2021-07-06から1日間の記事一覧
朝の広場。祭りの前日。 ササヒコ 「紹介する。わしの下の下の弟の息子達だ。 オジヌが16歳。 カイヌが14歳。 シロクンヌ、今日一日、助手に使ってくれ。」 エミヌ 「叔父さーん。タマが、私も行っていいって。 シロクンヌ、お話しするの初めてよね。私…
飛び石のそばの川。 アコ 「あ! 先客がいた!」 シロクンヌ 「なんだ、アコも行水か?」 アコ 「汗かいたからね。入っていいかい?」 シロクンヌ 「ああ、気持ちいいぞ。 おれは粘土を掘ってきてな。 結構、難儀だったよ。」 アコ 「肩を揉んでやろうか?」…
曲げ木工房。 モリヒコ(男。シカ村のカミ) 「テイトンポー。テイトンポだろー。何をしておるのだー?」 テイトンポ 「おお! カミか。」 モリヒコ 「狼ではないぞ。」 テイトンポ 「相変わらず詰まらんシャレを言いおるな。」 モリヒコ 「ちっとも帰ってきや…
大ムロヤ。 モリヒコ 「サチと言うのか。眼木(めぎ)を外すと、こんなにかわいらしい娘なのか。 眼木を掛けると、妖しい炎の精霊だ。 ササヒコ。この眼木、どこで手に入る?」 ササヒコ 「下で見たであろう。テイトンポの工房で、作っておる。」 モリヒコ …
夕食の広場。 クマジイとヤッホが、目出たい踊りを踊っている。 シカ村の女達は、全員、眼木を掛けている。 ササヒコ 「みんな聞いてくれ。 シカ村から応援の衆が駆け付けてくれた。 夕食の後、明日の食事の下ごしらえを手伝ってくれる。 馴染みの顔も多いこ…
夕食の広場。続き。 シロクンヌ 「サチ、アユ村の働きかけで、周りの村が合同で、沈んだ村の祭りをしてくれる。 ただ、今のままでは、どんな祭りをすればいいのか、分からないらしい。 これは、おまえにとっても大事なことだ。 地元の村の祭りが、一番の供養…
夕食の広場。続き。 シロクンヌ 「ここでヌリホツマに聞いておきたい。 サチを見て、何か見えるか?」 ヌリホツマ 「見えはするぞよ。 サチは皆の者とは、違う。」 シロクンヌ 「不吉なものが、何か見えるか?」 ヌリホツマ 「不吉なもの? どういう意味じゃ…
夕食の広場。続き。 サチ 「父さんは、村はあっという間に沈んだと言いましたが、そこが少し違います。 最初の地震では沈まなかった。 でも小屋は崩れて、地面もドロドロになってしまいました。 アヤをはじめ、20人の女達は全員、泥で身動きが取れなくなっ…
いろり屋。女衆が下ごしらえの真っ只中だ。 タマ 「そんな話だったのかい。 しゃべった事もない女達を、身を挺して助けた男達じゃないか。 なんでそんな立派な男達に、殺し合いなんて濡れ衣をおっかぶらせたんだろうね?」 クズハ 「不思議よねえ。」 ヤシム…
ビク 獲った魚を入れるカゴ 作者筆(照)ヤス 刺突具は鹿の骨製。持ち手部分の滑り止めは桜の皮。縄文人のヤスは一本刺しだった(と思う)。 ダケカンバの樹皮の灯火 左側に火をつけて川面を照らす 河原の基地~飛び石の川。 ハニサ 「ここに脱いだ履物を並…
河原の基地 マグラ 「みんな戻ったのか?」 ハギ 「ヤッホ、エミヌ組がまだだな。」 カタグラ 「女神、ヤッホのビクってどれかな?」 ハニサ 「これ。この二つ。」 カタグラ 「ビクは全部で30で、今ヤッホが一個持ってるんだな。 って事は、ヤッホは3個。…
明り壺の祭り当日。朝の広場。 テイトンポ 「シロクンヌ、見てみろ!」 シロクンヌ 「ああ、テイトンポ、おはよう。お! オシャレしてるな(笑)。」 テイトンポ 「服もそうだが、これこれ。」 シロクンヌ 「草履か!」 ハニサ 「母さんが編んだんだね。」 テ…
祈りの丘。祭りの準備。 ムマヂカリ 「この囲い筒並べというのも、結構気を使うよな。 うっかり蹴倒したら割れてしまうかも知れんからな。 ・・・囲い筒の中の灯りは、ヌリホツマの漆ロウ。 明り壺にはエゴマ油。 両方とも、他の村では貴重品だぞ。 それを惜…
祈りの丘。サルスベリの樹の周り。 クマジイは脚立の上で、サルスベリの枝から枝に渡すように磨き木を組み、麻ひもで縛っている。 光るハニサはシロクンヌに肩車されて、粘土でぐい呑みほどの容器を作り、それを磨き木や枝にに貼りつけていっている。 シロク…
いろり屋 ヤッホ 「すげえスッポンだな。 カワエビとサワガニ、結構いたよ。」 タマ 「ほんとだねえ! それだけいればカリカリ焼きができるね。」 ヤッホ 「じゃあおれは、祈りの丘に行くからね。」 シオラム(41歳・男) 「ヤッホか!立派な若者になりおった…
サルスベリの樹。続き。 テイトンポ 「両方、一対一の勝負だ。 背中合わせとは、背中合わせになって、地面に尻をついて座る。 そして足を伸ばす。 その体勢から始める。 合図で動き出し、先に相手の両肩を地面に付けた方が勝ちだ。 背中取りは、向かい合って…
サルスベリの樹。続き。 ヤシム 「アコ。ハニサが可哀そうじゃない。 ちゃんと説明してあげなよ。 シロクンヌはそんな男じゃないはずだよ。」 アコ 「そうか、ハニサ、ごめんよ。 ハニサ。シロクンヌとあたしは、今は男同士の付き合いなんだよ。 二人ともテ…
広場。 ムマヂカリ 「ハニサ、その光ってるの、何とかならんのか?」 ハニサ 「まだ、自分で調整できないの。」 ムマヂカリ 「みんながホウケの顔になって、こっちを見ているぞ。」 ハニサ 「ホントだね。何でだろう。」 ムマヂカリ 「・・・・・」 大ムロヤ…
サルスベリの樹。続き。 アコ 「知らない人もいるよね。 紹介するよ。この人は、タカジョウ。 あたしが産んだ子の、お父さん。」 カタグラ 「アコには子供がいるのか?」 アコ 「いたんだけど、病で死なせちゃったの。」 カタグラ 「そうだったのか。」 アコ…
供宴の場。 ムマヂカリ 「囲炉裏は三ヶ所。一列に丘を囲むように、10歩の距離をあける。 真ん中の囲炉裏の村側にシロクンヌの机だ。 種熾きはあそこにある。すぐに火を熾して、石を焼くぞ。」 シロクンヌ 「サルスベリの作業も、もう終わる。 そのあと希望…
祈りの丘。 ササヒコ 「ようこそウルシ村へ。 ようこそ祈りの丘へ。 もうすぐ陽が暮れる。 さあ、みんなで、この丘を埋め尽くす、囲い筒の中の漆ロウに灯をともそう。 火付け棒なら、そこにたくさん用意した。 遠方から来られた方も、おいでだろう。 火付け…
祈りの丘。 ハニサ 「二人で丘を散歩しよう!」 シロクンヌ 「綺麗だなー! まずは灯りの樹の近くまで行こうか。」 マグラ 「タホって言うのか。可愛いじゃないか。おじちゃんが抱っこしてやるぞ。」 ヤシム 「すごく綺麗ね。灯りの中を歩くのって素敵。」 …
祈りの丘。 ヤッホ 「アニキー、場所取りしたぜー。」 シロクンヌ 「ここで食うってことか?」 ヤッホ 「アニキは知らないだろうな。太鼓が鳴ったら、囲い筒は移動させてもいいんだ。 ただ、丘で食べる時は、一人御座半分、 二人で御座一枚の広さっていうこ…
祈りの丘。続き。 アコ 「ねえ、タカジョウ、命の恩人って、どういう事なの?」 シロクンヌ 「それはおれも、気になっていた。 おれの父親が、何かをしたのか?」 ハニサ 「何の話?」 アコ 「お祭りの準備をしてる時、あたしが紹介したんだよ。 タカジョウ…
祈りの丘。続き。 テイトンポ 「どうする? まだ聞きたいか?」 クマジイ 「当然じゃ!」 ヤッホ 「まだ食い足りないから、供宴の場に行かないか?」 ハギ 「そうしよう。ここまで聞いて、これで終わりってのは無いな。」 ヌリホツマ 「ハタレの事も、聞きた…
供宴の場。続き。 アコ 「さっき、旅に出るって言ってたでしょう?行き先は?」 タカジョウ 「特に決めてはいない。 が、シップウと共にだから、行かれぬ所も多い。 シップウを見ると、カモやガン(雁)がいなくなる。 すると猟師に迷惑が掛るからな。」 ハニ…
供宴の場。続き。 ササヒコ 「こんな隅っこにおったのか。探しておったのだぞ。今年の祭りは大成功だ。 クマジイ、ハニサ、シロクンヌ、テイトンポ、褒美は何がいい? タカジョウも一緒か。たくさん差し入れしてくれて、有難うな。」 タマ 「コノカミ、随分…
ハニサのムロヤ。 ハニサ 「カタグラの踊り、本当に面白かったね。」 シロクンヌ 「大笑いしたな。なんであいつは、あんなに上手に尻が出せるんだろうな?」 ハニサ 「手を使ってないよね?」 シロクンヌ 「使ってないと思うぞ。すました顔で踊ってて、いつ…
祭りの翌日。朝の広場。 シロクンヌ 「今日は祭りの後片付けがあるんだよな?」 ハニサ 「そう。でも起き出して来るのは、みんな遅いよ。 もう一泊するお客さんも多いし。」 サチ 「おはよう。昨日は楽しかったね。 お姉ちゃんと父さん、お揃いの首飾りだ。…
朝の広場。続き。 シロクンヌ 「テイトンポ、出発するのか?」 テイトンポ 「ああ、シカ村の衆はもう一泊するようだが、アコと二人で出立する。」 ハニサ 「母さんは?」 アコ 「まだ、死んだように眠ってた。」 ハニサ 「・・・・・」 シオラム 「テイトン…