縄文GoGo

5000年前の中部高地の物語

第182話 33日目⑤

 
 
 
          ウルシ村。
 
男A  「帰って来た様だな。」
男B  「ぞろぞろ連れ立って、女が結構いるじゃねえか。」
男C  「ハニサ以外でも楽しめそうだな。」
男A  「行くぞ。そいつを担げ。女も引っ張って来い。」
 
    広場に入ったシロクンヌ達の前に、大ムロヤの見張り以外の男達5人がやって来た。
    縛られたササヒコを一人が担ぎ、そして一人がタマを連れている。
 
男A  「おい、お前ら、いいか、よく聞けよ。
     この村のカミはこいつだろう?
     いつでも槍で刺し殺すぞ。こっちの女もな。
     それから、村の他の奴等は、あの中だ。
     入口はふさいだ。いつでも火をつけるぞ。
     逃げようと思うなよ。
     逃げた奴は、矢で射るからな。
     おれ達の目的は、女だ。
     だから男は、今すぐ殺してもいいんだが、見物人も欲しいからな。
     自分の女が、ヒーヒー言う姿を見ていろ。
     ハニサは誰だ? 前に出てこい。」
イナ  「あたしがハニサだよ。何の用?」
男A  「ほう。噂通りのいい女だな。
     しかし、震えてもおらん。おれ達が怖くないのか?」
男B  「そいつ、女の格好をして、本当は男じゃないのか?
     調べてみろよ。」
男C  「矢はどうしたんだ? 弓だけ持って、矢は使い切ったのか?」
男A  「よし、調べてやる。股を見るから動くなよ。(服の裾に潜り込んだ)
     もっと脚を開け。股の間に挟んでいるかも知れんからな。
     もっと開け。もっとだ。」
男B  「どうだ? 女か?」
男A  「今、味わっておるところだが・・・おまえ、後ろに回って調べてみろ。
     舐めまわしてやれ。」
男B  「後ろから、手で思い切り開いてやるか。
     こいつはもっと腹が大きくなるまで飼い慣らすんだろう?
     何だこいつ、つまんねー女だな。全然臭わねえぞ。綺麗なもんだ。」
男A  「そうだろう? 舌が痺れねえよな?
     これから、一切、拭いたり洗ったりさせないようにしなきゃな。」
男C  「段々、おれ達の好みに変えて行けばいいさ。今までだってそうだっただろう?
     こいつらは、綺麗好きなんだ。綺麗好きが良い事だと思ってる馬鹿共だよ。
     ハニサの他にもイイ女が大勢いるじゃねえか。しばらく楽しめそうだな。
     あいつなんかもいいんじゃないか?
     おい、そこのお前、横の男にしがみついてるおまえだ。
     そいつの目の前でやってやるから、おまえら二人、こっちに来い。」
ヤッホ  「いやだね。相手にしなくていいぞ。」
男C  「なんだと?」
イナ  「あんた達へたくそだね。ちっとも気持ち良くないよ。
     あんた(男C)上手そうじゃない。あんたがやってよ。」
男A  「なんだとう! 美人だと思って、こいつ調子に乗りやがって。」
男B  「ここでやっちまうか! おい、押さえつけろ!」
 
 ササヒコを担いでいた男が、ササヒコを地面に下した。
 次の瞬間、その男の顔面をシロクンヌが放ったカラミツブテが直撃した。
 男は悲鳴を上げ、もんどりうって倒れた。猛烈な勢いで鼻血が噴き出している。
 男達は、何が起きたのかわからなかった。
 
 イナは指に挟んでいた黒切りで、弓の弦を切って杖にした。
 杖の端をコブシ一つほど残して握り、その短い部分で男Aの顔面を突いた。
 男Aのほほ骨が陥没し、咆哮が響き渡った。
 
 イナはそのまま杖を肩幅より広く持ち、体を猛烈な勢いで回転させながら男Bを突いた。
 回転させながら、また突いた。さらにまた突いた。
 回転突きには体重が乗っている。
 男Bの左ヒジは砕け、右肩甲骨が割れた。
 
 イナはそのまま回転しながら、慌てて槍を突き出して来た、タマのそばの男を突いた。
 その一撃で、男の左アゴ関節が砕け、奥歯が折れた。さらに回転しながら脾臓を突いた。
 杖は深々と腹にめり込み、男は、のたうち回っている。
 
 そして起き上がりかけた男Aの肛門を突き抜き、顔から地面に突っ込ませ、
 男Bの鼻を叩き、左耳を突いた。
 左耳が内側にめり込んだ。
 イナの動きは速すぎてよく見えない。
 
 逃げ出した男Cの右足を、シロクンヌが踏んだ。男Cの足首関節が完全に外れた。
 そこへイナが来て、目を叩き、脇腹を突き上げた。
 肋骨が折れ、肺に刺さった。口から血が噴き出した。
 そして、立ち上がろうしている鼻血の男の背骨を突き、のけ反った男の喉仏を突いた。
 
 大ムロヤの見張りの2人は、テイトンポが倒していた。
 そちらからは絶叫と共に、7人です。嘘じゃありません。という声が聞こえて来た。
 広場は、村を襲った男達のうめき声であふれていた。
 立っている者は一人もいない。
 
イナ  「コノカミ、大丈夫? 怪我は?」
ササヒコ  「殴られはしたが、怪我はしておらん。」
 
シロクンヌ  「タマ、怪我は無いか?」
タマ  「怖かったよう。怪我はしてないよ。」
シロクン  「男達は、全部で何人なんだ?」
タマ  「7人だよ。」
 
ササヒコ  「しかし、イナの強さは、聞きしに勝るものだな。あっと言う間だったぞ。」
イナ  「今、縄を切るからね。」
ヤッホ  「父さん、大丈夫かい?」
イナ  「体を見るよ。腫れてるじゃない。息を吸った時に痛い?」
ササヒコ  「蹴られたからな。すー。大して痛くは無い。」
 
ムマヂカリ  「大ムロヤに閉じ込められていた連中も、一応は無事だ。
        殴られた者が何人かいたが、顔が腫れておるが、骨は折れてはおらん。」
 
ヌリホツマ  「こやつらは、カラス山に連れて行くしかなかろうな。」
シロクン  「カラス山?」
ムマヂカリ  「忌み地(いみち)だ。おれ達はそこでは狩りもせん。
        今から出れば、着くのは夜だな。」
シロクン  「サチに先導を頼もう。念のため、イナは残ってくれ。」
 
 
 
登場人物 シロクン 28歳 タビンド 特産物を遠方の村々に運ぶ シロのイエのクンヌ  ササヒコ 43歳 ウルシ村のリーダー  ムマヂカリ 26歳 ヒゲの大男   ヤッホ 22歳 ササヒコの息子   ハギ 24歳 ヤスが得意  タホ 4歳 ヤッホとヤシムの息子 ヤシムと暮らしている  タヂカリ 6歳 ムマヂカリとスサラの息子  クマジイ 63歳 長老だが・・・  テイトンポ 40歳 シロクンヌの師匠 その道の達人   クズハ 39歳 ハギとハニサの母親   タマ 35歳 料理長  アコ 20歳 男勝り テイトンポに弟子入り   ヤシム 24歳 タホの母親  ハニサ 17歳 土器作りの名人 シロクンヌの宿   スサラ 25歳 ムマヂカリの奥さん  ヌリホツマ 55歳 漆塗り名人 巫女  ホムラ 犬 ムマヂカリが可愛がっている

      

追加アシヒコ 56歳 アユ村のリーダー  マグラ 27歳 アユ村の若者  カタグラ 24歳 マグラの弟  フクホ 50歳 アシヒコの奥さん  マユ 25歳 アユ村の娘  ソマユ  19歳 マユの妹  サチ 12歳 孤児 シロクンヌの娘となる アヤクンヌ      エミヌ 18歳  オジヌ 16歳 エミヌの弟  カイヌ 14歳 オジヌの弟    モリヒコ シカ村のカミ  サラ 17歳 スサラの妹 ハギとトツギとなる ヌリホツマの弟子  ナクモ 18歳 エミヌの友人  シオラム 41歳 ササヒコのすぐ下の弟 塩作りの加勢のためシオ村で暮らす 5年に一度、里帰りする  ナジオ 20歳 シオラムの息子 シオ村生まれ  タカジョウ 23歳 ワシ使い  ホコラ 洞窟暮らし 哲人  シップ オオイヌワシ タカジョウが飼っている  エニ 38歳 エミヌ姉弟の母   カヤ アマカミの使者  シラク 北のミヤコのシロのムロヤの責任者  マシベ フジのシロの里の者 ヲウミのシロの村との連絡係り  トモ フジのシロの里の者  イナ 30歳 シロクンヌの姉弟子 杖の達人  コヨウ 15歳 タカジョウの妹  ゴン 洞窟で飼われている仔犬  ミツ 11歳 アユ村の少女  カザヤ 24歳 アユ村の若者 カタグラの友人  テミユ 22歳 カザヤの妹  タガオ 32歳 ミツの父親 目がみえない

   

用語説明 ムロヤ=竪穴住居  大ムロヤ=大型竪穴建物  カミ=村のリーダー  コノカミ=この村のリーダー           グリッコ=どんぐりクッキー  黒切り=黒曜石  神坐=石棒(男性器を模した磨製石器)  塩渡り=海辺の村が作った塩を山の村に運ぶ塩街道があった。ウルシ村から東にシカ村→アマゴ村・・・七つ目がシオ村  御山=おやま。ウルシ村の広場から見える、高大な山々  コタチ山=御山連峰最高峰  トコヨクニ=日本  蚊遣りトンボ=虫除けオニヤンマ ここではオニヤンマの遺骸に竹ひごを刺し、竹ひごをヘアバンドで頭部に固定する  トツギ=一夫一婦の結婚  眼木=めぎ 眼鏡フレーム 曲げ木工房で作っている  クンヌ=イエの頭領  吊り寝=ハンモック  一本皿=長い丸太を半分に割いて作ったテーブル。一本の木から2本取れるが、一本皿と呼ばれている。  一回し=長さの単位 70㎝  半回し=35㎝ 縄文尺とも呼ばれる。  カラミツブテ・カブテ=狩りの道具。コブシ大の二つの石を紐でつなげた物。  ボウボウ=樹皮ラッパ 法螺貝よりも高い音が出る。