縄文GoGo

5000年前の中部高地の物語

第139話 21日目②

 

 

 

          夕食の広場。

 
ヤシム  「タホの作った身代わり人形、傑作だったでしょう?」
ムマヂカリ  「あれは腹を抱えて笑ったぞ。」
ヤッホ  「首が横にずれて付いてたな。」
シロクン  「それで何かをたくらんでいる顔してるだろう?
        どうやったらあんなに上手にたくらみ顔が作れるんだ?」
ハニサ  「アハハハ。確かにたくらんでるね。
      顔の下はお腹とお尻だけだったね。」
エミヌ  「お尻の真ん中に割れ目があったよ。」
シロクン  「アハハハ、なんでタホはそんな事を知ってるんだ?
        ハニサが見せただろう?」
ハニサ  「やめて! お腹痛い。そこだけ細かく手が込んでたもん。」
ヤッホ  「ヤシムが見せてるのか?」
ヤシム  「する訳無いでしょう! エミヌじゃないの?」
エミヌ  「タホがもう少し大きくなったら、見せてあげようかな。」
ヤシム  「やめてよ、食い入るように見るに決まってるから。」
エミヌ  「アハハ、親子だもんね。」
ムマヂカリ  「あれ? これ、グリッコじゃないな。」
エミヌ  「美味しいでしょ?」
ヤッホ  「ほんとだ。クリだな。」
エミヌ  「クリコって言うの。ミヤコの味よ。」
シロクン  「サチが言ってたやつだな?」
ナクモ  「サチに教えてもらったやり方で作ってみたの。」
ハニサ  「美味しい! 搗栗(かちぐり)で作るの?」
エミヌ  「そう。搗栗にいろいろ混ぜるんだって。今日のはヤマイモ。」
ハニサ  「だけど、それだけじゃあ、この味にならないよね?」
エミヌ  「ならないね。さて、何が加えてあるでしょうか?
      私の発案で加えてみたんだよ。」
ムマヂカリ  「何だろうな・・・」
サラ  「あ! ハギが帰って来た。ハギー、お帰りー。」
 
    ハギ、ナジオ、カタグラが帰って来た。
    カタグラは、カモを3羽持っている。
 
カタグラ  「ひゃー、遅くなった。カモはどこに吊る?」
ハギ  「サラ、ただいま。取りあえず、どんぐり小屋に吊って来るよ。
     それからメシを取りに行こう。」
ナクモ  「お帰り。遅かったね。何かあった?」
カタグラ  「あったがその前にシロクンヌだ。
       本当にここは留守にできん村だな。
       一日空けたらもうこれだ。
       シロクンヌ。アマカミになるんだってな! おめでとう!
       しかし今回のは心底驚いたぞ。
       しかも次のアマカミはアマテルだそうだな。
       そしてこの近辺がミヤコになると言うではないか。」
シロクン  「そうだ。人も増えるだろうから、新しく村も作らねばならん。
        アマテルがアマカミになる頃には、この辺りも随分と様変わりしておるかも知れんな。
        それから、こないだのハタレ三人組、もしまたあんなのが出たら、
        おれかテイトンポかにすぐに知らせてくれ。」
カタグラ  「おう! 女神を護るんだな?
       それについては、スワの各村は、全面協力するぞ。
       具体的にすべき事があるなら、何でも言ってくれ。
       5年前のハタレも、もし今の様にこことスワが連結しておれば、
       たやすく狩り出せたはずだからな。」
シロクン  「そうだな。
        今作っている基地な、それなんかも、もっと大々的な物にするかも知れん。
        地理上、あそこは重要な拠点だ。」
ナジオ  「お! 話がそこに来たな。」
ハギ  「お待たせ! いろり屋に食い物を取りに行こうぜ。
     シロクンヌ、カタグラは弓の名人だったよ。
     あのカモ、一羽は、飛んでるのを射たんだぜ。
     それから基地の件で、ちょっとした話があるんだ。
     テイトンポとアコに言って、ここに来てもらえないかな。ああ、あとオジヌもだ。」
 
シロクン  「サチ、父さんの膝に来い。腹一杯、食べたか?」
サチ  「食べたよ。おお豆くずし、美味しかった。クリコも美味しかった。」
テイトンポ  「クリコは美味いな。ミヤコの食い物なんだってな。」
シロクン  「テイトンポは、クリコの隠し味に使ってある物が分かるか?」
テイトンポ  「そんなの簡単だ。クマだ。昨日の熊汁で練ってある。」
ムマヂカリ  「そうか!」
エミヌ  「へー、意外! テイトンポって味が分かるんだ。」
テイトンポ  「意外とは何だ。おれは、味にはうるさい方だぞ。」
エミヌ  「ねえ、今度私に、マムシ酒飲ませてよ。」
テイトンポ  「エミヌはその、なんだ・・・相手はおるのか?」
エミヌ  「今はいないの。」
テイトンポ  「だったら止めておけ。」
エミヌ  「じゃあ、相手が出来たらね。約束だよ。」
テイトンポ  「まあ、考えておく・・・」
アコ  「テイトンポも、エミヌにはタジタジだね。」
シロクン  「ハハハ。ところでオジヌは、スワに行った事はあるのか?」
オジヌ  「見晴らし岩の先までしか行った事が無いよ。」
シロクン  「テイトンポ、相談なんだが、オジヌをスワに遊びに行かせる訳にはいかんかな?
        五日後くらいに一泊か二泊かで。」
テイトンポ  「ああ、いいぞ。ちょうど歩行訓練の時期だしな。
        オジヌ、カニ足とスリ足でアユ村まで行って来い。やり方は今度教える。
        シジミグリッコをお土産でもらって来いよ。」
シロクン  「カタグラその時だが・・・」
カタグラ  「分かった! その時は任せてくれ。」
シロクン  「すまんな。」
オジヌ  「え? おれ、スワに行っていいの?」
エミヌ  「良かったね! でも、やり過ぎるんじゃないよ! 検査するからね!」
オジヌ  「おれ達はそんなんじゃないよ!
      大体、検査って何だよ。みんなが本気にするだろう!」
ハギ  「ハハハ、まったくエミヌは相変わらずだな。ではそろそろ本題に入るぞ。」
 
 
 
登場人物 シロクン 28歳 タビンド 特産物を遠方の村々に運ぶ シロのイエのクンヌ  ササヒコ 43歳 ウルシ村のリーダー  ムマヂカリ 26歳 ヒゲの大男   ヤッホ 22歳 ササヒコの息子   ハギ 24歳 ヤスが得意  タホ 4歳 ヤッホとヤシムの息子 ヤシムと暮らしている  タヂカリ 6歳 ムマヂカリとスサラの息子  クマジイ 63歳 長老だが・・・  テイトンポ 40歳 シロクンヌの師匠 その道の達人   クズハ 39歳 ハギとハニサの母親   タマ 35歳 料理長  アコ 20歳 男勝り テイトンポに弟子入り   ヤシム 24歳 タホの母親  ハニサ 17歳 土器作りの名人 シロクンヌの宿   スサラ 25歳 ムマヂカリの奥さん  ヌリホツマ 55歳 漆塗り名人 巫女  ホムラ 犬 ムマヂカリが可愛がっている

      

追加アシヒコ 56歳 アユ村のリーダー  マグラ 27歳 アユ村の若者  カタグラ 24歳 マグラの弟  フクホ 50歳 アシヒコの奥さん  マユ 25歳 アユ村の娘  ソマユ  19歳 マユの妹  サチ 12歳 孤児 シロクンヌの娘となる アヤクンヌ      エミヌ 18歳  オジヌ 16歳 エミヌの弟  カイヌ 14歳 オジヌの弟    モリヒコ シカ村のカミ  サラ 17歳 スサラの妹 ハギとトツギとなる ヌリホツマの弟子  ナクモ 18歳 エミヌの友人  シオラム 41歳 ササヒコのすぐ下の弟 塩作りの加勢のためシオ村で暮らす 5年に一度、里帰りする  ナジオ 20歳 シオラムの息子 シオ村生まれ  タカジョウ 23歳 ワシ使い  ホコラ 洞窟暮らし 哲人  シップ オオイヌワシ タカジョウが飼っている  エニ 38歳 エミヌ姉弟の母   カヤ アマカミの使者  シラク 北のミヤコのシロのムロヤの責任者  マシベ フジのシロの里の者 ヲウミのシロの村との連絡係り  トモ フジのシロの里の者 

   

用語説明 ムロヤ=竪穴住居  大ムロヤ=大型竪穴建物  カミ=村のリーダー  コノカミ=この村のリーダー           グリッコ=どんぐりクッキー  黒切り=黒曜石  神坐=石棒(男性器を模した磨製石器)  塩渡り=海辺の村が作った塩を山の村に運ぶ塩街道があった。ウルシ村から東にシカ村→アマゴ村・・・七つ目がシオ村  御山=おやま。ウルシ村の広場から見える、高大な山々  コタチ山=御山連峰最高峰  トコヨクニ=日本  蚊遣りトンボ=虫除けオニヤンマ ここではオニヤンマの遺骸に竹ひごを刺し、竹ひごをヘアバンドで頭部に固定する  トツギ=一夫一婦の結婚  眼木=めぎ 眼鏡フレーム 曲げ木工房で作っている  クンヌ=イエの頭領  吊り寝=ハンモック  一本皿=長い丸太を半分に割いて作ったテーブル。一本の木から2本取れるが、一本皿と呼ばれている。  一回し=長さの単位 70㎝  半回し=35㎝ 縄文尺とも呼ばれる。  カラミツブテ・カブテ=狩りの道具。コブシ大の二つの石を紐でつなげた物。