縄文GoGo

5000年前の中部高地の物語

縄文GoGo旅編 第26話 6日目②

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 台風で折れる前の旗塔。その他カテゴリーの『ウルシ村  絵コンテ』参照
 
旗塔の建て方は、地面に横倒しで組んだ物を、手前の『送り杉』を利用して立ち上げる。
横倒しの旗塔上部に縄を何本も結び、そのいくつかを送り杉の上部の枝に掛ける。
枝を経由した縄は、地面にまで延ばす。
地面に立ち縄を引けば、旗塔の頭が持ち上がる仕組みになっている。
支点となる送り杉の枝には、枝の保護と滑りやすくする目的で、割いた竹が巻き付けられていた。
 
 
          ウルシ村。旗塔の立ち上げ。
 
ササヒコ  「では、組分けをする。
       まずクマジイ、音頭取りだ。『送り杉』に登って出来るだけ高い場所から頼む。」
クマジイ  「おいさ、マシベ、手伝うてくれ。」
マシベ  「承知した。早速登ろうか。」
ササヒコ  「オジヌとカイヌ、送り杉に登って滑り竹にイノシシの脂を塗ってくれ。」
オジヌ  「分かったよ。カイヌ、命綱を忘れるなよ。」
ササヒコ  「テイトンポは引き上げ縄組の頭(かしら)を頼む。
       クマジイの指示に従って、組の衆に指示してくれ。
       女衆もここに入ってくれ。」
テイトンポ  「引き上げ縄は6本だ。
        まず女衆が適当に6本に分散してみてくれ。その間に男衆が入る。
        引く時は上を見るのではなく、自分の足元を見るのだぞ。
        転ばぬようにな。」
ササヒコ  「それから、東の縄頭がハギ。西の縄頭がイナ。
       これは立ち上げの最中に旗塔が左右に傾かんように、調整縄を引く役目だ。
       クマジイやマシベの指示に従ってくれ。
       縄は、東西共に3本ずつあるから、息を合わせてやってくれ。」
ハギ  「カタグラとナジオ、手伝ってくれ。」
イナ  「それならこっちは女でいこうかしら。」
エミヌ  「私やってみたい。ナクモも一緒にやろうよ。」
イナ  「それなら、エミヌ、ナクモ、マユ、コヨウでいくわ。」
ササヒコ  「さて、引き上げ縄で旗塔の頭がある程度持ち上がった後だが、
       仕上げは立ち上げ縄を引いて立ち上げる。
       立ち上げ縄頭はムマヂカリだ。
       ムマヂカリはそれまで、わし達と根本番だ。」
ムマヂカリ  「おお、いい役目だ。」
テイトンポ  「立ち上げ縄に移る時、引き上げ縄は、杉の根元に結び付ければよいのだな?」
ササヒコ  「そうだ。その後、ムマヂカリに合流してくれ。
       その辺の判断は、テイトンポに任せる。」
テイトンポ  「カザヤ、クズハ、エニ、結び付け係りを頼む。」
ササヒコ  「杭への縛り組の頭はわしだ。シロイブキ、手伝ってくれよ。」
シロイブキ  「了解した。まずは旗塔の根本がズレんようにしておくのだな?」
ササヒコ  「そうだ。途中、何度も仮結びをする。
       テイトンポとオジヌとカイヌも、引き上げが済んだらこちらに合流してくれ。
       それから、ヤッホは子供衆とワッショイ踊りだ。」
ヤッホ  「チビ達、威勢よくいくぞ。」
ササヒコ  「スサラとアコとハニサもワッショイ踊り組に入ってくれ。」
アコ  「ちぇー、あたしも引きたかったな。」
ヤッホ  「何言ってるんだ。ワッショイ踊りが肝なんだぞ。
      ワッショイ踊りの出来栄えで、はかどり方が違うんだから。」
テイトンポ  「その通りだ。ヤッホも良い事を言うな。」
ヤッホ  「そら見ろ。師匠がそう言ってる。」
アコ  「分かったよ。ヤッホのマネして踊ればいいんだな。」
ハニサ  「ヤッホ踊りのマネは・・・チョット恥ずかしいかも・・・」
スサラ  「そうよね・・・」
ヤッホ  「何言ってる。おれのクネリなんて、そう簡単にマネできるもんか。」
ササヒコ  「ハハハ、好きに踊ってくれればよい。
       それから、ヌリホツマ、歌い上げを頼む。
       みんな、配置に付いてくれ。」
 
 
ヌリホツマ  「おーよーたーちーあーげーーー」 
ヤッホ  「ワッショイ!ワッショイ!ワッショイ!ワッショイ!・・・」
クマジイ  「引き上げ始めーーー」
テイトンポ  「ゆっくり引き始めろーー」
ヌリホツマ  「ちーのーみーたーまーとーきーのーみーたーまーとーひーのー・・・」
アコ  「ワッショイ!ワッショイ!」
ハニサ  「ワッショイ!ワッショイ!」 
クマジイ  「テイトンポ、引けーーー」
テイトンポ  「引くぞーー、足元に気をつけろーー」
タマ  「おおさ、おおさ・・・」
クマジイ  「東と西ーー縄を張れーーー」
タヂカリ  「ワッショイ!ワッショイ!」
タホ  「ワッショイ!ワッショイ!」
ササヒコ  「よし!仮括りを始めるぞ。ムマヂカリ、立ち上げ縄に行ってくれ。」
ヌリホツマ  「とーこーよーくーにーのーなーかーにーあーりーてー・・・」
テイトンポ  「ゆっくりと杉の根本に戻るぞーー引きながらだーー」
マシベ  「イナの組ーー少しゆるめてくれーー」
カザヤ  「3本は結び終わった。あと3本だ。」
テイトンポ  「ヤシムとソマユとサラの列は、シカダマシに合流だ。」
ソマユ  「シカダマシって?」
サラ  「ムマヂカリのあだ名。」
ヤシム  「鹿笛が上手だから付けられたみたい。」
ムマヂカリ  「ゆっくりと、後ろに引きさがってくれ。転ぶなよ。」
クマジイ  「東西の組ーー南側に寄ってくれーーい」
マシベ  「よし、綺麗な三つ巴になったぞ。」
クマジイ  「ムマヂカリーーそのまま引くんじゃーーー」
スサラ  「ワッショイ!ワッショイ!ワッショイ!・・・」
ササヒコ  「よーし、立ち上がったーーそこで留まれーーー」
シロイブキ  「こっちの杭は縛りあがったぞ。」
テイトンポ  「ここも縛りあがった。」
カイヌ  「あと一本だね!」
オジヌ  「タガオ、グッと引いて。」
タガオ  「ふん、ふん、ふん。」
ササヒコ  「よし!縛り上がりーーー!」
全員  「目出度い目出度い♪目出度い目出度い♪・・・」
テイトンポ  「マシベとオジヌ、柱を登って縄を外すぞ。」

 

 

クズハ  「立派に立ち上がったわね。」

ハニサ  「あの長い縄はタガオが綯ったの?」

ソマユ  「そう。毎日縄綯い(なわない)してたからね。」

マユ  「タガオ、目の具合はどうなのよ?」

タガオ  「マユ、そこで指を立ててみてくれ。何本か言い当ててやる。」

マユ  「え?そんなに見えるようになってるの?これは?」

タガオ  「3本。ぼんやりと見えるだけだが、人の顔の区別はおおよそ出来るぞ。」

マユ  「すごいじゃない!ミツも帰って来たら驚くわよ。」

カタグラ  「タガオ、これは何か分かるか?」

タガオ  「わはは、相変わらずだ。ケツを出しておるのだな。」みんなが笑った。

 

 

 
登場人物 シロクン 28歳 タビンド 特産物を遠方の村々に運ぶ シロのイエのクンヌ  ササヒコ 43歳 ウルシ村のリーダー  ムマヂカリ 26歳 ヒゲの大男   ヤッホ 22歳 ササヒコの息子   ハギ 24歳 ヤスが得意  タホ 4歳 ヤッホとヤシムの息子 ヤシムと暮らしている  タヂカリ 6歳 ムマヂカリとスサラの息子  クマジイ 63歳 長老だが・・・  テイトンポ 40歳 シロクンヌの師匠 その道の達人   クズハ 39歳 ハギとハニサの母親   タマ 35歳 料理長  アコ 20歳 男勝り テイトンポに弟子入り   ヤシム 24歳 タホの母親  ハニサ 17歳 土器作りの名人 シロクンヌの宿   スサラ 25歳 ムマヂカリの奥さん  ヌリホツマ 55歳 漆塗り名人 巫女 本名はスス  ホムラ 犬 ムマヂカリが可愛がっている      
追加アシヒコ 56歳 アユ村のリーダー  マグラ 27歳 アユ村の若者  カタグラ 24歳 マグラの弟  フクホ 50歳 アシヒコの奥さん  マユ 25歳 アユ村の娘  ソマユ  19歳 マユの妹  サチ 12歳 孤児 シロクンヌの娘となる アヤクンヌ      エミヌ 18歳  オジヌ 16歳 エミヌの弟  カイヌ 14歳 オジヌの弟    モリヒコ シカ村のカミ  サラ 17歳 スサラの妹 ハギとトツギとなる ヌリホツマの弟子  ナクモ 18歳 エミヌの友人  シオラム 41歳 ササヒコのすぐ下の弟 塩作りの加勢のためシオ村で暮らす 5年に一度、里帰りする  ナジオ 20歳 シオラムの息子 シオ村生まれ  タカジョウ 23歳 ワシ使い  ホコラ 洞窟暮らし 哲人  シップ オオイヌワシ タカジョウが飼っている  エニ 38歳 エミヌ姉弟の母   カヤ アマカミの使者  シラク 北のミヤコのシロのムロヤの責任者  マシベ フジのシロの里の者 ヲウミのシロの村との連絡係り  トモ フジのシロの里の者  イナ 30歳 シロクンヌの姉弟子 杖の達人  コヨウ 15歳 タカジョウの妹  ゴン 洞窟で飼われている仔犬  ミツ 11歳 アユ村の少女  カザヤ 24歳 アユ村の若者 カタグラの友人  テミユ 22歳 カザヤの妹  タガオ 32歳 ミツの父親 目がみえない  ゾキ 14歳 オロチの姉 シップウの攻撃で背中に傷を負う オロチ 12歳 ゾキの弟 シップウの攻撃で顔に傷を負う  イワジイ 60歳 黒切りの里の山師 ヌリホツマの兄  シロイブキ 28歳 シロクンヌの兄弟
追加(旅編)スズヒコ 65歳 リンドウ村のリーダー  タジロ 21歳 リンドウ村の若者  セリ 11歳 リンドウ村の娘  レンザ 14歳 道中で出会った少年。足の骨が折れていた。  レン レンザが飼っているオオカミ  シシヒコ 35歳 シシガミ村のカミ  サタキ 25歳 シシガミ村の青年  ミワ 33歳 シシヒコの奥さん。  シュリ 21歳 シシガミ村の娘。レンザの宿。  ユリサ 22歳 シシガミ村の娘。一日だけのタカジョウの宿。  セジ 20歳 シシガミ村の青年。ゾキのシモベ。

   

用語説明 ムロヤ=竪穴住居  大ムロヤ=大型竪穴建物  カミ=村のリーダー  コノカミ=この村のリーダー           グリッコ=どんぐりクッキー  黒切り=黒曜石  神坐=石棒(男性器を模した磨製石器)  塩渡り=海辺の村が作った塩を山の村に運ぶ塩街道があった。ウルシ村から東にシカ村→アマゴ村・・・七つ目がシオ村  御山=おやま。ウルシ村の広場から見える、高大な山々  コタチ山=御山連峰最高峰  トコヨクニ=日本  蚊遣りトンボ=虫除けオニヤンマ ここではオニヤンマの遺骸に竹ひごを刺し、竹ひごをヘアバンドで頭部に固定する  トツギ=一夫一婦の結婚  眼木=めぎ 眼鏡フレーム 曲げ木工房で作っている  クンヌ=イエの頭領  吊り寝=ハンモック  一本皿=長い丸太を半分に割いて作ったテーブル。一本の木から2本取れるが、一本皿と呼ばれている。  一回し=長さの単位 70㎝  半回し=35㎝ 縄文尺とも呼ばれる。  カラミツブテ・カブテ=狩りの道具。コブシ大の二つの石を紐でつなげた物。  ボウボウ=樹皮ラッパ 法螺貝よりも高い音が出る。  薙ぎ倒しの牙・薙ぎ倒しイノシシの牙=ナウマン象の象牙  バンドリ=背負子などを背負った時に、肩と背中を保護する当て物。衣服の上からバンドリを装着し、それから背負子を着ける。  黒石糊アスファルト