帰り道 第64話 10日目③
帰り道。ハギの仕掛けがあった場所。
ハニサ 「あ! また魚が5匹入ってる。
湯も沸いてるし、兄さん今日ここに来たんだね。」
シロクンヌ 「ハギは気がつくよな。
トツギがうまく行くといいな。
サチ、ハニサの兄さんはハギって言って、
往きにもここで休憩できるようにしてくれていたんだ。」
サチ 「やさしいお兄さんなんだね。」
ハニサ 「そうだよ。それからあの高い所に大岩が見えるでしょう?
往きにあの上で、あたし、シロクンヌに泣かされたんだよ。」
サチ 「お姉ちゃん、いじめられたの?」
ハニサ 「シロクンヌったらね、突然居なくなったの。
どこかに隠れて、猿の鳴きまねして、あたしをおどかしたんだよ。」
サチ 「父さん、お姉ちゃんを泣かしたの?」
シロクンヌ 「つい、出来心でな。
思いのほかハニサが怖がってくれて、ほくそ笑んだら、ばかーってなじられた。」
サチ 「父さん、そういうのイケナイんだよ。」
ハニサ 「ほら、サチに叱られた。」
シロクンヌ 「そうか? でも、サチにも聞かせてやりたかったな・・・
サチ 「アハハ、ほんと? お姉ちゃん。」
ハニサ 「ウフフ、ほんと。木霊してた。」
シロクンヌ 「魚は1匹ずつでいいな?
おれも1匹でいいから、また2匹逃がすぞ。」
ハニサ 「ヌリホツマのお茶を淹れようか?」
シロクンヌ 「いや、お湯は、ハニサが体を拭くのに使え。灰を浴びたりしただろう?
飲み物は、後で冷たい物を飲もう。
魚が焼けるまで、ここで休憩だ。
おれは、ちょっと上に行って来る。」
サチ 「冷たい! 美味しいね!」
ハニサ 「山ブドウの汁ね。山ブドウの実もいっぱい入ってる。」
シロクンヌ 「旨いだろう?
ここに冷たい湧き水があるのを思い出して、ハニサが器を作ってる間に、
おととい見つけた所に、山ブドウを採りに行ったんだ。
その山ブドウを湧き水で冷やしていたんだよ。
それを搾って湧き水で少し薄めて、そして実も加えてみた。
なかなかの出来だろう?」
ハニサ 「うん! こんなの普通、飲めないもん。」
サチ 「川の水よりも、うんと冷たいね。酸っぱくて美味しい!」
ハニサ 「ねえ、あのグリッコ、一個ずつ食べてみない?」
シロクンヌ 「そうだ! おれ、あれ気になってたんだよ。」
サチ 「美味しい! シジミがやわらかいよ。」
シロクンヌ 「ほんとだ。これどうやって作ったんだろうな。」
ハニサ 「美味しいね。やわらかい物が入ってるグリッコって珍しくない?
これだけで、お腹いっぱいになってもいいくらい。」
シロクンヌ 「これはいい土産になったなあ。」
帰りの道。
シロクンヌ 「ここらからは、歩くか。降ろすぞ。」
サチ 「父さんは、疲れないの?」
シロクンヌ 「そりゃあ疲れるさ。
だけどこれくらいなら、大したことはないな。」
ハニサ 「サチ、あそこに旗が見えるでしょう? あそこがウルシ村。
あれ? 向こうから誰か来る・・・
兄さんだ! 兄さんとヤッホだ!」
ヤッホ 「アニキーーー」
ハニサ 「迎えに来てくれたんだ。」
ヤッホ 「アニキ、お帰り。
荷物、持つよ。
その子は?」
シロクンヌ 「おれの娘だ。サチと言うんだ。
サチこっちがハニサの兄さんのハギ。
そしてこっちが、ハニサにフラレたことがある、ヤッホだ。」
サチ 「こんにちは。サチと言います。」
ヤッホ 「アニキ、もっとちゃんと紹介してくれよ。」
ハギ 「魚は、入ってたかい?」
ハニサ 「うん! 行きも帰りも5匹。」
シロクンヌ 「随分助かったよ。ありがとうな。」
ヤッホ 「ハニサとサチは、お揃いの毛皮でかわいらしいな。
サチは大きくなったら、ハニサのような美人になるぞ。」
シロクンヌ 「変な気、起こすんじゃないぞ。」
ヤッホ 「起こさねえよ! ひどいよアニキ。」 みんなが笑った。
ハギ 「サチは鹿肉は好きか?」
サチ 「はい。大好き。」
ハギ 「今夜は鹿肉だ。おいしいぞ。」
シロクンヌ 「テイトンポがかついで来たやつだな。
そうだ、ヤッホ、いい知らせがあるぞ。
これを見てみろ。」
ヤッホ 「矢じりかい? すごい矢じりだ。
どうしたんだい、これ?」
シロクンヌ 「それはヤッホにやるよ。
沈んだ村で作られた物だぞ。」
ヤッホ 「沈んだ村は、やっぱり有ったんだな!
でもいいのかい? こんなすごい矢じり。」
シロクンヌ 「いいさ。実はたくさんあるんだ。」
縄文GoGoでは絵を描いてくれる方を募集しています。詳しくは『縄文GoGoの開始にあたって』で。