第181話 33日目④
帰り道。
イナ(ヌリホツマを背負っている) 「楽しかったわねー。」
シロクンヌ(ハニサを背負っている) 「さっき見たシップウの川狩りも凄かったよな。」
ハニサ 「一度に2匹獲ったのがあったでしょう? あれって、同時に獲ったの?」
イナ 「あれは驚いたわね。着水は一度に見えたけど。」
シロクンヌ 「あれなあ。戻って来たら、1匹ずつ、2匹掴んでいたもんなあ。」
ヌリホツマ 「シップウが掴むと、魚が小さく見えるのう。」
ハニサ 「川幅も、狭く見えたよね。」
イナ 「ねえクンヌ、帰ったら、またアレやってよ。どこかの崖で。」
シロクンヌ 「ハハハ。いいぞ。イナの絶叫を初めて聞いたからな。」
ヌリホツマ 「シロクンヌは、結局、何往復したんじゃ?」
ハニサ 「母さん達にもやったよね。」
シロクンヌ 「休憩挟んで、6往復か。」
ヌリホツマ 「よくそんなに、体がもつもんじゃな。」
ヤッホ(タホを背負っている) 「じゃあ、今日から行くよ。」
ヤシム 「うん。タホ、寝ちゃ駄目よ。起きてなさい。夜寝るのよ。
帰りたくないって、さっきまで泣いてたから、疲れて寝ちゃうわね。」
ヤッホ 「落ちないように縛っておくか。」
クズハ(テイトンポに背負われている) 「サチは、お友達が出来て良かったわね。」
サチ 「うん。早くウルシ村に来ないかな。」
エニ 「ミヤコにいた時には、お友達はたくさんいたの?」
サチ 「そんなにいなかった。大人の人と、一緒の事が多かったから。」
アコ(テイトンポに抱かれている) 「ここでもそうだったもんな。」
テイトンポ 「ミツは賢いから、サチにはいい友達だ。
ミツが言っていた、粘土版を使った飛び越しな、あれは面白そうだな。」
サチ 「お姉ちゃんが、やり方を詳しく聞いてたよ。四角の粘土版を3枚使うんだって。
向きを変えて置いたら、難しさも変わるみたい。」
エミヌ(オジヌに背負われている) 「あんた、ちゃんと、会う約束したの?」
オジヌ 「今はしてない。おれは強くなりたいんだ。
今はそっちをやらなくちゃいけないから、忙しいんだ。」
エミヌ 「私は、月に一度会うわよ。あー早く九日月が来ないかな。」
飛び石の道。坂を上ればウルシ村だ。
シロクンヌ 「ん? ホムラだ。こっちに走ってくるな。
少し様子が変じゃないか?」
イナ 「工房に、弓があったわね。取って来るわ。」
ヌリホツマ 「イナよ、ありがとう。わしはここで降ろしておくれ。」
ハニサ 「どうしたの?」
シロクンヌ 「村の様子が変だ。ハニサも降ろすぞ。何かで顔を隠せ。」
ムマヂカリ 「何かあったな。喜んで出迎えたホムラではない。
吠えずに走って来た。」
シロクンヌ 「離れん方がいいな。ここでみんなを待つか。左の崖の上に注意を払ってくれ。」
イナ 「工房には誰も居なかったけど、少し荒らされた感があるわよ。」
オジヌ 「おれ、南の崖から村に入って、様子を見て来る。」
シロクンヌ 「無茶はするなよ。」
エミヌ 「気をつけるのよ。」
ヤッホ 「何かあったのかい?」
シオラム 「クマジイ、ここで降ろすぞ。」
クマジイ 「すまんの。何かあった様じゃな。」
シロクンヌ 「テイトンポ達はまだか?」
カイヌ 「もう飛び石を渡る頃だよ。」
テイトンポ 「工房を見て来たが、スッポンの世話はしてあった。
おそらく、昼過ぎまで、コノカミは工房に居たはずだ。」
シロクンヌ 「オジヌが戻って来た。」
息を切らして、オジヌが走って来た。
オジヌ 「村の全部は見てないけど、知らない男が7人いた。
いろり屋に3人いて何か食べていた。
そのそばにタマとコノカミが居て、コノカミは、縛られて、転がされてる。
大ムロヤの入口の前に2人立っていて、そいつらは槍と石斧と弓矢をもってる。
入口を見張ってる様に見えた。
作業小屋の方から槍と弓矢を持った2人が来て、いろり屋の3人に何か言っていた。
そしてそいつらも、何か食べ始めた。
村人の姿は全く無いから、大ムロヤの中に閉じ込められているのかも知れない。」
シロクンヌ 「おれ達がここまで来ているのを、気付いている様子だったか?」
オジヌ 「そうは見えなかった。」
シロクンヌ 「おれ達の留守を知らずに村を襲い、お目当てのハニサが居ないから、
ハニサの帰りを待っているのだろうな。」
イナ 「コノカミは、怪我してるみたいだった?」
オジヌ 「血とかは、見えなかったよ。」
テイトンポ 「よし、どうやら奴等は油断しておるかもしれん。
おれとシカダマシとシオラムとオジヌは、今オジヌが行った道で村に向かう。
そして身を潜める。
シロクンヌはみんなを連れて、普通に村に入れ。何も気づいておらん体でな。
そこから先は、出たとこ勝負だ。
離れ離れにはならん事だ。7人以外に居るかも知れんからな。
おれ達4人が先に出る。少し経ってから、出てくれ。」