヒコ  「そうだ。その後、ムマヂカリに合流してくれ。
       その辺の判断は、テイトンポに任せる。」
テイトンポ  「カザヤ、クズハ、エニ、結び付け係りを頼む。」
ササヒコ  「杭への縛り組の頭はわしだ。シロイブキ、手伝ってくれよ。」
シロイブキ  「了解した。まずは旗塔の根本がズレんようにしておくのだな?」
ササヒコ  「そうだ。途中、何度も仮結びをする。
       テイトンポとオジヌとカイヌも、引き上げが済んだらこちらに合流してくれ。
       それから、ヤッホは子供衆とワッショイ踊りだ。」
ヤッホ  「チビ達、威勢よくいくぞ。」
ササヒコ  「スサラとアコとハニサもワッショイ踊り組に入ってくれ。」
アコ  「ちぇー、あたしも引きたかったな。」
ヤッホ  「何言ってるんだ。ワッショイ踊りが肝なんだぞ。
      ワッショイ踊りの出来栄えで、はかどり方が違うんだから。」
テイトンポ  「その通りだ。ヤッホも良い事を言うな。」
ヤッホ  「そら見ろ。師匠がそう言ってる。」
アコ  「分かったよ。ヤッホのマネして踊ればいいんだな。」
ハニサ  「ヤッホ踊りのマネは・・・チョット恥ずかしいかも・・・」
スサラ  「そうよね・・・」
ヤッホ  「何言ってる。おれのクネリなんて、そう簡単にマネできるもんか。」
ササヒコ  「ハハハ、好きに踊ってくれればよい。
       それから、ヌリホツマ、歌い上げを頼む。
       みんな、配置に付いてくれ。」
 
 
ヌリホツマ  「おーよーたーちーあーげーーー」 
ヤッホ  「ワッショイ!ワッショイ!ワッショイ!ワッショイ!・・・」
クマジイ  「引き上げ始めーーー」
テイトンポ  「ゆっくり引き始めろーー」
ヌリホツマ  「ちーのーみーたーまーとーきーのーみーたーまーとーひーのー・・・」
アコ  「ワッショイ!ワッショイ!」
ハニサ  「ワッショイ!ワッショイ!」 
クマジイ  「テイトンポ、引けーーー」
テイトンポ  「引くぞーー、足元に気をつけろーー」
タマ  「おおさ、おおさ・・・」
クマジイ  「東と西ーー縄を張れーーー」
タヂカリ  「ワッショイ!ワッショイ!」
タホ  「ワッショイ!ワッショイ!」
ササヒコ  「よし!仮括りを始めるぞ。ムマヂカリ、立ち上げ縄に行ってくれ。」
ヌリホツマ  「とーこーよーくーにーのーなーかーにーあーりーてー・・・」
テイトンポ  「ゆっくりと杉の根本に戻るぞーー引きながらだーー」
マシベ  「イナの組ーー少しゆるめてくれーー」
カザヤ  「3本は結び終わった。あと3本だ。」
テイトンポ  「ヤシムとソマユとサラの列は、シカダマシに合流だ。」
ソマユ  「シカダマシって?」
サラ  「ムマヂカリのあだ名。」
ヤシム  「鹿笛が上手だから付けられたみたい。」
ムマヂカリ  「ゆっくりと、後ろに引きさがってくれ。転ぶなよ。」
クマジイ  「東西の組ーー南側に寄ってくれーーい」
マシベ  「よし、綺麗な三つ巴になったぞ。」
クマジイ  「ムマヂカリーーそのまま引くんじゃーーー」
スサラ  「ワッショイ!ワッショイ!ワッショイ!・・・」
ササヒコ  「よーし、立ち上がったーーそこで留まれーーー」
シロイブキ  「こっちの杭は縛りあがったぞ。」
テイトンポ  「ここも縛りあがった。」
カイヌ  「あと一本だね!」
オジヌ  「タガオ、グッと引いて。」
タガオ  「ふん、ふん、ふん。」
ササヒコ  「よし!縛り上がりーーー!」
全員  「目出度い目出度い♪目出度い目出度い♪・・・」
テイトンポ  「マシベとオジヌ、柱を登って縄を外すぞ。」

 

 

クズハ  「立派に立ち上がったわね。」

ハニサ  「あの長い縄はタガオが綯ったの?」

ソマユ  「そう。毎日縄綯い(なわない)してたからね。」

マユ  「タガオ、目の具合はどうなのよ?」

タガオ  「マユ、そこで指を立ててみてくれ。何本か言い当ててやる。」

マユ  「え?そんなに見えるようになってるの?これは?」

タガオ  「3本。ぼんやりと見えるだけだが、人の顔の区別はおおよそ出来るぞ。」

マユ  「すごいじゃない!ミツも帰って来たら驚くわよ。」

カタグラ  「タガオ、これは何か分かるか?」

タガオ  「わはは、相変わらずだ。ケツを出しておるのだな。」みんなが笑った。

 

 

 
登場人物 シロクン 28歳 タビンド 特産物を遠方の村々に運ぶ シロのイエのクンヌ  ササヒコ 43歳 ウルシ村のリーダー  ムマヂカリ 26歳 ヒゲの大男   ヤッホ 22歳 ササヒコの息子   ハギ 24歳 ヤスが得意  タホ 4歳 ヤッホとヤシムの息子 ヤシムと暮らしている  タヂカリ 6歳 ムマヂカリとスサラの息子  クマジイ 63歳 長老だが・・・  テイトンポ 40歳 シロクンヌの師匠 その道の達人   クズハ 39歳 ハギとハニサの母親   タマ 35歳 料理長  アコ 20歳 男勝り テイトンポに弟子入り   ヤシム 24歳 タホの母親  ハニサ 17歳 土器作りの名人 シロクンヌの宿   スサラ 25歳 ムマヂカリの奥さん  ヌリホツマ 55歳 漆塗り名人 巫女 本名はスス  ホムラ 犬 ムマヂカリが可愛がっている      
追加アシヒコ 56歳 アユ村のリーダー  マグラ 27歳 アユ村の若者  カタグラ 24歳 マグラの弟  フクホ 50歳 アシヒコの奥さん  マユ 25歳 アユ村の娘  ソマユ  19歳 マユの妹  サチ 12歳 孤児 シロクンヌの娘となる アヤクンヌ      エミヌ 18歳  オジヌ 16歳 エミヌの弟  カイヌ 14歳 オジヌの弟    モリヒコ シカ村のカミ  サラ 17歳 スサラの妹 ハギとトツギとなる ヌリホツマの弟子  ナクモ 18歳 エミヌの友人  シオラム 41歳 ササヒコのすぐ下の弟 塩作りの加勢のためシオ村で暮らす 5年に一度、里帰りする  ナジオ 20歳 シオラムの息子 シオ村生まれ  タカジョウ 23歳 ワシ使い  ホコラ 洞窟暮らし 哲人  シップ オオイヌワシ タカジョウが飼っている  エニ 38歳 エミヌ姉弟の母   カヤ アマカミの使者  シラク 北のミヤコのシロのムロヤの責任者  マシベ フジのシロの里の者 ヲウミのシロの村との連絡係り  トモ フジのシロの里の者  イナ 30歳 シロクンヌの姉弟子 杖の達人  コヨウ 15歳 タカジョウの妹  ゴン 洞窟で飼われている仔犬  ミツ 11歳 アユ村の少女  カザヤ 24歳 アユ村の若者 カタグラの友人  テミユ 22歳 カザヤの妹  タガオ 32歳 ミツの父親 目がみえない  ゾキ 14歳 オロチの姉 シップウの攻撃で背中に傷を負う オロチ 12歳 ゾキの弟 シップウの攻撃で顔に傷を負う  イワジイ 60歳 黒切りの里の山師 ヌリホツマの兄  シロイブキ 28歳 シロクンヌの兄弟
追加(旅編)スズヒコ 65歳 リンドウ村のリーダー  タジロ 21歳 リンドウ村の若者  セリ 11歳 リンドウ村の娘  レンザ 14歳 道中で出会った少年。足の骨が折れていた。  レン レンザが飼っているオオカミ  シシヒコ 35歳 シシガミ村のカミ  サタキ 25歳 シシガミ村の青年  ミワ 33歳 シシヒコの奥さん。  シュリ 21歳 シシガミ村の娘。レンザの宿。  ユリサ 22歳 シシガミ村の娘。一日だけのタカジョウの宿。  セジ 20歳 シシガミ村の青年。ゾキのシモベ。

   

用語説明 ムロヤ=竪穴住居  大ムロヤ=大型竪穴建物  カミ=村のリーダー  コノカミ=この村のリーダー           グリッコ=どんぐりクッキー  黒切り=黒曜石  神坐=石棒(男性器を模した磨製石器)  塩渡り=海辺の村が作った塩を山の村に運ぶ塩街道があった。ウルシ村から東にシカ村→アマゴ村・・・七つ目がシオ村  御山=おやま。ウルシ村の広場から見える、高大な山々  コタチ山=御山連峰最高峰  トコヨクニ=日本  蚊遣りトンボ=虫除けオニヤンマ ここではオニヤンマの遺骸に竹ひごを刺し、竹ひごをヘアバンドで頭部に固定する  トツギ=一夫一婦の結婚  眼木=めぎ 眼鏡フレーム 曲げ木工房で作っている  クンヌ=イエの頭領  吊り寝=ハンモック  一本皿=長い丸太を半分に割いて作ったテーブル。一本の木から2本取れるが、一本皿と呼ばれている。  一回し=長さの単位 70㎝  半回し=35㎝ 縄文尺とも呼ばれる。  カラミツブテ・カブテ=狩りの道具。コブシ大の二つの石を紐でつなげた物。  ボウボウ=樹皮ラッパ 法螺貝よりも高い音が出る。  薙ぎ倒しの牙・薙ぎ倒しイノシシの牙=ナウマン象の象牙  バンドリ=背負子などを背負った時に、肩と背中を保護する当て物。衣服の上からバンドリを装着し、それから背負子を着ける。  黒石糊アスファルト

 

 

ウラ話 ①

 

 

ここでは縄文GoGoに出て来るエピソードなどの、元ネタの話などをしてみたいと思います。

 

今回は、第176話  「ドングリ取り」のお話です。
 
サチ  「ドングリ取りで、私全然ミツに勝てないの。父さん、やってみて。」
シロクンヌ  「どうやるんだ?」
ミツ  「ドングリを並べるよ。最初は一個。次の列は三個。次の列は五個。次の列は七個。
     二人で交互にドングリを取って行くの。同じ列なら、一度に何個取ってもいいんだよ。
     でも五個の列から二個取って七個の列からも取るっていうのは駄目。
     そして、最後に取った人が負けなの。」
シロクン  「よし! とにかくやってみるか。おれから行くぞ。
        一遍に七個でもいいのか?」
ミツ  「いいよ。次、私ね。」
 
 
 
ミツ考案のゲームの内、「飛び越し」は私が考えたもので、お察しの通り雰囲気で書いているだけですから、実際にやってみてくれって言われると、出来ないんですよね(笑)。
 
でも「ドングリ取り」は、実際にあるゲームです。
誰がいつ考案したのかは知りませんが、わたしがこのゲームを知ったのは映画からでした。
 
高校生の私は映画少年でして、当時名画座で観た『去年マリエンバードで』という映画の中に、何度もこのゲームを行うシーンがあったのです。
ただし使われていたのは、もちろんドングリではありませんよ。
確かマッチ棒、コイン、カードだったと思います。
 
1:20 の形から始めて、 2:30 のような終わり方をします。
1回に取っていいのは、一つの列からだけです。
 
この映画を観た後に、私は友人と二人でこのゲームの研究(大袈裟か)をしました。
結果、後手必勝だと分かりました。
初手でそこを取れば、次はここを取る。3手目がそこなら今度はここを取る・・・
そういう風に間違えずに取って行けば、必ず後手が勝ちます。
 
自分が先手の場合は、とりあえず少ない本数を取ってみて、次に相手が間違えれば、必ずこちらが勝てます。
途中、一度でも間違えてくれたら、必ず勝てるのです。
だから、初めてやるよっていう人(ほとんどの人がそうですよね)が相手なら、わざと負けない限り、勝てます。
そんなゲームなのですね。
 
 
話は変わりますが、私が映画少年になったきっかけの映画は、中学3年生で観た『サスペリア』でした(笑)。
それまでも、『エクソシスト』や『ジョーズ』、『オーメン』など、話題の映画は観に行っていたのですが、『サスペリア』の主演女優のジェシカ・ハーパーの魅力にハマってしまったんですね(笑)。
「決して一人では見ないで下さい。」というキャッチコピーのテレビCMが話題で、どぎつい残酷描写のあるホラー映画なのですが、ずっと後に、綾辻行人さん始め、新本格推理小説の人達がこの映画の大ファンだというのを読んで驚きました。
皆さん、病んでますね(失礼)。
 
私の住まいは名古屋駅から車で1時間ほどの田舎町でして、当時はお小遣いの全てを映画につぎ込んでいました。
気に入った映画は、3回くらいは観に行っていました。
大抵一人で観に行くのですが、近場の小さい映画館で観るのが嫌で、必ず名古屋に出ていました。
映画館のハシゴをするのは普通で、お昼ご飯は食べません。(お金がもったいないから。)
帰りは交通費を浮かすために、数時間歩いたり(笑)。
 
未知との遭遇』や『スターウォーズ』が封切られた頃で、SFブーム真っ最中。
リバイバル上映の『2001年宇宙の旅』を観てぶっ飛びました。
誰が置いたのか妖しい石板(金属板?)に触れたヒトザルが道具を使う事に目覚め、骨(大腿骨かな?)で叩く事を覚えます。
その骨を空に放り投げたら、骨が宇宙船になります。
骨も道具、宇宙船も道具。
道具を使う事に目覚めたら、あとは骨が宇宙船になるまでは一瞬だよ、と言っているのでしょうか。
 
などととりとめもなく書いてきましたが、今回はこの辺で。
次回はいつになるかわかりませんが、足のニオイがすると話題の「ネバネバ」のお話を予定しております。