2021-07-06から1日間の記事一覧
アユ村の出口。続き。 アシヒコ 「その子は?」 マグラ(27歳・男) 「まったく気の毒な子だ。 父親は殺され、母親と二人でさらわれたそうだ。 何日もムロヤに閉じ込められて、慰(なぐさ)み者になった挙句に、 母親は、三日前に病で亡くなったと言っておる。」 …
谷の温泉。続き。 シロクンヌ 「サチ、おれもおまえも裸だ。抱きしめるぞ。 (サチを抱え上げ抱きしめた。サチも抱きついた。) どうだ?おれのここを見てみろ。 あいつらのようにはなっていないだろう?」 サチ 「はい。父さん、温かかった。」 シロクンヌ 「…
アユ村の見晴らし広場。 シロクンヌを挟んで、ハニサとサチが座っている。 夕焼けで空は真っ赤だ。湖面も赤く染まっている。 ハニサ 「きれい・・・」 サチ 「私、夢の中にいるみたい。」 シロクンヌは二人の肩に手をまわした。 そうやって、太陽が山裾に沈む…
見晴らし広場。夜宴の続き。 アシヒコ 「ところでシロクンヌや、今後の予定は決まっておるのか?」 シロクンヌ 「子宝の湯とやらがあると聞いたのだが・・・」 アシヒコ 「ここからさほど遠くはないぞい。 人気の湯じゃから道もしっかりしておる。」 マユ(25歳…
見晴らし広場。夜宴の続き。 カタグラ 「お!その話題が出たな。 その話を始めるのは、おれが友蒸しの用意を終えてからにしてくれよ(笑)。」 ハニサ 「何かあるの?」 ソマユ 「その話題は、みんな熱くなるのよ。」 ハニサ 「そうなんだ。じゃあ待ってるね。 あ…
見晴らし広場。夜宴の続き。 カタグラ 「ハニサの手料理か! いただきます! ハフ、ハフ、旨い!」 ソマユ 「美味しい! ハニサ、後で作り方を教えて!」 ハニサ 「簡単だから、一緒に作ってみる?」 マグラ 「こりゃあ旨いな! ハニサ、もっと作ってくれよ!…
裏の温泉。 シロクンヌ達は、それぞれが手火をかざして来ていてた。 手火立てを地面に挿し、その手火立てに手火を挟ませて、かがり火にしていた。 はかなげではあったが、目が慣れてしまえば、 その三ヶ所の手火の明りと星明りだけで、周りの様子は分かるの…
アユ村の近く。下弦の月明かりの道。 シロクンヌ 「ハニサ、眠そうだが大丈夫か?」 ハニサ 「うん。」 シロクンヌ 「背負うからな。どうせまだ暗い。背中で寝ていていいぞ。」 ハニサ 「うん。」 シロクンヌ 「サチ、寒くはないか?」 サチ 「はい。」 シロ…
三人は歩いて湖に向かった。 途中、シロクンヌは道をそれ、山の斜面を駆け登った。 一度姿が見えなくなったが、すぐに戻って来た。 大きな肉芽をつけたムカゴの蔓(つる)が腰に巻かれ、 手には背丈ほどの長さの、細い枝が握られていた。 ムカゴ 歩きながら枝…
湖畔。続き。 ハニサ 「すごい!あそこって、あの色が変わってた所?子宝の湯から見た時に。」 シロクンヌ 「そうだ。湖底は、やはり砂利だった。」 ハニサ 「深いの?」 シロクンヌ 「これくらいだ。」 真っ直ぐに立ち、片手を真上に伸ばした。 ハニサ 「サ…
アユ村。 マグラ 「また随分な大荷物だな。 シジミがそんなに獲れたのか!」 シロクンヌ 「向こうじゃ鍋にできなかった。 これだけは、向こうで砂抜きしたから、 この水草といっしょにハニサに食べさせてやりたいんだ。 あとはみんなで食べてくれ。」 マグラ…
見晴らし広場。焚火のそば。 ハニサ 「シジミ、美味しかった。あの水草と合うんだね。」 シロクンヌ 「うまかったな。シジミは精が付くぞ。」 ハニサ 「そうなの?そしたらまたシロクンヌが・・・」 シロクンヌ 「おれが、何だ?」 ハニサ 「だって昨日、サ…
見晴らし広場。焚火のそば。続き。 シロクンヌ 「おれの見立てでは、この村はあっという間に沈んだんだ。」 ハニサ 「そこがあたしには、分からないの。なんでそんなふうに思うの?」 シロクンヌ 「これだけの物が出たからだよ。どれも見事な出来栄えだろう…
裏の温泉。星明りの中。 ソマユ 「もう明日、帰っちゃうんでしょう? 折角来たんだから、たっぷり温泉に浸からなきゃね。」 ハニサ 「気持ちいいね。サチも連れて来れば良かったかな。眠そうにしてたから・・・ 手火立てって、神坐のそばに立てるんだ。」 ソ…
見晴らし広場。 早朝の焚火のそば。 広場には、朝もやが立ち込めていた。 ハニサは、毛皮の貫頭衣を着て丸太椅子に腰かけ、大きく脚を開いている。 太ももは、腰下まで剥き出しだ。 股の間には作業台があり、その上に朴(ほお)の葉一枚を敷き、そこで器を作っ…
昼の見晴らし広場。 フクホ 「はい。シジミ鍋だよ。 ハニサが昨日、また食べたいって言っていたからねえ。」 ハニサ 「ありがとう。美味しそう。 あたし、シロクンヌにだまされるところだった。」 フクホ 「うん? どうかしたかい?」 ハニサ 「シジミって、…
帰り道。ハギの仕掛けがあった場所。 ハニサ 「あ! また魚が5匹入ってる。 湯も沸いてるし、兄さん今日ここに来たんだね。」 シロクンヌ 「ハギは気がつくよな。 トツギがうまく行くといいな。 サチ、ハニサの兄さんはハギって言って、 往きにもここで休憩…
曲げ木工房。 アコ 「ハニサは日焼けしたね。 何だかまた綺麗になったんじゃない?」 頭上でオニヤンマが揺れている。 ヤッホ 「日焼けしたハニサもいいよな。」 ハニサ 「何がいいのよ。」 テイトンポ 「サチ、これを掛けてみろ。 試作品だが、似合えばやる…
夕食の広場。続き。 タマ 「鹿肉やるよー! 例によって、ナマからだ。」 歓声が起きた。 ヤシム 「サチ、こっちにおいで。一緒に食べるよ。」 サチ 「はい!」 ヤッホ 「サチとハニサの毛皮の服、かっこいいけど、それどうしたんだ?」 サチ 「アユ村のカミ…
ハニサのムロヤ。 ハニサ 「疲れたでしょう? お湯が沸いたら、体を拭いてあげるね。」 シロクンヌ 「いやあ、なんだか久しぶりに帰って来たような気がする。」 ハニサ 「あたしも! ふつか空けただけなんだよね。」 シロクンヌ 「ここは落ち着くな。いいム…
朝の広場。 サチ 「おはよう!見て!」 ハニサ 「かわいい!どうしたの、その服?」 サチ 「昨日、ヤシムが作ってくれた。父さん、私、似合ってる?」 シロクンヌ 「ああ、すごく似合ってるぞ。 ヤシム、これ、昨日作ったのか?」 ヤシム 「そうだよ。見直し…
昼の広場。 ヤシム 「サチ、お帰り。手を洗っておいで。鹿肉があるよ。」 サチ 「ただいま。お腹すいた。 どこで手を洗うの?」 ヤシム 「教えてなかったね。大屋根の向こうから下に降りて。 湧き水があるから。 溜まってる水で洗っちゃだめだよ。それは飲み…
川向こうの森。続き。 アコ 「子供達は、無事だよ。全員、村にいる。」 シロクンヌ 「そうか! それなら良かった!」 アコ 「矢を取りに、村に戻ったら、スサラがいたんだ。 で、話を聞いてみたら、 ホムラがオオカミのフンを見つけたから、ホムラの先導で戻…
夕食の広場。 ハニサ 「臭い! シロクンヌ、なんでこんなに臭いの?」 ヤッホ 「ハニサ、アニキを責めるなよ。 アニキは、見事な演技でオオカミの腰を抜かしたんだぞ。」 ハギ 「あれは人間業ではなかったな。 多くの物を学んだよ。」 ムマヂカリ 「あんな関…
朝の広場 ヤッホ 「ハニサ、ちょっと臭うぞ。もっとあっちにいってくれ。」 ハニサ 「イーだ!」 ムマヂカリ 「シロクンヌ、体を休めろと、あれほど言っておいたのに、 祈りの丘の草を全部抜いたらしいな(笑)。」 シロクンヌ 「成り行きで、気合いが入ってし…
岩の温泉。 シロクンヌは、魚の串を鉢巻きに挿している。 以前、テイトンポがやったやり方だ。 シロクンヌ 「なるほど、岩だらけだ。これは岩の温泉と呼ぶしかないなあ(笑)。」 ハニサ 「ごめん。シロクンヌ、あたしまた寝てた。」 シロクンヌ 「いいさ。…
下の川の上流 シロクンヌ 「地図で見ると、川のこの辺りみたいだ。 焚き火の匂いがするから、もう近いな。」 ハニサ 「向こうから走って来るの、サチじゃない?」 シロクンヌ 「サチだ。なんとか間に合ったみたいだな。」 サチ 「お帰りなさい。お姉ちゃんが…
『古墳とは天皇や豪族の墓で、当時は大きな盛り土を墓にするのが流行していて、権力の象徴でもあった。そのため権力者達は、生前から多くの民衆を使役し、高圧的に重労働を強いていた。』 と、このように学校で習った人が多いのではないでしょうか? ところ…
夕食の広場。 ササヒコ 「みんな、聞いてくれ。 祭りは、いよいよあさってに迫った。 明日の夕食は、シカ村の方々とも、御一緒する。 そこからは、わし達も、お祭り気分になるだろう。 明日の夕刻までが、祭りの準備の仕上げだと思ってくれ。 今夜の酒は、禁…
作業小屋のそばの焚火。 ササヒコ 「どうしたもんだろうかな・・・」 シロクンヌ 「ハニサ、明り壺は、何個あったんだ?」 ハニサ 「100個。今から作っても、間に合わない。粘土も足りない。」 ヤシム 「ヤッホ、私たちはとりあえず、あそこを片付けよう…