縄文GoGo

5000年前の中部高地の物語

2021-07-06から1日間の記事一覧

少女・サチ 第48話 8日目⑤

アユ村の出口。続き。 アシヒコ 「その子は?」 マグラ(27歳・男) 「まったく気の毒な子だ。 父親は殺され、母親と二人でさらわれたそうだ。 何日もムロヤに閉じ込められて、慰(なぐさ)み者になった挙句に、 母親は、三日前に病で亡くなったと言っておる。」 …

シロクンヌの涙 第49話 8日目⑥

谷の温泉。続き。 シロクンヌ 「サチ、おれもおまえも裸だ。抱きしめるぞ。 (サチを抱え上げ抱きしめた。サチも抱きついた。) どうだ?おれのここを見てみろ。 あいつらのようにはなっていないだろう?」 サチ 「はい。父さん、温かかった。」 シロクンヌ 「…

歓迎の夜宴 第50話 8日目⑦

アユ村の見晴らし広場。 シロクンヌを挟んで、ハニサとサチが座っている。 夕焼けで空は真っ赤だ。湖面も赤く染まっている。 ハニサ 「きれい・・・」 サチ 「私、夢の中にいるみたい。」 シロクンヌは二人の肩に手をまわした。 そうやって、太陽が山裾に沈む…

夜宴は続く 第51話 8日目⑧

見晴らし広場。夜宴の続き。 アシヒコ 「ところでシロクンヌや、今後の予定は決まっておるのか?」 シロクンヌ 「子宝の湯とやらがあると聞いたのだが・・・」 アシヒコ 「ここからさほど遠くはないぞい。 人気の湯じゃから道もしっかりしておる。」 マユ(25歳…

沈んだ村、談義 第52話 8日目⑨

見晴らし広場。夜宴の続き。 カタグラ 「お!その話題が出たな。 その話を始めるのは、おれが友蒸しの用意を終えてからにしてくれよ(笑)。」 ハニサ 「何かあるの?」 ソマユ 「その話題は、みんな熱くなるのよ。」 ハニサ 「そうなんだ。じゃあ待ってるね。 あ…

不思議少女サチ 沈んだ村を語る 第53話 8日目⑩

見晴らし広場。夜宴の続き。 カタグラ 「ハニサの手料理か! いただきます! ハフ、ハフ、旨い!」 ソマユ 「美味しい! ハニサ、後で作り方を教えて!」 ハニサ 「簡単だから、一緒に作ってみる?」 マグラ 「こりゃあ旨いな! ハニサ、もっと作ってくれよ!…

アユ村の裏は温泉 第54話 8日目⑪

裏の温泉。 シロクンヌ達は、それぞれが手火をかざして来ていてた。 手火立てを地面に挿し、その手火立てに手火を挟ませて、かがり火にしていた。 はかなげではあったが、目が慣れてしまえば、 その三ヶ所の手火の明りと星明りだけで、周りの様子は分かるの…

子宝の湯 第55話 9日目①

アユ村の近く。下弦の月明かりの道。 シロクンヌ 「ハニサ、眠そうだが大丈夫か?」 ハニサ 「うん。」 シロクンヌ 「背負うからな。どうせまだ暗い。背中で寝ていていいぞ。」 ハニサ 「うん。」 シロクンヌ 「サチ、寒くはないか?」 サチ 「はい。」 シロ…

シロクンヌの狩り 第56話 9日目②

三人は歩いて湖に向かった。 途中、シロクンヌは道をそれ、山の斜面を駆け登った。 一度姿が見えなくなったが、すぐに戻って来た。 大きな肉芽をつけたムカゴの蔓(つる)が腰に巻かれ、 手には背丈ほどの長さの、細い枝が握られていた。 ムカゴ 歩きながら枝…

大発見! 第57話 9日目③

湖畔。続き。 ハニサ 「すごい!あそこって、あの色が変わってた所?子宝の湯から見た時に。」 シロクンヌ 「そうだ。湖底は、やはり砂利だった。」 ハニサ 「深いの?」 シロクンヌ 「これくらいだ。」 真っ直ぐに立ち、片手を真上に伸ばした。 ハニサ 「サ…

曽根論争 第58話 9日目④

アユ村。 マグラ 「また随分な大荷物だな。 シジミがそんなに獲れたのか!」 シロクンヌ 「向こうじゃ鍋にできなかった。 これだけは、向こうで砂抜きしたから、 この水草といっしょにハニサに食べさせてやりたいんだ。 あとはみんなで食べてくれ。」 マグラ…

これが矢じり? 第59話 9日目⑤

見晴らし広場。焚火のそば。 ハニサ 「シジミ、美味しかった。あの水草と合うんだね。」 シロクンヌ 「うまかったな。シジミは精が付くぞ。」 ハニサ 「そうなの?そしたらまたシロクンヌが・・・」 シロクンヌ 「おれが、何だ?」 ハニサ 「だって昨日、サ…

沈んだ村の人々 第60話 9日目⑥

見晴らし広場。焚火のそば。続き。 シロクンヌ 「おれの見立てでは、この村はあっという間に沈んだんだ。」 ハニサ 「そこがあたしには、分からないの。なんでそんなふうに思うの?」 シロクンヌ 「これだけの物が出たからだよ。どれも見事な出来栄えだろう…

アユ村の夜はふけて 第61話 9日目⑦

裏の温泉。星明りの中。 ソマユ 「もう明日、帰っちゃうんでしょう? 折角来たんだから、たっぷり温泉に浸からなきゃね。」 ハニサ 「気持ちいいね。サチも連れて来れば良かったかな。眠そうにしてたから・・・ 手火立てって、神坐のそばに立てるんだ。」 ソ…

一柱の神 第62話 10日目①

見晴らし広場。 早朝の焚火のそば。 広場には、朝もやが立ち込めていた。 ハニサは、毛皮の貫頭衣を着て丸太椅子に腰かけ、大きく脚を開いている。 太ももは、腰下まで剥き出しだ。 股の間には作業台があり、その上に朴(ほお)の葉一枚を敷き、そこで器を作っ…

さよならアユ村 第63話 10日目②

昼の見晴らし広場。 フクホ 「はい。シジミ鍋だよ。 ハニサが昨日、また食べたいって言っていたからねえ。」 ハニサ 「ありがとう。美味しそう。 あたし、シロクンヌにだまされるところだった。」 フクホ 「うん? どうかしたかい?」 ハニサ 「シジミって、…

帰り道 第64話 10日目③

帰り道。ハギの仕掛けがあった場所。 ハニサ 「あ! また魚が5匹入ってる。 湯も沸いてるし、兄さん今日ここに来たんだね。」 シロクンヌ 「ハギは気がつくよな。 トツギがうまく行くといいな。 サチ、ハニサの兄さんはハギって言って、 往きにもここで休憩…

オニヤンマ 姿を消す 第65話 10日目④

曲げ木工房。 アコ 「ハニサは日焼けしたね。 何だかまた綺麗になったんじゃない?」 頭上でオニヤンマが揺れている。 ヤッホ 「日焼けしたハニサもいいよな。」 ハニサ 「何がいいのよ。」 テイトンポ 「サチ、これを掛けてみろ。 試作品だが、似合えばやる…

葉っぱを付ける 第66話 10日目⑤

夕食の広場。続き。 タマ 「鹿肉やるよー! 例によって、ナマからだ。」 歓声が起きた。 ヤシム 「サチ、こっちにおいで。一緒に食べるよ。」 サチ 「はい!」 ヤッホ 「サチとハニサの毛皮の服、かっこいいけど、それどうしたんだ?」 サチ 「アユ村のカミ…

三日ぶりのムロヤ 第67話 10日目⑥

ハニサのムロヤ。 ハニサ 「疲れたでしょう? お湯が沸いたら、体を拭いてあげるね。」 シロクンヌ 「いやあ、なんだか久しぶりに帰って来たような気がする。」 ハニサ 「あたしも! ふつか空けただけなんだよね。」 シロクンヌ 「ここは落ち着くな。いいム…

祈りの丘で 第68話 11日目①

朝の広場。 サチ 「おはよう!見て!」 ハニサ 「かわいい!どうしたの、その服?」 サチ 「昨日、ヤシムが作ってくれた。父さん、私、似合ってる?」 シロクンヌ 「ああ、すごく似合ってるぞ。 ヤシム、これ、昨日作ったのか?」 ヤシム 「そうだよ。見直し…

オオカミの群れが 第69話 11日目②

昼の広場。 ヤシム 「サチ、お帰り。手を洗っておいで。鹿肉があるよ。」 サチ 「ただいま。お腹すいた。 どこで手を洗うの?」 ヤシム 「教えてなかったね。大屋根の向こうから下に降りて。 湧き水があるから。 溜まってる水で洗っちゃだめだよ。それは飲み…

死んだふり 第70話 11日目③

川向こうの森。続き。 アコ 「子供達は、無事だよ。全員、村にいる。」 シロクンヌ 「そうか! それなら良かった!」 アコ 「矢を取りに、村に戻ったら、スサラがいたんだ。 で、話を聞いてみたら、 ホムラがオオカミのフンを見つけたから、ホムラの先導で戻…

松ぼっくり あげるよ 第71話 11日目④

夕食の広場。 ハニサ 「臭い! シロクンヌ、なんでこんなに臭いの?」 ヤッホ 「ハニサ、アニキを責めるなよ。 アニキは、見事な演技でオオカミの腰を抜かしたんだぞ。」 ハギ 「あれは人間業ではなかったな。 多くの物を学んだよ。」 ムマヂカリ 「あんな関…

ハニサが臭う? 第72話 12日目① 

朝の広場 ヤッホ 「ハニサ、ちょっと臭うぞ。もっとあっちにいってくれ。」 ハニサ 「イーだ!」 ムマヂカリ 「シロクンヌ、体を休めろと、あれほど言っておいたのに、 祈りの丘の草を全部抜いたらしいな(笑)。」 シロクンヌ 「成り行きで、気合いが入ってし…

岩の温泉 第73話 12日目②

岩の温泉。 シロクンヌは、魚の串を鉢巻きに挿している。 以前、テイトンポがやったやり方だ。 シロクンヌ 「なるほど、岩だらけだ。これは岩の温泉と呼ぶしかないなあ(笑)。」 ハニサ 「ごめん。シロクンヌ、あたしまた寝てた。」 シロクンヌ 「いいさ。…

カワウソ漁 第74話 12日目③

下の川の上流 シロクンヌ 「地図で見ると、川のこの辺りみたいだ。 焚き火の匂いがするから、もう近いな。」 ハニサ 「向こうから走って来るの、サチじゃない?」 シロクンヌ 「サチだ。なんとか間に合ったみたいだな。」 サチ 「お帰りなさい。お姉ちゃんが…

番外 古墳の法則

『古墳とは天皇や豪族の墓で、当時は大きな盛り土を墓にするのが流行していて、権力の象徴でもあった。そのため権力者達は、生前から多くの民衆を使役し、高圧的に重労働を強いていた。』 と、このように学校で習った人が多いのではないでしょうか? ところ…

縄文ランプ 第75話 12日目④

夕食の広場。 ササヒコ 「みんな、聞いてくれ。 祭りは、いよいよあさってに迫った。 明日の夕食は、シカ村の方々とも、御一緒する。 そこからは、わし達も、お祭り気分になるだろう。 明日の夕刻までが、祭りの準備の仕上げだと思ってくれ。 今夜の酒は、禁…

ハニサ、一喝 第76話 12日目⑤

作業小屋のそばの焚火。 ササヒコ 「どうしたもんだろうかな・・・」 シロクンヌ 「ハニサ、明り壺は、何個あったんだ?」 ハニサ 「100個。今から作っても、間に合わない。粘土も足りない。」 ヤシム 「ヤッホ、私たちはとりあえず、あそこを片付けよう…