第123話 18日目②
夕食の広場。
ハニサ 「兄さん、よかったね!
兄さんのトツギに準備してた家財道具、全部あたしのムロヤで使っちゃったから。」
ヤッホ 「ひでーなハニサ。」
サラ 「私が押し掛けたからトツギが早まったし、仕方ないよ。
でもびっくりだよ!
一遍でムロヤが賑やかになっちゃった!」
ハギ 「毛皮だけでムロヤの床が埋まるし、昨日までとは別世界だな。」
タカジョウ 「もらってくれるなら、もっと持ってくるぞ。運べるのがそれだけだったんだ。」
カタグラ 「自慢してやろうと思って取って置きの毛皮を持って来たのだが、
川晒ししてる熊の毛皮をみたら、ぶっ魂消てしまったよ。」
タカジョウ 「サチのお手柄だってな。
確かにあれにはぶっ魂消たな。」
カタグラ 「女神の光の子の御懐妊といい、
この村は、ちょっと目を離すと何が起きるか分からんな(笑)。」
タカジョウ 「ハハハ。まったくだ。しかしハニサは幸せそうな顔をしているな(笑)。」
サチ 「お姉ちゃんは、ずっとああだよ。時々私にお腹を見せて自慢するの。」
ヤッホ 「ハニサ、おれにも見せてくれ。」
ハニサ 「やだよ。エミヌには見せてもらえた?」
ナジオ 「ブァッハッハッハ。あれな!
まったくエミヌの悪女っぷりには、恐れ入ったよ。
あのあと、ヤッホとムマヂカリをシモベのように扱っていたんだぞ。
それで結局見せてもらってないんだろう?」
ハギ 「ひじ枕で寝転んで、二人に足を拭かせるんだ。
そしてひざを曲げてみたり、脚を組み替えてみたり、いろいろやるんだよ。」
オジヌ 「おれ、それを毎日やらされてた。」
ムマヂカリ 「そうなのか! だからあんなに巧いんだな。絶対見えないんだ。」
オジヌ 「おれの時は、よく見えてたよ。」
ヤッホ 「本当か! おれもエミヌの弟に生まれればよかった。」
ヤシム 「そんなことばっか言ってるから、ヤッホは軽く見られるんだよ。」
サラ 「私の場所からは、何度か見えたよ。」
カタグラ 「それは、何の話なのだ?」
タカジョウ 「アッハッハッハ。それはムマヂカリの気持ちが分かるなあ。
そこまでじらされたら、たまらんな。」
カタグラ 「で、どうなんだ? 実際、見えたのか?」
ムマヂカリ 「おぬしの尻芸に近いな。」
ハニサ 「どういう事?」
ムマヂカリ 「カタグラは、尻だけ出して玉は上手にこぼれ出んようにしておるだろう?
それと同じで、見えるのは腿までだ。」
ヤッホ 「おれの時は、角度から言ったら絶対に見えているはずなんだけど、
膝から奥が、暗くて何も見えなかった。
あれも、計算の内なのか?」
エミヌ 「やっぱり見えなかった?
もうあの時が最高にドキドキしたのよ。
ヤッホが食い入るように見てるから、見えてるのかもって。」
ナクモ 「見られたら、恥ずかしくないの?」
エミヌ 「恥ずかしいよ。
とっても恥ずかしい。
だからいいんじゃない。
血に飢えた二匹の狼が、ギラギラした目で私を狙いながら足を拭いてるのよ?
もう、たまらなくない? ゾクゾクするでしょう?
サチにはそういう気持ち、分かる? まだ早いか。」
サチ 「私、分からない・・・」
ハギ 「サチは分からなくていいからな。
エミヌ、自分の世界にサチを引き込むな。」
ヤシム 「あんた、食い入るように見てたの?
もう、どうしようもないね!」
ヤッホ 「なんでヤシムが怒るんだよ。」
ヤシム 「じゃあもう知らない!
ムマヂカリは、その思いの丈をスサラにぶつけたんでしょう?」
ムマヂカリ 「スサラが何か言っていたか?」
ヤシム 「寝ていたのに起こされたって。
迷惑ぶってたけど、嬉しそうだったよ。
最近のスサラは機嫌がいいわね。」
エミヌ 「それ、マ印のお陰よ。私、聞いちゃったもん。
テイトンポが帰ってきたら、私にも飲ませてって頼んでみる。
シロクンヌ、ハニサに内緒で一緒に飲もうよ。」
ハニサ 「キャー止めて!」
シロクンヌ 「おれは隠し場所を知っているぞ。」
ハニサ 「もう! シロクンヌ!」
タカジョウ 「ハハハ。ところで、この村に、オジヌという者がおるだろう?」
オジヌ 「おれだよ。」
タカジョウ 「なんだ、エミヌの弟だったのか。
祭りの時、コヨウを助けてくれたそうだな。
礼を言わねばならんと思っていたんだ。ありがとうな。」
ハニサ 「え! 何があったの?」
ナジオ 「そうだ! オジヌには聞きたい事があったんだ!」
ヤッホ 「もうみんな食べ終わっただろう?
また一雨来そうだから、場所を移さないか?
大ムロヤに行こうよ。」