縄文GoGo

5000年前の中部高地の物語

第223話 48日目①

 
 
 
          朝の広場。
 
シロイブキ  「おはよう。クンヌは昨夜、大ムロヤに来なかったんだな。」
シロクン  「ああ、ハニサのムロヤで火棚を作っていたんだ。」
マシベ  「みんな集まって賑やかでしたぞ。」
サチ  「父さん、シロイブキが、これくれた。凄く丈夫だよ。」
シロクン  「縄か。シナノキの皮だな。結構長いな。いいのか?小屋作りで使うんだろう?」
シロイブキ  「ああ、まだまだ持ってるんだ。おれが持って来た荷物の大半がそれだよ。
        しっかり茹でてあるからな。滅多な事で切れはせんぞ。」
ハニサ  「シロイブキ達は、釣り大会に出ないの?」
シロイブキ  「ふむ、早く小屋を何とかせんとな。クンヌは明日出立か。
        旅の無事を祈っておるぞ。
        サチも無理するなよ。ミツもな。今度、ミヤコの話を聞かせてくれ。」
シロクン  「イブキ、頼りにしておるぞ。マシベも頼むな。」
サチ  「ミツ、飛び石まで見送りに行こう。」
ミツ  「うん。あの縄、茹でて作るの?・・・」
ハニサ  「シロイブキって頼りになるね。」
シロクン  「ああ、来てくれて、本当に良かったよ。
        実を言うと、おれは洞窟が心配だったんだ。」
ハニサ  「来た途端だったね。バタバタっていろんな事が動いた気がする。」
ソマユ  「おはよう。いい天気ね。」
ハニサ  「おはよう。よく眠れた?」
ソマユ  「グッスリよ。タガオにベッタリくっついて。
      みんなに見せつけてやったわ。ね?」
タガオ  「おはよう。そ、そうだったかな・・・」
ハニサ  「アハハ、赤くなってる。タガオは寝られなかったんでしょう?」
タガオ  「ま、まーな。」
ソマユ  「ミツとサチから冷やかされてたよね。」
ハニサ  「いーなー。あたし、明日から寂しくなる。」
ソマユ  「何言ってるの。今まで散々見せつけといて。少しくらい寂しくなったっていいのよ。
      タガオ、明日から、ハニサに見せつけましょうね。」
ハニサ  「わー、ひどい。シロクンヌ、ベッタリして。もっとくっ付こう。」
アコ  「朝から激しいな(笑)。シロクンヌ、旅の準備は終わったの?」
シロクン  「終わってる。何か手伝うか?」
アコ  「河原で、アナグマをさばく準備をして欲しいって。
     ホントに獲って来るのかな・・・」
シロクン  「暗い内に出たらしいな。河原の作業場でやるんだな。」
ハニサ  「じゃあソマユ、食べたら村の中を案内するよ。」
 
 
          飛び石付近。
 
ヌリホツマ  「かーわーのーみーたーまーにーもーうーしーきーかーせーたーきー・・・」
 
ササヒコ  「エサと道具はここだ。思い思いの場所で釣ってくれていいぞ。
       釣れたら串焼きにして食べてくれていい。火事には気をつけてくれよ。
       ツグミの串とグリッコは、自由に持って行ってくれ。
       栗実酒と女酒もあるぞ。自由にやってくれ。
       酔っ払って、川に落ちるなよ。
       夕刻からこの河原で木の皮鍋をやる。ムジナ汁だ。
       それまで、存分に釣りを楽しんでくれ。」
 
ヤッホ  「アニキはホントに石針なんだな。」
シロクン  「ふむ、だが釣りにはちょっと時期が遅いな。
        あんまりエサを食わんのじゃないか?」
ハギ  「ここ2~3日、暖かかったからいいかも知れないよ。」
ヤシム  「タホ、はい、この竿を持って。」
ハニサ  「こうやって待ってればいいの?」
シロクンヌ  「浮きが沈んだら、引き上げるんだ。直針だから、最初に一度クッと引く。」

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直釣針

ハニサ  「あ、沈んだ!引くんだね。こう?

      あー、エサが無い。取られちゃった。」
シロクン  「ははは、引くのがちょっと遅かったんだな。引くと直針が横になるだろう?
        それが口の奥に引っかかって釣り上がるんだよ。どれ、エサを付けてやる。」
 
 
タマ  「ちっとも反応が無いよ。」
クマジイ  「釣りはのんびりやるもんじゃ。それ女酒じゃ。グイっとやれい。」
タマ  「あ、掛かったよ。どうするんだい?」
クマジイ  「竿を立てるんじゃ。こっちに寄せよ。もっと起こせ。」
タマ  「引っ張られるんだよ。これは大物だ。逃がさないよ。
     あれ?意外に小さいんだね。」
クマジイ  「よし、岸に上げた。よー釣った。その引きが、釣りの醍醐味じゃ。」
タマ  「小さいけど、釣れるとうれしいもんだ。」
 
 
イナ  「タガオは糸釣りね。」
タガオ  「ふむ、手の感触が頼りだ。」
ソマユ  「あんまりアタリが無いよね・・・」
タガオ  「来た!」 糸を手繰り寄せている。
ササヒコ  「おお、釣れた。」
ソマユ  「さすがタガオ。大きいよ。」
 
エニ  「引いてる!テイトンポ、手伝って!」
クズハ  「こっちも来たわ!テイトンポ、どうするの?」
エニ  「テイトンポ、早く早く!」
クズハ  「ねえ、どうするのよ!」
 
ハニサ  「サチ、どう?釣れた?」
サチ  「お姉ちゃん、引いてる!」
ハニサ  「え?ホントだ!あー、また逃げられた!」
ヤッホ  「ハハハ、ハニサはどんくさいな。」
ハニサ  「もー、悔しい。」
シロクン  「浮きが湿って重くなったんだ。新しい浮きに替えるぞ。」
 
 
スサラ  「タヂカリがまた釣った。あなたより上手よ。」
ムマヂカリ  「おかしいな・・・なんで釣れんのだ?」
スサラ  「私のも引いてる!いいよいいよ・・・
      はい、釣れました。」
ムマヂカリ  「おかしいぞ・・・どうやって釣るんだったかな・・・」
 
 
ハニサ  「やったー。釣れたー。見て!ヤッホのより大きいよ。」
ヤッホ  「ホントだ。待ってろ。すぐ釣ってやるから。」
ヤシム  「あれ?タホ、あんたいつ釣ったの?」
タホ  「いまー。」
 
 
クマジイ  「タマはなかなかやるのう。」
タマ  「来るぞー来るぞー来たー!どっこいしょー。」
クマジイ  「おお!大きいのう!こりゃあ、こいつが一等かもしれんぞい。」
ミツ  「ホントだ!きっとこれが一等賞だよ。」
 
 
ヌリホツマ  「シロクンヌや、例の物を持って来たぞよ。
        あそこに置いてある、あの筒箱の中じゃ。
        筒箱は、クマジイの力作じゃ。
        中を見てみるかや?なかなかの出来じゃぞ。」
 
 
登場人物 シロクン 28歳 タビンド 特産物を遠方の村々に運ぶ シロのイエのクンヌ  ササヒコ 43歳 ウルシ村のリーダー  ムマヂカリ 26歳 ヒゲの大男   ヤッホ 22歳 ササヒコの息子   ハギ 24歳 ヤスが得意  タホ 4歳 ヤッホとヤシムの息子 ヤシムと暮らしている  タヂカリ 6歳 ムマヂカリとスサラの息子  クマジイ 63歳 長老だが・・・  テイトンポ 40歳 シロクンヌの師匠 その道の達人   クズハ 39歳 ハギとハニサの母親   タマ 35歳 料理長  アコ 20歳 男勝り テイトンポに弟子入り   ヤシム 24歳 タホの母親  ハニサ 17歳 土器作りの名人 シロクンヌの宿   スサラ 25歳 ムマヂカリの奥さん  ヌリホツマ 55歳 漆塗り名人 巫女 本名はスス  ホムラ 犬 ムマヂカリが可愛がっている

      

追加アシヒコ 56歳 アユ村のリーダー  マグラ 27歳 アユ村の若者  カタグラ 24歳 マグラの弟  フクホ 50歳 アシヒコの奥さん  マユ 25歳 アユ村の娘  ソマユ  19歳 マユの妹  サチ 12歳 孤児 シロクンヌの娘となる アヤクンヌ      エミヌ 18歳  オジヌ 16歳 エミヌの弟  カイヌ 14歳 オジヌの弟    モリヒコ シカ村のカミ  サラ 17歳 スサラの妹 ハギとトツギとなる ヌリホツマの弟子  ナクモ 18歳 エミヌの友人  シオラム 41歳 ササヒコのすぐ下の弟 塩作りの加勢のためシオ村で暮らす 5年に一度、里帰りする  ナジオ 20歳 シオラムの息子 シオ村生まれ  タカジョウ 23歳 ワシ使い  ホコラ 洞窟暮らし 哲人  シップ オオイヌワシ タカジョウが飼っている  エニ 38歳 エミヌ姉弟の母   カヤ アマカミの使者  シラク 北のミヤコのシロのムロヤの責任者  マシベ フジのシロの里の者 ヲウミのシロの村との連絡係り  トモ フジのシロの里の者  イナ 30歳 シロクンヌの姉弟子 杖の達人  コヨウ 15歳 タカジョウの妹  ゴン 洞窟で飼われている仔犬  ミツ 11歳 アユ村の少女  カザヤ 24歳 アユ村の若者 カタグラの友人  テミユ 22歳 カザヤの妹  タガオ 32歳 ミツの父親 目がみえない  ゾキ 14歳 オロチの姉 シップウの攻撃で背中に傷を負う オロチ 12歳 ゾキの弟 シップウの攻撃で顔に傷を負う  イワジイ 60歳 黒切りの里の山師 ヌリホツマの兄  シロイブキ 28歳 シロクンヌの兄弟

   

用語説明 ムロヤ=竪穴住居  大ムロヤ=大型竪穴建物  カミ=村のリーダー  コノカミ=この村のリーダー           グリッコ=どんぐりクッキー  黒切り=黒曜石  神坐=石棒(男性器を模した磨製石器)  塩渡り=海辺の村が作った塩を山の村に運ぶ塩街道があった。ウルシ村から東にシカ村→アマゴ村・・・七つ目がシオ村  御山=おやま。ウルシ村の広場から見える、高大な山々  コタチ山=御山連峰最高峰  トコヨクニ=日本  蚊遣りトンボ=虫除けオニヤンマ ここではオニヤンマの遺骸に竹ひごを刺し、竹ひごをヘアバンドで頭部に固定する  トツギ=一夫一婦の結婚  眼木=めぎ 眼鏡フレーム 曲げ木工房で作っている  クンヌ=イエの頭領  吊り寝=ハンモック  一本皿=長い丸太を半分に割いて作ったテーブル。一本の木から2本取れるが、一本皿と呼ばれている。  一回し=長さの単位 70㎝  半回し=35㎝ 縄文尺とも呼ばれる。  カラミツブテ・カブテ=狩りの道具。コブシ大の二つの石を紐でつなげた物。  ボウボウ=樹皮ラッパ 法螺貝よりも高い音が出る。  薙ぎ倒しの牙・薙ぎ倒しイノシシの牙=ナウマン象の象牙  バンドリ=背負子などを背負った時に、肩と背中を保護する当て物。衣服の上からバンドリを装着し、それから背負子を着ける。